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2018年10月21日(日)更新

グローバル人事

世界経済がグローバル化する中で、優秀なグローバル人材を確保・育成・活用するためのグローバル人事戦略、グローバル人事制度が重要となっています。グローバル人事の意味とそれが求められる背景、日本企業がグローバル人事を実現できない課題とその改善策、さらには優れたグローバル人事を実践している日本企業の事例をご紹介いたします。

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グローバル人事とは

グローバル人事とは、自社が進出している国や地域の現地従業員を適切に評価し、能力を引き出すことで国際競争力高める人事施策を指します。

世界経済のグローバル化が加速し、国内需要が低迷する中で、活路を海外に見出す日本企業は珍しくありません。そのため、日系グローバル企業の全従業員の現法社員の比率は日本人社員の総数ははるかに上回っています。しかし、風土や国民性も異なる現法社員を自社の経営理念に統合させ、国際競争力を高める人事は多くの課題があり、一筋縄ではいかない経営戦略といえます。

そこで注目されているのがグローバル人事です。全世界の従業員の情報を一元管理することで、個々の能力を最大限に活かし、グローバル基準の成果や役割を公正に評価することができるグローバル人事は必要不可欠といえます。既に行われているグローバル人材の育成の人事プラットフォームの構築はもちろん、 新卒採用においても一定数の外国人採用枠を設けるなどグローバル展開を見越した新たな人事戦略も増えつつあります。

【関連】グローバル経営とは?グローバル経営管理の課題も合わせてご紹介 / BizHint HR

グローバル人事が求められる背景

グローバル人事が求められる背景に、急速に進むグローバル化とグローバル人材の不足の2つが原因として挙げられます。

急速に進むグローバル化

グローバル化(グローバリゼーション)とは、IT技術と交通手段の発達、市場の国際的な開放により、人・モノ・情報を各国で相互依存する現象を指します。LCC(ローコストキャリア)などの参入により海外旅行が手軽になったことや、国境をまたいで個人間でコミュニケーションが行えるSNSやメッセンジャーの登場もグローバル化の一つといえます。インターネットの登場で、法人・個人に関わらず、世界中のマーケットで取引を行えるようになったことも、世界経済が活性化する要因の一つとされています。

特にアジアなどの新興国ではIT技術やインフラが急速に発展しており、現地人材の雇用が高まっています。海外に進出する日本企業も積極的に現地人材を採用しており、国際競争力を強化するための経営戦略としてのグローバル人事が必要不可欠となっています。

グローバル人材の不足

経済が急速に発展する中で、日本企業のほとんどがグローバル人材の不足が最重要課題であると認識しています。

経済産業省が2010年3月に行った「グローバル人材育成に関するアンケート調査」の「海外拠点の設置・運営にあたっての課題」において、「グローバル化を推進する国内人材の確保・育成」を挙げている割合が74.1%に上ります。また、グローバル人材は経営・ビジネスリーダー・人材マネジメントなど事業を推進する重要なポジションにおいて、不足しています。

官民一体となって、グローバル人材の育成を推進していることもあり、グローバル人材の不足がグローバル人事を求める要因にもなっています。

【参考】第4章 外との繋がりによる日本経済の新たな成長に向けて 第4-2-5-4図 企業のグローバル人材へのニーズとその過不足

【関連】グローバル人材とは?定義、必要性、採用や育成のコツをご紹介/ BizHint HR
【関連】グローバルリーダーとは?言葉の意味や能力、育成に関して解説 / BizHint HR

グローバル人事の課題とその改善策

グローバル人事は、加速する世界経済のグローバル化とグローバル人材の不足により必要性が増しているにも関わらず、日本企業のグローバル人事には課題が多いといえます。

必要なグローバル人材の明確化

一言でグローバル人材と言っても、企業や組織が求めるグローバル人材にはさまざまな役割があり、大きく分けて4つのカテゴリーが存在します。それが「グローバル経営人材」「グローバルビジネスリーダー人材」「ローカルマネジメント人材」「グローバル・リテラシー人材」です。

グローバル経営人材とは、グローバルに事業を展開する本社の経営を担う人を指します。

グローバルビジネスリーダー人材とは、国内にはない新たなビジネスや文化、ビジネスパートナーに柔軟に対応ができる人を指します。

ローカルマネージメント人材とは、現地人材を適切に理解し、人材マネジメントを行える人です。

グローバル・リテラシー人材とは、高い語学力と海外での実務経験、生活経験を持つ人を指します。

現在の日系企業にはいずれのグローバル人材が不足していると指摘されており、企業側がどのようなグローバル人材を獲得したいか明確にできていないことがほとんどです。自社が置かれている経営状況を分析し、確保すべきグローバル人材を明確にする必要があります。

自社のグローバル事業戦略と組織戦略の策定

グローバル人事を実現するためには、まずは中長期的なグローバル事業戦略と組織戦略を策定する必要があります。競合他社の海外進出への追随や人件費削減名目などの曖昧な目的でグローバル展開に踏み切る企業は珍しくありません。このような事業戦略は事業を主体にグローバル化を進める、日系企業にありがちなグローバル展開といえます。

改善策として、重点を事業主体ではなく、国や地域に置いた事業展開を前提に、それに応じた人材管理の構築や組織マネジメントを策定する方法が挙げられます。

基盤となる人事プラットフォームの構築

グローバル人事には欠かせない語学や異文化への理解、高度なコミュニケーション能力などのグローバル・リテラシーを伸ばす環境は大切です。しかし、グローバル展開においては実務上の問題が数多く浮上してくるため、課題への対応に追われ、グローバル組織やグローバル人事制度の構築が疎かになってしまいます。機能するグローバル人事の実現には、目先の課題解決だけでなく、全体を俯瞰できる人事管理プラットフォームの構築が不可欠です。

グローバル人事理念の再構築

世界経済は、各国の政権移行や地政学的リスクにより、いとも簡単に変化してしまいます。そんな状況に対応するためにもスピード感のある施策や戦略の軌道修正は大切です。しかし、自社が目指すグローバル企業を実現するためには揺ぎない主軸となるグローバル人事理念が重要となってきます。「経営の現地化を推進する人材」、「国籍を問わずに積極的な人材を登用する」などの明確な人事理念の再構築が重要です。

グローバル人事理念は企業が経済活動を行う上で大切にしている企業理念が基となります。しかし、日本国民に共感を得られる企業理念は多様な価値観を有する諸外国で、必ずしも共感を得られるとは限りません。そのため、企業理念を含む企業の存在価値や考え方を再考する必要があります。

海外拠点の組織の見える化

海外進出のノウハウを持たない日系企業が海外企業や外資系企業を買収・子会社化し、海外へ進出する経営手法は珍しくありません。これは知識や経験がない企業が、文化や国民性も異なる地域で新たな経済活動を行なう上でも有効な手段でもあります。

一方で知識や経験がない分、買収した現地企業(海外グループ会社も含む)に任せきりになってしまうと、組織がブラックボックス化になってしまいます。ブラックボックス化すると適切なガバナンスが取れなくなり、粉飾決算や想定外の損失のリスクが生じてしまいます。これらは先にご紹介したグローバル事業戦略や組織戦略、グローバル人事理念が曖昧なことが原因となりえます。

グローバル人事戦略の策定

企業の経済活動においても人事戦略においても、いつまでにどのレベルまでに達するかという目標設定が大切です。 グローバル人材の確保においても、「いつまでに」「どんなスキル持った人材」「どのように配置するか」を計画する必要があります。しかし、これらの人材開発を十分に計画していない企業は少なくありません。グローバル事業戦略とグローバル人事理念に沿った具体的な人事戦略を策定しなければ、必要とするグローバル人材を確保できません。また、グローバル人材の計画的なキャリアパスも不可欠です。海外勤務で培った実務経験を国内の本社でどのように活かすか、また社員自身のキャリア形成を明示できなければ、グローバル人材を育成することができません。

グローバル人事制度の構築

国民性や文化の違いにより、多様な価値観をもつ現地人材が加わることで、人事問題が一気に複雑になってしまいます。採用はもちろん、人材配置、異動・転籍、評価、育成といった全ての面において、人事全体の総合的な見直しが必要となります。

また、人事制度を確立する人事部自体がグローバル化に対応できていないことも多く、そのために適切なグローバル人事制度の構築がなされていない日系企業は数多く存在します。国や地域を重点においた上で、世界視野で共有できる自社のDNAを発信しながらも国際競争力を活性化させるグローバル人事制度の構築を行なう必要があります。

グローバル人事の取り組み事例

日本企業の中には積極的に海外進出を果たしている企業も多数存在します。今回は日本を代表する企業が取り組んでいるグローバル人事の事例をご紹介いたします。

株式会社資生堂

概要

売上、海外売上比率、営業利益率、ROE(株式資本利益率)の4つの具体的な目標に向かって、質の向上、成長軌道に乗る、躍進を果たすの3つのステージに分解し、グローバル化を推進。中国などのアジア進出を手掛け、欧米企業との協業も積極的に展開しています。

グローバル人事の取り組み

資生堂のグローバル人事の取り組みは「グローバル人事基盤の整備」、「経営人材育成プログラム」、「国際間人事異動」の3つに力を入れています。

グローバル人事基盤の整備においては、2008年にグローバル人材データ・グローバルグレード・国際間異動ポリシー・グローバル処遇ポリシー・グローバルコンピテンシーという5つのグローバル共通の人事基盤の整備を実施しています。その後、「グローバルな人事ルールの確立」、「海外現法社員の人材育成体型の構築」、「グローバルレベルでの配置・異動の推進」の人材活用を促進しています。

経営人材育成プログラムにおいては、本社部門長・現地法人トップを対象に本社研修、海外の経営大学院でのプログラム受講、チームタスクフォースワークの3つのコンテンツを中心に幹部育成研修を行なっています。

国際間人事異動においては、海外見地法人からの本社異動、現地法人間での転籍、出張ベースでの短期研修などの異動・転籍を徐々に行なっています。

【参考】社団法人日本能率協会 グローバル人事の重点課題とその解決に向けて

味の素株式会社

概要

「世界レベルの多様な人材力」と「利益を生み出す効率性」の実現を目標に、国籍やキャリアを問わないグローバル人材の育成と登用を行い、企業理念である「味の素グループWay」の浸透を行なっています。

グローバル人事の取り組み

味の素では「リーダー育成研修」、「グローバル会議・研修を通した人材育成」、「日本国内におけるキャリア開発ガイド」の3つで構成されています。

リーダー育成研修においては、味の素グループが求めるグローバル人材の3つの要素(味の素グローバルリーダーシップコンピテンシー・味の素グループWay・グローバルマインド)を基にした基幹職の職務グレード毎のリーダー育成研修を行なっています。

グローバル会議・研修を通した人材育成においては、グループ内の各担当者(グローバル調達担当、地域ITマネージャー、海外経理担当など)でのグループディスカッションや味の素グループの安全報告大会やマーケティングトレーニングプログラムなどの研修を行なっています。

【参考】味の素 多様な人材のグローバルな育成・登用

日産自動車株式会社

概要

2016年5月、日系グローバル企業では初めてとなるクラウド型人事ソリューション「Workdayヒューマン キャピタル マネジメント(HCM)」の導入を発表。グローバル事業の拡大に伴い、人事プロセスの共通化を行い、人事機能の一元化し、ダイバーシティの強化を始めています。さらに2017年の上期には全世界12万4000人の従業員を対象に運用することを発表しています。

グローバル人事の取り組み

Workday HCMの導入により、世界基準での従業員情報の可視化、自社の優秀な人材のデータベース化を実施しています。これにより、人財プールの構築とダイバーシティの強化、グローバル人材の育成、適切な人材配置の実現が可能となります。国際競争力の強化を担う日産の新たなグローバル人事戦略といえます。

【参考】日産自動車ニュースルーム 日産自動車、グローバル人事システムに「Workday HCM」を導入

パナソニック株式会社

概要

2011年から2期連続で過去最大赤字の計上・過去最低水準の株価を記録したことにより、海外の成長を支えるためのグローバル人事を本格化。グローバル統一方針を掲げ、海外視点に立って、国内のタレントマネジメントの見直しを図りました。今後は海外市場においても迅速に意志決定権を委ねられるローカル幹部の育成を図っていく予定です。

グローバル人事の取り組み

パナソニックでは、「海外視点に立った国内のタレントマネジメントの強化」と「グローバル人事戦略の立案」の2点に立って、グローバル人事に取り組んでいます。経営課題として、国内外問わずに経営層が圧倒的に不足しており、現地経営者を担える優秀なグローバル人材の育成が急務としています。しかし、パナソニックではこれらの人材を外部から採用するのではなく、創業者の松下幸之助の「モノをつくる前に人をつくる」という企業風土に従い、自社内での育成に力を入れています。

具体的な取り組みとして、バラバラに機能していた人事機能をコーポレート戦略本部の人事部門への集約が挙げられます。これにより、人事部門の活動の連動が強化されています。経営幹部候補の内示制度の策定、役員までのキャリアパスの明示化、業績連動型の役員報酬制度、株式報酬型ストックオプションの導入といった制度を次々と確立させています。

グローバル人事戦略においては、「ローカル幹部人材の絶対数の不足」、「グローバル企業としての価値観、仕組みの欠如」、「海外に事業のコアが少ない」といった課題を解決すべく、現法社員の幹部登用を含めたグローバル人事プラットフォームの構築に力を入れています。

【参考】SuccessConnect 2015【世界最強人事 事例に学ぶグローバル人事への取り組み】レポート3

【関連】ストックオプションとは?制度の仕組みやメリット・デメリット、課税関係までご紹介 / BizHint HR

株式会社日立製作所

概要

世界32万人の従業員を対象に一元化された「グローバル人財戦略」を実施しています。

グローバル人事の取り組み

日立製作所のグローバル人事は人財マネジメントを世界共通化することに重点を置いています。具体的にはグループ・グローバル全社員の基礎データの集約、全世界共通の職務価値基準、組織目標と個人目標の整合によるパフォーマンスの最大化、世界中で優秀な人財の確保・育成・配置、世界共通の従業員意識調査が挙げられます。その他、職務内容で格付けされた研修やボーダーレスの次世代経営幹部候補育成プログラム「グローバル・リーダーシップ・ディベロップメント(GLD)」への取り組みが挙げられます。

【参考】株式会社日立総合経営研修所 真のグローバルカンパニーを目指して

楽天株式会社

概要

英語公用化の実施など既存の取り組みに捉われないグローバル人事を展開する楽天株式会社。業務形態も通販サイトだけに留まらず、銀行や証券など幅広い事業を展開していく上で常に多様な人材を求めるグローバルカンパニーを目指しています。

グローバル人事の取り組み

楽天が取り組むグローバル人事の取り組みの一つが、「楽天主義」という経営理念の浸透です。この経営理念を採用や研修、評価に徹底的に組み込むことで国籍や価値観が異なる多様な社員を統括し、自社が目指すべき目標に邁進することができます。その他にも既存部署に拒否権のない積極的な人事異動や4つの階層に分かれた人材育成であるトレーニングパイプラインを実施し、グローバルに活躍できる人材の育成に努めています。楽天といえば、日本企業の中でいち早く取り組んだ「社内英語公用語化」が印象的です。社内英語公用語化により、迅速なコミュニケーションの促進、異文化への理解を推進しています。従業員のTOEIC平均スコアが817点(2015年12月)となっており、グローバル企業として高いスコアを維持しています。

【参考】楽天株式会社 ダイバーシティ

まとめ

  • IT技術の発達や交通インフラの向上により、今後も世界経済のグローバル化が加速すると予想されます。日本企業にとって、国内需要の減少により、海外に活路を見出すことは当然の経営判断といえます。
  • しかし、優秀なグローバル人材を確保・育成・活用するほど適切なグローバル人事が成されていないも事実です。
  • 事業基準ではなく、国や地域に重点を置いた海外展開を前提にしたグローバル事業戦略・組織戦略を描いた上でグローバル人事を実現することが大切です。

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