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2018年11月4日(日)更新

プロ・リクルーター

即戦力人材の獲得競争が激化している今、人材獲得競争に勝ち抜くために採用のプロフェッショナル「プロ・リクルーター」の存在が注目を集めています。事業戦略に基づいて採用計画を立案し、自社で採用したい人材を企業が自ら探し出して声がけし、能動的に採用活動を行う「プロ・リクルーター」。海外だけではなく、人材確保の難度が年々高まる日本でもこの動きは加速しています。

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はじめに

少子高齢化および労働力人口減少という構造的な問題や経営環境の変化により、即戦力人材の獲得競争は激化し、「ダイレクト・リクルーティング」が普及してきています(ダイレクト・リクルーティングは、企業が欲しい人材を獲得するために、企業自身が採れる手段を主体的に考え、能動的に実行する採用活動のこと)。

ダイレクト・リクルーティングを推進することによって、戦略的に採用活動を行うことが求められるなか、人事担当者の活動領域や必要となる能力はより広範囲に、より高度になってきており、人材獲得競争に勝ち抜くための採用プロフェッショナル「プロ・リクルーター」の存在が注目されています。アメリカをはじめとした海外では、経営戦略、事業戦略を基に採用戦略を計画し、ヘッドハンターのように自社で採用したい人材を企業が自ら探し出して声がけし、能動的に採用活動を行っています。人材確保の難度が年々高まる日本でもこの動きは加速しており、プロ・リクルーターが増えつつあります。

そこで、プロ・リクルーターについて紹介します。

1章 プロ・リクルーターとは?

プロ・リクルーターは、主体的な採用活動を推進する採用のプロフェッショナルです。事業戦略を理解した上で採用ニーズを先読みし、常に採用マーケットの情報を分析しながら、採用目標を達成する人で、採用プロセス全体または特定の専門領域を担います。なお、新卒採用・中途採用を問いません。

具体的には、事業戦略に基づいた採用計画の立案、求人の要件定義、求職者ごとの採用シナリオづくりや選考フローの決定、さまざまな社内外リソースの活用や母集団形成チャネルの活用、面談・面接などの活動を行い、PDCAサイクルによる改善活動を通じて、採用目標を達成することが求められます。

※なお、「プロ・リクルーター」は、日本の新卒採用活動において学生の先輩役として配置される「リクルーター」とは区別します。

海外では当たり前のプロ・リクルーターが日本にも

海外ではダイレクト・リクルーティングが普及しており、各企業にプロ・リクルーターが在籍し、ダイレクト・リクルーティングを推進するのが当たり前になっています。それを表すように、LinkedInの『Global Recruiting Trends 2017』では、「人材採用チームが新たに雇用したい職種」として「Recruiter」が最も多く、全体の33%にも上っています。

また、米国の情報提供メディア『ERE』が、Recruiterを対象としたカンファレンス『ERE Recruiting Conference』を毎年開催し、リクルーティングノウハウや事例の共有を大規模に行うといったことなどからも、海外ではプロ・リクルーターが重要であるという認識が高まっていることがうかがえます。

この動向は、外資系企業の日本支社にも浸透しており、外資系企業では数人から数十人のプロ・リクルーターが在籍する中途採用専任チームが結成されていることが多く、熾烈な人材獲得競争を繰り広げています。彼らは、元ヘッドハンターや人事経験が長い人であることが多く、まさに採用のプロフェッショナルです。

また、外資系企業だけでなく、採用を強化する急成長中のベンチャー企業などでもプロ・リクルーターが採用を牽引するケースが増えてきています。さらに最近では、日系の大手企業も経営戦略の急変により即戦力人材が必要となっていることを受け、外資系出身のプロ・リクルーターが日系の大手企業に移籍するケースも出てきており、プロ・リクルーターが今後日本でさらに増えていくと予想されます。

プロ・リクルーターは新卒採用・中途採用問わずに採用のプロフェッショナルと定義していますが、経営環境の変化があり即戦力人材が急速に必要になったことから、特に、中途採用領域のプロ・リクルーターに関心が集まっています。

2章 いまプロ・リクルーターが注目されている理由

プロ・リクルーターの存在や、その重要性を1章では述べてきました。では、なぜ、プロ・リクルーターが注目されているのでしょうか。

1)経営戦略の急変が求められ、即戦力人材が必要

経済のグローバル化、IoT、AIなど技術革新の急速な進展、労働力人口の減少、イノベーション型(知識集約型)社会への転換など、さまざまな環境変化があるなか、企業は経営戦略の急変が求められています。このようななか、グローバル対応人材、新規事業を担う人材、イノベーションを起こすクリエーターなど即戦力人材が必要とされています。

これまで日本企業では、新卒採用文化が中心で中途採用は欠員補充のために行うという企業が多かったのですが、これからの中途採用は下記のように変化していきます。

2)優秀人材は転職市場に顕在化していない

一方、企業が採用したいと思う即戦力人材は現職に満足していて転職を考えていないケースが多く、企業が求める優秀人材は転職市場に顕在化していません。そのため、人材を発掘し、企業への興味を喚起する必要があります。さらに、このような即戦力人材は転職するまでには時間がかかることも多く、意思決定までのプロセスにおいてフォローも必要なことから、採用難度が非常に高いといえます。

そのことを表すデータとして、横浜国立大学服部泰宏准教授をリーダーとした「採用学プロジェクト」とビズリーチHR研究所が行った優秀層の転職意向に関する共同調査では、優秀層は一般層と比較して、転職に関する心理的障壁は低いという一方で「仕事に対する満足度」が高いため、勤務継続意向も高く、転職しづらいという結果が明らかになっています。

【出典】ビズリーチHR 研究所「採用学II 人材の流動化の可能性」
調査対象:優秀層67人(依頼した企業15社において優秀であると評価されている人材。各社最大5人抽出)、一般層309人(22~59歳の会社員。株式会社マクロミル調査)

下記のように、候補者がある企業を認知し、入社するまでのプロセスはいくつもあります。この「認知」の状態から「入社」にまで導くのがプロ・リクルーターです。待っているだけでは潜在層にアプローチすることはできないため、プロ・リクルーターが攻めの採用を行うことが求められているのです。

3)ダイレクト・リクルーティングツールの台頭

そして、IT/Webサービスが普及し、さらに技術が進化するなか、SNSや外部人材データベースなどダイレクト・リクルーティングをサポートするツールが急増し、プロ・リクルーターは直接個人に声がけしやすくなりました。

4)コスト削減

経営戦略の変化により即戦力人材を多く採用する必要が生まれてきたなか、全ての採用を外注してしまうと膨大なコストになってしまいます。そのため、どのように採用コストを最適化していくのかが重要になってきます。そこで、社内外のリソースや母集団形成チャネルの活用を最適化し、コストを削減していくのが、プロ・リクルーターの役割となります。

3章 プロ・リクルーターの役割とプロセス

プロ・リクルーターの役割は多岐にわたります。本章では実際にプロ・リクルーターがどのような役割を持ち、どのようなプロセスで採用を行っていけばよいのかについて順を追って解説します。

プロ・リクルーターの役割・業務をまとめてみました(企業規模や採用人数などにより、組織によってはいくつかの役割・業務を兼任することもあります)。

人事業界では、役割ごとに「採用責任者」「HRBP(HRビジネスパートナー)」「HRアナリスト」「ソーサー」「リクルーター」などと呼ばれることがあります。これらの職能を総称して「プロ・リクルーター」と呼んでいます。

【出典】ビズリーチHR 研究所『採用学 Ⅳ』

マネジメント(職務名:採用責任者)

採用戦略決定:

経営戦略・事業戦略に基づいた採用戦略を決定します。そのためには、まずは徹底的に経営戦略・事業戦略を理解する必要があります。その上で、事業成長に寄与するのはどんな人物か、新規事業であればどのような人材が鍵となるか、そして、そうした人材を獲得するにはどのような戦略を採るかを考慮する必要があります。

また、要員計画から一歩踏み込み、人材に関する予算策定、管理に関わることもあります。これらを行うことで、経営から採用まで一貫性を持った戦略が構築されます。さらに、自社に関係する周辺環境を理解し、自社のポジショニング、競合の取り組み、新興企業はどのように割り込んでくるのかなどをふまえ、勝ち抜くために何をすべきかを考える必要があります。

採用組織のマネジメント:

採用組織内のマネジメントを行います。

関係部署調整:

人事・採用の組織内で取り組むべきことは何か、社内の関係者や社外パートナーは必要か、また誰がどこまで取り組むのかなどを定め、関係部署と調整を図ります。

人材定義・配置(職務名:HRBP、スタッフィング担当)

配置・人材定義:

HRBP(HRビジネスパートナー)とは、ビジネス上のパートナーとして、特に人の配置と組織の構築の面からサポートし、事業成長を実現させるプロフェッショナルのことを指します。人事の目標が会社の目標とマッチするよう、経営幹部と共に戦略的に働く人事の専門職です。戦略人事を実現する上での重要なポジションとされ、近年日本でも注目が高まっています。

HRBPは、経営戦略・事業戦略の下、決定した採用計画を実行できるよう、事業部長などの経営幹部や現場リーダーなどにヒアリングし、綿密なすり合わせをした上で、どの部署にどのような人材を何人配置するのかを決め、同時に、人材要件を定義します。そして、そのオーダーの内容をソーサーやリクルーターに伝えます。

従来の採用では、要員計画や採用予算を基に人数をどれだけ集めればいいか、空いたポジションの人材をどのように集めるかを考えていましたが、プロ・リクルーターには、次の2点も必要とされます。

  • 組織図を理解し、人事戦略上どのような組織デザインが必要かを見据える
  • 経営幹部や現場リーダーと人材の要件を綿密にすり合わせする

過去どのような意図をもって組織を構築し、今後はどのように構築していくのか、人員を配置するのかを組織図で理解します。さらにどのような人材が必要かを把握した上で提案を行います。その際に重要なのは、経営戦略・事業戦略の視点から、どのような組織デザインが最適か、誰を配置するべきかのイメージを持つことです。

また、現場の事業リーダーなどは人材領域のプロフェッショナルではないことから、採用したい人材のスペックが高くなりすぎて、市場で獲得できなかったり、給与が高すぎたりということが発生しかねません。そのため、要件定義を行う上でも、業務の深い知識だけでなく、周辺領域や労働市場の理解も必要になります。

データ分析(職務名:HRアナリスト)

採用に関わる人材分析:

候補者の選考結果を可視化し、選考における効果測定を行い、さまざまな観点で分析を行います。その分析結果を基に、どのような人材が合格であり、不合格であるのかを明確化することで、採用活動をより効果的なものに改善します。確実に採用目標を達成するためには、このPDCAによる改善が重要です。

テクノロジーが進化するなか、さまざまなATS(採用管理システム)が登場し、これらを活用することで、候補者の結果をデータ化し、データを見て意思決定の材料とする企業も増えています。これにより、これまでの人事でありがちだった属人性に依存した判断をするのではなく、データによって誰もが正しい意思決定を行うことができます。

また、人材分析だけでなく、選考プロセスのデータも分析し、選考のフローも改善していきます。たとえば、『ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える』によると、Googleでは、過去の面接実績からデータ分析した結果、4回の面接によって86%の信頼性でその人を採用すべきかどうかを予測できることがわかりました。また、5回以上面接しても4回の面接と比べて1%しか予測精度は向上しなかったこともわかりました。その結果、面接は4回のみに変更し、採用に費やす平均時間は、従来の90~180日から47日に減り、社員の労働時間は数十万時間も短縮しました。加えて、長い時間をかけていた採用により、他社に奪われてしまった人材を採用できるようになりました。

【参考】ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える/ラズロ・ボック (著)

採用マーケティング(職務名:リクルートメント・マーケティング担当)

「採用マーケティング」は、採用ターゲットを消費者と同様に考え、認知から入社のまでの「体験」を提供していく手法です。消費者マーケティングを採用に置き換えると下図のようなファネルで表現することができます。

転職サイト「careertrek(キャリアトレック)」が会員を対象に実施したアンケートでは企業選びの情報収集の際に、7割が企業の口コミサイトを閲覧すると回答しており、また、面接などで従業員に会うことによって企業のイメージが変化したとの回答も7割を超えてありました。したがって、採用活動も、オンラインや選考プロセスなどを通じた潜在層や顕在層への十分で適切な情報提供が、意思決定に大きな影響を与えているのです。

優秀な人材を採用するには、潜在層へのアプローチや選考プロセスの最適化、さらには従業員満足度の向上など、戦略的なコミュニケーション設計と関係構築に取り組む必要があります。

外部プロモーション:

広報と連携して、メディア掲載を通じて従業員や働く場所の魅力について紹介し、採用広報を実施していくなどはもちろんですが、SNSの活用や企業評価サイト対策、SEO対策など、Webマーケティングと同じようにプロモーションし、採用ブランドを構築する必要があります。

その他にも、潜在層との接点をつくるために、従業員と交流できるイベントや従業員が主催する勉強会(エンジニア勉強会など)を定期的に開催するなど、潜在層にその企業で働く魅力を感じてもらえる機会づくりをしていく必要があります。また、候補者と一度接点を持ったら終わりではなく、どのようにナーチャリングしていくかも採用マーケティングの重要な考え方の一つです。

外部労働市場理解:

採用マーケティングを行うためには、自社のポジショニング、競合の取り組み、採用したいポジションの潜在層が在籍する企業や職種の採用相場、新興企業の動向などを理解し、その上で勝ち抜くために何をすべきかを考える必要があります。並行して、採用マーケティングの最新の手法についても常に情報収集し、自社に合った方法を取り入れていくことも重要です。

社員満足度向上:

企業の従業員が投稿する口コミサイトが登場したことや、リファーラル採用を強化するためにも、従業員満足度を上げ、退社の際も満足して退社できるような内的マーケティングも重要です。

最近では、企業の従業員が投稿する口コミサイトの影響力が大きくなってきており、働く上での企業の評価が在籍者・退職者から投稿されており、企業はその評価の良しあしに大きな影響を受けるようになってきています。

リクルーティング

スカウト、タレントプール構築(職務名:ソーサー) :

従来は求人票を求人サイトに掲載し、広く母集団を形成するといったことを行ってきましたが、現在では人材を獲得する場合、自ら候補者を探し、アプローチするといったプッシュ型の母集団形成が必要となってきます。そのなかで、ソーサーの役割は候補者を探し出すことです。必要な人材の要件を定義した後は、その母集団をどのように形成すればいいかを決めます。

採用したい人材にアプローチするには、採用媒体や人材データベース、リファーラル採用など、どのようなツール、社内外のパートナーを活用すればいいか、どこに対象となる人が多そうかなどを検討し、方法を決めます。その上で、候補者を探しスカウトします。

同時に、 タレントプールを構築していきます。タレントとは「才能」、プールとは「蓄える」ことを意味しており、タレントプールとは、自社の採用候補となりうる優秀な人材を蓄えるためのデータベースのことです。

採用する際、求人を出している企業側と仕事を探している応募者側の要望や条件を確認してマッチングさせることで成立します。しかし採用が行われていくなかで、内定の辞退、空きポジションがない、提示したポジションでは必要な経験が足りないなどの理由で、優秀な人材であっても入社してもらえない場合があります。また、スカウトしてみたものの、今すぐには転職意向がないという候補者もいます。

そのような候補者に対して、今は無理でもいつか巡ってくるタイミングを逃すことがないよう、その時には改めて求人への応募を促すことができるように、候補者と継続的にコンタクトを取っていくことは非常に重要です。継続的に情報提供を行い、自社について興味を持ってもらい、同時に、候補者の近況についても聞くことで、候補者の転職のタイミングを伺います。(なお、一度面談をした場合は、この業務はリクルーターが行う場合もあります)

エージェント選定・対応(職務名:リクルーター、エグゼクティブリクルーター、キャンパスリクルーター):

どのエージェントを外部パートナーとするか選定を行い、エージェント対応を行います。エージェントも単に依頼するだけでは有能な候補者を紹介するとは限りません。エージェントと関係を構築し、採用活動の改善をともに行っていくことが重要となってきます。

外部イベント対応(職務名:リクルーター、エグゼクティブリクルーター、キャンパスリクルーター):

転職イベントをはじめ、候補者と接点となるイベントの対応を行います。

動機づけ・入社促進(職務名:リクルーター、エグゼクティブリクルーター、キャンパスリクルーター):

候補者に動機づけを行い、入社を促進させます。その際に、候補者が入社を判断するにあたって重視するポイントや懸念を抱いた点などを的確に理解し、目的に合った従業員や経営幹部に会わせるなどして、入社まで導きます。そのためには、候補者が信頼して話をしてくれるよう、関係を構築することが必要です。

また、辞退されたがやはり入社してほしいという候補者や、現状ではハイスペックすぎるがいつかは入社してほしいという候補者と良好な関係を継続することで、タレントプールも構築できます。この他、動機づけと同時に、面接官とともに、見極めも行います。並行して、面接官の採用スキルも向上させます。

オペレーション実施と効率化(職務名:リクルーティング・コーディネーター)

リクルーティング・コーディネーターは、候補者との面談・面接の設定やスケジュール調整をはじめとしたオペレーションの実施を担当します。テクノロジーの進化によって、近年ではさまざまな採用管理ツールが登場しています。これらを活用することで、煩雑な業務をシンプルにし、リクルーティング・コーディネーターの工数をできるだけ下げ、効率化していきます。また、データを可視化することで、ビッグデータとして蓄積・分析・活用することで、生産性を向上する動きも生まれています。

なお、プロ・リクルーターは、この全ての役割・業務を理解した上で、いずれかの業務の一つ以上で強みを持ち、専門性を発揮する採用のプロフェッショナルです。採用規模によっては、一人のプロ・リクルーターがいくつかの役割を担うこともあれば、各業務を異なるプロ・リクルーターが担うこともあります。

4章 プロ・リクルーターがいる企業のメリットと注意点

ここまでプロ・リクルーターの役割について述べてきましたが、本章ではプロ・リクルーターがいる企業のメリットと注意点についてご説明します。

メリット

1)採用力を高められる

経営戦略、事業戦略に基づいて採用戦略を立て、主体的・能動的に採用活動を行い、各プロセスでPDCAを回すことでプロ・リクルーター本人だけでなく、採用にかかわる面接官など組織全体の採用力を高めることができます。

2)転職潜在層にアプローチできる

現状では転職は考えていない潜在層にも積極的に声がけしていくため、転職市場には出てこない採用したい層にアプローチすることができます。

3)採用コストを下げることができる

どのチャネル(人材データベース、求人広告、人材紹介会社など)でどのような効果があるかを検証し、効果があるものだけに投資し、PDCAを回すことでさらに効果を高めていくため、結果的に採用コストを下げることができます。また、これまで外部パートナーに依頼していた業務の一部を自社で実施をすることで、その分のコストは削減できます。

注意点

外部パートナーに依頼していた業務を自社のプロ・リクルーターが担当することもあるため、従来の採用に比べて、人的工数を必要とします。また、プロ・リクルーターだけが力を発揮すれば採用できるということはなく、経営層、事業部、それ以外の社員全員の協力を得なければ、優秀な人材を獲得し、採用目標を達成することはできません。

・経営層によるコミット

経営戦略、事業戦略に基づく採用計画の策定に向け、経営層がプロ・リクルーターと連携するのはもちろんです。しかし、それだけでなく、事業成長をドライブするには採用が最重要であり、全社の協力が必要であることを経営層から全従業員に発信する必要があります。また、経営において最重要事項である採用目標を達成するために、経営層が面接や面談に積極的に協力し、特にエグゼクティブ層の採用に関しては経営層自らが声がけする必要があります。

・事業部との連携

事業戦略に基づく採用計画を策定するのはもちろんのこと、目標達成のためにはプロ・リクルーターとともに採用活動を行う必要があります。たとえば、プロ・リクルーターが何人も在籍する外資企業では、毎週担当する事業部長とのミーティングがあり、進捗共有、目標修正の有無の確認、目標達成のための施策の出し合い、課題の洗い出しと対策の提案などを行っています。

この他、事業部の要職や現場スタッフによる面接や面談への同席も必須です。特に、エンジニアなど専門知識を必要とするポジションや事業部長クラスなどの候補者には、プロ・リクルーターだけでは候補者へ魅力を語るのは難しいこともあるため、さらなる事業部の協力が不可欠です。

・社員による協力

潜在層を顕在層に変えるまでには、面接の前に面談が必要になるケースが多くなります。そのため、候補者となりうる人材が興味を持つ社員と面談をする際は、社員の協力が必要です。

また、ダイレクト・リクルーティングを推進するために社員紹介を強化する企業が多くあります。社員紹介は非常に優秀な潜在層にアプローチできるメリットはありますが、プロ・リクルーターだけが動いても結果は出ません。社員紹介は一朝一夕ではなく、社員紹介がしやすくなる仕組みづくりと運用、表彰制度やインセンティブなど従業員のモチベーションを保つ施策を実施するなど、常にPDCAを回し、改善していく必要があります。

この他、潜在層に出会うために採用マーケティングを実施する必要があるため、社員による講演への登壇、採用したいポジションに関連するテーマでのイベント実施、コーポレートサイトの採用ページでの従業員インタビュー、社員ブログでの発信、社員によるメディア取材協力など、多くの社員に協力を得る必要があります。

このように、全社員を巻き込まなければなりませんが、社員の協力の分だけ、優秀な人材の採用という結果にも表れるのです。

5章 PDCAサイクルで改善する

プロ・リクルーターは、PDCAサイクルによる改善活動を通じて、採用目標の達成にコミットすることが求められており、それぞれのプロセスにおいて、KPI管理し、目標達成の分析をし、改善することが重要です。新卒採用とは異なり、中途採用の場合は、就職活動開始の時期といった区切りがないため、なおざりになりがちです。

これまでもPDCAを回してきた人事担当者は多くいますが、プロ・リクルーターの特徴としては、採用戦略・戦術の立案から入社まで、採用活動の各プロセスにおいて根拠となるデータを収集・可視化し、分析、改善して、採用の勝ちパターンを探っていきます。このようにデータの活用が進んでいるのは、テクノロジーの進化によって、さまざまなATS(採用管理システム)が登場し、PDCAを回しやすくなったという背景があります。

例えば面接の通過率があまりにも低い場合は、面接官の質に問題があったか、前のプロセスでの合格率が高すぎたか、もしくは適切な流入経路に注力ができていたかなど、採用の過程においてさまざまな要因が考えられます。最終的な目標は人材の獲得数ですが、そこにたどり着くために、プロセスの状況を確認する指標を作成し、常に確認する必要があります。

6章 プロ・リクルーターに求められるスキル

プロ・リクルーターの役割は多岐にわたり、非常に専門性も高い仕事であることがわかりました。人材獲得競争が激化するなか、今後ますますプロ・リクルーターは必要とされていくと予想されます。そこで、プロ・リクルーターにはどんなスキルが求められているかについて考えてみたいと思います。

プロ・リクルーターの先進国であるアメリカの人事専門媒体である『ERE』では、『8 Skills Recruiters Should Have』として、プロ・リクルーターが持つべき能力を8つにまとめています。

  1. 高い営業スキル
  2. 関係構築スキル
  3. 獲得意識
  4. 高い視座
  5. サポート姿勢
  6. 傾聴
  7. (求職者に対する)問題解決
  8. 親しみやすさ

【参考】8 Skills Recruiters Should Have / ERE

プロ・リクルーターには基本的なコンピテンシー能力として、営業のスキル、対人構築のスキルが必要なことがわかります。

採用のどのプロセスで強みを発揮していくかによっては、これらの能力に加えて、組織戦略的な思考も必要となりますし、HRテクノロジーが進化するなか、データの分析能力や、さまざまなテクノロジーを活用する能力も重要になってきます。

【出典】ビズリーチHR 研究所『採用学 Ⅳ』

組織の戦略を踏まえながら大きな「絵」を描いたかと思えば、求職者個人の視点に寄り添いキャリア課題の解消を試みたり、SNSやシステムを通して市場データを客観的に分析したりする。そんな縦横無尽に領域を駆け巡るプロ・リクルーターは、非常に高いスキルが必要とされる採用のプロフェッショナルなのです。

7章 プロ・リクルーターの今後のキャリア

これまでお伝えしてきたとおり、プロ・リクルーターは高度な専門性を有しています。しかし、考慮しなくてはならないのはプロ・リクルーターの今後のキャリアです。

「採用学アンケート」(横浜国立大学服部泰宏准教授調べ)の結果によると、日本企業の採用担当者の在任期間は、日本企業の全体平均で5.86年、ただし大企業(1000名規模以上)になると4年となっています。

これまで、日本では、新卒採用中心の文化があり、採用に関しては、人事業務の登竜門として位置づけられることが多く、採用のプロフェッショナルであるプロ・リクルーターがほとんど存在していませんでした。しかし、経営のスピードがより速くなるなか、人的資源の活用が事業の成否を握る重要な要素となり、素早く成果に結びつける採用は事業を組み立て推進していく上で最も重要になってきており、経営に直結する仕事として、プロ・リクルーターは非常に高度なスキルを必要とされています。

今後日本でプロ・リクルーターが増え、活躍できる市場を作っていくためには、プロ・リクルーターになっていくであろう人たちに、その先に新たなキャリアの道が開けていくということを知ってもらうことも必要です。たとえば、下記の2つのようなキャリアパスです。

一つは、採用の専門家として事業レベルをより上げながら最終的にエグゼクティブレベルの採用を担うまで上り詰め、プロ・リクルーターをまとめる組織を構築するキャリアです。実際アメリカにおいては、そのようなキャリアが存在します。世界最大の給与データベースを提供する「PayScale」によれば、Senior Talent Acquisition Manager(シニア・プロ・リクルーターのマネージャー職)の平均年収は約100,000ドル(2017年3月時点)と、人事部長と比べても見劣りしません。

もう一つは、事業のリーダー、経営に携わるキャリアです。社内外の人材を調達し、その後の活躍を支援することは、事業側の立場に変わったとしても非常に大切な仕事です。そのため、経営資源として重要な、人材の獲得・定着・活躍に関わったプロ・リクルーターとして、経営に近い立場になることも考えられます。

終わりに

現在の日本では、プロ・リクルーターはまだまだ希少ではありますが、人材獲得競争がより激化するなか、プロ・リクルーターの重要性はますます増し、その存在の有無が経営の成功の鍵を握りうる、非常に有望な職種となると予想されます。そして、グローバルレベルでの優秀な人材の争奪戦の激化、採用に関するテクノロジーの急速な発展に対応するなど、さらに高度なスキルが必要となり、プロ・リクルーターは今後さらに進化していくことでしょう。

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