予算管理
予算管理とは、企業の予算と実績のPDCAサイクルを回す管理業務で、企業が目標を達成するために非常に重要です。本記事では、予算管理の概要や重要性を述べた上で、予算管理を実行する上でのポイントを解説します。また、予算管理の課題点と効率化のためのアプローチに言及し、代表的な予算管理ツールも紹介します。
予算管理とは
予算管理とは経営管理のひとつで、企業が策定した予算(目標)と実績(結果)とを比較して、予算が達成できるようにするための管理業務です。
設定した売上や利益の目標値が実際に達成できているかをタイムリーに見つつ、その差異の要因を分析して、改善のアクションにつなげるというPDCAサイクルを回していきます。
「予算」とは
そもそも「予算」とは、個人や団体の収入および支出に関する予定的計算を指しています。
企業にとっての予算は、企業戦略に基づく目標を数値として表現したものです。予算の種類には利益予算・売上予算・原価予算・費用予算などがありますが、社全体だけでなく各事業部門や部課別に予算が設けられるケースも多くあります。
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利益予算:
企業として創出する利益の予算。将来に向けた投資を加速するかどうかによって、利益の目標値が大きく変わる。 -
売上予算:
目標とする利益をベースに設定される売上高の予算。過去の売上をベースに、今後の市場予測や会社としての方向性によって決定される。 -
原価予算:
製造にかかるコストに関する予算。生産の効率化等によって、原価削減の目標値を定めるのが一般的。 -
費用予算:
売上にかかるコストのうち、主に販売費及び一般管理費に関する予算。販促費だけでなく、人件費などの固定費も含まれる。
また、企業は長期・中期・短期それぞれの視点で戦略を立案しますが、そのうち予算は短期(一会計期間)を指しています。上場企業では、期末の決算で予算に対する実績が公開されます。
経営管理との違い
予算管理と似たワードに「経営管理」がありますが、これは予算管理を内包する概念です。
企業は、経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報を最大限活用することで、より発展していくことが求められます。経営管理は、こうした企業の経営全体に関する包括的な管理業務を指しており、予算管理の他にも人事管理や生産管理、財務管理などが含まれます。
【関連】経営管理とは?課題や改善する方法、グローバル経営管理までご紹介 / BizHint
予算管理を行うべき理由
予算管理は経営管理の中でも重要な業務です。企業が予算管理を行うべき理由を3つご紹介します。
具体的な数値目標を共有できる
企業が立案した戦略・目標を数値として予算に落とし込むことで、より具体的な経営目標として社員に共有することができます。
会社として短期的に実現したい姿を共通認識として持つことで、無駄な寄り道をせずに成長できるだけでなく、社員のモチベーションアップにもつながります。
適切な経営資源の配分を検討できる
企業が発展していくためには、将来を見通して適切に経営資源を配分していくことが重要です。経営資源の配分は、予算に基づいて行うことになります。
期末に達成したい売上や利益を元に、どのセグメントにどれだけの資源を集中していくのかを決定していきます。
予算と実績とを比較し、改善につなげられる
予算管理によって予実のPDCAサイクルを回せば、タイムリーに目標達成に向けた課題点の発見や改善に繋げることができます。
また、実績だけでなく見通しの管理も行うことで、より素早いアクションも可能です。
予算管理の進め方
予算管理のプロセスはPDCAサイクルを回すことです。具体的な項目に分けて、それぞれ重要なポイントを解説します。
予算編成
予算管理のスタートは予算編成であり、PDCAのPlanに当たります。通常、管理会計をベースに予算を作成します。
トップダウンとボトムアップ
予算編成のやり方は企業によって様々ですが、大きく分類するとトップダウンとボトムアップの2つがあります。
トップダウン型は、経営者や経営企画室などが予算(あるいは予算編成方針)を策定し、それを現場に共有して実行させる手法です。意思決定のスピード感と強制力を持てるというメリットがある一方、現場感の欠如やノルマによる社員のモチベーション減少につながるおそれがある等のデメリットがあります。
対してボトムアップ型は、現場(営業部門)を重視した予算編成方法です。現場が編成した予算案を元に、管理部門や上層部が全社の予算としてまとめます。より現場に即した目標値を設定できる一方、挑戦的でない控えめな予算になってしまう可能性があります。
実際には、明確にトップダウンとボトムアップの2つに分かれるケースよりも、それぞれの手法が並存した形で予算編成を行なっている企業がほとんどです。
予実分析を想定した予算粒度の設定
予算策定を行う際は、予実の比較・分析を想定した粒度の設定が必要です。例えば、毎月の予実の進捗を追いたいのであれば、予算も月次で設定しておかなければなりません。
年次予算だけでなく、半期・四半期や月次といった策定粒度が細かいほど、よりリアルタイムに予実の比較が可能になります。ただし、粒度の細かい予算を策定する労力とバランスを取る必要があります。
予算のシミュレーション
予算編成では、為替影響などの外部要因による仕入原価の上昇や予見される市場縮小など、様々なケースを想定したシミュレーションが行われます。
最終的に採用される予算は1つですが、予算の段階から将来の機会や脅威を列挙し、問題点を洗い出し見直しを繰り返すことで、より最適な予算を策定できます。
分析・フィードバック
予算は編成して終わりではなく、期首から期末にかけての実績(Do)と比較・分析(Check)してフィードバック・改善(Action)することが非常に重要です。
予実差がプラスであれマイナスであれ、タイムリーな差異要因の把握によって最善の対応を取ることができ、予算達成につなげることができます。分析結果を把握するだけでは不十分で、そこからの改善策の提示・実行のアクションにつなげられるかが大きなポイントです。
予算管理を行う上での課題
予算管理を行なっていく中で発生する課題点としては、予算編成にかかる労力が大きいことやエクセル管理の限界が挙げられます。
予算編成にかかる時間・労力が大きい
予算編成では各部門間の調整や前提となる数値の検証などが行われるため、多くの企業が時間と労力をかけているのが現状です。より大きな企業体で、より精度の高い予算を作成しようとするほど、その傾向が強くなります。
数ヶ月かけて予算編成を行なっている場合、事業環境がスピーディーに変わる現代においては、期初の時点で予算編成時の前提とは異なっているという状況が発生し得ます。精緻な予算の立案(P)よりも、実際に執行して臨機応変に分析・フィードバックを行うこと(DCA)に重きを置くことが求められていると言えるでしょう。
エクセル管理の限界
多くの中小企業では、予算管理をExcelベースで行なっているのが現状です。エクセルによる予算管理では、具体的に次のような課題が挙げられます。
- ファイルの修正を繰り返した結果、最新版ファイルでなく過去のものを使用してしまう。
- ファイルが破損してしまい、データが消えてしまう。
- ファイル作成者しか修正・更新ができず、重要な業務が人に依存してしまう。
- データ入力者が、セルの数式や書式の設定を消去してしまう。
エクセル管理の限界に直面している場合には、予算管理システムの導入を検討する必要があります。予算管理ツールについては、次々項で紹介します。
予算管理を効率化するためのポイント
予算管理には多くの労力が必要になりますが、アプローチ次第で効率化していくことができます。ここでは、予算管理を効率化するためのポイントを2つご紹介します。
ルールと仕組みを徹底する
予算管理におけるルール・仕組みを構築し、それを徹底することで無駄な作業を省くことができます。
予算編成においては、どの時間軸でどの部門がどんなアクションをするのかといった内容を細分化しフローを構築することが重要です。
予実の比較・分析では、分析のタイミングや分析する項目を明確に決めていくべきです。分析は月次なのか四半期ごとに行うのか、分析項目としては売上や利益の他に、どんな軸を対象とするのかといった内容を具体的に詰めていきます。
ルール・仕組みの構築には一定の労力が必要となりますが、一度構築すれば効率化に対する高い効果が見込めます。構築されたルール・仕組みは忍耐強く実行し、全社員に浸透させて徹底させることが大切です。
予算管理システムの導入
特にエクセルで予算管理を行なっている場合には、専用の予算管理システムを導入することで、大きく効率化できる可能性があります。
ただし、システムの導入には大きな費用がかかってくるため、十分な検討が必要です。少なくとも、上記のような予算管理のルール・仕組み化が十分にできてからでないと、システムを導入しても混乱を招くだけでしょう。
予算管理ツールのご紹介
予算管理ツールを導入することで、予算編成時のシミュレーションや予実管理を効率化できるだけでなく、安全なデータ管理が実現できます。ここでは、代表的な予算管理システムを3つご紹介します。
予算管理クラウド Oracle PBCS
全世界10,000社以上/国内1,000社以上の実績を持つ管理会計・予算管理システム「Oracle Hyperion Planning」のクラウド版です。クラウド版なため月額制の低予算での導入ができるだけでなく、短期での試用購入も可能です。
【参考】管理会計・予算管理システム・ソフトなら/クラウドのOracle PBCS
経営管理プラットフォーム「BOARD」
「BOARD」は予算管理だけでなく、経営管理を一元的に行えるのが特徴です。また、予測分析AIにより、計画の妥当性を評価してくれる機能も搭載しています。
【参考】BOARDの特長/BOARD
DivaSystem FBX
連結視点の管理・会計システムに強いのが「Diva」です。Diva System FBXは予算管理や見込み・着地管理だけでなく、経営管理全体に活用できるシステムです。現在使用しているエクセルの予算管理ファイルをそのまま活用することができ、導入の敷居も低いと言えます。
【参考】DivaSystem FBX グループ経営管理のためのデータ収集・Excel集計アプリケーション/DIVA(ディーバ)
まとめ
- 予算管理とは経営管理の一種で、編成された予算と実績とを比較・分析し、差異の要因を把握してフィードバック・改善につなげるPDCAサイクルを指します。
- 企業の「予算」とは、企業の短期(一会計期間)的な目標を数値で表したもので、利益予算や売上予算、経費予算、原価予算などがあります。
- 企業は予算管理を行うことで「具体的な数値目標を共有化できる」「経営資源の適切な配分を検討する際の指針となる」「予算達成のためのタイムリーな軌道修正が可能になる」などのメリットがあります。
- 予算管理には大きな労力が必要で、エクセルによる管理の限界などの課題がありますが、「ルール・仕組みを構築して徹底する」「予算管理システムを導入する」ことによって、効率化を図ることができます。
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