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2019年1月17日(木)更新

コーポレート・ファイナンス

コーポレート・ファイナンスとは、直訳すると企業財務といいますが、読んで字のごとく企業にまつわる財務関係のことをいいます。このコーポレート・ファイナンスについて、その意味、目的やファイナンスについての考え方を解説していきます。

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コーポレート・ファイナンスとは

コーポレート・ファイナンスの意味は、ファイナンスについての視点の違いにより大きく分けて二つの見方があります。

通常ファイナンスは、お金を出す側とお金を受ける側の二つの立場の者がいて行われることとなります。お金を出す側は一般的に金融機関であり、お金を受ける側は企業となります。この二つの立場の違いにより、コーポレート・ファイナンスの意味合いも変わってきます。

企業側の立場に立ったコーポレート・ファイナンスとは、 「①企業活動を行うために必要となる資金を金融市場から調達する活動」と、「②企業価値を最大化するために、調達した資金をどのような投資に利用すれば企業にとって最大の利益が得られるかを分析し、その結果に基づき投資を実行すること」 をいいます。

一方、金融機関側の立場に立ったコーポレート・ファイナンスの意味は、融資先の企業の企業価値を引当てにして(企業の信用に基づいて)、融資を行うことをいいます。

今回は、企業側の立場に立った場合のコーポレート・ファイナンスについて解説していきます。

コーポレート・ファイナンスの目的

コーポレート・ファイナンスの大きな目的は、資金調達はもちろんですが、調達した資金をどのように活用すれば企業にとって最もよい結果となるか、すなわち「 資金利用の効率化による企業価値の最大化 」となります。

この企業価値の考え方は、コーポレート・ファイナンスの場面のみではなく、企業を売却・買収する場合などの場面でも利用される非常に重要な概念であることから、事項で説明していきます。

「企業価値」とは

企業価値とは、企業全体の経済的な価値のことをいいます。

企業価値の算定式

企業価値の算定式は一般的に下記のような算式に基づいて算定されます。

  • 算式①:企業価値=株式価値+負債価値
  • 算式②:企業価値=事業価値+金融資産

また、各々の算式の関係は下図となります。

それぞれの詳細について解説します。

算式①:企業価値=株式価値+負債価値

算式①は企業価値を資金の調達源泉(株主・債権者)別の視点に立って算定する算定式となります。

ここでいう「 株式価値 」とは、企業の価値のうち株主に帰属する価値のことをいいます。株式会社が株主から出資を受けた部分(株式)のことです。株式は証券市場を通じて日々取引されており、株式価値はその取引されている時価に基づき算定され、株式価値は以下の算式により算定されます。

株式価値=企業の発行済株式総数×取引時価

例えば、A社の発行済株式総数が1,000株でその日のA社の株価が200円だった場合、A社の株式価値は200,000円となります。

これに対し、「 負債価値 」とは、企業の価値のうち債権者に帰属する価値のことです。債権者とは一般的に金融機関となり、この場合の負債価値は金融機関から借入れを行った際の借入額をいいます。

算式②:企業価値=事業価値+金融資産

算式②は企業価値を企業の投資内容の視点に立って算定する算定式となります。

事業価値 」は、企業が事業を行う上で将来にわたって生み出すキャッシュ・フローを現在価値に割り引くことによって算出され、この算出方法を「DCF法」と言います。DCF法について簡単に表現すると「企業活動から生み出される儲け額の総和」となりますが、詳しくは後ほど解説します。

これに対し、「 金融資産 」は企業が行う事業とは関係がない非事業に対して行った換金が可能な有価証券などへの投資や、まだ何にも投資されていない現金預金などの資産のことをです。

どちらの算式を使うべきなのか

この2つの算式により企業価値を算定するわけですが、上場企業の場合は、算式①を利用することで、企業価値の算定が比較的容易に行えます。上場企業の場合は、株価をベースに株式価値の算定が可能であり、負債価値についても借入額を利用すればよいからです。

逆に上場していない企業で株価がわからない場合はどうでしょうか。

算式①を利用する場合、負債価値は借入額を利用できますが、株式価値はわからない状態です。算式②を利用する場合、金融資産は現預金の額や有価証券の額を利用できますが、事業価値はわからない状態となってしまいます。

ここからは、上場していない企業における事業価値の算定方法(DCF法)、そして株式価値の算定方法について説明していきます。

事業価値の算定方法(DCF法)

まず、事業価値の算定方法であるDCF法について解説します。

DCF法とは、先ほど「企業が事業を行う上で将来にわたって生み出すキャッシュ・フローを、現在価値に割り引くことによって、企業価値を算出する方法」と説明しました。まず、この考え方で一番大事な「 現在価値に割り引く 」という意味について解説します。

将来価値と現在価値

DCF法を理解するためには、まず「将来価値」と「現在価値」について、しっかりと理解する必要があります。

皆さんは、現在手許にある100円と1年後の100円ではどちらのほうが価値があると思うでしょうか?

どちらも同じ100円なのだから価値も同じと考えられる方もいるかもしれませんが、理論的には現在手元にある100円の方が価値があります。なぜならば、現在手許にある100円を貯金することで利息を得ることができるからです。

現在この金利は限りなくゼロに近いですが、仮に金利が5%だとした場合には、 100円×5%=5円の利息を得ることができ、1年後には105円を手にすることが可能となります。これを100円の「 将来価値 」といいます。

それでは逆に、1年後の105円は現在の価値だといくらになるでしょうか?

上記と同じように金利が5%だとした場合、105円を105%で割り引けばいい(これを「割引率」といいます)ことになり、 105円÷105%=100円となります。これを105円の「 現在価値 」といい、この現在価値を算出することを「 現在価値に割り引く 」といいます。

では、2年後の105円の現在価値はいくらになるでしょうか?

答えは、 105円÷105%÷105%=95.23円 (小数点3位以下切捨て)です。年数が増えた場合は、割り引く年数分を割り引けばいいことになります。

DCF法とは

DCF法は、この「将来価値」と「現在価値」の考え方に基づいた事業価値の算定方法になります。つまり、「 企業が将来にわたって生み出すキャッシュ・フロー(現金流出入額) 」を「 将来価値 」とし、それを割り引くことにより現在の価値を算定する方法です。イメージとしては下図となります。

実務的な部分では、5年後以降のキャッシュ・フローをどう見積るかといったことや、そもそもキャッシュ・フローの算定はどうするのか、さらに、現在価値に割り引くための割引率はどうするのかといった論点が出てきます。しかし、専門的な部分が多いことから、この場では概念的な説明に止めて割愛します。

株式価値の算出方法

続いて株式価値の算出方法ですが、実務上広く利用されている方法の2つを取り挙げます。

実務上はほかにも株式価値の算定方法は存在しますが、一般的には上記の2つの方法のいずれか、若しくは両方の方法で算出した結果を利用する折衷案といった形で利用されることが多いのが実状です。

時価純資産法

1つめが、「 時価純資産法 」といいます。この方法は企業が作成している貸借対照表を現在時点の時価額に置き直して、会社を現時点で売りに出したとした場合に、いくらの価値になるかを算出する方法です。

有価証券などを保有している場合は、算定日時点での時価に評価し直しますし、棚卸資産などの不良在庫がある場合や未収入金で今後回収できないものがあれば減額修正することになります。この結果算出された修正後の貸借対照表の純資産額は「時価純資産」と呼ばれ、この時価純資産額が株式価値として算出されます。

類似会社比準法

2つめが、「 類似会社比準法 」といいます。この方法は上場している同業種の会社の数値を基に株式価値を算出する方法です。上場している会社は株価がわかるため、そのような会社を数社選んで、当該会社の利益額や純資産額に対する株式価値割合を利用します。

例えば3社の類似会社の指標が下記のとおりの場合だったとします。

※括弧書きは当該指標に対する株式価値の倍率

この場合に、自社の当期純利益が50千円、純資産が700千円とします。

同業の株式価値に対する平均倍率を利用することで、自社の株式価値を算定することが可能となります。

資金調達方法について

ここではコーポレート・ファイナンスの1つ目の意味である「 ①企業活動を行うために必要となる資金を金融市場から調達する活動 」について解説します。

企業が行う資金調達の方法には大きく分けて、直接金融と間接金融の2通りの方法があります。

直接金融とは

直接金融とは、企業が資本市場の投資家から直接的に資金を調達することをいいます。1番身近な例が株式です。

株式による資金調達は、株式会社が自社の株式を発行して投資家に買ってもらうことで、直接的に株主から資金を調達することにより行われます。

企業にとって株式による資金調達の最大のメリットは、借入とは違い返済義務が生じないことです。しかし、投資家である株主にとってはリスクが伴うことから、企業は経営について厳しく見られ、企業価値の最大化が要求されます。さらに、リスクに応じたリターンとして相応の配当による利益還元も要求されます。

また、不特定多数の投資家から資金を調達するその性質から、株式による資金調達は株式市場への上場が一般的な条件となります。

この上場のためには、事業の成長性の証明に加え、会社の内部管理体制の強化等の厳しい条件をクリアした上で、証券取引所の承認が必要となります。

間接金融とは

間接金融とは、企業が金融機関から間接的に資金を調達することをいいます。

直接金融が個人の投資家から直接資金を調達するのに対して、間接金融は預金者が預金したお金を、銀行を経由して間接的に調達することから間接金融と呼ばれます。間接金融は、直接金融よりは資金調達が容易ですが、金融機関への事業計画の提出により、会社としての信用があるのか等の金融機関の審査が必要です。

投資評価の方法について

続いて、コーポレート・ファイナンスの2つ目の意味である「 ②企業価値を最大化するために、調達した資金をどのような投資に利用すれば企業にとって最大の利益が得られるかを分析し、その結果に基づき投資を実行する」について、実務上でよく利用される「NPV法(正味現在価値法) 」と「IRR法(内部収益率法)」について解説します。

両者の方法の基本的な考え方は共に、「投資をした結果、本当に儲かるのか?」というものです。

経営者としてある事業に投資したいと考えた場合に、いきなり資金をつぎ込むことにはリスクがあります。通常、本当にその投資は儲かるのか、いつになったら投資金額が回収できるのか等を詳細に検討することが必要です。さらに検討の結果、複数の案が出たりする場合もあります。

このような投資による利益の検討、複数案の比較を可能にするのが、「NPV法(正味現在価値法)」と「IRR法(内部収益率法)」なのです。

NPV法(正味現在価値法)とは

NPV法(正味現在価値法)とは、名前に「現在価値」と入っているとおり、内容は「DCF法とは」の項で説明した内容と類似します。

DCF法は企業が生み出す将来のキャッシュ・フローの総和の現在価値がいくらかを算定する方法に対し、NPV法はある投資案が本当に利益を生み出すのかを「利益額」の面から判断する方法となります。

イメージとして下図のとおりとなります。

上記のとおり、投資案が将来にわたって生み出すキャッシュ・フロー(現金流出入額)を現在価値に割り引くまではDCF法と同じです。

しかし、NPV法はさらにこの算出した現在価値が当該投資案の当初支出額を上回るか否かにより、本当にその投資案が儲かるのかを判断する方法です。

その結果、現在価値が当初の支出額を上回る場合には投資するという判断になりますし、逆に下回れば投資を見送ることとなります。

IRR法(内部収益率法)とは

IRR法(内部収益率法)についても、現在価値の考え方を基本的な概念としています。

IRR法は、ある投資案が本当に利益を生み出すのかを「利益率」の面から判断する方法です。イメージとしては下図のとおりとなります。

上記のとおり、IRR法は「 当該投資案の当初支出額=現在価値 」となる割引率(これを「内部収益率」といいます)はいくらかを算定することにより、当該投資案の利益率を算定する方法となります。

「DCF法とは」の項の105円の現在価値の話を例とすると、

当該投資案の当初支出額(100円)=現在価値(1年後の105円の現在価値が100円) 」の関係性が成り立つ内部収益率(割引率)は5%となります。
105円÷105%=100円 となるため)

また、

当該投資案の当初支出額(100円)=現在価値(1年後の110円の現在価値が100円) 」の関係性が成り立つ内部収益率(割引率)は10%となります。
110円÷110%=100円 となるため)

このように100円が1年後に105円になるか110円になるかで各々の収益率は異なってきます。

IRR法はこの考え方をもとに投資案の内部収益率を算定し、本当にその投資案が儲かるのかを判断する方法です。その結果、資金調達に係る金利よりもこの内部収益率のほうが高い場合には投資するという判断になりますし、逆に下回れば投資を見送ることになります。

実務上は、このNPV法とIRR法は併用して利用されるケースが多く、理由としては、NPV法は「額」に視点を置いており、収益率は無視した投資判断の結果となるためです。

当然、投資額の規模が大きい方が(100万円より1,000万円の投資案の方が)、NPV法による算定結果も大きくなります。しかし、投資案100万円の方が利益率が高い場合もあります。

これを補完する手段として、IRR法を利用し、「収益率」の視点からの投資判断も行って「額」の面と「収益率」の面から投資判断が行われることになります。

まとめ

  • コーポレート・ファイナンスは、ファイナンスについての視点の違い(貸手側と借手側)により大きく分けて二つの見方があります。
  • 借手側(企業側)の視点に立った場合、その目的は「①企業活動を行うために必要となる資金を金融市場から調達する活動、及び②企業価値を最大化するために、①で調達した資金をどのような投資に利用すれば企業にとって最大の利益が得られるかを分析し、その結果に基づき投資を実行すること」となります。
  • コーポレート・ファイナンスの最大の目的は「企業価値の最大化」にあります。
  • 企業価値の算出には、事業価値か株式価値の算出が必要であり、事業価値はDCF法によって株式価値は時価純資産法又は類似会社比準法により算定されます。
  • 資金調達の方法には、「直接金融」と「間接金融」と呼ばれるものがあります。
  • 投資評価は、「NPV法(正味現在価値法)」と「IRR法(内部収益率法)」により行われます。

<執筆者>
宇佐見 剛 公認会計士(合同会社UKトラストグループ

大阪市立大学商学部卒業。建設業系事業会社(経営企画室)で6年、経営コンサルティング会社で2年半の勤務経験を経て、2019年に「合同会社UKトラストグループ」に参加。

IPO全般に関する業務や予算作成、経理体制の構築等の会社の管理体制の建てつけに関する業務を多数経験。


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