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2018年11月27日(火)更新

限界利益

事業の継続・撤退の判断や商品の価格戦略の立案においては、営業利益だけでなく、管理会計上の指標である「限界利益」が重要となってきます。また、限界利益に紐づく「損益分岐点」の把握も同様に肝要です。この記事では限界利益とは何なのか、その計算方法や重要性から、損益分岐点との関係性や実際の活用事例まで、わかりやすく解説します。

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限界利益と限界利益率

企業は自社の営業活動を通して、より大きな利益を創出し続けることが命題です。利益創出のためには、どの事業や商品に力を入れるべきかといった戦略の立案や、取引を継続すべきか撤退すべきかどうかといった判断が必要となります。

そうした戦略検討や継続可否の判断において、重要となるのが「限界利益」や「損益分岐点」といった利益指標です。

まずは、「限界利益」と「限界利益率」の概要とその重要性について解説します。

限界利益とは

売上からコスト全体の中から変動費のみを除いたものが限界利益です。

売上と連動して得られる利益で、企業が商品やサービスを販売することで、直接的に獲得できる利益という点が特徴です。管理会計上の重要な利益指標のひとつとされています。

【限界利益の計算方法】

  • 限界利益=売上高−変動費

ここで言う「変動費」とはどんな費用を指すのか、営業利益と限界利益との違いから見ていくと理解しやすくなります。

営業利益との違い

限界利益と営業利益との違いは、売上から差し引くコストに固定費を含むのかどうかという点です。

営業利益が考慮するコスト

営業利益とは本業である営業活動から獲得した利益で、売上から販売に掛かった全てのコストを差し引くことで求められます。

【営業利益の計算方法】

  • 営業利益=売上高−(売上原価+販管費)

「売上原価」は製造や仕入に掛かる費用で、製造業であれば原材料費や工場で働く人々の労務費、小売業であれば仕入原価などが含まれます。

「販管費」は販売費及び一般管理費の略で、営業活動や管理業務に掛かるコスト、つまり売上原価に含まれない費用を指します。これには営業員や経理の人件費、地代家賃、広告費などが含まれます。

限界利益が考慮するコスト

一方、限界利益は全てのコストではなく、変動費のみを差し引いて算出されます。

変動費とは販売量や生産量に応じて変動するコストのことです。「売上原価」では原材料費や仕入原価、「販管費」では販売手数料などが該当します。

変動費と対になるのが固定費で、売上量に関係なく固定的に掛かるコストを指します。「売上原価」では労務費、「販管費」では人件費、地代家賃などが該当します。

営業利益は固定費も含んだ総費用を引く一方、限界利益は固定費を含まない変動費のみを差し引いた利益という違いがあります。

固定費と変動費の違い

限界利益は本業に掛かる費用を変動費と固定費に分類(固変分解)することで、初めて求めることができます。改めてそれぞれの違いと具体例を示すと、次の通りになります。

分類 内容 具体的な費用の例
変動費 売上の増減に連動して変動する費用 原料費、材料費、仕入原価、外注費、販売手数料など
固定費 売上の増減に関わらず、一定して発生する固定的な費用。企業維持に必要な費用 労務費、人件費、地代家賃、水道光熱費、減価償却費など

変動費に該当する原材料費や仕入原価などは、販売量が増えることで大きくなり、逆に販売量が減れば当然小さくなります。一方、固定費である人件費や地代家賃は、売上がたとえゼロであっても、固定的に掛かってきます。

このように、変動費と固定費との違いは、売上の増減に連動してコストが変化するかがポイントです。

管理会計と財務会計

ただし、変動費と固定費の厳密な分け方は、企業によって異なる点ため留意しましょう。これは、限界利益や変動費・固定費の会計体系が管理会計の範疇であるためです。

企業の会計体系は財務会計と管理会計の2つに分かれます。各国の法律で会計基準が定められた外部報告用の財務会計と異なり、管理会計は内部利用を目的に、企業独自の基準で作られます。

  • 財務会計:外部(株主、金融機関、税務署等)への報告のために行う会計。法律で定められた会計基準
  • 管理会計:企業の経営管理や経営者の意思決定に役立てるための会計。企業独自の会計基準

限界利益率とは

限界利益と同様に重要な指標に、限界利益率があります。限界利益は売上から変動費を引いた利益金額ですが、限界利益率は売上に占める限界利益の割合(売上高比率)を示しています。

【限界利益率の計算方法】

  • 限界利益率=売上÷限界利益

限界利益・限界利益率からわかること

限界利益と限界利益率を把握することで、企業維持に必要な固定費の回収や利益の創出に対して、どの事業や商品がより貢献しているのかがわかります。また、育成・撤退の判断材料にもなります。

下記表は、固定費は同じ(共通)で限界利益・限界利益率の異なる、ある企業の3つの事業A・B・Cの利益構造を表しています(「事業」を「商品」と捉えていただいても構いません)。

限界利益・限界利益率が共に最も高いのは事業Aで、営業利益も黒字です。企業全体の営業利益の改善には、事業Aを成長させることが最も貢献度が高いです。

事業Bは限界利益は黒字ですが、営業利益は-10と赤字なので撤退した方が良いように見えます。しかし、たとえ営業赤字であっても、限界利益が黒字であれば育成を検討する価値があります。販売量を増やせるならば、固定費分をまかなって営業利益を黒字化することができるからです。

一方、事業Cは限界利益の時点で-5と赤字になっており、販売量を増やしても赤字が大きくなるだけです。限界利益の時点で赤字であれば、その商品や事業の継続は難しく、撤退を検討する必要があると判断できます。継続したい場合、変動費の削減により限界利益の改善を図る必要があります。

損益分岐点との関係性

限界利益と関係が深く重要な経営指標に、「損益分岐点」があります。

損益分岐点とは

損益分岐点とはその名の通り、損失となるか利益となるかの分かれ目(=損益がゼロ)となる地点です。限界利益と固定費が等しくなる地点とも表現できます。

損益分岐点(損益分岐点売上高)は限界利益と同様に管理会計上の指標で、算出のためには費用を変動費・固定費に分けることが必要になります。

【損益分岐点の計算方法】

  • 損益分岐点=固定費÷(1-変動費÷売上高)
  • 損益分岐点=固定費÷限界利益率

損益分岐点の関係性をグラフで表すと、下記の図のようになります。

売上高線と総費用線が交わる点が損益分岐点です。損益分岐点から左側は損失が発生している状態、右側が利益を創出できている状態を示しています。当然、限界利益率を大きくするほど、損益分岐点を下げ収益性を改善することができます。

損益分岐点分析を行うことで、「どれだけの販売量を売り上げれば利益を生み出せるのか」を認識することができるため、企業経営においてとても肝要な指標となります。

限界利益の活用事例

実際の企業運営において、限界利益をどのように活用するのでしょうか。ここでは活用例を4つ紹介します。

取引の継続・撤退の判断材料

先述の通り、限界利益や限界利益率を見ることで、事業や取引の継続・撤退の判断材料とすることができます。

限界利益が出せていない場合には、変動費の改善が優先事項となります。今後の改善が期待できない場合は、利益を創出することができないため、撤退を検討すべきでしょう。

逆に、限界利益が黒字であれば、変動費・固定費の改善はもちろんですが、販売量を増加させることが利益創出に貢献します。営業利益が赤字の場合には、販売量を大きくすることが可能かどうかが継続・撤退の決め手となるでしょう。

精度の高い予算作成

企業にとって必要なコストを変動費・固定費に分けて限界利益を把握することで、精度の高い予算、意思のある予算の作成が可能になります。

会社が利益の予算を編成する際、どれだけの売上を獲得し、それに対してどのくらいの費用が掛かるのかを把握しなければなりません。売上規模に対する費用感は、固定的にかかるコストはもちろん、販売量・生産量と連動して変化する変動費を認識することで掴むことができます。

また、最終的な企業利益の改善には、限界利益の改善が不可欠です。どの事業や商品の限界利益の改善を優先するのか、どのように(どの部分の)費用を削減していくのかといった目標を、経営計画として数値に落とし込むことで、意思のある予算編成になります。

有効な価格戦略の策定

限界利益の把握は、商品やサービスの価格戦略を策定する上でも有用です。

販売価格は製品化や仕入にかかる原価、販売促進に掛かるコストを元に、どれだけの利益を乗せるかによって決められます。競合企業との価格競争や自社の販売力を考慮しつつ、戦略的な価格設定を行わなければなりません。

限界利益や損益分岐点を活用すれば、ある価格に設定した場合に、どのくらいの規模の販売量を達成すれば利益を出せるのかをシミュレーションすることができます。

また、原価計算もより精密に行うことができます。目標価格を満たすために原価の削減が必要な場合に、最適な生産ロットの検討やより競争力のある外注先の選定などによる、変動費への影響額の試算が可能になります。

PB商品・NB商品の適正比率の把握

限界利益を比較することで、小売業におけるプライベートブランド商品(以下、PB商品)とナショナルブランド商品(以下、NB商品)の適正比率の検討に役立ちます。

PB商品とNB商品との違いは、次の通りです。

  • PB商品:メーカーが企画・製造し、商品として卸・小売に販売している自社商品。(例)花王のメリット
  • NB商品:小売が企画・開発から参画し、メーカーと協働して製造して、直接的に販売している他社商品。(例)サラダチキン(セブンプレミアム)

PB商品は広告宣伝費や流通コストが抑えられることから、通常、同カテゴリーのNB商品と比較して価格競争力があります。そのため、限界利益率がNB商品より優れているのが強みです。

当然、小売企業にとってはPB商品の販売量を伸ばす方が、利益の伸び率は高くなります。ただし、商品の責任はすべて小売業者にかかるため、在庫リスクやクレーム対応などのアフターサービスといったコストもあります。

PB商品とNB商品との間で限界利益を比較し、その他のリスクやコストを考慮した上で、最適な比率を採用する必要があります。

まとめ

  • 「限界利益」とは管理会計上の利益指標で、売上と連動して獲得できる利益を指し、売上から変動費を差し引くことで求められます。
  • 限界利益の算出には、費用を変動費と固定費に分類(固変分解)する必要があります。変動費は売上の増減に連動して変動するコストを指す一方、固定費は売上の増減に関わらず一定で掛かるコストを指します。
  • 限界利益から算出できる「損益分岐点」は損益と利益の分岐(損益ゼロ)となる地点で、固定費と限界利益が一致します。損益分岐点分析を行うことで、利益の創出に必要な売上高を把握することができます。
  • 限界利益を把握すれば、事業・取引の継続可否の判断や精度の高い・意思のある予算策定、商品の価格戦略の策定などに活かすことができます。

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