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2019年3月1日(金)更新

経営分析

事業を行っていると売上高や利益、資産や負債といった様々な数値情報をもって会社の業績を判断するために経営分析を行うことが多くあります。今回はこのような数値情報を利用し経営状況を分析する方法を紹介していきます。

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経営分析とは

経営分析とは、損益計算書貸借対照表などの決算書に記載されている数値情報を利用して、会社の置かれている状況を「収益性」、「安全性」、「生産性」そして「成長性」の面から判断することをいいます。

経営分析が重要である理由

経営分析で用いられる指標は、企業の状況を数値で表してくれるため、経営成績や財政状態を把握するのに非常に役立ちます。

加えて、定期的に数値の推移を観察することで、会社の業績が改善しているのか、又は悪化しているのかを判断できるため、悪化している場合は早期に対応策を講じることができます。

この意味で、経営分析はいわば会社の健康状態をチェックするための「健康診断ツール」として重要視されています。

経営分析の方法と見るべき指標

【図表1】経営分析の体系図

経営分析に用いられる指標の体系図は【図表1】のようになっています。

本章では、それぞれの指標について解説していきます。なお、経営分析の方法は様々なものが存在するため、実務でよく使われる指標を中心に解説します。

収益性分析

収益性は「利益を獲得する能力」を表します。そのため、収益性分析は「利益額」あるいは「利益率」で測定します。また、利益は事業活動における資本(=資産)の利用によって得られるため、収益性分析は利益と資本の関連でも測定されます。

なお、図表1の体系図の増減分析(利益増減分析等)については、単純な利益額及び利益率の前年度との比較分析になることから、以下の解説では割愛します。

資本利益率分析-総資本経常利益率・・・高いほどよい

【計算式】総資本経常利益率(%)=経常利益(年間)÷総資本(年平均)

企業が使用したすべての資本(貸借対照表の貸方合計)で、通常の営業活動からどの程度の利益を獲得したかを示すことから、経営者にとって重要な業績測定尺度となる指標です。

この数値が高いほど収益性は高いことになります。

資本利益率分析-自己資本当期純利益率(ROE)・・・高いほどよい

【計算式】自己資本当期純利益率(%)=当期純利益(年間)÷自己資本(年平均)

自己資本当期純利益率(Return On Equity)は、収益性分析で最も利用される指標です。

企業が株主から調達した資金(自己資本)を利用して、どれほどの利益を生み出したかを示しています。また株主も、自身が出資した資金がどれほど効率良く利用されているかを判断できる指標となっています。

この数値は高いほど収益性が高いことを示しますが、総資本に占める自己資本の割合が低い場合も高く示されてしまうため、総資本に占める自己資本の割合との関係での判断が必要です。

資本利益率分析-棚卸資産回転率・・・高いほどよい

【計算式】棚卸資産回転率(回転)=売上高(年間)÷棚卸資産(年平均)

棚卸資産が、売上高によって年間で何回転(回収)されたかを示す指標です。

棚卸資産がどれだけ滞留しているかを直感的に把握することが可能であり、この指標が高いほど棚卸資産の運用効率が良好であることを表しています。

また次の算式にすることで回転期間も算定することが可能です。

【計算式】棚卸資産回転期間(月数・日数)=棚卸資産(平均)÷売上高(月間・日)

たとえば、月売上高が100万円で棚卸資産が200万円の場合は、2ヵ月(200万円÷100万円)で棚卸資産が1回転することを示します。

なお、棚卸資産回転期間の場合は、低いほど棚卸資産の回収(販売)の期間が短いことを示します。

資本利益率分析-売上債権回転期間・・・低いほどよい

【計算式】売上債権回転期間(月数)=売上債権(平均)÷売上高(月間)
売上債権 =売掛金+受取手形(割引・裏書手形含む)

棚卸資産と同様に、製品・商品を販売して代金がどのくらいの期間で回収されるかを示す指標です。

この指標が低いほど代金回収までの期間が短いことを示します。

資本利益率分析-有形固定資産回転率・・・高いほどよい

【計算式】有形固定資産回転率(回転)=売上高(年間)÷有形固定資産(年平均)
有形固定資産(年平均) =有形固定資産簿価の期首と期末平均

有形固定資産の経営活動における利用度を示す指標です。この指標が低いほど、有形固定資産への投資が過大であることを意味しており、投資効果をみるための指標となります。

ただし、大幅な拡大投資を実行した場合は回転率が低下することから、一概に下降すれば悪いという判断はできず、上昇又は下降の原因の調査をした上での判断が必要です。

分岐点分析-損益分岐点売上高

【計算式】損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率

損益分岐点売上高は、固定費を賄うためにどれほどの売上を達成しなければならないかを示す指標です。

【図表2】のように営業利益が0(固定費=限界利益)となる売上高がいくらになるのかを分析することにより、赤字から黒字になる転換点を把握するための指標となります。

【図表2】損益分岐点

安全性分析

安全性は、企業の財政基盤の健全さを表します。つまり安全性分析は、企業が負っている債務を十分に弁済するだけの換金可能な資産を有しているか、その債務弁済能力を測定します。

短期財務安全性分析-流動比率・・・200%以上がよい

【計算式】流動比率(%)=流動資産÷流動負債

短期的に支払いを要する流動負債に対して、これを賄うべき流動資産がどの程度あるかを示す指標です。

この指標は200%以上が望ましいとされていますが、高ければ高いほどよいというわけはありません。比率が高すぎると過大な現金預金等を保有することを意味し、収益性を犠牲にして安全性を確保していることを意味しています。

さらには、流動資産である売上債権や棚卸資産に不良債権・在庫が存在する可能性もあることから、この比率は業界平均程度であればよいとされています。

短期財務安全性分析-当座比率・・・100%以上がよい

【計算式】当座比率(%)=当座資産÷流動負債
当座資産 =現金+短期に現金化できるもの+受取手形+売掛金+売買目的有価証券+短期貸付金-貸倒引当金

流動資産の中で容易に売れないような棚卸資産を除き、短期支払能力を流動比率よりも厳しく検証するために用いられる指標です。

この指標は100%以上が望ましいとされています。

長期財務安全性分析-固定比率・・・100%以下がよい

【計算式】固定比率(%)=固定資産÷自己資本

固定資産に投下された資金が、自己資本(株主資本)によってどの程度賄われているかを示す指標です。

固定資産に投下された資金は、長期にわたって固定化される(固定資産を利用して製造した商品が売れたときや固定資産を売却したと時に初めて投資した分のお金が回収される)ため、その資金は返済の必要がない自己資本で賄うべきであることから、企業の固定資産投資の安全性を判定できる指標となります。

この指標は、100%以下が望ましいとされています。

長期財務安全性分析-固定長期適合比率・・・100%以下がよい

【計算式】固定長期適合比率(%)=固定資産÷(自己資本+固定負債)

固定資産に投下された資金が、自己資本と固定負債を加えた長期資金によって、どの程度賄われているかを示す指標です。

この指標は必ず100%以下でなければならず、もし100%以上だった場合は固定資産の一部が流動負債に依存することとなり、短期の資金で長期の資金需要を賄っているという不健全な状態といえます。

長期財務安全性分析-自己資本比率・・・高いほどよい

【計算式】自己資本比率(%)=自己資本÷総資本

自己資本は、原則として返済の必要がないため、会社経営の基盤となります。したがって、この比率は、総資本に占める自己資本の構成割合から、企業の財政基盤の健全性を示す指標です。

この指標は高いほうがよい状態といえますが、業種により左右されることから、業界平均程度がよいとされています。

長期財務安全性分析-負債比率・・・100%以下がよい

【計算式】負債比率(%)=他人資本÷自己資本

自己資本に対してどれくらいの負債(他人資本)があるかを測定するもので、資金調達の安定度合いを示す指標です。

この指標は100%以下が望ましいとされており、100%を超えた場合は返済の必要がない自己資本よりも負債(他人資本)が多いことを意味します。

キャッシュ・フロー分析-インタレスト・カバレッジ・レシオ・・・高いほどよい

【計算式】インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)=利息及び法人税控除前の営業活動によるキャッシュ・フロー÷支払利息・社債利息等

営業活動により生み出されたキャッシュ・フローが支払利息等の何倍あるかを示しており、利息を払うのに十分なキャッシュが獲得できているか否かを判断するための指標です。

この指標は、高ければ高いほど利息支払の余裕度が高いことを示します。

生産性分析

生産性は、経営資源の投入が、企業の価値をどの程度効率的に生み出すかを意味しているため、生産性分析は企業の経営資源である、「人」、「物」、「金」に着目し、企業の価値創出の効率性を測定します。

付加価値生産性分析-労働生産性・・・高いほどよい

【計算式】労働生産性(円)=付加価値額÷従業員数(年平均)
※付加価値額=経常利益+人件費+金融費用+賃借料+租税公課+減価償却費

労働生産性は、従業員1人当たりが稼ぎ出した付加価値であり、労働時間の効率性の程度を測定する指標です。

この指標は、高ければ高いほど能率が高いことを示します。

付加価値分配率分析-付加価値労働分配率・・・最適な指標はない

【計算式】付加価値労働分配率(%)=人件費÷付加価値額

企業が生み出した付加価値のうち、人件費として従業員に分配された比率を表し、人件費の支払能力をみる指標です。

この指標は低すぎると従業員は不満を持ち、労働意欲の低下に繋がります。逆に高すぎると内部留保が減り、株主への分配の減少と収益性の悪化を招くため、バランスを考慮してその適否を判断する必要があります。

成長性分析

成長性は、企業規模がどのように拡大したか意味するため、成長性分析は対前年比増加率や数期間の平均増加率を基準として測定します。またその比較対象も売上高や固定資産、従業員数等様々なものが挙げられます。

なお、成長要因分析については例えば人員数を前期と比較することや、店舗数を前期と比較する等、会社により指標となるものが異なりますので、この場では割愛します。

成長率分析-売上高成長率・・・高いほどよい

【計算式】売上高成長率(%)=売上高(評価年)÷売上高(基準年)

市場における成功・失敗を直接に示し、企業の総合的な努力を反映する指標です。この比率は、高ければ高いほどよく、業界平均や業界トップ企業と比較して満足すべきものかどうかの判断をすることになります。

経営分析を正しく行うためのポイント

以上、様々な経営分析のための指標を紹介しましたが、最後によりよく活用するためのポイントを挙げておきます。

正確な財務諸表を用意する

経営分析は、財務諸表の数値を利用して分析を行うため、その基礎になる数値が正確であることか必要です。誤った数値を利用してしまうと、誤った数値が算出されてしまい、経営判断も間違った判断をする可能性が生じるため、正確な財務諸表を利用しましょう。

【関連】財務諸表とは?構成や読み方、分析方法まで基礎知識を徹底解説/BizHint

自社の事業に合う指標を選定する

これまでの説明でもわかるとおり、経営分析は様々な方法が存在します。そのため、自社の事業に合う指標を選定することが必要です。

たとえば製造業であれば、在庫である棚卸資産が重要であるため棚卸資産回転率を利用したほうがいいですし、IT業などの場合は棚卸資産回転率よりも労働生産性による分析のほう事業の性質に適合します。このように適切な指標の選定を行いましょう。

【関連】財務指標とは?経営者が見るべきポイントと覚えておくべき指標一覧も/BizHint

利用する指標は絞る

利用する指標は多くしないことが大切です。様々な指標を利用して経営状態を判断してしまいがちですが、指標の算定が目的になってしまうことがないよう、経営上重視したい項目について経営分析を行いましょう。

まとめ

  • 経営分析により利用される指標は会社の健康状態をチェックするための健康診断のツールとして活用可能です。
  • 収益性分析は、利益額あるいは利益率と資本(=資産)との関連による資本の効率的な活用状況を示します。
  • 安全性分析は、企業が負っている債務を十分に弁済するだけの換金可能な資産を有しているかについて、その債務弁済能力を示します。
  • 生産性分析は、企業の経営資源である、「人」、「物」、「金」に着目し、企業の価値創出の効率性を示します。
  • 成長性分析は、企業規模がどのように拡大したかを示します。

<執筆者>
宇佐見 剛 公認会計士(合同会社UKトラストグループ

大阪市立大学商学部卒業。建設業系事業会社(経営企画室)で6年、経営コンサルティング会社で2年半の勤務経験を経て、2019年に「合同会社UKトラストグループ」に参加。

IPO全般に関する業務や予算作成、経理体制の構築等の会社の管理体制の建てつけに関する業務を多数経験。


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