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2018年10月27日(土)更新

バランス・スコア・カード

企業の業績に影響を与えている要因を可視化・管理できるバランス・スコア・カードは、経営に欠かせない業績評価システムの一つです。今回はバランス・スコア・カードの概要や特徴、効果、構築へのステップ、さらにはバランス・スコア・カードを学べるおすすめの書籍までご紹介いたします。

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バランス・スコア・カードとは?

バランス・スコア・カードが考案されて、既に25年が経ちますが、現在でも効果的な業績評価システムとして採用されています。

バランス・スコア・カードの概要

バランス・スコア・カードとは、企業が持つ4つの視点(財務の視点、顧客の視点、業績プロセスの視点、成長・学習の視点)がどのように企業の業績やビジョンに影響を与えているかを可視化する業績評価(マネジメント)システムです。

1992年、米ハーバード・ビジネス・スクールのロバート・S・キャプラン教授と経営コンサルタントのデビッド・P・ノートン博士が、「ハーバード・ビジネス・レビュー」で発表した研究結果が始まりとされています。

従来は財務諸表を基に企業の経営や業績を評価することが一般的でしたが、業績に反映されやすい顧客、業務プロセス、成長・学習という新たな視点を加えることでバランス感覚に優れた経営が可能です。

バランス・スコア・カードは、戦略マップとスコアカードの2つを用いて経営を活性化させる経営管理の一つです。戦略マップは経営陣が考えるビジョンや戦略を社員に浸透させることに使え、経営陣と現場の相互のコミュニケーションツールとして機能します。一方でスコアカードは業績評価指標を可視化し、適切に社内のPDCAを回すことができます。また、経営課題として挙がりやすい人材育成や戦略の抽出、顧客満足度の向上、売上・利益の向上、財務体質の強化などの効果も期待できます。

このようにスコアカード経営は、経営改革や顧客拡大、社員のモチベーション向上、業績プロセスの見直しを実行したい企業におすすめの経営手法でもあります。

バランス・スコア・カードが導入された背景

1992年に提唱されたバランス・スコア・カードは、現在でも主流の経営管理手法として導入され続けています。

技術の発達によりビジネス課題が高度化・複雑化し、「一つの事業や部門に経営資源を集約・集中することはリスクである」と考えられ、事業の多角化を目指す企業が増えました。事業毎にビジョンや戦略を明確にするバランス感覚の優れた経営にニーズが高まったと考えられます。

また電力事業など、長らく独占市場として参入が難しかった分野の規制が緩和され、市場が活性化されています。既存企業は従来のピラミッド型経営からミッション共有型経営に移行する必要性に迫られ、更なるコストダウンや経営資源の有効活用が課題として認識されるようになりました。

そのため、バランス・スコア・カードを採用したスコアカード経営に注目が集まっていると考えられます。

バランス・スコア・カードの特徴とは?

バランス・スコア・カードは、「4つの視点」→「目標や指標の設定」→「具体的なアクションプランの作成」という流れを汲みます。これらのプロセスを経るためにも、バランス・スコア・カードの中核といえる「4つの視点」、「業績評価指標と基準値」、「戦略マップ」の3点がバランス・スコア・カードの特徴として挙げることができます。

バランス・スコア・カードの4つの視点

バランス・スコア・カードは、財務的業績評価指標を基にした「財務の視点」と非財務的業績評価指標を基にした「顧客の視点」、「業務プロセスの視点」、「成長・学習の視点」の4つで構成されています。

財務の視点

バランス・スコア・カードにおける「財務の視点」は、財務業績での成功を目的にした、株主を含むステークホルダー(利害関係者)に対する行動の可視化を指します。具体的なKPIとして、純売上高、営業利益、株主資本利益率(ROE)、キャッシュフロー、投資収益率(ROI)などが挙げられます。

これらの財務的指標を、成長期(成長率の重視)・維持期(利益の最大化)・収穫期(資金回収)の3つに分け、財務的目標を策定していきます。

顧客の視点

バランス・スコア・カードにおける「顧客の視点」は、顧客が商品・サービスを継続的に利用してもらうための視点であり、顧客に対する行動の可視化を指します。この「顧客の視点」は顧客の立場(顧客志向指標)と企業の立場(顧客収益性指標)の2つで構成されます。

顧客の立場(顧客志向指標)から見る「顧客の視点」では、自社製品・サービスの機能や価格、ブランドイメージ、顧客満足度の向上を重視し、そのための戦略やアクションプランの策定を目指します。一方で、企業の立場(顧客収益性指標)から見る「顧客の視点」では、会社の収益性を重視し、財務指標を基に顧客収益性を向上させるためのマーケティングプランを検討します。

業務プロセスの視点

バランス・スコア・カードにおける「業務プロセスの視点」は、ビジョン達成を目的とした企業の経済活動基盤、顧客対応能力、競合他社より優れたプロセスなどの向上を目指した行動の可視化を指します。

この業務プロセスの視点は、主に以下の3つのプロセスを重視します。

  • 市場・顧客ニーズに合致した製品・サービス開発プロセスである「イノベーション・プロセス」
  • 製品・サービスの充足を目的とした「オペレーション・プロセス」
  • 製品・サービス提供後のアフターフォローである「アフターサービス」

「業務プロセスの視点」では、これら3点のプロセスを計測するために顧客処理時間、インターネット取引・顧客比率、生産リードタイム、IT経費率、品切れ率、不良品発生率などの業績評価指標を採用しています。

学習・成長の視点

バランス・スコア・カードにおける「学習・成長の視点」は、組織の活性化や人材育成など中長期的な視点での企業の変革・学習能力の向上を目指した行動の可視化を指します。労働環境やモラル対策を目的とした「社員の意識改革」、社員能力の向上を目的とした「人材・能力開発」、生産性向上を目的とした知識や経験を共有・結合する「ナレッジマネジメント」などに有効です。

「学習・成長の視点」では、組織活性化・人材育成を目指したリーダーシップ指標、資格修得数、年間教育・訓練時間、エンパワーメント指数、女性管理職者数などを業績評価指標とします。

業績評価指標と基準値の存在

従来、業績評価指標と基準値は財務諸表のみで採用されていた傾向が強く、その他の視点においては評価が曖昧であると指摘されていました。しかし、高度化・複雑化していくビジネス課題を解決するためには、企業業績に多大な影響を与える「財務の視点」以外の3つの視点を数値化・可視化できる業績評価指標と基準値を定める必要があります。

業績評価指標は目標達成度を測るための評価尺度を指します。基準値は達成可否の目安を指します。これら非財務的業績評価をどのように設定するかを検討し、具体化することで、バランス・スコア・カード導入の目的とする業績向上のための経営戦略と行動計画を策定できます。

戦略マップの可視化

戦略マップとは、4つの視点毎に設定された業績評価指標・基準値の関係性を図にしたものを指します。戦略マップは具体的な戦略を可視化することができ、それらを現場社員に浸透させるコミュニケーションツールとしても活用できます。経営課題を立体的に把握しやすいメリットもあります。

バランス・スコア・カードの効果

バランス・スコア・カードの導入は、企業にさまざまな効果を与えてくれます。

売上・収益向上による経営活性化

バランス・スコア・カードの導入は、企業経営に多大な影響を与える4つの視点(財務の視点、顧客の視点、業務プロセスの視点、学習・成長の視点)に分けて、経営判断を行います。各視点間の関係性や因果関係、相互作用を可視化できるため、売上・利益の向上に寄与する経営判断を行いやすいメリットがあります。

顧客満足度の向上

顧客満足度の向上は企業の収益性に直結する重要な要素の一つです。バランス・スコア・カードには、顧客志向指標を重視した顧客の立場と、顧客収益性指標を重視した企業の立場の2つから業績評価指標と基準値を設定できます。その結果、顧客満足度向上のためのアクションプランが策定しやすく、経営や現場での顧客対応能力の向上が期待できます。

まさに企業の生命線といえる、顧客を中心とした戦略立案が可能なバランス・スコア・カードはとても有効な経営管理手法といえます。

業務改革による生産性改善

バランス・スコア・カードの導入背景には、高度化・複雑化するビジネス課題への解決、事業の多角化に対応したミッション共有型経営への移行が挙げられます。そのため、技術革新における従来の生産体制の見直しやコストダウンを目的とした業務改革にも活用されやすい傾向にあります。

現状の生産体制や人材との関係性を分析し、数値化・可視化することで、未来の企業のあるべき姿を策定することが可能です。

研修・人事制度構築による人材育成

バランス・スコア・カードの導入は、さまざまな戦略に基づいた人材育成が可能です。バランス・スコア・カードの4つの視点である「成長・学習の視点」では、リーダーシップ指標やモチベーション指数、女性管理職数、入社希望者数、エンパワーメント指数などのKPIを設定することができます。

他の3つの視点との相互関係を考慮した上で、人事制度や研修の実施が行なえる点に特徴があります。例えば、生産性向上戦略のおいては、現場社員による改善提案制度の導入を、新規顧客開拓戦略においては営業スキル研修の実施を、イノベーションの創出を前提とした新規事業においては自己申告制度社内FA制度の確立などが可能です。

バランス・スコア・カードの構築へのステップ

バランス・スコア・カードを導入する際は、以下のステップを踏むと適切に運用することができます。

経営理念と企業ビジョンの決定

企業の経済活動の根底を支えるものこそが経営理念と企業ビジョンです。この2つなくして、最適な経営戦略の立案は不可能と言っても過言ではありません。経営理念は会社が将来どのようになりたいのか、企業の存在意義・存在目的は何かを決定する基盤にもなります。

また、企業ビジョンは会社が目指すべき到達点や理想像などの将来像を形作るためのものです。経営理念、企業ビジョンを決定、再認識することで、成長のための中期経営計画や経営戦略が策定しやすくなります。

戦略目標と戦略マップの作成

バランス・スコア・カードの中核となるステップが、この「戦略目標と戦略マップの作成」です。「財務の視点」、「顧客の視点」、「業務プロセスの視点」、「成長・学習の視点」の4つを基に、重要成功要因を分析・作成することで戦略目標を作成します。決定・再認識した経営理念や企業ビジョンを具体化するプロセスでもあります。

戦略マップの作成は4つの視点毎に分けられた戦略の関連性や相互関係を可視化するのに役立ちます。また、立体化された経営戦略を現場の社員に伝達する優れたコミュニケーションツールとして活用できます。

重要成功要因の設定

戦略目標と戦略マップを基に、どういった活動が重要な成功要因となるかを分析・深堀りしていく必要があります。この重要成功要因の設定は、現場での具体的アクションプランにもなるため、とても重要なプロセスでもあります。

4つの視点において、自社が持つ強みは競合他社と比べて、どの部分で優れている必要があるのか、自社にとって補完すべき弱みは何かを分析することが可能です。この作業こそが経営の健全化や業務改革にもつながる重要なステップとなります。

業績評価指標(KPI)の設定

バランス・スコア・カードで戦略目標と戦略マップ、重要成功要因があったとしても測定方法がしっかりしていなければ、目標実現は難しいといえます。そのため、各視点で掲げられた戦略目標の達成度を測る具体的指標である業績評価指標(KPI)を設定しなければいけません。

それぞれの視点で特徴的な業績評価指標(KPI)は以下が挙げられます。

「財務の視点」に必要な業績評価指標

「財務の視点」における業績評価指標は以下の通りです。

  • 固定比率
  • 負債資本比率
  • 純資産利益率
  • 純利益率
  • 経済付加価値
  • 純売上高
  • 営業利益
  • 総原価
  • 当座比率
  • 投資収益率 など

「顧客の視点」に必要な業績評価指標

「顧客の視点」における業績評価指標は以下の通りです。

  • 信頼度
  • 製品イメージ
  • リピート購買率
  • 顧客ロイヤリティー指標
  • 顧客訪問回数
  • マーケティング費用
  • 平均取引高
  • 顧客評価点
  • 接客当たりの契約数 など

「業務プロセスの視点」に必要な業績評価指標

「業務プロセスの視点」における業績評価指標は以下の通りです。

  • インターネット顧客率
  • 電話アクセス数
  • 生産リードタイム
  • 発生エラー数
  • IT経費率
  • 棚卸資産回転率
  • 品切れ率
  • 新製品シェア率
  • 生産性向上率 など

「成長・学習の視点」に必要な業績評価指標

「成長・学習の視点」における業績評価指標は以下の通りです。

スコアカード(ターゲット)と目標値の作成

ここでは、目標実現を判断するための数値目標の作成とスコアカードの活用を実施します。目標値は会社が掲げる経営計画とリンクするように、予算を反映させながら設定する必要があります。この時点でスコアカードを作成しておくことで、後に作成した戦略の評価や見直しが行ないやすくなります。

スコアカードは企業の現状や従業員の役割を可視化するための有効手段でもあります。経営陣と現場の社員のコミュニケーションツールとしても役立てることも可能です。

行動計画の作成

経営陣や現場社員が取り組むべき具体的な行動計画を作成します。既に作成しているスコアカードや経営戦略を基に、目的、目標、方法、責任者、期日、場所、経費に基づいて、作成していきます。

PDCAをはじめとする管理

ここまで作成した行動計画を実行に移していきます。行動計画の実行においては、PDCAサイクルによる実績管理が望ましいといえます。作成した業績評価指標を基にアクションに対する評価を行い、必要に応じて、修正や見直しを行ないます。

バランス・スコア・シートを学べる書籍のご紹介

バランス・スコア・カードを最適化するには実際の現場に導入し、実践を通して、学ぶことが効果的です。しかし、基本的な知識をインプットするには書籍がおすすめです。バランス・スコア・カードを学べる、おすすめの書籍をご紹介いたします。

バランス・スコアカード―戦略経営への変革

バランス・スコア・カードの提唱者であるロバート・S・キャプラン教授とデビッド・P・ノートン博士が執筆した書籍です。戦略経営の概念や原点を学びたい経営者や経営陣向けの書籍です。海外の優良企業の業績評価システムやコスト・マネジメント・システム設計、組織の再構築に長けた両者の考え方を学べる良書でもあります。

【参考】amazon バランス・スコアカード―戦略経営への変革

キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード

同じく、ロバート・S・キャプラン教授とデビッド・P・ノートン博士が執筆した書籍です。「バランス・スコアカード―戦略経営への変革」が理論書とすれば、本書は実務家向けの手引書として位置付けることができます。バランス・スコア・カードによる成功事例も収録されており、具体的かつわかりやすい文章構成になっているのも特徴的です。経営幹部候補や管理職、中堅社員向けの書籍です。

【参考】amazon キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード

バランス・スコアカード―新しい経営指標による企業変革

工業化時代から情報化時代に移行する中で、新たな業績評価指標の作り方と使い方を学べる書籍です。原書を翻訳しているため、著者であるロバート・S・キャプラン教授とデビッド・P・ノートン博士の考えに触れることができます。バランス・スコア・カードの理解を深めたい方向けの補完資料としておすすめです。

【参考】amazon バランス・スコアカード―新しい経営指標による企業変革

戦略マップ [復刻版]: バランスト・スコアカードによる戦略策定・実行フレームワーク

バランス・スコア・カード策定のための重要なプロセスである、戦略マップに特化した書籍です。経営革新や内部監査の改善、経営品質向上などに効果が高い戦略マップに焦点を合わすことで、優れた戦略の策定に活用できます。2005年に発刊された「戦略マップ」の翻訳を全面的に見直しているため、訳注も大幅に追加されており、読みやすいように仕上がっています。戦略マップの策定に関わる経営企画部・経営管理部の担当者や経営者を含む経営陣におすすめの書籍です。

【参考】amazon 戦略マップ 復刻版: バランスト・スコアカードによる戦略策定・実行フレームワーク

まとめ

  • 急速にグローバル化する経済市場では、今後も企業が抱えるビジネス課題はより高度化・複雑化していくことが考えられます。事業の多角化や組織の再構築、業務改革が必要となる機会も増えることから、財務指標以外の視点を考慮し、経営に役立てなければいけません。
  • 4つの視点を基に企業のビジョンや戦略を可視化するバランス・スコア・カードは、企業にとって欠かせない経営手法の一つとなります。今後、大企業だけでなく、中小企業や現場の最前線を担う社員にも必要とされる知識と考えられるので、この機会に学ばれてみてはいかがでしょうか。

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