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バランス・スコア・カード

2020年6月12日(金)更新

バランス・スコア・カード(BSC)とは、企業が持つ4つの視点(財務、顧客、内部プロセス、成長・学習)がどのように企業の業績やビジョンに影響を与えているかを可視化する業績評価システムです。バランス感覚に優れた経営を可能にするツールでもあります。今回はバランス・スコア・カードの概要や特徴、4つの視点、構築へのステップ、さらにはバランス・スコア・カードを学べるおすすめの書籍までご紹介いたします。

バランス・スコア・カードとは?

バランス・スコア・カード(BSC)とは、従来企業の経営や業績の評価に用いられる財務の視点に加え、績に反映されやすい顧客、内部プロセス、成長・学習という新たな視点を取り入れた、企業のビジョンに基づいた経営を行うための業績評価(マネジメント)システムです。

「バランススコアカード」「バランスト・スコア・カード」と表記される場合もあります。

1992年、米ハーバード・ビジネス・スクールのロバート・S・キャプラン教授と経営コンサルタントのデビッド・P・ノートン博士が、「ハーバード・ビジネス・レビュー」で発表した研究結果が始まりとされています。

バランス・スコア・カードのメリットとしては、以下の3点が挙げられます。

  1. 経営陣が考えるビジョンや戦略を明確にし、社員に浸透させることができる
  2. 業績評価指標を可視化し、適切に社内のPDCAをまわしていくことができる
  3. 社員のモチベーション向上、業績プロセスの見直しなどにも効果的

このような理由から、近年では戦略を遂行するためのマネジメント・システムやフレームワークとしての有益性も高まっています。

バランス・スコア・カードが注目される背景

近年、技術の発達によりビジネス課題が高度化・複雑化し、「一つの事業や部門に経営資源を集約・集中することはリスクである」と考えられ、事業の多角化を目指す企業が増えました。事業毎にビジョンや戦略を明確にするバランス感覚の優れた経営のニーズが高まったと考えられます。

また電力事業など、長らく独占市場として参入が難しかった分野の規制が緩和され、市場が活性化されています。既存企業は従来のピラミッド型経営からミッション共有型経営に移行する必要性に迫られ、更なるコストダウンや経営資源の有効活用が課題として認識されるようになりました。

そのため、バランス・スコア・カードを採用したスコアカード経営に注目が集まっていると考えられます。

バランス・スコア・カードの4つの視点

【出典】平成28年度産業技術調査事業 (産学連携機能強化に向けた大学の内部評価の在り方に関する調査)(P11)/経済産業省産業技術環境局 大学連携推進室

バランス・スコア・カードの一番の特徴は、財務的業績評価指標を基にした「財務の視点」と非財務的業績評価指標を基にした「顧客の視点」、「内部プロセスの視点」、「成長・学習の視点」の4つで戦略を遂行していくことにあります。

それぞれについて、詳しく解説していきます。

財務の視点…株主に対してどう行動するか

「財務の視点」は、財務業績での成功を目的にした、株主を含むステークホルダー(利害関係者)に対する行動の可視化を指します。

具体的な指標としては、純売上高、営業利益、株主資本利益率(ROE)、キャッシュフロー、投資収益率(ROI)などが挙げられます。

顧客の視点…顧客に対してどう行動するか

「顧客の視点」は、顧客が商品・サービスを継続的に利用してもらうための視点であり、顧客に対する行動の可視化を指します。

この顧客の視点は、顧客の立場(顧客志向指標)と企業の立場(顧客収益性指標)の2つに分類できます。

  • 顧客の立場から見る顧客の視点 自社製品・サービスの機能や価格、ブランドイメージ、顧客満足度の向上 など -企業の立場から見る顧客の視点 会社の収益性を重視し、財務指標を基に顧客収益性を向上させるためのマーケティングプランを検討します。

内部プロセスの視点…どのようなビジネスプロセスが重要か

「内部プロセスの視点」は、ビジョン達成を目的とした企業の経済活動基盤、顧客対応能力、競合他社より優れたプロセスなどの向上を目指した行動の可視化を指します。

この内部プロセスの視点は、主に以下の3つのプロセスを重視します。

  • 市場・顧客ニーズに合致した製品・サービス開発プロセスである「イノベーション・プロセス
  • 製品・サービスの充足を目的とした「オペレーション・プロセス
  • 製品・サービス提供後のアフターフォローである「アフターサービス

学習・成長の視点…組織や従業員をどのように成長させるか

「学習・成長の視点」は、組織の活性化や人材育成など中長期的な視点での企業の変革・学習能力の向上を目指した行動の可視化を指します。

労働環境やモラル対策を目的とした「社員の意識改革」、社員能力の向上を目的とした「人材・能力開発」、生産性向上を目的とした知識や経験を共有・結合する「ナレッジマネジメント」などに有効です。

バランス・スコア・カードの構築へのステップ

バランス・スコア・カードは、以下のステップを踏むと適切に運用することができます。

経営理念と企業ビジョンの決定

企業の経済活動の根底を支えるものこそが経営理念と企業ビジョンです。この2つなくして、最適な経営戦略の立案は不可能と言っても過言ではありません。経営理念は会社が将来どのようになりたいのか、企業の存在意義・存在目的は何かを決定する基盤にもなります。

また、企業ビジョンは会社が目指すべき到達点や理想像などの将来像を形作るためのものです。経営理念、企業ビジョンを決定、再認識することで、成長のための中期経営計画や経営戦略が策定しやすくなります

【関連】経営理念とは?意味や目的、メリットから作り方、企業事例までご紹介/BizHint
【関連】経営ビジョンとは?経営理念との違い・導入メリット・作り方から企業事例までご紹介/BizHint

戦略目標と戦略マップの作成

バランス・スコア・カードの中核となるステップが、この「戦略目標と戦略マップの作成」です。

①環境分析

企業における最適な戦略目標を策定するためには、現状把握が欠かせません。戦略マップを作成前に、SWOT分析で自社の置かれている環境を整理しましょう。

「SWOT分析」とは、社内外の強みや弱み、機会や脅威を分析できるフレームワークです。

ビジネスを構成するファクターを、自社の内部環境である「強み(Strengths)」と「弱み(Weaknesses)」、そして自社を取り巻く外部環境である「機会(Opportunities)」と「脅威(Threats)」、以上4つのカテゴリーに大別して整理します。

SWOT分析の詳しいやり方は、こちらの記事をご覧ください。
【関連】SWOT分析とは?やり方や事例、役立つフレームワークもご紹介 / BizHint

②戦略目標の決定

SWOT分析の内容をもとに、「財務の視点」、「顧客の視点」、「内部プロセスの視点」、「成長・学習の視点」それぞれの戦略目標を作成します。

決定・再認識した経営理念や企業ビジョンを具体化するプロセスでもあります。

③戦略マップへの落とし込み

①と②で導き出されたそれぞれの視点の戦略目標を、戦略マップに落とし込んでいきます。

戦略マップとは、4つの視点毎に設定された業績評価指標・基準値の関係性を図にしたものです。

具体的な戦略を可視化することができ、それらを現場社員に浸透させるコミュニケーションツールとしても活用できます。また、経営課題を立体的に把握しやすいメリットもあります。

【事例】経済産業省「産学連携による共同研究強化のためのガイドライン概要」の要素を盛り込んだ仮想事例の戦略マップ

【出典】平成28年度産業技術調査事業 (産学連携機能強化に向けた大学の内部評価の在り方に関する調査)(P13)/経済産業省産業技術環境局 大学連携推進室

重要成功要因(KSF・CSF)の設定

戦略目標や戦略マップを基に、どういった活動が重要な成功要因となるかを分析・深堀りしていきます。

この重要成功要因の設定は、現場での具体的アクションプランにもなるため、とても大切なプロセスです。

4つの視点において、自社が持つ強みは競合他社と比べて、どの部分で優れている必要があるのか、自社にとって補完すべき弱みは何かを分析することが可能です。

この作業こそが、経営の健全化や業務改革にもつながる重要なステップなのです。

重要成功要因(KSF)の見つけ方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
【関連】KSFとは?意味や分析手法、抽出ポイントなどご紹介 /BizHint

業績評価指標(KPI)の設定

業績評価指標(KPI)は目標達成度を測るための評価尺度を指します。この非財務的業績評価をどのように設定するかを検討し、具体化することで、バランス・スコア・カード導入の目的とする業績向上のための経営戦略と行動計画を策定できます。

戦略目標と戦略マップ、重要成功要因があったとしても測定方法がしっかりしていなければ、目標実現は難しいといえます。

それぞれの視点で特徴的な業績評価指標(KPI)は以下が挙げられます。

  KPIの一例
財務の視点 固定比率/負債資本比率/純資産利益率/純利益率/経済付加価値/純売上高/営業利益/総原価/当座比率/投資収益率 など
顧客の視点 信頼度/製品イメージ/リピート購買率/顧客ロイヤリティー指標/顧客訪問回数/マーケティング費用/平均取引高/顧客評価点/接客当たりの契約数 など
内部プロセスの視点 インターネット顧客率/電話アクセス数/生産リードタイム/発生エラー数/IT経費率/棚卸資産回転率/品切れ率/新製品シェア率/生産性向上率 など
成長・学習の視点 リーダーシップ率/従業員数/資格取得率/平均欠勤率/女性管理職数/エンパワーメント係数/従業員満足度/能力向上率/社内改革提案件数/入社希望者数/従業員一人あたりの研修費用 など

【関連】KPIとは?言葉の意味と、KGI・OKRとの違いを解説/BizHint

スコアカードの作成

ここでは、目標実現を判断するための数値目標の作成とスコアカードの活用を実施します。目標値は会社が掲げる経営計画とリンクするように、予算を反映させながら設定しましょう。この時点でスコアカードを作成しておくことで、後に作成した戦略の評価や見直しが行ないやすくなります。

スコアカードは企業の現状や従業員の役割を可視化するための有効手段でもあります。経営陣と現場の社員のコミュニケーションツールとしても役立てることも可能です。

行動計画の作成

経営陣や現場社員が取り組むべき具体的な行動計画を作成します。既に作成しているスコアカードや経営戦略を基に、目的、目標、方法、責任者、期日、場所、経費に基づいて、作成していきます。

行動をPDCAサイクルで管理

ここまで作成した行動計画を実行に移していきます。行動計画の実行においては、PDCAサイクルによる実績管理が望ましいです。

作成した業績評価指標を基にアクションに対する評価を行い、必要に応じて、修正や見直しを行います。

バランス・スコア・カードのテンプレート

独立行政法人中小企業基盤整備機構が、支援ツールとして「バランス・スコア・カード」の各ステップの分析などに使えるテンプレートを公開しています。ぜひ、参考にしてください。

【参考】地域支援機関等サポート事業 支援ツール⑥バランススコアカード/独立行政法人中小企業基盤整備機構

バランス・スコア・カードを学べる書籍のご紹介

バランス・スコア・カードを最適化するには実際の現場に導入し、実践を通して、学ぶことが効果的です。しかし、基本的な知識をインプットするには書籍がおすすめです。バランス・スコア・カードを学べる、おすすめの書籍をご紹介いたします。

バランス・スコアカード―戦略経営への変革

バランス・スコア・カードの提唱者であるロバート・S・キャプラン教授とデビッド・P・ノートン博士が執筆した書籍です。戦略経営の概念や原点を学びたい経営者や経営陣向けの書籍です。海外の優良企業の業績評価システムやコスト・マネジメント・システム設計、組織の再構築に長けた両者の考え方を学べる良書でもあります。

【参考】バランス・スコアカード―戦略経営への変革/Amazon

キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード

同じく、ロバート・S・キャプラン教授とデビッド・P・ノートン博士が執筆した書籍です。「バランス・スコアカード―戦略経営への変革」が理論書とすれば、本書は実務家向けの手引書として位置付けることができます。バランス・スコア・カードによる成功事例も収録されており、具体的かつわかりやすい文章構成になっているのも特徴的です。経営幹部候補や管理職、中堅社員向けの書籍です。

【参考】キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード/Amazon

バランス・スコアカード―新しい経営指標による企業変革

工業化時代から情報化時代に移行する中で、新たな業績評価指標の作り方と使い方を学べる書籍です。原書を翻訳しているため、著者であるロバート・S・キャプラン教授とデビッド・P・ノートン博士の考えに触れることができます。バランス・スコア・カードの理解を深めたい方向けの補完資料としておすすめです。

【参考】バランス・スコアカード―新しい経営指標による企業変革/Amazon

戦略マップ [復刻版]: バランスト・スコアカードによる戦略策定・実行フレームワーク

バランス・スコア・カード策定のための重要なプロセスである、戦略マップに特化した書籍です。経営革新や内部監査の改善、経営品質向上などに効果が高い戦略マップに焦点を合わすことで、優れた戦略の策定に活用できます。2005年に発刊された「戦略マップ」の翻訳を全面的に見直しているため、訳注も大幅に追加されており、読みやすく仕上がっています。戦略マップの策定に関わる経営企画部・経営管理部の担当者や経営者を含む経営陣におすすめの書籍です。

【参考】戦略マップ 復刻版: バランスト・スコアカードによる戦略策定・実行フレームワーク/Amazon

まとめ

  • バランス・スコア・カードを導入することにより、経営が活性化するだけでなく、顧客満足度や生産性の向上、また人材育成も可能となりバランスのとれた経営を実現できる
  • バランス・スコア・カードを導入する際、特に「戦略マップ」の作成が重要であり、これは経営課題を立体的に把握し、社員にもそれを浸透させやすいという特徴がある
  • 最終的にKPIや目標値を設定し、行動計画などによって従業員の役割を可視化。それを、PDCAサイクルで管理することにより、適正なバランス・スコア・カードに近づける

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