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2018年11月20日(火)更新

企業価値

資本主義を基に経済活動を行なっている日本経済において、企業が世間一般から高い評価を受けることは、企業を存続させる上でも重要な要素といえます。そんな企業の価値を評価するビジネス関連用語に、「企業価値」という用語があります。今回は企業価値の意味や評価方法、メリット、企業価値の向上施策から導入事例までご紹介いたします。

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企業価値とは?

企業価値は、資本主義社会において、重要な基準となります。企業価値の意味はもちろん、似たような意味合いを持つビジネス関連用語の時価総額との違い、株価との関係、なぜ企業価値が重要視されるかを把握することで、理解を深めることができます。

企業価値の意味とは?

企業価値とは、主に金融関係の視点から見た「企業の魅力(会社的魅力)」であり、株価の算定やM&A、リストラの際の基準となる企業の全体的な価値(Enterprise Value)を意味するビジネス関連用語です。この企業価値は企業側が把握する自社の企業価値と、ステークホルダー(株主・債権者・投資家など)を含む買収側が把握する企業価値とは異なることが多い傾向にあります。そのため、公正性を保つために、コストアプローチやDCF法などの複数の評価方法を基に企業価値を算出します。

企業価値を高めることは、M&AやTOB実施の際に、企業側の交渉優位性の確立や倒産の防止などのメリットをもたらします。そのため、上場企業はもちろん、中小企業も企業価値の向上は、重要な経営戦略のひとつとして、認識されています。

また、経済がグローバル化し、日本経済の不確実性が増す中で、自社の企業価値を向上させることは、経営者にとっても至上命題でもあります。

企業価値と時価総額の違いとは?

企業価値と同じような意味合いで用いられるビジネス関連用語に、時価総額(株式時価総額)があります。時価総額(株式時価総額)は、株式市場において、上場株式がどれくらいの価値・規模があるかを測る基準となります。評価方法としては、株価に対して、発行株式総数を乗じたものを時価総額(株式時価総額)と定義しています。

企業価値は株価の算定やM&Aの基準として、将来発生するキャッシュフローを見込んだ上での現在の企業の価値を評価することを目的にしています。一方で、時価総額は株式市場の当日終値で算出されるため、一部のステークホルダー(株主・債権者・投資家など)を対象にした銘柄(企業)の価値基準と考えられます。しかし、企業価値と同様に、時価総額(株式時価総額)はM&Aを行なう上で、企業の価値や魅力を測る指標としても参考にされています。

企業価値と株価の関係とは?

上場企業において、企業価値の向上は株価にも影響を与えます。これは企業価値が自己資本価値(株価×発行済株式総数)と負債の価値(有利子負債の順残高)を足したもので評価されるためです。そのため、企業価値と株価は密接に関わっていると考えることができます。

また、株式市場では将来のキャッシュフローを見越した上で、株式の売買が行なわれます。このように株価は、株式市場において、取引の重要な判断軸となっていることも考えると、企業価値と株価はどちらも会社(銘柄)の将来性・成長性を判断する重要な基準となっていると考えられます。

企業価値が重要視される理由とは?

企業価値の最大化は、経営者にとっても重要な経営戦略のひとつとして認識されています。その理由の一つが、日本企業の経営の変化が考えられます。従来のようにステークホルダー(株主・債権者・投資家など)を中心とした日本型経営に加え、執行と監督の分離を前提とした米国型企業統治を取り入れる日本企業が増えており、企業経営の多様化が進んでいます。その結果、企業価値のあり方に対して、改めて議論が深まっていると考えられます。

また、企業の社会的責任の拡充や企業倫理の確立など、企業に求められる責任も増えつつある中で、企業全体の価値や会社的魅力を測る企業価値が重要視されていると考えることもできます。

一方で、経済のグローバル化が進む中で、日本経済の不確実性が増し、企業は自社の成長性と将来性を明確に示す必要性が増しています。この事は高度経済成長期のように売上のみに依存した評価体制から、ROI(投下資本利益率)やROA(総資本利益率)などの将来に対する投資も評価対象となる体制に移行の必要性が増していることを意味します。その結果、ROI(投下資本利益率)やROA(総資本利益率)をバリュードライバー(企業の成長性や将来性に大きく影響を与える勘定科目)とした企業価値の向上に注目が集まったと考えられます。

【参考】一般社団法人日本経済団体連合会 企業価値の最大化に向けた経営戦略

企業価値評価の方法とは?

企業価値の評価方法には、複数のアプローチがあり、それらのアプローチを併用することで、企業価値を算出することが一般的です。

企業価値評価方法 その1 コストアプローチ

コストアプローチは、企業が保有する資産を評価対象とし、これらの資産を再構築する際に必要となる経費に重点を置いた評価方法です。このコストアプローチには、貸借対照表上の純資産額を株主価値とする簿価純資産額法、貸借対照表の資産と負債を時価評価した上で時価純資産額を算出し、それを株主価値とする時価純資産額法、そして時価純資産額と営業権の合計を株主価値とする時価純資産額と営業権を考慮した算出方法の3つがあります。

これらにはそれぞれ、将来の成長性を配慮していない、資産の時価評価額を考慮していないなどのデメリットがあります。そのため、コストアプローチは企業の清算や相続評価の際に用いられる企業価値の評価方法として認識されています。

企業価値評価方法 その2 インカムアプローチ(DCF法)

インカムアプローチとは、将来のフリーキャッシュフローを現在の価値合計として、事業価値を算出する評価方法です。一般的に支払利息控除前の将来のキャッシュフローを要求投資利益率で割り、算出した現在の企業価値と現在価値、非営業用資産の時価の合計を企業価値とするDCF法が用いられます。

他にもリアル・オプション(不確実性の中でも自由に意思決定ができる企業の自由度としての価値)を用いた企業価値評価方法のリアル・オプション法や、将来の株主配当金額を基にした算出方法の配当還元法などもインカムアプローチに用いられる算出方法として知られています。

企業価値評価方法 その3 マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、比較対象となる企業の取引金額を基にして、企業価値を測る評価方法です。また、マーケットアプローチは株価の要素を盛り込んだ上で計算するため、上場企業もしくは上場前企業の企業価値を評価する方法としても用いられます。

算出方法としては、類似取引を基準とした類似取引方法や、類似企業が公開している株主価値を参考にした類似会社比準法があります。前者は上場を目的として用いられ、早期に企業価値を測る算出方法として最適ですが、乗じる係数によって、評価指数が変動するため、根拠に乏しいデメリットがあります。一方で後者は相続評価を目的として用いられますが、相続評価を測る以外では企業価値の評価に使えないことがデメリットとされています。

企業価値評価方法の併用が主流

既にご紹介している通り、企業価値を測る上ではコストアプローチ、インカムアプローチ(DCF法)、マーケットアプローチの3つの評価方法が有効です。しかし、それぞれメリットとデメリットがあり、評価対象も異なります。そのため、公平性を保つためにも、企業価値を評価する際は複数のアプローチを用いることが一般的とされています。

また、インカムアプローチ(DCF法)には膨大な会社の情報が必要となります。自社だけで分析するには、膨大な時間を要するため、会社の規模によってはコンサルティング会社を利用することも検討する必要があります。

企業価値を高めるメリットとは?

日本経済の不確実性が増し、企業の社会的責任が拡充する中で企業価値に対する注目が増しています。また、企業価値の向上は、さまざまメリットを生み出すとされており、そのメリットを把握することで、適切な企業価値向上施策を実践できます。

M&AとTOBで有利となる

企業価値の算出は、M&Aを行う際に、対象となる企業の将来キャッシュフローの価値を評価するためにも行われます。そのため、企業価値を高めることはM&AやTOBの際には、有利な条件下で、交渉に臨むことができます。企業価値を高めることは、多額の資本金を獲得でき、事業の自由度が高まるだけでなく、従業員の雇用を守ることにもつながります。

日本では長らくM&AやTOBは懸念されていましたが、近年では国内外を問わず、積極的にM&AやTOBを行うことが主流となっています。そのため、自社の企業価値を高めることは、自社の成長や防衛にもつながる重要な経営戦略となっています。

融資を受けやすくなる

高度経済成長期やバブル期には、中小企業も融資を受けやすい傾向にありました。しかし、バブル崩壊以降は長らく不況が続き、2007年のリーマンショックのような金融危機の偶発も相まって、世界経済は不確実性を増しています。そのため、金融機関も企業の将来性や成長性を加味した上で、融資を決めることが一般的となっています。また、企業の将来キャッシュフローの価値を現在の価値に置き換えた企業価値は、わかりやすい融資の判断材料にもなります。

企業価値を高めることは、攻めの経営を行う際に、金融機関から融資を受けやすい状況を作り出せます。最近では、ベンチャーキャピタルの融資によって、事業をスタートするスタートアップ企業も増えています。将来のキャッシュフローの価値を明確にしておくことは、初期段階の企業にとっても重要な経営戦略となります。

中小企業の倒産を防ぎやすい

既にご紹介している通り、企業価値は、金融機関が融資を行う上でも、重要な判断基準となります。また、中小企業においては、融資は企業の存続に大きく関わる要素でもあります。

しかし、中小企業が自社の差別化された技術を確立し、企業価値を向上させることができれば、資本の大きな企業の傘下に入ることも可能となります。その意味でも企業価値の向上は中小企業やスタートアップ企業の倒産リスクを軽減させるメリットがあると考えられます。

企業価値向上の方法とは?

企業価値の向上は、会社の経済活動を活発化させることで可能となります。今回は企業価値を向上させる上で、根本となる企業価値向上施策をご紹介いたします。

収益性の向上

企業価値の向上の基本施策となるのが、収益性の向上です。売上高の向上はもちろん、販売管理費や売上原価、営業外費用などのコスト削減も大切となってきます。また、経営の視点であれば、新たなビジネスモデルの立ち上げや事業ポートフォリオの見直し、経営戦略の見直しなども収益性の向上につながります。

一方、現場の視点であれば、営業力の強化や商品・サービス強化による顧客満足度の向上なども収益性向上に効果があると考えられます。近年では、コーポレイト機能のアウトソーシングや、仕入れ・製造・流通の一本化によるコスト削減も収益性向上に有効とされています。売上高伸び率や売上高経常利益率などの財務指標を参考に、向上施策を実施すると良いでしょう。

投資効率性の向上

投資効率性を向上するには、最適な資産運用が必要です。その際に対象となる資産は、固定資産と流動資産(事業資産)の2つに分けて、考えることができます。固定資産を適切に運用する場合、保有する固定資産がキャッシュインフローを生み出しているかが重要です。また、売却によるキャピタルゲインが見込めない固定資産は、早期のうちに処理してしまうのが得策です。将来キャッシュフローインの見込みがない固定資産は寝かしておくよりも、売却により得た資金で新たな投資を行った方が投資効率性の向上が期待できます。

流動資産(事業資産)を適切に運用する場合、「早期に代金を回収できるかどうか」が重要です。その対象となるのが、在庫などの売上債権の圧縮です。これらの具体的な方法としては、ABC分析に基づいた在庫管理の徹底やジャストタイムの仕入れ体制の確立、セールなどによる在庫の一掃などが考えられます。

また、投資効率性を高める財務指標としては、在庫回転率、売上債権回転率、固定資産回転率、総資本回転率などが挙げられます。これらの財務指標からもわかるように、いかに保有資産を効率的に回転させることが、投資効率性を向上させる重要な要素となります。

財務の最適化

企業価値の向上施策として、有効な手段のひとつが財務の最適化です。財務の最適化においては、「財務のテコの原理」と「負債の節税効果」が挙げられます。

前者は、ROA(純資産利益率)と支払利息率のバランスを利用して、有利子負債(借り入れによる資本金)をコントロールすることで、ROE(当期純利益/株主資本)を増減させることができます。後者は負債を増やすことで、有利子負債にかかる支払利息を損金算入として計算し、納税免除が適用される税法上の施策です。「本来、支払わなければいけないキャッシュアウトフローが免除になる(合法の上)ことは、その余剰資金が企業の利益に直結することを意味します。

このように、有利子負債(借入)が多ければ多いほど、企業価値の向上や収益性の向上に寄与する場合があります。これらの手法は主に上場企業が用いる手法としても知られていますが、適切な知識がないまま運用すれば、脱税につながりかねません。財務の最適化を測る際は税理士に監査してもらい、適切な会計処理として認定を受けることが重要です。

従業員エンゲージメントの向上

従業員エンゲージメントとは、コンサルティング会社『ウイリス・タワーズワトソン』によって、提唱されたビジネス関連用語です。従業員ひとり一人が企業の戦略や目的を理解した上で、自身のパフォーマンスを最大化させる従業員の貢献意欲を指します。この従業員エンゲージメントは企業の売上高向上と密接に結びついており、相関関係があると証明されています。

グローバルで通用する従業員エンゲージメントに影響する要素として、リーダーシップ、適度なストレス、業務量のバランス、ゴール・目標の明確化、上司との関わり方、企業イメージ・ミッションが挙げられます。これらの要素を踏まえつつ、優れたリーダーシップを発揮できる人材の育成と、職場環境を構築することは、人的魅力を持つ人材を抱えた会社を生み出し、企業価値の向上につながると考えられます。

【参考】従業員エンゲージメントの意味とは?影響する要素、高めるポイントをご紹介/BizHint HR

バリュードライバーを対象とした施策の実施

バリュードライバーとは、企業価値に大きな影響を与える勘定科目を指します。バリュードライバーとして重視される勘定科目は、売上高成長率、営業利益率、支払税率、運転資本、設備投資、加重平均資本コスト、そして競争優位期間(製品ライフサイクル)が挙げられます。これらの勘定科目の数値がどれくらい低下すれば、企業価値の毀損につながるかを把握しておくだけでも意味があります。

バリュードライバーを基準とした企業価値向上施策を実施する企業も多く、実務を行なう上でも重要な判断基準にもなります。

企業価値向上施策を実践している企業事例

企業価値の向上は、経営者にとって、重要な経営戦略のひとつと認識されています。今回は優れた企業価値向上施策を実践している日本企業の事例をご紹介いたします。

株式会社リコーの企業価値向上施策

光学機器・事務機器の大手メーカーである株式会社リコー(以下、リコー)では、事業成長と一体となった企業価値の向上を実践しています。人材や資源、社会貢献、事業活動などの資本・経営資源のインプットを通して、リコーが掲げる価値観「リコーウェイ」の基、自社が持つ技術力、環境経営、お客様との接点力というバリュードライバーを最大化しています。

これらのエネルギーが基盤事業の強化・新規事業の立ち上げにつながり、価値の創造(顧客・株主・従業員・社会)というアウトプットとなる経営スタイルを貫くことを可能としています。アウトプットで得た利益は、更なるインプットとして活用していくリコー独自の企業価値向上サイクルとなって、経済活動が持続されます。

また、リコーはROE(当期純利益/株主資本)向上への取り組みを強化しており、株主還元の考え方を重視している企業としても知られています。

【参考】株式会社リコー 企業価値向上に向けて

オムロン株式会社による企業価値向上の取り組み

日本の大手電機機器メーカーのひとつであるオムロン株式会社(以下、オムロン)は、事業の成長・経営管理・変化対応力の3つを重視し、企業価値の向上に取り組んでいます。

事業の成長という視点では、事業の強み(技術力・ものづくり力・ソリューション展開力)を活かし、事業の拡大、収益性を向上させ、株主の期待に応えることを目的にしています。

経営管理においては、資本を有効活用し、売上総利益率、営業利益率、ROE、ROIC(投下資本利益率)をバリュードライバーと位置付け、効率性を上げる経営管理を目指しています。

そして変化対応能力は、東日本大震災で得た教訓を活かし、政治・災害リスクを想定した供給責任力と位置付けています。海外生産拠点のひとつであるタイで起きた2011年の洪水被害に対しても、迅速な部材調達を実施したことで、高い評価を受けています。

【参考】オムロン株式会社 企業価値向上に向けて

株式会社ローソンの企業価値向上の取り組み

コンビニエンスストア大手の株式会社ローソン(以下、ローソン)では、発注精度の向上、マルチフォーマット戦略(異なるニーズに合わした複数業態の展開戦略)、CSR(企業の社会的責任)を基に、既存店フランチャイズオーナーの収益拡大に努めています。また、M&Aや事業提携の実施、収益重視の出店、積極的な海外戦略の3点に絞ったROI(投資収益性)の向上を企業価値の向上施策として位置付けています。

ローソンはコンビニエンスストア業界の中でも、いち早くマルチフォーマット戦略を採用し、他者との差別化を明確化することで、自社の成長性を市場に示してきました。この独自のマルチフォーマット戦略の実施もローソンの企業価値向上につながる大きな要素として、評価されています。

【参考】株式会社ローソン 企業価値向上へのローソンの一貫した取り組み

まとめ

  • 売上や利益の向上はもちろん、環境問題への配慮やガバナンスの強化など企業に求められる社会的責任の範囲は、日々拡大している傾向にあります。
  • 不確実性が増す世界経済の中で、最善の経済活動を行い、企業を存続させる上では、企業価値の向上は必要不可欠と考えられます。
  • 企業価値を正しく理解するためには財務指標の基礎を知っている必要があるため、財務知識も同時に身につけておかなければなりません。

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