インテグリティ
インテグリティとは経営やビジネスの世界でよく出てくる言葉であり、マネジメントを行う者に絶対不可欠な資質であるといえます。日本語に直すといったいどのような意味なのでしょうか。なぜ人事や、会社にとってインテグリティが非常に重要視されているのでしょうか。本記事にて解説します。
インテグリティとは何か
まずは、インテグリティの基本的な意味を確認しておきましょう。インテグリティとは整合性や統合性と言った意味を持つ英単語です。 インテグリティの日本の辞書的な意味は「高潔さ、真摯さ」とされています。
雇用における3つの資質
雇用にかかわる人は現在と将来の会社の土台、骨格を作っていく責任があります。
ですから人事担当の方一人一人が担う責任はかなり大きなものなのです。そのような人事担当者が持っているべき3つの資質とはいったい何でしょうか。
能力やスキルももちろん大事ですが、インテグリティと関係している点をご紹介していきます。
高潔さ
インテグリティは高潔さや真摯さと深いかかわりがあります。高潔さが欠けると知性や活力があっても会社にとっては悪い力しか発揮しないことになります。
高潔さとは良い人柄を持っており利欲のために心を動かさないことを言います。
つまり結果や状況がどうであれ正しいことを考え、行うことが出来るのです。何が正しく何が間違っているかを認識し、犠牲を払うことになっても正しい行動をし、自分の善悪の理解を率直に表明する人は高潔であるといえます。
会社のなかでリーダーとなる人たちには特に高潔さが重要です。
とっさの判断でも正しい適切な行動が取れる人は知性や活力を存分に会社の成長のために生かすことが出来るでしょう。
知性
人間の知性は、言語学的知性・論理数学的知性・社会的知性・情動的知性と言ったものがあります。
もちろんスキルを磨き知識を取り入れ会社で有利な立場で働くためには言語学的、論理数学的知性が必要です。しかし雇用に関係するものはそれだけでは不十分です。
複雑な人間社会を生き抜き、自分と他者を効果的に結び合わせ、良いコミュニケーションを図ることのできる社会的知性や自分の感情をコントロールして適切な行動をする情動的知性も必要です。
いろいろな面で働かすことのできる知性を併せ持っていることで、人の上に立ち、評価する立場であっても適切な判断、正しい行動が出来るのです。
この知性は会社の土台を固めていくうえで非常に重要な要素です。
活力
人事にかかわる人は、最高の利益を生み出すために人や組織をうまく使う必要があります。
そのため部下のモチベーションを高め、活力を引き出すことが必要でしょう。
しかし、他の人の活力を引き出すには自分自身の活力がみなぎっていなければなりません。
部下は上司の姿を見て育成されていきます。
働くための力、行動力となる活力は仕事に従事する組織内すべての人間のモチベーションを高め、仕事への積極性を高め、会社の業績を上げていくことにつながります。
インテグリティとインティマシ-
ビジネスにおいて重要視されるものにはインテグリティのほかにインティマシーというものがあります。
インテグリティは定義しにくく日本語に訳すのも非常に困難な語ですが、しいて言えば、人として一貫性があり自分の善悪の認識に基づいて正しい判断と行動が出来るということです。
インティマシーとは人間の関係性や親密性のことです。
ビジネスの場では「カスタマーインティマシー」という言葉が良く用いられており競争社会において顧客との親密な関係を築くことが勝ち上がるための秘訣であると考えられています。
社会の中ではインテグリティとインティマシーのどちらかにウエイトが置かれており一般家庭の中では、何が正しいかということではなく人と人との関係や親密さに重点を置くというインティマシーの方が優位に置かれているようです。
日本やアメリカ、イギリスでもそれぞれ文化が違うためどちらを重視しているのかを理解することでよりビジネスシーンでのコミュニケーションがうまくいくと言えるでしょう。
つまり雇用にかかわる人はインテグリティとインティマシーのどちらを持っているべきであり、相手に合わせて重視ポイントを変えていくことでグローバルシーンでもあらゆるビジネスシーンで生き残っていくことが出来ると考えられています。
インテグリティとコンプライアンスの関係
このインテグリティという概念は近年の企業が抱えうる「コンプライアンス問題」にも直結し、ひとつの解答を得られる言葉でもあります。
SNSなどにおける「炎上」をはじめとした問題に対しても、インテグリティという概念が備わっていれば解決していくことが可能となるでしょう。
インテグリティを定義した二人の人物
インテグリティは、ウォーレン・バフェットやドラッカーが提唱し始めた概念です。ウォーレン・バフェットはインテグリティを会社経営において欠かすことができないものだと考え、特に人を雇う際に重要な考え方だと説きました。
人を雇う際に「高潔さ(インテグリティ)に欠ける人」を雇ってしまうと、会社組織に危険が及んでしまうとバフェットは言っています。
一方のドラッカーも、バフェットが提唱したインテグリティを著書などの中で好んで使い、インテグリティという言葉の普及を進めました。ドラッカーもまた、インテグリティが経営に必要な要素であると説いています。
しかし彼はインテグリティを「具体的に定義することは難しい」としています。これは、「高潔さ」「真摯さ」といった言葉に具体性がなく、また具体的にどういった状態が高潔であり真摯なのかということが分かりにくいためかもしれません。
インテグリティの重要性
インテグリティは、西欧文化であるとも考えられているほど、日本ではまだなじみがなく、定義もしにくい言葉ですが、米国企業の経営方針や行動規範の中では頻繁にインテグリティが用いられているほど重要視されている言葉です。
世界一の投資家と呼ばれたウォーレン・バフェット氏は、人を雇うときには高潔さ、知性、活力を求めるべきだが、高潔さに欠けていれば他の二つの資質は損害をもたらすものとなる、と述べました。
この言葉を好んでピータードラッカーは「現代の経営」という本の中で高潔さ、つまりインテグリティこそが雇用に関係する人にとって最も重要な資質である、と述べています。
さらに、いかに知識や才気があってもインテグリティが欠けていれば組織が腐敗し、反対に無能で頼りなく不作法であっても真摯さがあれば許される、とも述べています。
インテグリティとは具体像がつかみづらいものですが人を雇う際、リーダーを選ぶ際非常に大切で決して見逃せない資質であることがよくわかるでしょう。
インテグリティのある状態・ない状態とは
インテグリティが「ある状態」と「ない状態」とはどのような場合のことを指すのでしょうか。まずインテグリティがある状態を考えていくうえで、基本的な意味である「高潔さ」「真摯さ」に主眼を置くとき、経営のあるべき姿が見えてきます。
インテグリティの「ある状態」とは?
「ある状態」とは「公正、公平な経営が維持されている状態」だと考えられます。この「公正、公平な経営」は、会社の不祥事などの問題を事前に摘んでしまう役割も果たし、結果として会社に対して多大なベネフィットをもたらします。
インテグリティがない状態とは?
またドラッカーは「インテグリティがない状態の方が定義は容易い」ということも言及しています。
インテグリティがない状態とは、経営においては「公正、公平な経営ができていない」ことを指しますから、会社においては遅かれ早かれ様々な問題が噴出します。
前述した高潔さや真摯さが欠如している状態であり、容易に定義することができます。
SNSにおける「炎上」などを含めた様々な不祥事が起こることで、最悪の場合経営が傾いてしまうということも考えられます。
世間における会社の不祥事には様々な原因がありますが、その根本の一つが「インテグリティがない」ことに起因するものも少なくないでしょう。
インテグリティを念頭に置いた会社経営
経営に欠かせない要素
インテグリティは、会社が順調に経営していくために欠かせない考え方です。
インテグリティの考え方は一朝一夕に身に着けられるものではないので、会社の中でインテグリティを高められる環境づくりをしていく必要があります。
そして環境づくりにおいて最も必要なのは、インテグリティを理解し、正しく実践していくことができる人材育成です。
育成者自らがそれを知ることが重要
インテグリティを遵守できる人が揃うことで、会社は自然とインテグリティを高められる環境へと変わっていきます。
そしてインテグリティを理解した人材を育成するためにも、その役割を担う人事がまずインテグリティを学ばなければならないのです。
インテグリティの有無を見極める方法
あまりに漠然としており、定義もしづらく、ピンと来ないインテグリティを対象者が持っているのかどうかを言極めるにはどうすればよいのでしょうか。
ピータードラッカーは著書の中でインテグリティの有無を見極める方法の具体例をいくつか記してくれています。一つずつ見ていきましょう。
人の強み/弱みどちらの側面に焦点を合わせるか
まず、人の強みではなく弱みに焦点を合わせるものはインテグリティが欠けているといえます。
誠実で高潔な人は人の弱みではなく強みに目を向けそこを引き延ばそうとしてくれることでしょう。
弱みに焦点を合わせる人は間違っているばかり無責任です。本当に真摯なひとであれば人間の弱みを認めたうえで、鋭い洞察力を示し、部下の強みを生かし、弱みをカバーするために動くことでしょう。
そうすることで会社全体がより良い運営を行うことが出来るでしょう。
何が正しいかと考えるかだれが正しいかと考えるか
インテグリティを持たない人は、誰が正しいのかという点に注目します。
しかし重要なのは人ではなくものです。人は時に間違えることがあり、正しい判断をいつも下せるとは限りません。
人の判断に左右されているようであれば、適切な判断を下すことは不可能でしょう。
何が正しいのかをあらかじめ認識し、その認識に照らし合わせて遭遇した状況での適切な判断、正しい行動が出来る人こそインテグリティを持っている人だといえます。
頭の良さを重視するか
真摯さ、高潔さではなく頭の良さを重視する人はその人自身がインテグリティにかけていることを示しています。
本当に真摯な人は部下として人を選ぶ際、会社に取り入れる人材を選ぶ際にも良い資質を持っている人に注目するからです。
いくら頭が良くても高潔さに欠けているならば、バフェット氏が語った通り組織を破壊し、業績を低下させる存在になってしまうことでしょう。
ですから、人事を担当するものは特にインテグリティを持っているべきであり、高潔な人材を採用するという役割があるのです。
仕事への高い基準を持っているか
自分に与えられた仕事に高い基準を設定しているでしょうか。
そうしていないのであればインテグリティが欠けていることになります。基準がなければ仕事の責任を放棄したり、向上心を失ったり、さらには「さぼる」ことにもつながりかねません。会社の業績は低迷し、周りの従業員のモチベーションを下げてしまうことにもなります。
しかし、仕事に自ら基準を設定し維持することで、高潔な仕事を行うことが出来ます。会社の信頼を構築し確実な仕事を行うことでより高い評価を得られることでしょう。
まとめ
インテグリティを重要視してはじめてまともな会社と言える、とも言われるほど会社経営にインテグリティは不可欠なものです。
定義しにくい分人事の際に注目するのは困難なことと言えるかもしれませんが、会社の経営を安定させ、様々な不祥事、問題の目を早めに摘み取るためには従業員一人一人のインテグリティが必要です。
ですから人事を担当するものはあらかじめインテグリティを身に着けて起き、採用の際にはインテグリティを持っている人を見極めていくことが求められています。
インテグリティはグローバル化が進むなか企業間競争において戦略を立てていくうえで、これからも非常に重要なものとなっていくことでしょう。
戦略・経営の記事を読む
- サステナビリティ
- コア・コンピタンス
- センスメイキング
- サプライチェーン・マネジメント
- ステークホルダー
- バランス・スコア・カード
- バリュー・チェーン
- ターンアラウンド
- プロ経営者
- タスクフォース
- PMI
- 2020年問題
- ストックオプション
- 戦略マップ
- 合弁会社
- 予算管理
- 経営力向上計画
- ハインリッヒの法則
- CHRO(最高人事責任者)
- コンプライアンス
- 多角化
- 人事部 役割
- クロス・ファンクショナル・チーム
- ミッション・ビジョン
- 顧問
- 顧問契約
- 7S
- 経営理念
- HRビジネスパートナー
- VUCA
- コンプライアンス違反
- 事業計画書
- アカウンタビリティ
- クレド
- 事業承継
- 財務会計
- 健康経営
- インセンティブ制度
- 経営ビジョン
- 経営計画
- ゆでガエル理論
- 投機的リスク・純粋リスク
- 執行役員
- エコシステム
- ファブレス経営
- 経営資源
- 採用 業務
- エフェクチュエーション
- 外食産業
- ロイヤルティ
- タレントプール
- 社内ベンチャー
- リクルーティングの意味とは
- 後継者育成
- 人材戦略
- ケイパビリティ
- ミッションステートメント
- 人材ポートフォリオ
- クライシスマネジメント(危機管理)
- グローバル人事
- 日本的経営
- カーブアウト
- リスクマネジメント
- プロ・リクルーター
- ISO29990
- グローカリゼーション
- リストリクテッド・ストック
- オフショアリング
- シナジー効果
- 事業ドメイン
- アントレプレナーシップ
- 企業価値
- 全体最適
- 選択と集中
- カンパニー制
- 間接部門
- スケールメリット
- プロダクトライフサイクル
- CSR(企業の社会的責任)
- レイオフ
- MOT(技術経営)
- マネジメント・バイアウト(MBO)
- 内部統制
- デューデリジェンス(DD)
- 役員
- M&A
- 廃業
- リアル・オプション
- リソース・ベースト・ビュー
- 経営管理
- コングロマリット
- FLコスト
- 財務諸表
- 顧客満足
- キャッシュ・フロー計算書
- コーポレート・ガバナンス
- 経営課題
- 経営分析
- BCP(事業継続計画)
- 事業戦略
- 原価率
- ポーターの基本戦略
- 持株会社
- コーポレート・ファイナンス
- 貸借対照表
- 人件費
- コーポレートアイデンティティ
- 業務提携
- 財務管理
- カニバリゼーション
- 固定費
- ブランド戦略
- 管理会計
- 財務指標
- 営業利益
- フランチャイズ
- 損益計算書
- 粉飾決算
- ドミナント戦略
- 限界利益
- 戦略人事