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2018年12月20日(木)更新

財務指標

会社にも健康診断があるのを知っていますか?財務指標とは、会社の経営状況を健康診断のように客観的に数値で表すものです。財務指標を用いた財務分析は会社の現状をとらえ、未来をデザインするために必須の知識です。本記事では、重要な財務指標を例示して具体的な分析の仕方、改善行動の方向性までを解説します。

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財務指標とは

「財務指標」とは、会社の経営状態を把握し分析するために、決算書等から導いた数値のことをいいます。さらに、財務指標を用いて自社の経営状況を客観的に分析すること、そして分析によって得られた情報に基づき将来の経営を考えることを「財務分析」、あるいは「経営分析」と言います。

このことは、よく健康診断に例えられます。体の健康診断と同じように、経営状態を客観的な数値で表すことによって現状を正確に把握することができます。例えば、「なんとなく顔色が悪い」「だるい」「頭が重い」というよりも「血糖値が正常範囲を超えて高い」というほうが客観的で説得力があります。

また、経営上の課題はもちろん強みを認識するという点でも、数値を用いることによってかなり緻密に分析をすることもできるのです。

財務指標の重要性

財務指標が無ければ、経営判断の根拠は勘や経験のような抽象的なものに頼るしかありません。しかし、残念ながら勘や経験は再現性が高いものではないのです。その意味で、財務指標はいかなる時にも客観的な経営判断の材料となりうるものです。再現性が高く、多くの人の理解を得やすい情報となります。

指標の示す意味を真摯に受け止めて実直に経営改善に役立てていくことが、経営者に対して求められる姿勢です。

具体的な指標を理解して自社の数値を把握してください。そこで終わるのではなく、さらに強みや弱みを分析して、次にどうしたら良いのかを考えます。そのための材料となることを考えると、財務指標がいかに重要なものかが納得できるでしょう。

覚えておくべき財務指標一覧

財務指標は基本的には財務諸表の数値をもとに計算します。具体的に示していきますので、財務諸表を手元において、実際に計算しながら確認してみてください。

【関連】財務諸表とは?構成や読み方、分析方法まで基礎知識を徹底解説/BizHint

収益性分析

収益性は、企業が利益を獲得するために投下した資産や資本に対して、実際にどれだけの利益を上げているか、また売上高に対してどれだけ利益があるかによって表されます。

当然、収益性は高ければ高いほど良い、ということになります。

総資産利益率(ROA)

総資産利益率は、既存の資源を活用してどれだけ利益を生み出す力があるのかを見ることができる指標で、ROA(Return on Asset)とも呼ばれています。

  • 総資産利益率=経常利益÷総資産

分子に用いる利益額は、経常利益以外にも営業利益や当期純利益を用いることができます。

これらの利益は損益計算書で段階的に計算されます。このように様々な角度から分析することによって損益の構造を把握することができ、経営管理に一層役立てることができます。

それぞれの利益の意味は以下のとおりです。

  • 営業利益:
    売上高から仕入高や製造原価、販売・管理費など生産販売活動にかかる費用を除いた額。
  • 経常利益:
    営業利益に受取利息や支払利息など金融活動にかかる収支を加減した額。毎期継続、反復する活動から生み出した利益を示すもの。
  • 当期純利益:
    臨時的な損益や税金も全て加味した最終的な利益。

自己資本利益率(ROE)

  • 自己資本利益率=当期純利益÷自己資本

自己資本利益率は、株主の立場から見て、出資した金額に対してどれだけのリターンが得られたのかを測る指標です。ROE(Return on Equity)とも呼ばれ、投資家にとっても馴染みの深い指標です。

売上高利益率

売上高利益率は、活動区分ごとの利益構造を把握することができます。

  • 売上高営業利益率=営業利益÷売上高
  • 売上高経常利益率=経常利益÷売上高
  • 売上高当期純利益率=当期純利益÷売上高

例えば、同業他社と比較して売上高営業利益率は高いが売上高経常利益率が低くなっているような場合を想定します。この場合には、生産販売活動から獲得できる収益力は優位であるものの、金融活動では遅れをとっていると分析できるでしょう。借入利率の見直しや余剰資金の運用による利息の獲得が必要になります。

安全性分析

安全性分析とは資産、負債、資本の状況から会社の財務面での安定度を分析するための比率分析です。

ここでいう安定している状態とは、借金体質に陥らずに健全な財政運営ができていることを指します。財務面の安定度は、短期的な観点と長期的な観点の両面から判断する必要があります。

短期的な安定性を測る指標

短期的な安定性を測る指標として、売上債権対買入債務比率、および買入債務対棚卸資産比率があります。

  • 売上債権対買入債務比率=売上債権÷買入債務

売上債権とは、受取手形や売掛金のことで、買入債務とは支払手形や買掛金のことを指します。

売上債権対買入債務比率は、商品売買から発生する債権と債務の比率を表します。商品売買取引から生じる債権・債務は日常的に反復して発生し、そして消滅することを繰り返します。

これらの比率を見ることで、短期的な債権と債務がおしなべてどちらがどれくらい大きいのかを把握することができます。

数値が小さいほどそれだけ債務の方が債権よりも大きいことを示します。取引条件などを見直してできる限り債務を圧縮した運営を目指しましょう。

  • 買入債務対棚卸資産比率=買入債務÷棚卸資産

買入債務対棚卸資産比率は、日々の商品仕入や製品生産がどれくらい負債に依存しているのかを把握できます。

数値が大きいほど負債に依存しているということになります。迅速に決済できるように資金を潤沢にする必要があります。

長期的な安定性を測る指標

短期的安定性指標は、概ね1年間といった短いスパンでの安定性を見るものでしたが、それに対して長期にわたって安定しているかどうかを判別することも必要です。

その場合は固定資産と資本との関係に着目する指標を用います。

  • 固定比率=固定資産÷資本
  • 固定長期適合率=固定資産÷(資本+固定負債)

固定比率および固定長期適合率は、いずれも長期にわたって利用できるお金と実際に利用している固定資産の対応関係を示します。

本来、長期的に利用する固定資産は長期資金によってまかなうことが、金融面での安定につながります。これらの指標は両者の対応関係を測るのに適しています。最も確実に利用できるお金は自己資本ですから、その範囲内で固定資産を運用すること、つまり、固定比率は100%以下であることが望ましいとされています。

仮に固定比率が100%を超えているとして、さらに固定長期適合率も100%を超えているとすれば、それは日々の運転資金が固定資産に充当されていることを意味します。この状態は資金不足に陥るリスクがあり、望ましくありません。最悪の場合でも、固定資産長期適合率が100%を超えないようにコントロールすることが必要です。

これ以外にも、負債と資本の構成割合も長期的な安定性指標になります。負債は利息負担を発生させますので、財務的には負債は少ないほど良い、ということが言えます。

  • 自己資本比率=資本÷(負債+資本)
  • 負債比率=負債÷(負債+資本)

自己資本比率も負債比率も、資金調達総額のうち資本や負債がどれくらいあるかということを示します。

流動性分析

流動性分析は短期的な支払い能力を見るものです。最も一般的に使用される指標として、流動資産と流動負債の割合である流動比率があります。

およそ1年以内に支払期限が到来する債務に対して、すぐに現金化して支払に充てられる資産がどれだけあるのかを示します。

流動比率は、かつてアメリカの銀行家が融資の可否を判断するために開発した指標とされており、「銀行家比率」とも呼ばれています。

  • 流動比率=流動資産÷流動負債

流動比率は、100%以上が必須で150%以上が望ましく、200%以上が優良とされていますが現実的には200%以上となることは滅多にありません。同業他社や標準値と比較をしながら、できる限り高い水準を目指しましょう。

成長性分析

成長性は未来への発展可能性について示すものですが、もちろん、財務諸表は基本的には過去情報の蓄積ですから、未来の数値を直接導くことはできません。

  • 伸び率=(今年度値―前年度値)÷前年度値
  • 売上高研究費比率=研究費÷売上高
  • 売上高新製品比率=新製品売上高÷売上高

成長性分析は、利益額などの過去からの伸び率や前年度比を用いて傾向を知ること、および研究費や新製品開発などへの投資が未来の成長をもたらすものとして考えます。

生産性分析

生産性の分析は少し難易度が上がります。財務諸表からも若干離れますので、外部からは入手できない情報を用います。そのため、自社の経営分析をかなり詳細に行いたい場合に用いられる手法です。

特に、投入した経営資源一単位あたりの生産効率や、従業員一人あたりの生産効率を把握することが主な目的です。収益性分析とよく似た観点ですが、収益性は「もうけ」である利益のみに焦点を当てるのに対して、生産性は企業活動全体をとらえていることが特徴的です。

生産性は、資産や労働などの投入に対して生み出された「付加価値」の割合として求められます。「付加価値」とは、自社の活動によってどれだけ新たな価値を生み出したか、ということを意味しています。

「付加価値」は次の2通りのいずれかの方法で求めます。

  • 付加価値=売上高-原材料や支払経費等の外部からの購入額
  • 付加価値=人件費+金融費用+賃借料+租税公課+経常利益+減価償却費

付加価値を求めたのち、以下の方法で生産性を測ります。

  • 総資産投資効率=付加価値÷総資産
  • 労働生産性=付加価値÷従業員数

総資産投資効率は投入した資産に対する生産効率を表し、労働生産性は従業員一人当たりの生産効率を表します。

また、売上高に占める付加価値の割合をもって、付加価値率を見ることもできます。

  • 付加価値率=付加価値÷売上高

さらに、付加価値のうち、それがどれだけ人件費に分配されるのか、という観点からの指標として労働分配率があります。

  • 労働分配率=人件費÷付加価値率

財務分析の見方・ポイント

財務指標を算出することはそれほど困難なことではありません。難しいのは、そこから何を読み解くかということでしょう。

指標そのものを眺めていてもあまり得るものはありません。一部の指標では既に述べたとおり基準となる数値が存在するものがありますが、ほとんどの指標ではそこから有意義な情報を得るために、何らかの比較対象が必要です。

比較をするにあたって、何と比較するのかという点からトレンド分析とクロスセクション分析という2つの方法があります。

  • トレンド分析:
    自社の昨年度(あるいは過去数か年)の財務指標を算出してその推移を分析する方法です。
  • クロスセクション分析:
    同業他社や業界平均など自社の外の情報、または自社の複数の部門間で比較して分析する方法です。

業界平均などの情報については、各種機関が独自の調査をもとに公表している資料を用いることができます。代表的なものとして、以下の書籍またはリンクをご参考ください。

このような分析方法を駆使して課題を発見し、具体的な改善行動に結び付けていきます。

以下では、目的ごとにどのような指標を分析してどのように行動につなげていくかについて例示します。

企業の成長・リスク管理を目的とする

今後の成長や財務的なリスクを見るためには、成長性や安全性の分析指標を用います。

主にトレンド分析を用いた伸び率の分析からは、今後の利益推移を見積もることができます。また、売上高買入債務比率や自己資本比率などから将来に向けた財務基盤の盤石さを測ることができ、クロスセクション分析で他社等と比較することによって財務上のリスクを把握することもできるでしょう。

短期的な安定性指標が良くなければ、取引条件の見直しが必要となるでしょう。長期的な安定性の問題であれば、自己資金の増強などを検討するべきかも知れません。

成長性分析では、研究開発費に投資をして将来の成長を促すといった改善策も考えられるでしょう。

1人当たり付加価値額を重視する

従業員1人当たりの付加価値で生産性を管理する方法があります。

労働生産性に関しては他社の数値を入手することは困難なため、部門間で比較するか、あるいは自社のトレンドで見ることが有用でしょう。過去数か年に渡って見直し、生産性がどのように変化しているのかを分析します。

仮に生産性が下がっているのであれば、分母の従業員数の影響がどれだけなのか、分子の付加価値額の影響がどれだけなのかに分けて考える必要があります。

従業員数の影響であるなら、同じ付加価値の獲得に要した人数が大きくなったことを表します。つまり、付加価値を獲得していない従業員の存在がないか、あるいは付加価値を獲得しない時間が発生していないかを確認する必要があるでしょう。

付加価値額の影響であれば付加価値の構成要素ごとにさらに詳細な分析を行い、それぞれに応じた対策を講じることが必要となるでしょう。

ROE/ROAから経営課題を抽出

投資効率を測るのに有用な指標がROE/ROAです。投資効率を測るということは、投資に対してどれだけリターンが得られたのか、ということを意味しますので、結局のところ企業活動全体を評価するのと同じです。

そのため、投資家が投資先を選ぶ際にも参考としている指標です。

ROE/ROAはトレンド分析もクロスセクション分析のいずれも実行可能です。とてもシンプルな指標なので、多くの情報を集めて分析することができるでしょう。

ただし、シンプルゆえにこの指標だけでは具体的な改善行動にまでたどり着くのは難しいかもしれません。まずは全体的な傾向や他社との比較から、相対的なポジションを見出した上で、その原因についてはより細かい指標を使って課題を特定していくというプロセスをたどるのが良いでしょう。

その意味で、最初に概略をつかむために用いる分析手法であると言えます。

まとめ

  • 財務指標とは、会社の健康診断のように経営状況を客観的に数値で表すものです
  • 財務指標には収益性指標、安全性指標、成長性指標などの種類があります
  • 分析手法には過去からの推移を見るトレンド分析や、他社等と比較するクロスセクション分析などがあります
  • 分析で終わらせず、具体的な改善行動に結び付けていくことが最も重要です

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