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2018年11月28日(水)更新

粉飾決算

粉飾決算とは、企業が意図的に行う財務諸表の虚偽表示です。株価維持など企業が粉飾決算を行う目的は様々ですが、いったん発覚してしまうと顧客や利害関係者の信用を失い致命的なダメージを受けます。投資家など利害関係者も大きなダメージを被ることになりますので、粉飾決算を見抜く確かな眼力が必要です。

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粉飾決算とは

投資家など企業の利害関係者は、企業の経営成績や財政状態を財務諸表で分析し意思決定を行います。粉飾決算とは、企業の意図的な財務諸表の虚偽表示です。

粉飾決算の意味

実は、粉飾決算の言葉自体は厳密な意味でいえば会計の専門用語ではありません。専門用語では「財務表の虚偽表示」であり、「不正」と「誤謬(誤り)」に大別されています。

監査基準委員会報告書240(日本公認会計士協会等)の「財務諸表監査における不正」では、次のように定義されています。

財務諸表の虚偽表示は、不正又は誤謬から生ずる。不正と誤謬は、財務諸表の虚偽表示の原因となる行為が、意図的であるか否かにより区別する
「不正」-不当又は違法な利益を得るために他者を欺く行為を伴う、経営者、取締役等、監査役等、従業員又は第三者による意図的な行為をいう
【引用】監査基準委員会報告書240

一般に粉飾決算(又は不正経理)と呼ばれるのは、意図的な(不正による)財務諸表の虚偽表示であり、誤謬(あやまり)による虚偽表示は、「不適切会計」と呼ばれます。

また、用語として「逆粉飾決算」もありますが、この場合は、粉飾決算が収益力や財政状態を実態よりも良く見せること、逆粉飾決算が悪く見せることを意味します。逆粉飾決算は、課税所得が少なくなりますので、税務上の過少申告などの問題が生じます。

粉飾決算の要因

過去の不正会計事件の例を見ても、粉飾決算が発覚すると大きなダメージを負うと解っているにもかかわらず、企業は、なぜ粉飾決算手を染めるのでしょうか。下記のような要因が複数絡み合う事例が多く見受けられます。

資金調達

金融機関などは、企業の正常な収益力と実態バランスを判断して、資金融資の判断を行います。事業の失敗などで収益力や財政状態の劣化が継続すると、事業を進めていくうえでの血液である資金の調達が難しくなります。そのため、スムーズな資金調達が行えるように財務諸表の虚偽表示を行う傾向にあります。

株価操作

株価は企業価値の測る上での重要な指標です。例えば、株価の下落は、資金調達の困難性や経営者個人の報酬の減額などに繋がっていきます。そのため、株価の維持や意図的な上昇を狙った粉飾決算を行う事例が見受けられます。

入札資格

官公庁など、納入業者の入札参加資格要件として、健全な財務状態を求めており、一定の財務指標以下の企業は入札そのものが行なえないことが一般的になっています。民間事業者でも購買取引事業者として登録する場合は、信用調査が行われており、信用調査に基づいた取引条件が設定されることが多くなっています。そのため、中小企業では、粉飾決算を行い財務の脆弱性が露見しないようにします。

不適切会計とは

会計処理ミスなどの「誤り」による財務諸表の虚偽表示は、不適切な会計処理と呼ばれます。発生の要因としては、①事業のグローバル展開に伴う特に海外子会社へのガバナンスの欠如②時価会計や連結会計などの厳格な会計ルール導入に伴う現場や経理部門の対応力不足などがあります。

下記の表からもわかるように、上場企業でも不適切会計を開示する企業は増加傾向になっています。

【出典】株式会社東京商工リサーチ/2017年全上場企業「不適切な会計・経理の開示企業」調査

東芝の事例でも、粉飾決算か不適切会計か議論となり、企業だけでなく投資家、金融機関なども大きなダメージを受けました。誤謬(誤り)による不適切会計によっても企業が存続する上で大きなリスクとなるため、経営層は、内部管理体制の充実を図ることが求められます。

粉飾決算の具体的な手法

ここでは、粉飾決算の具体的な手法として中小企業で散見される3つの手法をご紹介します。

営業など現場や経理が主導する粉飾決算が主流ですが、上場企業では子会社株式などの資産の時価評価やグループ間取引等連結決算処理など、より専門性の高い経理知識を要する粉飾が行われています。

売上の過大・架空計上

お客様に商品やサービスを提供していないにも関わらず、伝票上だけで売上を計上する手法です。

売上は、企業の基本情報であり、件数も非常多く、一つ一つチェックするのは困難となっています。そのため、売上の過大・架空計上は、「やりやすく」「ばれにくい」ため、粉飾決算の典型的な手口となっています。

在庫の過大・架空計上

在庫の過大・架空計上も「やりやすく」「ばれにくい」典型的な手口です。

売上原価(費用)は、「期首在庫+仕入高-期末在庫」で計算されますので、期末在庫を過大に計上すると、売上原価(費用)は減少し利益を計上することができます。棚卸による実在庫の評価額により、売上原価を算定した後に、経理部門の主導によって在庫が帳簿上だけで調整されるケースも多く見受けられます。

費用の繰り延べ

費用の繰り延べ(翌期以降に費用の計上)も良くある手口です。

例えば、減価償却費の場合、法人は、任意償却であり、減価償却費の計上や未計上は任意です。企業が、業績によって減価償却費の計上を調整することは、税法上の問題はありません。将来的には大きな負担となることがわかっていても、目先の財務諸表の体裁を整える企業は少なくありません。

粉飾決算による罰則

ライブドア事件やオリンパス事件など有名企業が手を染めた粉飾決算。粉飾決算が発覚した場合の企業が被るダメージは、①民事責任・刑事責任②株価下落・上場廃止③破産・倒産など、非常に大きなものとなっています。

発覚後は、第三者委員会調査、証券取引等監視委員会等の対応、情報の適時開示、民事及び刑事訴訟対応、マスコミや顧客対応等の様々な課題に直面することになります。

民事責任・刑事責任

粉飾決算を行った場合、企業や経営層は、民事法上や刑事法上の責任を問われることがあります。刑事法上では、会社法上の特別背任罪や有価証券報告書虚偽記載罪などにより懲役刑や罰金刑を受ける可能性があります。

また、会社法や金融商品取引法などにより、株主や債権者などから経営者個人に損害賠償の請求をされる可能性があります。

株価下落・上場廃止

粉飾決算は財務諸表の偽装開示であり、財務諸表の信頼性が無いと判断されると、投資家はその企業の株式を売却します。結果として、株価は大きく下落し、企業価値は大きく損なわれることになります。

また、悪質性が高いと判断されると、売買をする時は警戒が必要と周知するために用意された「監理銘柄」に指定され、上場廃止が現実味を帯びてくる可能性があります。

資金難による倒産

もっとも大きなダメージは、社会的な信用を失うことです。粉飾決算が発覚すると顧客離れによる売上減少や金融機関の融資ストップなどにより、企業は資金難に直面いたします。資金が調達できなければ企業は事業継続できず、残された選択肢は破産や倒産しかありません。

ただ、商品やサービスに市場価値があり、粉飾決算が特定の経営層の責任などである場合は、違う経営層の元で再生できた事例もあります。

粉飾決算をはじめとした不正会計を防ぐためには

粉飾決算であれ不適切会計であれ、財務諸表の虚偽表示は企業や経営者と株主等利害関係者の両方に大きなダメージを与えます。粉飾決算と不適切会計の境目は非常にグレーであり、両方の用語とも会計用語でなく一般用語のため、その解釈や使い方も人によって様々です。実際、東芝事件では両方の用語が使われました。

一般的には、

  1. 経営層(特に経理部門トップ)が関与しているか
  2. 経営層の刑事責任を問えるか
  3. 財務諸表の虚偽表示を企業(経営層)自ら公表したか

などによって区別されています。そのため、不適切会計については、企業(経営層)が不適切会計を許さない企業風土や仕組み構築が求められます。

企業(経営層)が意図的(不正)に行う粉飾決算については、企業の自浄努力は期待出来ませんので、株主など企業外の利害関係者は、粉飾決算を見抜く分析手法などを身につける必要があります。

不適切会計を防ぐには

不正は、「動機」「正当化」「機会」の三つの要因が組み合わさることで発生します。企業は、この要因を少しでも減らす取り組みが求められます。

企業風土を変える

不適切会計の背景の一つに、経営レベルで利益至上主義に陥っていることがあります。極端な利益至上主義は、架空売上など不適切会計の温床になります。経営層は、不適切会計による影響などを充分に理解し、コンプライアンス順守など従業員に周知徹底し、不適切会計を許さない企業風土作りが重要となります。

内部統制・内部通報制度

企業風土の醸成と併せて、内部統制の仕組みを構築することも重要です。内部統制の仕組みを構築し、実効性のある運用を徹底することで、従業員や経理部門が不正できる機会を減らしていくことが、内部統制の役割です。

しかし、不適切会計は、内部統制の外で行われることも多く、内部統制内の監査等では発見が困難なことがあります。そのためには、不正はその兆候が財務諸表にあらわれることを前提として、子会社や事業部門の財務諸表を分析し、内部統制の限界により生じた不正会計を事後的に把握する仕組みが必要となります。

また企業内外からの関係者から不正に関する情報を吸い上げる手段としての内部通報制度を併用することは有用な手段となっています。

粉飾決算を見抜くには

粉飾決算は、経営レベルで行われる意図的(不正)な財務諸表は虚偽表示です。経理部門が専門的知識を駆使した粉飾決算もありますので、粉飾決算を見抜ける眼力が無ければ、株式投資の失敗や貸付金や債権の貸倒れなどの経済的な不利益を被ることになります。

財務分析

虚偽表示されていても財務諸表は、粉飾決算を見抜く上で最も重要なツールとなります。経営指標と同業他社比較や時系列比較など分析手法と組み合わせて粉飾決算の可能性を探ることができます。

  • キャッシュ・フロー計算書による分析
    粉飾決算を行ってもごまかせないのが現預金の数値です。キャッシュ・フロー計算書の分析をまず行います。損益計算書や貸借対照表はごまかせても、キャッシュ・フロー計算書はごまかすことはできません、営業CF也やFCF(フリーキャッシュフロー)の赤字が継続しているようだと財務の健全性は厳しいと判断し、粉飾決算の可能性を疑います。
  • 経営指標の分析
    粉飾決算の常用手口である売上や在庫の架空・過大計上は経営指標を分析します。売掛金回転期間や棚卸資産回転期間を時系列比較や同業他社比較で分析し、数値が悪化していないかどうかを確認しましょう。
  • 費用の分析
    販売費及び一般管理費の内訳を時系列で比較します。減価償却費など経費の計上時期のデコボコあったりすると粉飾決算の可能性を疑います。また、仮払金や貸付金など営業取引以外の勘定科目が増えている場合は、費用の計上漏れが疑われます。
  • 個別注記表の確認
    上場会社など公開会社は、個別注記表の確認も大切です。特に「重要な会計方針に係る事項に関する注記」については、同業他社と比較して特異性が無いかどうかを確認しましょう。近年会計処理の複雑性が増していますので、例えば見積りを基礎として会計処理をした事項などには特に注目します。

訪問などによる現況確認

粉飾決算を行う企業は、資金繰りが苦しかったり、売上不振により倒産の危機に瀕していたりする企業も多いです。金融機関や取引先の立場であれば、企業訪問や情報収集により、倒産リスクの前兆を把握することも重要です。

事業所の雰囲気や人材の流出状況の確認、支払い条件の変更などの取引先からの情報収集は粉飾決算を見抜く有効な手法です。

まとめ

  • 粉飾決算も不適切会計も「不正」と「誤謬(誤り)」の違いはありますが、財務諸表の虚偽表示であることは同じになります。
  • 架空決算の典型的な手法は、売上の過大・架空計上、在庫の過大・架空計上及び費用の繰り延べです。
  • 架空決算が発覚した場合、法的責任の発生、株価下落・上場廃止及び破産・倒産など致命的なダメージを受ける可能性が高まります。
  • 不適切会計と粉飾決算の境目はグレーであるため、不適切会計であっても経営者など企業内部関係者や株主等外部関係者に重大なダメージを与える可能性は高くなります。
  • 不適切会計については、経営層による不正を許さない企業風土づくりや内部統制の仕組み構築が必要です。
  • 株主など外部関係者が粉飾決算による被害を受けないためには、粉飾決算を見抜く手法や訪問などによる情報収集が重要になります。

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