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2018年11月21日(水)更新

M&A

新興企業の新規参入やイノベーションによる業界の変化により、企業を取り巻く環境は日々厳しさを増しています。そのため、負のイメージが強かったM&Aを企業再生や事業承継、事業拡大の手段として活用する企業が増えています。今回はM&Aの意味や目的、メリット・デメリットだけでなく、M&Aの流れから成功ポイントまで幅広くご紹介いたします。

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M&Aとは

元々、外国企業が活用していたM&A。近年では日本企業も積極的に活用するようになりました。M&Aの意味や種類、注目されている背景、業務提携との違いを知ることで、理解を深めることができます。

M&Aの意味

M&A(Mergers & Acquisitions)とは、2社以上の企業による合併や吸収、資本による企業買収を指す経営用語です。広義の意味では、業務提携などもM&Aに含まれます。

M&Aは、企業の持つ既存事業の強化や他の市場への新規参入、不採算事業の整理などの目的で活用されますが、近年では後継者問題が深刻である中堅中小企業の事業承継 を行うための方法として取り入れられており、 日本が誇る”モノづくり”の高度な技術・経験を後世に残すことができる経営戦略のひとつとしても注目されています。

その手法も、買収(株式取得参加、事業譲渡、資産買収)、合併(新設合併、吸収合併)、分割(新設分割、新設吸収)と幅広く、目的に応じて実施できることも、注目を集めている要因といえます。

また、資本主義下における株式会社の経営権を掌握する手段としても積極的に用いられ、一般的には以下の手法でM&Aが実施されています。

テイク・オーバー・ビット(TOB)

テイク・オーバー・ビット(Take Over Bid)とは、買収先企業の株式取得を公告し、不特定多数の株主から金融商品取引所を通さずに、直接株式を取得する、株式公開買付(以下、TOB)を指します。TOBは、金融商品取引所で取引されている株価よりも上乗せされたプレミアム金額で買付を行うことが一般的です。

TOBの中でも、買収側と買収対象側の経営陣が納得した上でのM&Aは友好的M&Aと呼ばれ、日本で行われているTOBの大半を占めています。一方で、買収対象側の経営陣に承諾を得ることなく、実施するTOBを敵対的M&A(敵対的買収)と呼ばれています。主に買収対象企業の保有する物的資産、経営資源の獲得を狙う、買収後に企業価値を高めてから、再び第三者に売却することで利益を得る目的で実施されます。

敵対的M&Aを仕掛けられた企業は、元株主が有利に新株を購入できるポイズンピルや敵対的買収者の株式を取得するパックマンディフェンスなどの買収防衛策(買収対抗策)を実施します。また、敵対的M&Aには買収対象側への通知、株式公開買付告知を行わない委任状略奪であるテンダー・オファーや、買収対象企業への通知、買収価格の提示を行うベアバックなどがあります。

マネジメント・バイアウト(MBO)

マネジメント・バイアウトとは、オーナー経営者や経営陣、従業員が自社株式を買収するM&Aのひとつです。

銀行や投資ファンドから資金調達を行い、自社の事業もしくは企業全体の経営権を掌握することで、短期志向のステークホルダー(株主や個人投資家)の意向を気にすることなく、中長期成長戦略の実施や意思決定の迅速化を促進できます。経営を取り巻く市場環境に柔軟に対応する上でも、経営体制の見直しや上場企業に課せられる情報公開の厳格化への対応としても注目されているM&Aです。

また、株式公開(株式上場)によるメリット(会社の知名度の向上や資金調達、従業員のモチベーションの向上など)が低下していると判断する企業も多く、マネジメント・バイアウトを実施する日本企業が増えています。

【関連】マネジメント・バイアウト(MBO)とは?メリットや実施方法、事例をご紹介/BizHint HR

M&Aが注目される背景

近年、M&Aは企業の重要な経営戦略のひとつとして注目されており、M&A案件の年々増加傾向がみられます。M&Aが注目される背景には主に以下の要因が挙げられます。

後継者不足の解決策

M&Aが注目されている背景には、日本企業の大半を占める中堅中小企業の後継者不足が挙げられます。

経済産業省・中小企業庁が発表している資料によれば、2022年には30万人以上の中小企業経営者が70歳になるにも関わらず、後継者が未定する経営者が約6割にも及んでおり、中小企業の事業承継への課題や問題が指摘されています。そのため、日本政府は中小企業向けの事業承継の支援体制を構築し、M&Aによる事業承継を促す動きを加速させています。

【参考】経済産業省 中小企業の事業承継に関する集中実施期間について(事業承継5ヶ年計画)

【資料ダウンロード】事業承継M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」

M&Aのイメージの向上

本来M&Aは、企業の経営・既存事業の強化、異業種への新規参入、事業再生、事業承継など、さまざまな経営課題を解決する優れた経営戦略です。しかし、日本においてはIT企業などの新興企業の躍進に伴い、新興企業や投資ファンドによる「乗っ取り」である敵対的買収や、企業の不祥事による事業再生を目的とした「身売り」などの負のイメージが先行していた経緯があります。

現在では、IPO(新規公開株)による株式の現金化、事業承継、従業員の雇用維持など売手企業のメリットも多く、買手企業と売手企業がWin-Winの関係を構築できます。そのため、世間的にもM&Aへの負のイメージが薄れつつあり、企業経営においても重要な経営戦略として、認知されています。

M&A実施が可能な環境の到来

外国企業の経営戦略であったM&Aが日本に馴染まなかった要因のひとつに、法整備の遅れが挙げられます。

しかし、2000年以降、グローバル競争の激化に伴い、日本経済の成長を促進する上で経済・組織法制が改正され、M&Aの実施が可能となる環境が醸成されてきました。2010年には、企業の組織再編や自社株を活用した公開買付などのM&Aの支援、コーポレート・ガバナンス向上を抱えた会社法が見直されました。

その他、公正なM&Aに関するルール形成への取り組みや企業グループ・組織再編に係る税制整備なども促進されており、今後もM&Aが実施されやすい環境が構築されると考えられています。

【参考】経済産業省 経済法制・組織法制

生産人口減少への対応策

世界でも類を見ない少子高齢化社会に突入している日本において、生産人口の減少は国の存亡が懸かった深刻な問題です。

中でも国内電子商取引市場の拡大(2016年の市場規模は15.1兆円:前年比9.9%増)の影響を受けた運送業や、2020年に向けた建設ラッシュよる建設業、その他、小売業、サービス業、会議事業では、深刻な人手不足が指摘されています。そのため、人手不足によって事業を継続できない中小企業も多く、事業承継・事業譲渡が可能なM&Aを採用する企業も増えています。

【参考】経済産業省 いわゆる人手不足業種の背後にあるものは何か?;求人意欲と、アウトプットレベル、労働生産性の関係
【参考】経済産業省 電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました~国内BtoC-EC市場が15兆円を突破。中国向け越境EC市場も1兆円を突破~

業界の寡占化と新興企業の進出

国内市場の縮小により、企業が経済活動を維持する上でもシェアの拡大は重要な経営戦略のひとつです。M&Aは競合企業との合併買収により、市場の拡大が見込める戦略のため、M&Aによる業界の寡占化が一気に進んだこともM&Aが注目される要因となったいえます。

またIT企業をはじめ、新興企業の進出も注目される要因に挙げられます。これは破壊的イノベーションの創出の期待から、資本規模の大きい企業が積極的にM&Aを実施する機会が増えているからだと考えられます。

業務提携との違い

広義な意味では、業務提携もM&Aのひとつに含まれ、日本企業の多くが既存事業の強化を目指して積極的に活用しています。しかし、一般的なM&Aとはわかりやすい違いが存在します。

業務提携とは、2社以上の企業が業務提携契約の締結により、相互の業務で協力関係を構築する企業戦略のひとつです。広義の意味では、業務提携もM&Aの一種とされていますが、株式譲渡や株式交換といった資本移動を伴わない点で、M&Aとは異なります。

また、M&Aは事業や企業そのものが対象となりますが、業務提携は共同開発や技術提携の対象となる研究・開発部門、OEM提携(委託者ブランドでの製品の設計・生産)の対象となる生産部門、販売提携の対象となる営業・販売部門などが対象となります。そのため、業務提携は部門に特化した強化・補充策といえます。また、業務提携の中にはM&Aと同じように資本の移動を一緒に行なう「資本業務提携」という形も存在します。

【関連】業務提携とは?意味や英語、資本提携との違い、メリットなどをご紹介/BizHint HR

M&Aの目的

M&Aは買収企業側と買収対象企業側ともにwin-win関係になれる企業戦略のひとつであり、企業が抱える課題や問題を解決できます。また、M&Aの目的は「事業承継」、「事業再生」、「事業の選択と集中」の3つに大別できます。

事業承継のためのM&A

現在、日本企業の大半を占める中小企業は深刻な後継者不足が指摘されています。高度な技術・経験を持つ企業・事業を後世に受け継げずに、廃業に至ることは日本経済そのものを衰退させてしまう原因になりかねません。

しかし、M&Aを活用することで、親族以外の第三者への会社・事業を承継でき、譲渡企業の事業継続や従業員の雇用の確保にもつながります。また、譲渡側である経営者も事業承継によって、まとまった現金を得られるというメリットを得られます。

買収者である企業は、多大な時間とコストをかけずに収益性の高い事業を経営資源とともに入手できることから、迅速な事業拡大と早期の収益確保が期待できます。

【関連】M&Aによる事業承継を行うためには?メリットやプラットフォームもご紹介/BizHint HR

事業再生のためのM&A

企業に関わる全てのステークホルダーの利益を確保する上で、企業による情報公開と透明性が厳格化されている中でも、成果主義や業績不振を原因とする企業の不祥事が相次でいます。また、イノベーションによる既存業界への影響も大きく、経営の不確実性が増しているといえます。その結果、事業再生を目的に不採算事業の整理(事業譲渡や売却)を目的としたM&Aを実施せざる得ない状況が増えています。

しかし、企業再生を目的としたM&Aはカネボウ株式会社(現クラシエホールディングス株式会社)のように見事に経営再建を果たした好事例もあるため、現在では前向きな経営戦略として取り組まれています。

【参考】クラシエホールディングス株式会社 沿革

「事業の選択と集中」のためのM&A

グローバル経済による国際競争が激しさを増し、日本企業の多くが経営の不確実性に悩まされています。その結果、企業は事業を分社化するカンパニー制を導入し、 多角化経営を行う一方で、既存事業の強化による収益の改善を目的とした「事業の選択と集中」を目指す企業も増えています。

M&Aは比較的短期間・低コストで経営資源(ヒト・モノ・カネ)を獲得できるため、新規事業への参入や既存事業の強化にも最適です。

【関連】事業における「選択と集中」とは?メリット、成功・失敗事例をご紹介 / BizHint HR

M&Aのメリット・デメリット

M&Aには必ず買収側(買手企業)と買収対象側(売手企業)の2社以上の企業によって、成立します。そのため、買収側と買収対象側それぞれにメリット・デメリットが存在します。今回は買収側、被買収対象側それぞれの視点での主なメリット・デメリットをご紹介いたします。

買収側のメリット

買収側のメリットとしては、主に以下の点が挙げられます。

多角化および隣接事業の進出

買収側は、M&Aによる多角化経営の実現と隣接事業への進出が可能です。M&Aは比較的短期間で、長年培われた買収対象企業の知識・技術・経験を獲得でき、他の事業とのシナジー効果の発揮が期待できます。

具体的には不動産業を営む買収企業が、小売業を生業とする企業を買収し、不動産と小売業とのシナジー効果を高めるなどが挙げられます。また、M&Aによる事業買収は既存事業の補強や強化にも効果的です。業績不調である既存事業において、高い業績を上げている買収対象会社を獲得することで、技術力の向上やノウハウを得られます。

新規事業への参入

成長産業や新規事業への参入は、多額の設備投資や人材育成・ノウハウ蓄積への時間が必要です。しかし、M&Aは経営資源(ヒト・モノ・カネ)も買収対象となるため、本来、多くの費用と時間を要する新規事業への参入ハードルを下げることができます。

本業の成熟化や国内市場の縮小への打開策として、新規事業への参入は企業の新たな成長戦略になるだけでなく、健全な競争社会の創出にもつながるため、積極的にM&Aを実施する企業が増えています。

シェア拡大によるコスト削減

既存事業のシェア拡大は、「規模の経済」が働き、仕入れ・運用コストの削減が期待できます。M&Aは、買収対象会社の取引先や仕入先を承継できるため、短時間で事業の拡大ができます。

また、生産・品質管理・物流・販売それぞれの部門を一元化し、全体最適することで、生産性向上も期待できます。

買収側のデメリット

買収側のデメリットとしては、主に以下の点が挙げられます。

アナジー効果が生まれる

M&Aの目的の一つである シナジー効果は足し算以上の成果をもたらしてくれます。しかし、M&Aでは組織の拡大による意思決定のスピードの遅れ、企業ガバナンスの弱体化などの企業価値を低下させる事態が少なからず起こってしまいます。

これらの原因には、M&A後の連携不足や企業文化の相違などが挙げられ、M&A後の適切なPMIの実施により、アナジー効果を縮小させなければいけません。

【関連】「シナジー効果」の意味とは?事例や効果、実現方法から成功ポイントまで/BizHint HR

簿外・偶発債務の発生

M&Aは、買収対象会社の経営資源だけでなく、債権も全て承継します。そのため、M&Aの交渉段階で明らかにならなかった簿外債務や偶発債務(知的財産権を巡る訴訟など)が発生し、M&A後に想定以上のコストを要する事態を招く危険性があります。

これら、簿外・偶発債務の発生リスクを事前に把握するためにも財務デューデリジェンスの実施は不可欠であり、得られる利益と将来発生する可能性があるリスクのバランスを見極め、M&Aを実施することが大切です。

人材の流出

M&Aは買収対象会社の優秀な人材も同時に獲得できますが、M&A後の人事制度、評価制度の変更により、人材が流出してしまう危険性も考えられます。M&A後の労働条件の変更や統合・合併買収・吸収買収後の派閥争いなどは従業員に不信を植え付ける原因となります。

M&A前に人事デューデリジェンスを行い、適切なPMIの実施が不可欠です。

買収対象側のメリット

買収対象側のメリットとしては、主に以下の点が挙げられます。

後継者問題の解決

既にご紹介している通り、日本の中小企業の多くが後継者問題により廃業を考えています。しかし、M&Aによる事業承継・事業譲渡は、親族以外の第三者に承継を行なえるため、後継者問題の解消や技術力の喪失防止にもつながります。

また、創業者は廃業コストを削減でき、M&Aによる売却益を得られるため、老後資金の獲得も可能です。

雇用の確保

M&Aは自社の事業だけでなく、従業員を含む経営資源も買収の対象となります。そのため、事業・企業の売却後も従業員の雇用が確保されるため、経営者としての責任が果たせます。また、取引先や仕入先も承継対象となるため、今まで通りの良好な関係性の維持が可能です。

資金調達による事業の拡大

M&Aは、事業の拡大を目的とした資金調達の手段としても活用できます。将来性の高い技術やサービスを向上させ、事業を拡大させるためには多額の資金が必要です。M&Aによる株式取得の資本参加を活用すれば、M&A後も経営に参画することができます。

財務基盤の安定している買収提案者の傘下に入ることで、金銭面での心配がなくなり、本業である事業に集中することができます。

買収対象側のデメリット

買収対象側のデメリットとしては、主に以下の点が挙げられます。

雇用や労働条件の変更

経営資源も買収対象となるM&Aでは、買収後、買収側企業の評価・人事制度に則り、雇用が継続されることがほとんどです。そのため、新たな評価・人事制度によって、不利益を被る従業員が出てくる可能性があり、優秀な人材の流出にもつながってしまいます。

待遇や給与面の雇用・労働条件の改悪は従業員のモチベーションに関わる重要な要因のため、M&A実施前に、M&Aに関わる関係者が念入りに交渉しなければいけません。

企業文化の融合による障害

M&Aは異なる企業文化を有する企業同士が一緒になる、いわば「結婚」のようなものです。そのため、M&A後の企業文化の融合には多くの時間がかかり、融合がうまくいかないことによる障害も発生してしまいます。

企業文化は従業員の仕事に対する考え方や姿勢、判断軸、リーダーシップチームワークのあり方などに多大な影響を与えます。企業文化の融合が上手くいかなければ、M&A自体が失敗に終わってしまうと言っても過言ではありません。

M&Aの手法・形態

M&Aは買収側、買収対象側の目的によって、自由に手法や形態を選択することができます。

買収

M&Aによる買収は主に「株式取得による資本参加」「事業譲渡」「資産買収」の手法を導入し、実施されます。

株式取得による資本参加

株式会社の経営権を掌握する手段として、最も一般的な手法が株式の売買による資本参加です。金融商品取引場でのTOB(公開買付)や買収対象会社の経営者や取締役から、経営権の掌握に必要な株式を取得(株式譲渡)することで、M&Aを完遂できます。

株式の取得には、他にも株式交換(発行済み株式を買収側企業に全て取得させる手法)、新株引受(特定の第三者に新たな株式を発行する第三者割当増資)などが挙げられます。

事業譲渡・資産買収

事業譲渡とは、企業が保有する事業の一部、または全てを売却するM&Aの手法です。主に不採算事業の整理や企業再生において、実施されるM&Aの手法でもあります。

譲渡側企業は潜在的な債務の切り離しが可能であり、買い手側は収益性の高い事業を比較的低コストで獲得できるメリットが挙げられます。  

合併

M&Aによる合併は主に「新設合併」「吸収合併」の手法を導入し、実施されます。

新設合併

新設合併とは、2つ以上の企業がお互いの法人格を完全に消滅し、新たな法人格の設立を目指すM&Aの手法です。業界内での競合企業同士が合併することで、主にシェアを拡大する目的で実施されます。

しかし、企業が保有する知的財産や取引などの権利関連の手続きが煩雑となることから、あまり選択される手法ではありません。

吸収合併

一方の企業の法人格を残す形で実施されるM&Aの手法で、買収対象会社が保有する知的財産権などの権利を、買収側企業にも承継しやすく、M&Aによる合併で採用されやすい手法でもあります。業界シェアの拡大や異業種への参入など多岐の目的に渡って、採用されています。

分割(会社分割)

M&Aによる分割(会社分割)は主に「新設分割」「吸収分割」の手法を導入し、実施されます。

新設分割

企業が保有する事業(または会社そのもの)を切り離し、新たに設立された新会社に承継するM&Aの手法です。2社以上の複数の企業による合併会社の設立も可能で、主に不採算事業の整理や事業再生を目的としたM&Aに採用されます。

吸収分割

自社の事業を切り離し、買収側企業に直接承継するM&Aの手法です。実質的な事業譲渡であり、対価としての現金取得、買収企業側の株式を取得することで経営に参加できるなど売手企業の経営者・経営陣(取締役)を活かした事業の取得が可能です。

いずれの手法もM&Aを実施するための基礎知識となります。そのため、M&Aの実施の際はM&Aの専門家によるアドバイスを受けることをおすすめいたします。

M&A実施の流れ(手順)

M&Aは、さまざまな目的や手法で実施され、株価や業界の動向などM&Aの実施タイミングによっても成功可否が分かれます。また、買収側と買収対象会社の経営理念や企業風土によっても実施の流れ(手順)は大きく異なります。

今回は一般的なM&A実施の流れ(手順)に絞って、ご紹介いたします。

1.仲介企業によるマッチング

M&Aは買手企業と売手企業が存在する企業取引のひとつです。また、双方の目的や利害関係に合ったwin-winな関係でないとM&Aは成立しません。そのため、M&Aを実施する際は仲介企業が運営するプラットフォームによるマッチングがおすすめです。譲受側、会社譲渡側の意向に沿った候補先の選定が可能なため、M&Aを迅速に進められます。

また、仲介企業の中にはM&Aの実務を担当する専門家(公認会計士や弁護士など)によるサポートサービスも充実させている企業もあり、中立的な立場でM&Aをサポートしてくれます。マッチングには、候補企業の選定やトップ面談などが含まれます。

2. M&Aの手続及び進捗の管理

M&Aを実施するには、各分野の高度な専門知識を有した専門家(公認会計士、弁護士、税理士など)による手続きが必要です。そのため、M&Aの手続き、進捗管理を適切に行える体制の構築が不可欠といえます。

また、買収側は買収対象企業の企業価値評価やM&Aの実施による経営上のリスク(簿外債務の存在や事業に関する潜在的リスクなど)把握を実施し、買収対象側は透明性の高い情報の開示を行わなければいけません。

3.基本合意の締結

トップ会談やM&Aの手続き・進捗管理を進めながら、双方の条件面の調整を行います。また、希望する買収価格や買収方法を記した意向表明書を提出し、双方納得の上で基本合意契約書を通じて、M&Aの基本合意を締結します。

4.デューデリジェンスの実施

デューデリジェンスとは、M&Aにおける買収側企業が買収対象企業の事業の将来性、潜在リスクなどを多方面から調査し、企業価値評価を算出する買収監査を指すM&A関連用語です。かつてのM&Aにおけるデューデリジェンスは、財務系デューデリジェンス(財務面、税務面、ビジネス面)の実施が一般的でした。

しかし、近年では重要な経営資源のひとつである人材へのフォローや情報システムの統廃合、知的財産権の譲渡・保護や取引先の喪失防止の観点から、人事・IT・法務面でのデューデリジェンスの実施が重要視されています。

デューデリジェンスの実施は、M&Aの成功率の向上やM&Aの対価額の算出、事業リスクの事前確認が行えるため、M&Aには必要不可欠な手段とされています。

【関連】デューデリジェンスとは?意味や項目、方法から成功ポイントまでご紹介/BizHint HR

5.最終合意譲渡契約書の締結

M&Aに必要な各種手続きや各方面のデューデリジェンスが完了し、買収価格・条件・買収方法を盛り込んだ最終合意譲渡契約書の締結を以て、M&Aの実施が可能となります。

また、M&Aは実施タイミングもM&Aを成功させるための重要な要素です。実施時期から逆算し、準備期間に余裕があるスケジュールで準備を進めなければいけません。

M&Aを成功させるポイントとは?

M&Aは短期間の内に事業の拡大や新規事業への参入、経営基盤の強化を図れる、優れた経営戦略のひとつです。しかし、どれだけM&Aの準備を入念に進めたとしても失敗することがあります。

今回はM&Aを成功させるために押さえておきたいポイントをご紹介いたします。

シナジーが可能なマッチング

ビジネス上におけるシナジー効果は、M&Aや企業の業務提携において、2つ以上の企業や事業を連携させることで、得られる相乗効果を指します。

M&A実施の可否においても買収側の既存事業と買収対象先の事業との連携で得らえる相乗効果も重要な判断軸となります。シナジー効果の創出は企業価値向上にもつながり、安定的かつ強固な財務基盤の構築や企業の持続的成長が可能となります。

一方で、短期的な収益の獲得や、安易な異業界への新規参入を目的としたM&Aはアナジー効果(事業間におけるマイナス効果)を誘発する危険性があります。そのため、M&Aを実施する買収側は、自社が保有する既存事業との相性やM&A後の経営体制の構築、さらには必要に応じた組織・BPR(業務改革)の徹底が求められます。

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適切なタイミングでの実施

M&Aで用いる手法は株式取得による事業譲渡や資本参加が一般的です。そのため、上場企業のTOBは、金融商品取引場で売買されている価格よりも上乗せした価格で株式を取得することが一般的です。その結果、買収側はより安く買いたい、買収対象側はより高く売りたいという、相反する思惑が生じるため、両社が納得の行く買収価格を設定できる適切なタイミングを見極めなければいけません。

M&Aはさまざまな手続きや調査が必要であり、実施する両社の企業規模によっても、M&Aを実施するまでに長期間を要することも考えられます。また、M&A完了後には業界の動向が変わり、想定していた効果を得られないといったことも珍しくありません。

M&Aを実施する経営者は、経営を取り巻く環境を敏感に察知し、数年先の情勢を見極めた上で、M&Aの実施タイミングを決定することが求められます。

M&A後のPMIの実施

買収側企業にとっては、M&A実施前よりも実施後の事業運営や新しい組織の構築が、M&Aを成功させるための重要な鍵となります。PMIはM&A実施後の新しい組織体制を構築する際に必要な統合プロセスであり、M&A後に欠かせない経営戦略のひとつです。

PMIの実施は、経営戦略・ビジョンの浸透、生産性向上とコスト削減、M&A後の従業員のモチベーション維持・向上などのメリットを得られます。その他にも、シナジー効果の創出やM&A後のリスク低減にもつながることができます。

M&Aは買収対象企業が保有する債務を含む、経営資源(ヒト、モノ、カネ)全てを承継します。そのため、M&A後の人事制度の改革や運用体制の構築は欠かせない作業のひとつです。買収した事業(企業)を適切に運用する上でもM&A後のPMI実施は必要不可欠といえます。

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日本企業におけるM&Aの課題

従来よりもM&Aに対する負のイメージが緩和しているとはいえ、日本企業におけるM&Aにはさまざまな課題が指摘されています。

M&Aに長けた人材の不足

IT企業やベンチャー企業を中心に続々と新たな技術やサービスが創出される中で、大手企業によるスタートアップ企業や新興企業への投資が増えています。しかし、買い手である企業には、投資した企業が開発した技術やサービスを自社の既存企業と組み合わせ、シナジー効果発揮させる、もしくはその可能性を見い出し、M&Aの実施を決断できる人材が不足していると指摘されています。

現在、日本の大手企業のマネジメント層には、新卒一括採用により雇用され、ジェネラリストとしてキャリアを積んだ方が大半といえます。そのため、M&Aに長けた人材が育ちにくい環境にあるといえます。

また年功序列を前提とした職能給を採用している経緯もあり、高額な報酬が必要なM&Aの専門家を雇用しにくい組織風土も、日本企業のM&Aが成功しにくい要因であるといわれています。

日本独自の人事制度の問題

事実上、終身雇用制度が崩壊している日本の大手企業において、従来の年功序列を前提とした職能給が見直され、成果主義を前提とした職務給が浸透しつつあります。

競争優位性を生み出す上で必要なイノベーションは、個人の能力や成果を最大限に発揮するための包括的な人事制度改革、労働改革が必要です。しかし、未だに日本独自の慣習を前提とした人事制度を踏襲する企業も多く、M&Aで将来性の高い事業や企業を獲得できたとしても、これらの制度が障害となってしまい、想定した以上のシナジー効果やビジネスの拡大ができない可能性があります。

これらのリスクを回避するためにもM&A後のPMIを通した評価・人事制度の改革を行わなければいけません。

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企業文化への対応

M&Aは、買収対象企業が保有する経営資源(ヒト、モノ、カネ)も譲渡・承継の対象となります。そのため、異なる企業文化を有する従業員同士が同じ組織内で活動を行うこととなり、さまざまな衝突や問題が生じます。

この原因には従業員の業務への取り組み・モチベーションの主軸となる価値観・信念を形成する企業文化が影響しているといわれています。また、従業員の意思決定やリーダーシップのあり方、チームワークや仕事に対する考え方も企業文化が強く影響します。

そのため、M&A後に適切な事業運営を実施するためには、M&A前の人事デューデリジェンスを実施し、M&Aが可能かどうかを見極め、M&A後のPMIを通して、経営者を含む従業員全ての意識改革が必要です。

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まとめ

  • 破壊的イノベーションによる業界勢力図の改変が珍しくなくなった今、多角化経営やカンパニー制の導入や、M&Aによる事業の拡大を目指す企業が増えており、M&Aも積極的に採用されています。
  • また、後継者不足・人材不足を解消するために、事業承継を目的としたM&Aも増加しており、今後もM&Aは増えていくことが予想されます。
  • しかし、過剰な利益追求や安易な事業の獲得を目的としたM&Aは、逆効果を生み出す可能性があるため、M&Aを実施する際は綿密な調査と慎重な意思決定を心掛けなければいけません。

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