リストリクテッド・ストック
2016年度より日本ではなかなか普及していなかった株式付与による新たな報酬制度が開始されました。今回は新たな役員インセンティブ報酬であるリストリクテッド・ストックの意味やメリット・デメリット、課題、導入企業を合わせて、ご紹介いたします。
リストリクテッド・ストックとは
経営陣のモチベーション向上は企業の命運を左右する重要な要素の一つです。日本企業に多く見られる固定化された役員報酬に代わるリストリクテッド・ストックの意味や導入背景、既にあるストックオプション制度との違いをご紹介いたします。
リストリクテッド・ストックの意味
リストリクテッド・ストック(特定譲渡制限付株式、または特定譲渡制限付株式報酬)とは、日本企業の収益力、稼ぐ力の向上、中長期的な企業価値向上を目的とした、経営陣対象の新たな役員インセンティブ報酬です。「中期経営計画の業績目標(有価証券報告書に記載される利益指標)を達成すれば、自社の現物株式を譲渡する」という一定期間の譲渡制限を設定することで、経営陣に対するリテンション効果(必要な人材の確保施策)と株主目線での経営を促進させる効果があります。
日本政府も「攻めの経営」と「コーポレイトガバナンスの強化」を促す役員報酬として、導入を促進しており、2016年度税制改正・会社法の解釈整理により、リストリクテッド・ストックの導入手引書を公開しております。
しかし、導入方法や法人税法に則った会計処理によっては金融取引法に抵触する怖れがあり、導入には開示義務、事前確定届出給与(損金算入の対象となる経費)としての届出が必要です。そのため、今後も法人向けの規制緩和が一層進むとされています。
【参考】経済産業省 『「攻めの経営」を促す役員報酬~新たな株式報酬(いわゆる「リストリクテッド・ストック」)の導入等の手引~』を作成しました
リストリクテッド・ストックの導入背景
リストリクテッド・ストックが導入された背景には、日本企業の役員報酬制度が、長らく給与による固定報酬(役員給与)または利益連動給与を採用していたことに起因します。この役員報酬の固定化は、役員のモチベーション低下や適切な経営がされない要因として指摘されています。
また、近年では粉飾決算や海外子会社による莫大な損失など企業の不祥事が取り沙汰されています。そのため、経営陣には、今まで以上に責任のある経営が求められるようになり、「攻めの経営」に取り組めるような報酬設計の導入の必要性が出てきました。
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