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ハインリッヒの法則

2020年2月25日(火)更新

リスク管理の不徹底による製品(商品)・サービスの欠陥は、顧客の信用を失わせ、経営を脅かす状況をもたらします。そのような危機を管理する上で、欠かせない経験則が「ハインリッヒの法則」です。今回はハインリッヒの法則の意味や事例、活用するメリットから活用・導入方法をまとめてご紹介いたします。

「ハインリッヒの法則」とは?

交通事故や医療事故に関わらず、 あらゆるビジネスにおける危機管理に用いられる経験則が「ハインリッヒの法則」 です。

その意味や注目される理由、さらに同じく危機管理に用いられる理論のひとつ、ドミノ理論との違いについて、ご紹介いたします。

ハインリッヒの法則の意味

1:29:300の法則

ハインリッヒの法則とは、物損事故を扱う米損害保険会社に勤務していたハーバード・ウィリアム・ハインリッヒ氏が提唱した 労働災害の経験則 のひとつです。

このハインリッヒの法則は「 重大災害や重大な事故1件につき、軽微な事故が29件、さらにその背後に隠れた事故寸前の案件が300件ある 」として、1:29:300の法則と呼ばれることもあります。

法則自体は1929年にハインリッヒ氏が出版した書籍で論じられたものですが、現在でも医療や介護、交通分野などさまざまな分野の危機管理対策や災害防止に活用されています。ハインリッヒの法則にあてはまる危難が発生する恐れがある事案(インシデント)を、 ヒヤリハット と命名し、迅速な報告を要する事案として、運用されています。

近年では、製造業や建築業での日々の安全チェックやオフィスワークにおける軽微なミス防止などビジネスシーンにも浸透しており、クレーム対応や社員教育の徹底に活用される機会が増えています。

また、個人情報などの企業機密や基幹産業の技術情報漏洩を防ぐネットワークエンジニアなどの情報セキュリティに関わる作業者の間で使用される用語としても知られています。

ハインリッヒの法則が注目される理由

ハインリッヒの法則が注目される理由に、メディアやインターネットの発達が挙げられます。消費者が選択できるメディアの数が増えた結果、消費者の知り得なかった事件や不祥事を知る機会も増えています。

また、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の発展に伴い、企業や組織の不祥事が判明しやすく、一気に拡散されるリスクが高くなったことも要因の1つです。

さらに、社員のモラル低下や安全管理の不徹底により、企業の存続を脅かす事態へと発展するリスクが格段に上がっています。

ハインリッヒの法則が提唱する「1件の重大事故や重大災害に対して、29件の軽微な事故、300件を越えるインシデントが存在する」という危機意識を、組織に徹底させる重要性が高まっています。今後もハインリッヒの法則に基づいた、専門家によるインシデントの発生確率の分析作業が徹底的に行なわれることが予想されます。

ドミノ理論との違い

ハインリッヒの法則と似た理論のひとつに、 ドミノ理論 があります。ドミノ理論とは、もとは地政学的もしくは戦略的に重要な地域を共産主義化することにより、隣接する国や地域が連鎖的に共産主義化するという理論です。将棋倒し理論とも呼ばれ、第二次世界大戦後の自由陣営と共産陣営の冷戦戦略に使われた理論であり、発展途上国の急進的ナショナリズムを共産主義化とみなし、牽制するための理論的根拠に使用されていました。

しかし労働災害におけるドミノ理論では、 ハインリッヒの法則が提唱する1:29:300の3段階の前に、「作業環境の不良」「材料不良」「設備不良」「人員不良」「管理不足」という5段階の不安全行動または状態がある と定義され、「それらを取り除くことによって、ハインリッヒの法則が提唱する1の重大な事故や重大災害を防止できる」と結論づけられています。 危機管理対策における具体的な行動案を示すための有効な理論 とも考えられます。

「ハインリッヒの法則」3つの分野での事例

ハインリッヒの法則は、現在ではさまざまなにビジネスシーンで活用されていますが、元々は特定の分野で活用されている法則でした。

ハインリッヒの法則の理解を深める上でも、特に活用されている事例を一部ご紹介いたします。

介護分野でのヒヤリハット報告

少子高齢化に突入している日本社会において、人手不足や苛酷な労働環境の実態などで注目される機会が増えている介護分野。また、介護事故は人命に関わる重大な事故に発展する可能性が高いことからも、ハインリッヒ法則における「ヒヤリハット報告」が大いに活用されている分野でもあります。

ヒヤリハット報告とは、ハインリッヒ法則における割合のうち、300件にあたる異常事態を報告し、その後の新たな対策に役立てる報告体制を指す用語です。

介護現場では複数の原因が重なることで、重大な介護事故が発生していると考えられています。介護側のインシデント(発見や報告が遅れるなど)と介護される側のインシデント(自己運動能力の失認など)、さらには外的環境(介護ベットや机の位置、手すりの有無など)が重なることで、重大な介護事故に発展する可能性があります。

これらヒヤリ・ハットによる重大事故を防ぐためにも、大多数報告される個別事例を時間別・発生場所別・利用者毎に集計することで、危機管理対応マニュアルの作成が可能となり、重大な介護事故を防止しています。

医療分野での医療事故防止

病気や怪我をケアする医療分野においては、介護分野以上にハインリッヒ法則を活用した医療事故防止施策が取り入れられています。目まぐるしいスピードで医療技術が発展している現代においても、医療や介護を施すのは人の手に委ねられています。

医療行為は医学の知見から計画的に実施されるものですが、ヒューマンエラー(判断・決定のミス)により、意図した結果に至らないケースも考えられます。

しかし、医療分野でのヒューマンエラーは命の危機に関わる重大な医療事故につながる恐れがあるため、ハインリッヒ法則を基にしたヒヤリハット報告やインシデント(重大な事故に発展はしなかったが、可能性としては重大な事故につながったとされる事態)分析が徹底的に活用されています。

また、ヒューマンエラーによる医療事故は長年の経験則から生じるプロセスの省略や誤処理、不当処理、順序やタイミングの判断ミスが原因となることも珍しくありません。

そのため、医師や看護師の単独的な判断だけでなく、論理的で機械化された危機管理対応が求められています。

交通分野での交通事故防止

ハインリッヒの法則は、物損事故を扱う米損害保険会社で技術・調査に関わっていたハーバート・ウィリアム・ハインリッヒ氏が提唱した労働災害の経験則です。

そのため、最も活用しやすい分野が交通分野です。危険運転や高齢者ドライバーによる事故が社会問題となる中で、ハインリッヒ法則に基づいた事故防止施策は大きな効果を挙げています。

急ブレーキや急発進、安全確認なしの進路変更、中には嫌がらせの度を越えた進路妨害は、死亡事故につながる重大なインシデントと位置付けることができます。また、公共交通機関の重大事故は多数の人命を犠牲にする可能性が高い傾向にあります。

2005年4月25日に発生した福知山脱線事故は107人の死亡者を出した、日本鉄道史上に残る重大事故のひとつです。その原因の根幹には、本来、ヒヤリハット報告書に記載するべき事案が記載されていなかったことが挙げられます。

今後、イノベーションにより生み出された自動運転や加速度センサーがこれらのインシデントを防ぐ役割を担うと考えられますが、最後はドライバーや運転手、さらには個人・企業の危機管理意識に大きく依存します。

交通事故は加害者・被害者ともに不幸な結末をもたらします。そのため、今後もハインリッヒの法則を活用した事故防止マニュアルの徹底が、ドライバーや企業の従業員一人ひとりの意識改革につながると考えられます。

【参考】福知山線塚口駅~尼崎駅間列車脱線事故 鉄道事故調査報告書/運輸安全委員会

「ハインリッヒの法則」を活用するメリット

あらゆる仕事で活用されるハインリッヒの法則は、企業の危機管理施策だけでなく、ビジネス活動にも役立ちます。

ハインリッヒの法則を活用することで得られるビジネス上のメリットを一部ご紹介いたしますので、新たな危機管理施策の導入や組織改革、売上向上施策を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。

従業員の意識改革と組織強化

ハインリッヒの法則によれば、1つの重大事故は偶発的に起こるものではなく、さまざまなトラブルや事態が複数重なることで、発展するものと考えられます。顧客のニーズや価値観が多様化し、ビジネス課題が高度化・複雑化する経済において、 軽微なミスやニアミスが企業の存続を脅かす事態に発展することが珍しくなく なっています。そのため、あらゆるビジネスシーンにおいて、ハインリッヒの法則を用いたミスの防止や対応が注目されています。

近年、粉飾決算や品質管理データの不正などの不祥事が報告されており、経理や会計、品質管理などの間接部門は企業の直接の売上に直結しない業務が多いことからも緩みや怠慢などが発生しやすい部門と指摘する声もあります。

ハインリッヒの法則に基づいた危機管理対策やマニュアルの徹底は、従業員の意識を改革する上でも大きな効果をもたらします。また、職場の人間関係の悪化やハラスメントの多くは、ハインリッヒの法則による軽微な事態を見流さずに対応することが防止につながります。

ヒヤリハットの報告の徹底は組織内のホウレンソウを活性化させ、組織の強化にも効果的です。

優良顧客の獲得

ハインリッヒ法則が活用しやすいビジネスシーンのひとつに、クレーム対応や回答が挙げられます。ハインリッヒの法則に顧客のクレームを照らし合わせると、 1件のクレーム報告の裏には、声を上げない不満を持つ顧客が10.3倍いることが想定 できます(軽微なクレーム報告を29の割合に位置付けた場合)。

また、ハインリッヒの法則が定義する300件に該当する「不満を持つ顧客」のクレーム理由は複数あると考えられます。これら見えざるクレームの要因を全て洗い出すことは困難ですが、クレームを出した顧客に誠意のある対応をすることで不満解消につながり、クレーム客が優良顧客になる可能性があります。

さらに、同様に同じような不満を持つ声を出さない顧客がその10倍いると考えられるため、同時に「声を出さない顧客」の不安要素の削減と満足要素の提供にもつながり、信頼の高い顧客リレーションの構築に役立ちます。

ビジネスチャンスの獲得

ハインリッヒの法則は、企業のリスク・マネジメントに活用しやすいですが、一方でビジネスチャンスにもなり得ます。 お客様からの意見やクレームには、改善ポイントや新製品(商品)・サービスの開発につながるヒントが多数含まれて います。

どんなに小さな意見や問題点も見逃さず、隠れた顧客のニーズを見つけ出すことはイノベーションの創出や新たな価値の発見につながります。

顧客の価値観が多様化する中で、プロダクトライフサイクルがどんどん短期化し、企業のイノベーションを求める風潮が高まっています。ハインリッヒの法則にあてはめれば、ビジネス上、1つのイノベーションを興すためには300のアイディアが必要と考えられます。

ハインリッヒの法則に則り、お客様の意見やクレームに耳を傾ける真摯な姿勢がイノベーションを生み出す近道といえます。

「ハインリッヒの法則」の活用・導入方法

具体的に、ハインリッヒの法則をどのように活用し、導入するべきかをご紹介いたします。

インターネット戦略への活用

ハインリッヒの法則を活用するためには、 インターネット戦略との併用が最適 です。顧客のニーズや価値観が多様化する中で、顧客の意見やクレームは企業のリスク・マネジメントにつながるだけでなく、企業の成長促進にもつながります。その上でインターネットは顧客の意見やクレームを集める優れたツールといえます。

ホームページ上に顧客からの意見や要望を受け付ける窓口の併設、企業と顧客双方のコミュニケーションを可能とするツールの導入(チャット形式を採用したリアルタイム対応など)、または掲示板を活用した顧客同士が疑問を解消し合う「場」の提供もインターネット戦略として考えられます。

これら、インターネット上で集約された顧客のニーズや意見、問題点、クレームなどをハインリッヒの法則にあてはめ、分析・対応することで、顧客満足度の向上と顧客とのリレーション構築が実現できます。

クレーム対応や対策・回答マニュアルへの活用

ハインリッヒの法則は、クレーム対応や対策・回答マニュアルの作成に大いに役立ちます。企業が把握できているクレームを「顕在クレーム」として位置付け、その背後には10倍以上の「潜在クレーム」があると推定できます。「顕在クレーム」から「潜在クレーム」を見出し、先回りをしたクレーム対応や対策・回答マニュアルを徹底することで、訴訟や刑事事件を引き起こす重大な事故の防止やクレーム数の低減にも効果があります。

顧客のクレームの内容は、製品(商品)・サービスの品質や欠陥、店舗設備の不良、スタッフの接客態度など多岐に渡ります。それら全てのクレームから得られる 「潜在クレーム」の分析が優れたクレーム対応体制や対策マニュアルを構築する鍵 となるため、専門家の雇用も視野に入れつつ、改善を行なうべきといえます。

OJTでの教育指導

重大な事故の発生は、現場を担う従業員の内省能力や観察力の不足、過信によるプロセスの省略、ホウレンソウの不徹底などが要因となり得ます。これらの軽微の事故やニアミスはハインリッヒの法則が指摘する仕事上の潜在的失敗と定義できます。

これらの 潜在的失敗を従業員に意識させるためには、OJTによる現場での教育が最適 といえます。従業員が現場で気付いたことを業務の一部に取り込み、教えながら教育する方式を採用するOJTは、ハインリッヒの法則やドミノ理論が重視する日々の安全管理や不安全行動・状況の排除の行動につながりやすいからです。

現場で起こる潜在的失敗を把握・予知し、危機管理対策に役立てることこそ、真の意味でのリスク・マネジメント といえます。

個人情報や情報セキュリティ強化など企業が担うべき社会的責任の範囲が拡大している今、業界・職種に関わらず、OJTを基にした危機管理意識の徹底的な教育が求められています。

【関連】OJTのやり方(計画~実行まで)とポイントを、失敗例も交えて解説/BizHint

まとめ

  • ハインリッヒの法則は労働災害の経験則から提唱されたもので「重大災害や重大な事故1件につき、軽微な事故が29件、さらにその背後に隠れた事故寸前の案件が300件ある」として1:29:300の法則とも呼ばれています。
  • 個人情報の保護や環境問題など、企業が担うべき社会的責任の範囲の拡大や、プロダクトライフサイクルは短期化、企業におけるイノベーションによる新たな価値の創出など、ハインリッヒの法則が役立つシーンが増えています。
  • ハインリッヒの法則は優れた経験則として、危機管理を徹底や企業の社会的責任を果たすと共に、新たな価値を創出にも役立ちます。

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