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2017年7月5日(水)更新

アカウンタビリティ

アカウンタビリティ(accountability)は、行政や医療、教育などさまざまな場面で使われるようになりました。しかし、アカウンタビリティを説明しようとすると、「よくわからない」という人が多いようです。ここでは、アカウンタビリティの詳細について解説し、人事に導入する際のポイントなどを紹介します。

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「アカウンタビリティ(説明責任)」とは

アカウンタビリティは、行政における情報公開の制度などを通して社会から要請されるようになりましたが、もともとは会計学の用語です。アカウンティング(accounting、会計)とレスポンシビリティ(responsibility、責任)を合わせて、「会計(説明)責任」という意味で使われていました。しかし、「その起源は」というと古代アテネまで遡り、市民に対する報告の義務、あるいは責任から発生したという説があります。

アカウンタビリティは、野村総合研究所の用語集では以下のように定義されています。

経営者が、株主・投資家に対して、企業の状況や財務内容を報告する義務のこと。 企業から他の利害関係者に状況を説明する責任を指す場合も多い。
【引用】野村総合研究所:経営用語の基礎知識「アカウンタビリティ」

アカウンタビリティを日本語にする場合、「説明責任」や「説明義務」と訳すことが多く、国の資料などにも「アカウンタビリティ(説明責任)」といった表記がみられます。しかし厳密にいうと、日本語の中には英語のアカウンタビリティに当たる言葉がありません。そのため、アカウンタビリティは用いる文脈によって、「答責性」などの訳が使われることもあります。

また、「説明責任」と訳すことによる弊害を指摘する声も多いです。説明責任というと単に「状況を説明する責任」かのような印象を与え、アカウンタビリティがもつ「責務を果たす」という意味合いが十分に伝わらない可能性があると危惧されています。

アカウンタビリティが意味する「責任」「責務」について

アカウンタビリティがもつ意味を適切に理解するには、アカウンタビリティが英語の中でどのように使われているかを考えると一つのヒントを得ることができます。

アカウンタビリティの形容詞accountableは、動詞のaccount(行為などの責任を負う、釈明する)から派生し、行為などの責任がある、説明(釈明)する義務があるなどの意味があります。そして、名詞のアカウンタビリティ(accountability)になると、行為によって起きた結果に対する責任を意味します。特に、企業経営では結果や数値に対する責任(結果責任)として使われることが多いです。

また、アカウンタビリティは説明する「責任を負う」「義務を引き受ける」などの意味もあります。ここで注意したいのは、英語で「責任」を表す言葉はいくつかありますが、アカウンタビリティは「誰が責任を取るのか」という意味合いを表すときに使われるという点です。

近年、日本におけるアカウンタビリティは時代とともに拡大解釈され、使われる場面も広がりました。会計上の説明に留まらず、医療や教育など多くの分野において活動や行為による結果、また、今後の方針なども含めて利害関係者に「説明を行う責務」として使われています。

しかし、アカウンタビリティには自分がしたことや本来すべきことを怠ったために生じた結果に対して、自ら「責任を負う」「代償を払う」といった意味合いがあることに注意してください。アカウンタビリティの訳として「答責性」を用いることがあるのは、この点に理由があります。

次に、さまざまな場面で用いられるアカウンタビリティについて見ていきましょう。

リーダーシップとの関連

企業の不正経理などの問題が公になった際に、経営陣が十分な説明を行わないことが多く、「アカウンタビリティの欠如」として厳しく責任追及されることがあります。多くの場合、経営者の責務が問われますが、アカウンタビリティは企業のトップだけに求められるものではありません。また、何らかの問題が発覚したときだけに要求されるものではなく、管理者などリーダーシップを発揮する人は日頃から持つべき行動特性の一つといえます。

しかし、日本の組織では責任の所在があいまいで、責任者が誰かわからないまま仕事をしていることが多いのではないでしょうか。リーダーシップとの関連で考えるとリーダーは目標達成に向けて主体的に取り組み、行動や意思決定などにより生じた結果について責任を負う、弁償を払うといった意識で臨むことが重要です。

医療との関連

日本の医療機関でも透明性を高めるために、法人に関する情報や業績、臨床研究などの情報を公開しているところが増えています。また、一部、制約もありますが、患者や遺族などがカルテ開示を請求できるようになりました。

さらに、治療方法を決める際には医師が治療方法とその効果、副作用などについて患者や家族に説明し、同意を得たうえで治療を始めるのが一般的な流れとなっています。このように病状や治療について患者や家族が理解できるよう丁寧に説明し、患者が理解したうえで同意を得ることを「インフォームド・コンセント」といいます。インフォームド・コンセント(informed consent、説明と同意)は、患者が納得のいく治療を受けるためには不可欠なものです。このような患者の重要な権利でもあるインフォームド・コンセントを適切に行うためにはアカウンタビリティの履行により、十分な説明が必要となります。

近年、医療事故などによる訴訟では医師に限らず、看護師などの他の医療従事者の責任が問われることも増えました。医療におけるアカウンタビリティは医師だけでなく、医療に従事する専門家に要求されるものと考えられるようになっています。

なお、日本の医療分野ではアカウンタビリティに関する議論があまり進んでいないと言われていますが、以下のような研究が発表されていますので参考にしてください。

【参考】 孔 泰寛:日本の医療におけるアカウンタビリティの現状と課題 ―アカウンタビリティの前提となる評価システムを中心として―、同志社政策科学研究4(1)、235-251、2003

経営との関連

企業経営において、経営者は利害関係者である株主や投資家に対して財務諸表などの開示や監査などを適切に行うことでアカウンタビリティを履行することになります。また、実際の企業活動では、経営者は管理者などの下位の者に権限を委譲し、下位の者が権限や責任をもって活動を営むというケースが多いでしょう。

経営者から権限を委譲された管理者や指導者は、経営者に対するアカウンタビリティの履行が必要です。つまり、活動と結果との因果関係について、経営者に対して説明や報告をする責任を負うことになります。一方、経営者が管理者などに権限を委譲しても、経営者の責任がなくなる訳ではなく、アカウンタビリティを果たす必要性は残るという点に注意してください。

なお、通常、管理者はより下位の管理者に権限を委譲したり、担当者に指示したりして目標の達成を目指します。この場合も、下位の人は上位の人に対するアカウンタビリティの履行が必要となるのです。

人事におけるアカウンタビリティ

企業では、社員の動機づけを高めるツール、あるいは人事評価などに目標管理制度を導入する企業が増えています。目標管理制度は、人事におけるアカウンタビリティに関連するのでここで定義を確認しておきましょう。

目標管理制度とは、個人が自ら目標を定めることで自己統制を図りながら、組織の目指す方向性と合致させるマネジメント手法であり、業績管理や人事評価で使われる。
【引用】クレイア・コンサルティング株式会社:目標管理制度

目標管理制度を導入すると、会社の目標をブレイクダウンして個々の社員が目標を設定することになるので、行うべきことが明確となり効率アップが期待できます。人事におけるアカウンタビリティは、社員が個人目標を達成する過程の中で「今、どのような状況」にあり、「何をしているところか」などを上司に説明(報告)する責務を指します。

また、目標管理制度において個人目標の達成度を高めるには、上司は社員一人ひとりがアカウンタビリティを確立できるようにサポートすることが必要です。たとえば、社員の目指す方向性(個人目標)が会社の方向性と合致しているかという基本的な点、目標の到達レベルが明確になっているかなどの視点が重要となります。

さらに、目標と現実との間にはギャップが生じやすいので、このギャップを埋めるための方策を立てておくことも重要です。

【関連】目標管理制度の目的とは?問題点を克服し失敗しない制度導入に必要なこと / BizHint HR

人材開発におけるアカウンタビリティ

人事おけるアカウンタビリティのもう一つの視点として、人材育成や人材開発の方法を検討する際にも、教育の効果をコストとの関係から説明するアカウンタビリティの遂行が必要です。たとえば、社員向けの研修会の場合、これまでの研修会がどの程度、効果があったのかについて費用対効果を測定し、客観的なデータに基づくていねいな説明が必要になります。

なお、産業能率大学 総合研究所の用語集では、アカウンタビリティを次のように定義しています。

一般に、人材開発の文脈で用いられる場合には、人材開発部門が人材開発の投資対効果を把握し、それをステークホルダー(トップマネジメント、従業員、関連部門など)に対して説明していく責任という意味になる。 その意味で、人材開発の文脈では、効果測定とセットで用いられる言葉である。
【引用】産業能率大学 総合研究所:人材育成・研修 用語集

人材開発にかかる費用は、従来の「必要経費」という捉え方から「投資」という視点で考えられるようになりました。その流れの中で、適切な方法で求めた客観的な数値を基に説明し、ステークホルダーの納得を得ること、つまり、アカウンタビリティが一層、要求されるようになったのです。

【関連】人材育成とは?目的と実施方法について / BizHint HR
【関連】人材開発とは? / BizHint HR

アカウンタビリティが重要となる背景

アカウンタビリティの重要性が問われるようになった背景について、ここでは企業と医療に分けて考えてみましょう。

企業におけるアカウンタビリティ

企業の場合、会社法などの法令によって財務情報などを開示する必要があります。また、近年、企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)が求められるようになったため、アカウンタビリティの概念にも社会的な説明責任が含まれるようになりました。従来、株主や投資家、従業員などであった利害関係者の範囲は、消費者や地域住民なども含むものへと変化しています。

また、法律の定めとは別に、ホームページなどを通して積極的に情報開示をしている企業も多いです。しかし、社会のニーズとしては単に情報量を多くしただけでは評価されず、情報の質、正確さという点にも厳しい目が向けられています。このような変化の中でアカウンタビリティに対する社会的な関心が高まり、一方、企業にはリスクを回避する必要性からアカウンタビリティの適切な履行が不可欠となりました。

医療におけるアカウンタビリティ

アメリカでは医療においても品質管理(TQM:Total Quality Management)の視点が普及し、アカウンタビリティが重要視されています。日本の医療も高度化、専門化する中で第三者による評価システムを導入する医療機関が増えるなど、アカウンタビリティを積極的に遂行しようとする動きがみられるようになりました。

経営面に限らず、医療行為の透明性が社会から強く望まれ、透明性の高い医療機関は高い評価を得られる傾向があります。逆に、医療事故などの不祥事を起こし、アカウンタビリティが適切に確立していないケースでは厳しい評価を受け、その結果、もたらされるダメージは決して小さくありません。企業と同様に、医療機関においても社会的な信頼を得るにはアカウンタビリティの確立が必要であり、経営にも大きな影響を与える要因です。

【参考】孔 泰寛:日本の医療におけるアカウンタビリティの現状と課題 ―アカウンタビリティの前提となる評価システムを中心として―、同志社政策科学研究4(1)、235-251、2003

まとめ

アカウンタビリティは単に説明する責任ではなく、自分の行為が招いた結果に対する責任を負う、引き受けるといった能動的な意味合いを含む概念です。また、アカウンタビリティを用いる場面や文脈によって、意味合いが異なることもあります。そのため、この点に留意して適切に使うことが大切です。

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