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2019年7月17日(水)更新

投機的リスク・純粋リスク

企業経営に欠かせない経営管理手法であるリスクマネジメント。さまざまなリスクに直面する機会も増えた今、リスクを正確に把握することが大切です。今回はリスクマネジメントの対象となる投機リスクと純粋リスクの意味や種類を中心にご紹介いたします。

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リスクマネジメントの重要性

リスクマネジメントとは、一般的に組織や企業が経営を行なう中で、想定される内外の様々なリスクを適切に管理する経営管理手法の一つと定義されます。

リスクの性質と種類を正確に把握することで、最適なリスクマネジメントが可能となります。自社にとって、顕在的・潜在的なリスクは何かを把握し、適切に管理・対策を講じるリスクマネジメントは、企業や組織、事業を継続する上で欠かせないものといえます。

本記事では、「投機的リスク」と「純粋リスク」をご紹介します。

【関連】「リスクマネジメント(リスク管理)」とは?手法・事例もご紹介 / BizHint

投機的リスクとは

投機リスクとは、利益・損失両方が発生する可能性のある危険性を指します。動態的リスク、またはビジネスリスクともいわれています。

経済がグローバル化するにあたり、国によって投機リスクの影響度や発生頻度は異なりますが、その結果企業が直面する投機的リスクは従来よりも増加傾向にあり、適切なリスクマネジメントの必要性が高まっています。

具体的な投機的リスクとしては、「営業戦略上のリスク(海外進出や新商品の開発など)」が挙げられます。また、M&A(企業合併及び買収)を行なうことが日本でも盛んになっていることもあり、株式投資や融資などの資産運用上の投機リスクも年々高まっています。その結果、多様な価値観や文化への理解、海外子会社の内部統制が取れなかったため、莫大な損失が生じ、経営を圧迫することも珍しくなくなりました。

また、あるITベンチャー企業が中古販売市場のシェアを急速に拡大する、革新的なデバイスがゲーム市場や音楽市場のシェアを奪うなど、IT技術の発達やベンチャー企業の台頭による一企業の一人勝ち現象が見られ、ビジネス上での環境変化が顕著となっています。

投機的リスクの種類

投機リスクはビジネス上に発生する可能性(利益・損失を含む)を指しており、大きく分けて、経済的情勢変動リスク、政治的情勢変動リスク、法的規制変更リスク、技術的情勢変化リスクの4つに分類できます。

経済的情勢変動リスク

経済的情勢変動リスクは、主に株式投資や融資における資産運用上のリスクを指します。また、国内需要が縮小傾向にある中、輸出に依存している企業が多い日本では、円安・円高などの為替リスクも看過できない経済的情勢変動リスクといえます。

政治的情勢変動リスク

全世界的に保護主義が台頭する中で、経済のグローバル化を否定的に捉え、内向きの政策を掲げる政権が次々と誕生しています。

日本では自公連立政権主導による大胆な金融緩和で、円安・株高を発現させているアベノミクスが有名です。しかし、識者や野党の中には現在進めている金融政策に否定的な考えを持っている方もおり、政権交代が実現した際は、景気の風向きが一気に変わる可能性があります。これを政治的情勢変動リスクといいます。

日本では日本国憲法で国民主権主義が掲げられており、民主主義が揺らぐことはありませんが、アジアや東南アジア諸国では民主主義は一般的ではありません。タイ王国では国王を国家元首とした立憲君主制を採用していますが、統治権は民主政権と軍事政権が交互に入れ替わっており、その度に法律や制度が変わっています。多くの日本企業が海外に進出していることもあり、拠点がある国毎に政治的情勢変動リスクを把握し、管理する必要があります。

【参考】外務省 タイ王国 基礎データ

法的規制変更リスク

現在、日本では自公政権主導の大胆な金融緩和や税制改正により、雇用の増大や企業の収益増加の効果が表れています(識者によって、見解は異なります)。過去の日本においては、小泉政権下で実施された労働者派遣法改正による雇用の多様化、電力自由化などが法的規制変更といえます。

新規参入を行なう企業側にとってはメリットですが、規制により既得権益を持っていた企業にとっては市場シェアが減るため、リスクといえます。これら法的規制変更リスクを見極め、自社にとって、利益となるか損失となるかを分析・評価する必要があります。

技術的情勢変化リスク

現在、世界中で革新的な技術が次々と生まれています。中でも今後主流となっていくとされているのがAI(人口知能)やロボット技術の発展です。AIによる自動運転機能やマーケティング分析、ロボットによる危険作業や単純作業の代替として、世界的に注目されています。

また、2013年にイギリス・オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン教授が発表した論文に、AI・ロボットに代替される職業が掲載され話題となりました。AI・ロボット産業を担う企業にとってはチャンスといえますが、AI・ロボットに代替が可能な事業を手掛ける企業にとっては脅威といえます。

このように、技術の進展によるリスクを技術的情勢変化リスクと呼び、まさにAI・ロボットの台頭は技術的情勢変化リスクの代表格といえます。

【参考】日経WOOMAN 10年後になくなる仕事、残る仕事 あなたの仕事は?

純粋リスクとは

純粋リスクとは、企業や組織に対して、損失のみ与える危険性を指します。静態的リスクとも呼ばれています。

純粋リスクは予報や予測によって統計的把握ができるため、リスクマネジメントを行ないやすいと言われています。

保険の利用や危機管理マニュアルの整備などをはじめ、リスクを「低減・回避・移転・保有」の4つの戦略で分散させやすいのも特徴です(投機的リスクにおいても4つのリスク戦略が適用できます)。

純粋リスクは地震や台風などの自然災害によるリスクも含まれるため、損失の規模も大きくなりがちですが、前述の通り、統計的把握による発生可能性を予想しやすく、長期的な視点でリスクマネジメントを行なうことができます。

純粋リスクの種類

純粋リスクは財産損失リスク、収入減少リスク、賠償責任リスク、人的損失リスクの4つに分類できます。

財産損失リスク

財産損失リスクとは、火災や盗難などの人的災害、地震や台風などの災害による危険性を指します。内閣府の発表によると、2011年に発生した東日本大震災の推計被害額は16兆9000億円であったとされています。しかし、これには人的リスクによる損失は含まれておらず、多数の人命が失われたことを考慮すると、日本全体に与えた経済的損失は計り知れません。

財産損失を防ぐためには、損害保険の加入や危機管理マニュアルの整備などのリスクマネジメントを実施する必要があります。特に製造業では、これら財産損失リスクへのリスクマネジメントは優先度が高いといえます。現在は地震や台風などの自然災害に特化した保険商品を扱う保険会社や保険代理店もあるので、費用対効果を考慮して、導入の検討を行なうのも良いかもしれません。

【参考】内閣府 東日本大震災のおける被害額の推計について

収入減少リスク

収入減少リスクとは、財産損失リスクに伴う危険性を指します。

例えば、火災による生産工場・倉庫が被害を受けた際、復旧までの事業中断や施設閉鎖による利益減少、経費の発生が想定されます。また、取引先や協力会社の倒産による収益の減少も収入減少リスクに挙げられます。

中小企業にとっては、必ず想定しておきたい純粋リスクの一つです。また、投機的リスクでもある市場シェアの喪失も「収益減少」という性質を考えると収入減少リスクに定義づけることもできます。

賠償責任リスク

賠償責任リスクとは、著作権や商標権の侵害により、権利保持者に損害を与えてしまった場合に発生する賠償責任を負う危険性を指します。

現在、優れた技術やサービスが次々と登場される中、似たような形状のデバイスやサービスが多々存在しています。特に米国やヨーロッパでは著作権や特許権の侵害で発生した損害への賠償や事業停止を求める裁判が頻繁に起こされており、海外進出を目指す企業はより精度の高いリスクマネジメントが必要となります。

また、2005年に全面施行された個人情報保護法に則り、情報セキュリティの強化や情報システムの整備が企業に徹底されることとなり、企業は個人情報の漏洩による賠償責任リスクも考慮しなければなりません。

近年ではシステムの脆弱性を狙ったサイバー攻撃が頻繁に起きており、セキュリティ対策の一環として、情報セキュリティスペシャリストの採用などのリスクマネジメントの導入を検討しても良いかもしれません。

人的損失リスク

人的損失リスクとは、経営者や役員を含む従業員の死亡や事故などの労働災害、労務上で起きた病気や健康被害などで生じる経営資源の損失リスクを指します。事業継続を行なう上でキーパーソンの損失はどうしても避けたいリスクです。

また近年では、長時間労働による過労死や自殺、ハラスメントによる労働環境の悪化は、優秀な人材の離職や損失だけでなく、企業イメージにも悪影響を与えてしまいます。そのため、徹底された労務管理や経営層・従業員の意識改革、社会保険の徹底、経営層の生命保険の加入などのリスクマネジメントの検討が最適です。

投機的リスクと純粋リスクの違い

投機的リスクと純粋リスクの違いを以下にまとめました。

  投機的リスク 純粋リスク
概要 利益・損失両方が発生する可能性のあるリスク 損失のみ与えるリスク
種類 ・経済的情勢変動リスク
・政治的情勢変動リスク
・法的規制変更リスク
・技術的情勢変化リスク
・財産損失リスク
・収入減少リスク
・賠償責任リスク
・人的損失リスク
具体例 ・海外進出や新商品の開発など
・円安・円高などの為替リスク
・AI・ロボットの発展による代替 など
・火災や盗難などの人的災害、地震や台風などの災害
・取引先や協力会社の倒産
・著作権や商標権の侵害 など
特徴 国によって影響度や発生頻度は異なる 予報や予測によって統計的把握が可能

まとめ

  • 投機リスク・純粋リスクを正確に把握したリスクマネジメントは、最早企業の最重要経営課題の一つであり、企業情報に掲載している企業も少なくありません。
  • 近年では、利益至上主義が原因となった粉飾決算が株主に損害を与え、株主代表訴訟となるケースも増えています。
  • 常に情報収集を怠らず、自社にとっての投機リスク・純粋リスクを把握し、対策を模索することは企業が果たすべき責任と言っても過言ではありません。

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