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2019年4月9日(火)更新

人材ポートフォリオ

人材ポートフォリオは、事業目標の達成に必要な人材を明確化し、組織の人的資源を分析する手法です。採用や育成、人材配置に活用できます。近年働き方が多様化する日本社会において、人材の全体最適化を図ることができる手法として注目されています。今回は、人材ポートフォリオの基礎知識と設計する際の注意点についてご説明します。

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1.人材ポートフォリオとは

まず、人材ポートフォリオの意味を確認します。

ポートフォリオは、携帯用の書類入れから生まれた言葉

「ポートフォリオ」という言葉は、もともと「携帯用の書類入れ」という意味を表していました。その後、有価証券の保管や携帯をするためにこの書類入れが使われるようになり、個人や企業が保有する有価証券の組み合わせをひとくくりに表す言葉になりました。現在では、金融商品だけでなく、技術やプロジェクト、情報システム、製品、そして人材などビジネスの場面においても、それぞれの構成内容や組み合わせを表すキーワードとして使われています。

人材ポートフォリオは、企業の人的資源の構成内容を表している

人材の分野でポートフォリオは、企業の人的資源がどのような人材で構成されているかを表す言葉として使われています。人材ポートフォリオを設計することで、経営戦略や事業戦略において必要な人材を明確化し、それをもとに現状企業を構成する人材を分析、戦略上必要な人材の過不足を明らかにすることができます。必要な人材や現状の人的資源を可視化できるため、採用や育成、人材配置に活用されています。

2.人材ポートフォリオが必要になる背景

このような人材ポートフォリオが、なぜ近年の日本社会で必要とされているのでしょうか。その背景には、以下の2つがあると考えられます

正社員以外の人材の活用が進むなど、雇用形態が多様化

まず、日本社会において雇用形態が多様化している状況が背景として考えられます。

1980年代まで、企業での働き方は、新卒で入社した正社員の総合職が中心でした。総合職は男性が多く、勤務地を問わずフルタイムで働き、指示されればあらゆる業務を行うことが想定されていました。そのような状況下での人材マネジメントは、総合職の男性配置と育成のみがメインで、採用や育成、人材配置に関してそれほど神経をとがらせなくても、大きな問題は発生しませんでした。

しかし、1980年代後半になり、男女雇用機会均等法や労働者派遣法が施行され、女性の社会進出と正社員以外の人材の活用が進みます。総合職の女性や派遣期間が定められている派遣社員、契約社員が増加し、多様な働き方をする人材が企業を構成するようになると、企業側としては生産性を向上するためにそれぞれの人材に適した配置をしていく必要が出てきました。雇用の多様化が進み、人材の流動性が高まるため、常に自社の人的資源の状況を把握することが求められます。

このように、以前よりも人材マネジメントの全社的な検討が必要となる中で、人材の配置と採用を検討する上で有効なツールとして、企業の人的資源を可視化できる人材ポートフォリオが注目されるようになりました。

企業経営における人件費の効率化が求められる

次に、企業経営において今まで以上に人件費の効率化が求められているという状況も背景として考えられます。

近年グローバル社会となる中で、企業間の競争は激化し、売上が減速したり、頭打ちになったりする企業が増えています。また、少子高齢化により若い働き手の不足、ベテラン社員の人件費の増大、人件費の安い中国をはじめとするアジア諸国への対抗などの問題も発生しています。日本企業には今まで以上に人件費の削減や効率化が求められており、 そのような状況では限られた人材でいかに生産性を高く維持するかが企業にとって重要となってきます。

限られた人材を最大限活用できるよう現状分析する方法として、人材ポートフォリオは注目されるようになりました。人材ポートフォリオによって人的資源を可視化し、事業を動かす上での人材の最適な組み合わせを検討することで、企業における人件費の問題を解消することができるのではと期待されています。

3.人材の分類方法

それでは、人材ポートフォリオはどのような分類方法で、企業に必要な人材の明確化や現状分析をしていくのでしょうか。ここではその一例を紹介します。

経営目標や事業目標をもとに2つの軸を設定し、4象限に人材を分類する

人材ポートフォリオは、経営目標や事業目標を達成するために必要な2つの軸を設定し、4象限を作り分類を行っていきます。そして、自社において4つの象限に該当する人材がどの程度存在し、目標達成のためにどの程度4つの象限に該当する人材が不足または偏りがあるのかを分析していきます。

2つの軸は、ポートフォリオを設計する企業がそれぞれ自社に合わせて考える必要があります。人材ポートフォリオで何を分析したいのか、目的を設定することが必要です。一般的には、「個人か組織か」と「創造か運用か」の2軸で事業に必要な人材を分析する企業が多く見られます。その2軸から生まれる4象限は、「クリエイティブ人材」「マネジメント人材」「エキスパート人材」「オペレーション人材」という異なる4つのタイプになります。

4つの分類

「クリエイティブ人材」「マネジメント人材」「エキスパート人材」「オペレーション人材」は、経営戦略や事業戦略に合わせてそれぞれ役割が設定されており、役割に合わせてそれぞれ違う雇用形態の人材が振り分けられます。

企業にもよりますが、「マネジメント人材」「クリエイティブ人材」「エキスパート人材」」は中長期的に事業の課題解決が求められることがあるため、無期契約の正社員が担当し、「オペレーション人材」は、あらかじめ定められた仕組みをきっちりこなすことが求められる定型手仕事が含まれるため、有期雇用の派遣社員や契約社員、アルバイトが担当することが多いです。この分類以外にも、人材ポートフォリオの目的に合わせて、職務の難易度や専門性、貢献期間などを軸に人材を分類する場合もあります。

クリエイティブ人材

「個人」と「創造」の軸に囲われた分類です。高度な専門性を用いて個人で力を発揮し、目標達成に貢献します。

マネジメント人材

「組織」と「創造」の軸に囲われた分類です。人を管理し組織を動かすことで組織の力を発揮させ、目標達成に貢献します。

エキスパート人材

「個人」と「運用」の軸に囲われた分類です。専門性を用いて個人の力を発揮し、目標達成に貢献します。

オペレーション人材

「組織」と「運用」の軸に囲われた分類です。構築された枠組みを確実に運用し組織の力を発揮させ、目標達成に貢献します。

4.人材ポートフォリオのメリット

人材ポートフォリオを設計し分析することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。

採用や人材育成の分野で戦略を立てやすくなる

まず、メリットは人材マネジメントを行う上で戦略が立てやすくなることです。ポートフォリオによって、経営目標や事業目標を達成するために必要な人材が可視化されることで、どのような人材をどの程度採用し、どのように育成していくべきかが分かりやすくなります。目標達成に必要な人材モデルに合わせて、採用計画を立て、研修やジョブローテーションを行い、育成していくことが可能となります。

【関連】採用計画の立て方とは? / BizHint HR
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社員それぞれに多様なキャリアの道筋を示しやすい

次に、社員の要望や能力に合わせて、多様なキャリアパスを示すことができることもメリットです。

多様な働き方が可能となった近年では、担当職から管理職へと昇進していくことだけがキャリアパスではなくなりました。個人のキャリアプランや働き方への価値観も社会の流れに合わせて変わってきています。正社員ではなく、自ら進んで派遣労働を選ぶ人もいます。IT企業などでは、管理職になってマネジメントをするよりも、技術職として専門分野を極めていきたいという社員も存在します。

人材ポートフォリオの分類でマネジメント以外の専門性の高いポジションを作っておけば、そのような社員に対して、管理職に登用せずとも高い専門性があるということで相応の処遇をすることができます。

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適材適所の人材配置を図れる

さらに、事業の特性に合い成果を出しやすい人材を配置することができるということもメリットです。

人材ポートフォリオによって、企業に属するすべての雇用形態の社員を分析しておくことで、どのような社員がどのくらい存在するか明確にしておくことができます。これにより、人材の過不足を防ぐことができます。

例えばマネジメントに適した人材が不足し、オペレーションに適した人材が多すぎて余るというような状況を少なくすることができます。また、人件費を削減するために、むやみに無期雇用の労働者を減らし、有期雇用の派遣労働者を増やすという対策を行う必要はありません。

人材ポートフォリオを使えば、無期雇用の社員と有期雇用の社員の役割を明確にし、今保有する人的資源で成果を出せる最適な組み合わせを考えることができます。

【関連】人材配置の最適化と適材適所の本質 / BizHint HR

5.人材ポートフォリオの設計方法

それでは、実際にポートフォリオを設計する方法をご説明します。

経営戦略や事業戦略を明確化する

人材ポートフォリオは、経営目標や事業目標を達成するために必要な人材を明らかにする目的で作成されることがほとんどで、経営戦略や事業戦略に沿ったものである必要があります。そのためまずは、人材ポートフォリオの基準となる経営戦略や事業戦略を明確にしておくことが大切です。どのような目標を達成するための人材が必要なのか明らかにしておけば、目的からぶれずに有効に機能する人材ポートフォリオを設計していくことができます。

また、企業戦略を明らかにしておくことは、事業の将来性や成長性、重要性を分析することにもつながります。今後力を入れていく事業を明らかにしておけば、人材ポートフォリオを設計し人材を降りわける際にも、どこの事業に必要な人材を優先的に確保していけば良いか判断できます。重要性の低い事業に必要な人材を多く確保してしまうなどの誤りを防ぐことができます。

人材分類を設定する

次に、明確になった経営戦略や事業戦略をもとに2つの軸決め、人材分類を設定していきます。基本的には、「創造と運用」「個人と組織」の2つの軸が活用されることが多いです。

「創造と運用」は、新しい商品や事業を創造する人材か、もしくは与えられた仕組みを運用する人材かを判断します。「個人と組織」は、個人の成果を伸ばす人材か、組織の成果を伸ばす人材かを判断します。そして、その軸をもとに4つの分類を設定します。「創造と運用」「個人と組織」の軸を使った場合は、4つの分類は先述した「クリエイティブ人材」「マネジメント人材」「エキスパート人材」「オペレーション人材」となります。

4つの分類が決まったら、その分類にどの程度の人材を確保すべきか考えます。重点的に確保すべき人材分類を考える際には、最初に明確にした経営戦略や事業戦略を考慮していくことが大切です。それぞれの人材分類に確保すべき人材の数が概算できたら、現在各象限にどの程度の人材が多いか、企業の人的資源の洗い出しを行います。ここで、現在の人的資源の状況と今後のニーズとのギャップを見つけることができます。ギャップが見つかったところこそ、採用や育成でカバーしていく必要あるポイントとなります。

6.人材ポートフォリオを設計する際の注意点(デメリット)

働き方が多様化する社会において人材ポートフォリオは有効なツールですが、一方で注意点もあります。人材ポートフォリオは正しく活用しないと、手間だけがかかってしまい、ポジティブな効果を生み出すことができません。

分類するための軸作りや分類に伴う制度設定に負荷がかかる

1つ目の注意点は、人材をポートフォリオで分類するための軸作りや設定した分類に伴う制度設定に負担がかかるということです。軸作りは人材ポートフォリオの出来を左右するため、非常に重要です。経営戦略や事業戦略とすり合わせながら決める必要があるため、企業の経営幹部同士の話し合いが必要になる場合もあるでしょう。その際議論の場を設定したり、意見をまとめたりするには時間がかかります。有効な人材ポートフォリオを設計するためには、人事部を始め多くの社員に負荷がかかることを意識する必要があります。

また、人材ポートフォリオが設計できたとしても、得られた情報を活用しなければ意味がありません。設計した分類は、評価を含む人事制度や育成を含む教育制度に取り入れていく必要があります。人材分類ごとにスキルを決めキャリア開発に活かしたり、人材分類ごとに報酬や昇格、分類間の移動はどうするかなどを制度として決めたりすることが大切です。このような制度の見直しにも時間と負担がかかります。人材ポートフォリオを設計する際には、このような負荷が発生することも認識した上で取り組むことが大切です。

人材分類に伴った制度が適切に運用されないと、人件費の上昇や社員の不満につながる

2つ目の注意点は、人材分類に伴った制度が設定されても適切に運用されなければ、人件費の上昇や社員の不満につながってしまうということです。例えば、人材ポートフォリオを設計し人材分類を決定しても、企業全体の人材を抜け漏れなく洗い出し、今後必要な人材の不足数を適切に分析しなければ、一部の人材分類に偏りが生じてしまう可能性があります。偏りが生じた人材分類の報酬が高く設定されていれば、それだけ人件費は多くかかってしまいます。

また、昇格や異動を通して、人材分類間の移動を適切に運用しないと、自分の希望のキャリアパスが実現できないと社員が不満を持つ可能性があります。人材ポートフォリオは設計だけでなく、その後の運用にも注意していく必要があります。

このように、人材ポートフォリオの設計や制度とのすり合わせ、その後の運用はとても負荷がかかります。現在では、人材ポートフォリオの設計サービスを提供している企業も存在するため、それらの活用を考えてみることも有効です。外部からの視点を取り入れ、より客観的に自社の人的資源を分析したいという理由で、人材ポートフォリオ設計のコンサルティングを外部に依頼するケースもあります。

7.人材ポートフォリオを人事戦略に活かすためのポイント

最後に、人材ポートフォリオを人事戦略に活かすためのポイントをご説明します。

人材ポートフォリオの分類は、順位付けや優遇に使わない

まず、人材ポートフォリオの分類は、順位付けや優遇に使ってはいけないということです。人材ポートフォリオを設計したら、人事制度などに活用し、分類に伴った昇格や昇給を検討することは有効ですが、分類自体の優劣を決めることは不適切です。どの分類の役割が優れていて、どの分類の役割が劣っていると決めてしまうと、劣っている分類に設定された人は、やる気を持ちづらく、仕事へのモチベーションが低下してしまいます。あくまで、分類は整理するためのものであり、順位や優劣をつけるものではないということを明確にしておく必要があります。

全ての雇用形態の社員を対象とする

次に、全ての雇用形態の社員を対象とするということです。人材ポートフォリオは、目標達成に向けて人材配置を最適化することが目的です。一部の雇用形態のみの社員を対象とし、人材ポートフォリオを設計してしまうと抜け漏れが出てしまい、目標達成に向けた人的資源の現状分析が不十分になります。派遣社員であっても、派遣元関係なく派遣先の企業の人材として分析する必要があります。

例えば、派遣された社員やアルバイトを抜いて正社員のみで人材ポートフォリオを設計した場合、必然的に運用をメインに担う人材が少ない分析結果が出るでしょう。その結果をもとに正社員を運用の役割に回すと、実際は運用の役割を担う正社員と派遣社員、アルバイトが増えすぎ、現場が混乱してしまう可能性があります。そのような事態を引き起こさないようにするためにも、現在の人的資源の洗い出しは全ての雇用形態の社員を対象とすることが望ましいです。

企業側だけでなく、社員の志向も分類に反映する

最後に、企業側だけでなく、社員の志向や要望も分類に取り入れていくということです。働く個人のキャリアは、企業側が一方的に決めるものではありません。働く人自身が自分で考え、希望していくものです。企業側はそれを聞いた上で、現状の人的資源の状況と照らし合わせながら配置を考えていく必要があります。一方的に会社側が人材を分類し、キャリアパスを決めてしまっては、社員のモチベーションは低下し、生産性の低下や離職につながる可能性があります。

一人一人が将来の働く自分を想像しながら、活き活きとキャリアを切り拓いていけるよう、企業側は配慮することが大切です。全て個人の思い通りに分類することはできませんが、自己申告書等でキャリア希望などを書いてもらい、今後の育成に活かし、いずれは本人の希望するキャリアパスが描けるようサポートしていくことが必要です。

8.まとめ

  • 人材ポートフォリオとは、経営目標や事業目標を達成するために必要な人材を明確化し、現状の人的資源を整理して分析、今後どのような人事マネジメントを行っていけば良いか明らかにする手法である。
  • 働き方が多様化し、人件費の効率化が求められる社会において、企業の保有する限られた人的資源を全体最適化することができる。
  • 人材ポートフォリオは有効な手法であるものの、設計、各種制度への反映、適切な運用は社員への負荷が大きい。現在では、外部の設計サービスを利用し、効率的かつ有効にポートフォリオを活用する企業も増えている。

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