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2019年4月9日(火)更新

ロイヤルティ

ロイヤルティ(Loyalty)とは、消費者や従業員が組織やブランド、商品、サービスなどに対して抱く愛着や愛社精神などの好意的感情や精神的繋がりを指すビジネス用語です。消費者の顧客ロイヤルティや従業員の従業員ロイヤルティを向上、活用するために必要となる情報やノウハウを、英語の意味やロイヤリティ(Royalty)との違い、5つの思考段階、向上による影響やメリット、向上させる方法、向上効果を最大化させるためのポイントなどの項目に整理して分かりやすく解説致します。

ロイヤルティ に関するビジネス事例や製品の情報を受取る

ロイヤルティとは

ロイヤルティとは、消費者や従業員が特定の組織や製品に対して抱く愛着やこだわり、愛社精神や忠誠心などの好意的感情や精神的繋がりを指すビジネス用語です。

類似商品や同業他社など、普段購入している商品や現在属している企業の代わりとなる選択肢が存在するにもかかわらず、リピーターとして継続的に商品を購入し続けてくれる消費者や、永年勤続者として企業に多くの利益をもたらしてくれる従業員の多くが、高いロイヤルティを持っているといわれています。

Loyaltyという英語の意味

英語のLoyaltyには『忠誠』、『忠義』、『義理』、『誠実』などの意味があります。このLoyaltyは元々、国家や君主に対する感情や態度を表す言葉でした。

しかし、時代とともに広義的に扱われるようになり、組織やブランド、店舗、商品、サービスなど組織活動に関するあらゆる属性に対する『愛着』や『思い入れ』、『執着』、『こだわり』などの強い支持や感情を表すビジネス用語として多くの場面で用いられるようになりました。

ロイヤルティ(Loyalty)とロイヤリティ(Royalty)の違い

Loyaltyの直接的な関連用語ではありませんが、綴りや発音が非常に似ていることから混同されることの多いビジネス用語にRoyaltyというものがあります。

国家や君主に対する忠誠心や義理を表すLoyaltyに対し、Royaltyは『王族』や『王権』、『王位』、『王の威厳』など王族が持つ特別な権利や力を表しています。このことから、ビジネスシーンにおいてRoyaltyは『著作権や商標権、特許権などの知的財産権を利用する際、使用者(ライセンシー)が権利者(ライセンサー)に対して支払う対価』を指す言葉として用いられています。

一般的には以下のものがRoyaltyとして扱われています。

  • 著作権者に対して支払う著作権使用料(印税)
  • 商標権者に対して支払うライセンス料
  • 実施権者が特許権者に対して支払うライセンス料

Royaltyは多くの場合『ロイヤリティ』と記載、発音されますが、中にはLoyaltyと同じ『ロイヤルティ』と記載、発音する方もいるため注意が必要です。

自身が情報を発信する立場であれば、Royaltyを『ロイヤリティ』と記載、発音することで相手により明確に伝えることができます。しかし、全てのビジネスパーソンが『ロイヤルティ』と『ロイヤリティ』を使い分けているとは限らないため、情報を受信する立場となった場合には誤認しないように十分気を付けましょう。

また、当記事では【ロイヤルティ(Loyalty)とロイヤリティ(Royalty)の違い】以外の全項目において、Loyaltyのカタカナ語として『ロイヤルティ』を使用しています。

顧客ロイヤルティと従業員ロイヤルティ

ビジネス用語としてのロイヤルティは、組織と対象者の関係性によって、経営的要素の強い『顧客ロイヤルティ』と、人事的要素の強い『従業員ロイヤルティ』に大別することができます。

顧客ロイヤルティ

顧客ロイヤルティ(ユーザーロイヤルティ)とは、顧客やユーザー、消費者、サプライヤーなど組織が提供する商品やサービスを購入、利用する人物や団体が組織や製品に対して抱く好意的感情や精神的繋がりです。顧客ロイヤルティは組織の売上や収益に大きな影響を与える要素であることから、マーケティング用語としても扱われています。

顧客ロイヤルティの高い顧客やユーザー、消費者、サプライヤーは以下のような思考傾向や行動特性をもっています。

  • 新規に商品購入やサービス利用を検討する際、企業名やブランド名(商標)などを重視する
  • 商品購入やサービス契約が特定の店舗や営業担当者(販売員)に限定されている
  • 特定の商品を継続的に購入する
  • 特定のサービスを長期にわたって利用する
  • 機能性や価格面でより優れている商品やサービスの存在を認識しても、買い替えや乗り換えを検討しない
  • 自分が使用している商品や利用しているサービスを、対話やSNS利用などの手段を用いて自発的に他者に勧める
  • 組織やブランドの知名度アップを自分のことのように喜ぶことができる
  • 購買行動や購買後のサポートによって尊厳欲求(承認欲求)や自己実現欲求が満たされている

顧客ロイヤルティは主に組織、ブランド、店舗、商品、サービスなどの属性に対して発生しますが、特定のブランドに対するロイヤルティを『ブランドロイヤルティ』、特定の店舗に対するロイヤルティを『ストアロイヤルティ』と表現することもあります。

従業員ロイヤルティ

従業員ロイヤルティとは、社員やスタッフ、現場作業員など組織の一員として働く労働者が組織に対して抱く好意的感情や精神的繋がりです。従業員ロイヤルティは組織全体の士気やチームワークに大きな影響を与える要素であることから、人事用語としても扱われています。

従業員ロイヤルティの高い労働者は以下のような思考傾向や行動特性をもっています。

  • 組織の一員であることを誇りに思い、組織で働けることに喜びを感じる
  • いつまでも組織の一員でありたいと心から願っている
  • 現在より格段に良い条件でのヘッドハンティングに対しても全く関心を示さない
  • 創業者や企業経営者、トップマネジメント層を尊敬し、思考や戦略を強く支持している
  • 自社の商品やサービスを誇りに思い、その存在価値を高く評価している
  • 周囲の求職者に対して自発的に自社を勧める
  • 組織や所属部署の業績アップを自分のことのように喜ぶことができる
  • 組織に貢献することで尊厳欲求(承認欲求)や自己実現欲求が満たされている

従業員ロイヤルティは正規社員や非正規社員といった雇用形態に関係なく発生します。そのため、アルバイトやパートタイマー、派遣社員、契約社員など正社員以外の従業員に対しても、意識的かつ戦略的に高めていく必要があります。

ロイヤルティの5つの思考段階

ロイヤルティには次の5つの思考段階があります。

  1. 同等の選択肢が市場に存在しない
  2. 習慣化による流れ作業的選択
  3. 時間的犠牲や金銭的犠牲、発生リスクを理由とした妥協的選択
  4. 愛着や忠誠心による離脱への抵抗感
  5. 継続するためならば時間的犠牲や金銭的犠牲を払うことを厭わない

ロイヤルティは『市場における競争原理が働いている』という大前提の下に存在するため、厳密にいうと1はロイヤルティの思考段階には含まれません。

しかし、だからといって類似商品や同業他社が次々と市場に登場してから取り組み始めるのでは完全に手遅れとなってしまうため、ロイヤルティを戦略的に扱う場合には思考段階の1つとして頭に入れておく必要があります。

ロイヤルティの構築や醸成は、早期に取り組むほど高い効果を得やすいという特徴を持っています。顧客ロイヤルティと従業員ロイヤルティを最大限に高めるため、たとえ競争相手が市場に存在しない状態であっても、企業経営者や人事担当者は対象者と積極的にコミュニケーションを図り、現在の思考段階がどのレベルにあるかを正しく把握するよう心掛けなければならないのです。

顧客ロイヤルティにおける思考段階

ロイヤルティの5つの思考段階を顧客ロイヤルティに当てはめると次のようになります。

  1. 同等の選択肢が市場に存在しない
    ・類似商品や類似商品が存在しない
  2. 習慣化による流れ作業的選択
    ・特に理由は無いが何となく買い続けている
    ・買い替えの検討や解約手続きが面倒
    ・類似商品の存在を知らない(わざわざ調べてまで知ろうとしない)
  3. 時間的犠牲や金銭的犠牲、発生リスクを理由とした妥協的選択
    ・近所に類似商品を取り扱っている店舗が無い
    ・契約してから利用開始までに多くの時間がかかる
    ・他社製品の方が魅力的ではあるが価格が高い
    ・新商品や新サービスの機能を使いこなすことができるか不安
  4. 愛着や忠誠心による離脱への抵抗感
    ・経営トップやデザイナーのセンスや考え方に惚れ込む
    ・この企業の商品でないと安心して使用することができない
    ・この企業はユーザーのことを第一に考えてくれていると感じる
    ・このブランドの商品を購入し、所持することで心が満たされる
  5. 継続するためならば時間的犠牲や金銭的犠牲を払うことを厭わない
    ・商品を確実に購入するためであれば長蛇の列に並んで待つことができる
    ・遠方にしか取り扱いショップが無い場合には交通費を支払ってでも買いに行く
    ・より多くのファンが増えることを望み、自発的に最新情報や魅力を発信する

従業員ロイヤルティにおける思考段階

ロイヤルティの5つの思考段階を従業員ロイヤルティに当てはめると次のようになります。

  1. 同等の選択肢が市場に存在しない
    ・同職種を扱う企業が他に存在しない
    ・同業他社は存在するが、いずれも新規人材を募集していない
  2. 習慣化による流れ作業的選択
    ・一度就職したら定年まで勤めるのが当然だという考えを持っている
    ・組織に対して不安も期待も持っていない
    ・創業者や経営者の想いや考えに共感せず、関心を示さない
    ・仕事はお金を稼ぐための手段だと割り切っている
  3. 時間的犠牲や金銭的犠牲、発生リスクを理由とした妥協的選択
    ・転職活動を行う時間や精神的余裕が無い
    ・今の職場に不満を持っているが転職すると給料が下がってしまう
    ・新しい職場に馴染むことができるかどうか不安
    ・新しい仕事や手順を覚える自信が無い
  4. 愛着や忠誠心による離脱への抵抗感
    ・給料や福利厚生の面で不満はあるが、職場の人間関係や雰囲気が気に入っている
    ・自分に与えられた役割や仕事に大きなやりがいを感じている
    ・未経験者だった自分をここまで育ててくれた会社に恩返しがしたい
    ・創業者や経営者、トップマネジメント層に憧れや尊敬の念を抱いている
  5. 継続するためならば時間的犠牲や金銭的犠牲を払うことを厭わない
    ・給料の増減や報酬の多寡を問わず、全ての業務に対して最高のパフォーマンスで取り組む
    ・プライベートな時間を使用して自主的に資格取得のための学習を行う
    ・より多くの人に組織の存在を知ってもらうため、自発的に最新情報や魅力を発信する
    ・求職中の友人や知人に対して積極的に自分の勤め先を薦める

ロイヤルティ向上による影響やメリット

組織は顧客や従業員のロイヤルティ向上に努めることで多くの影響とメリットを受けることができます。

そして、ロイヤルティ向上施策に大きく関わる企業経営者や人事担当者などの重要人物がその効果を正しく理解しておくことによって、将来的に組織が獲得できる利益を最大化させることができます。

顧客ロイヤルティ向上による影響やメリット

顧客ロイヤルティが高く、組織に多くの利益をもたらす優良顧客のことをロイヤル・カスタマーといいます。組織が顧客ロイヤルティ向上に意欲的に取り組み、ロイヤル・カスタマーを増加させることによって発生する影響やメリットには次のようなものがあります。

  • リピート率や継続率の向上
  • 認知度の向上と新規顧客数の増加
  • 顧客単価と売上高の増加
  • マーケットシェアの拡大と競争優位性の確保
  • 顧客接点の増加
  • ヒット商品やロングセラー商品を生まれやすくなる

リピート率や継続率の向上

マーケティングの世界には『1:5の法則』と『5:25の法則』という2つの有名な法則があります。

  • 1:5の法則 … 新規顧客へ販売するためには既存顧客に対して費やす5倍の販売コストが必要となる
  • 5:25の法則 … 顧客離れを5%改善することで利益率を25%改善することができる

これら2つの法則を見ても分かるように、リピーター率や定期契約の継続率の向上が組織にもたらす利益は非常に大きなものです。

多くの場合、顧客ロイヤルティが高まるにつれて、競合他社が提供している類似商品への買い替えや類似サービスへの乗り換え、定期契約の解約に対する抵抗を感じやすくなっていきます。そして、顧客ロイヤルティが最大限まで高まると、買い替えや乗り換え、解約など組織にとってマイナスとなる選択肢を完全に排除するようになります。

このように、顧客ロイヤルティを高めることによって、競合他社への移動や定期顧客の離脱を防止し、リピート率や継続率の向上を図ることができるのです。

認知度の向上と新規顧客数の増加

『1:5の法則』や『5:25の法則』の他にも、顧客ロイヤルティ向上を図る上で知っておくべき法則は数多く存在します。その1つが1924年にサミュエル・ローランド・ホール氏が『Retail Advertising and Selling』という実務書の中で発表した消費者の心理的プロセス・モデル、通称『AIDMAの法則(アイドマの法則)』です。

このAIDMAの法則によると、消費者が購入や契約というアクションを起こすためには『Attention(注意)』、『Interest(興味)』、『Desire(欲求)』、『Memory(記憶)』、『Action(行動)』という5つの心理的プロセスを踏む必要があるとされています。

顧客ロイヤルティの高い顧客に多くみられる行動特性の1つに『自分が使用している商品や利用しているサービスを、対話やSNS利用などの手段を用いて自発的に他者に勧める』というものがあります。親族や友人、知人に対してロイヤル・カスタマーが自発的かつ積極的に情報を公開することによって、新規顧客を獲得するために突破しなければならない5つの心理的プロセスに対して次のような好影響を与えることができます。

  • Attention(注意)
    ・商品やサービスの存在に気付くことができる
    ・新ブランドや新製品の情報をいち早く知ることができる
  • Interest(興味)
    ・商品やサービスと実生活との関連性や重要性を理解することができる
    ・商品やサービスの魅力や機能を分かりやすく学ぶことができる
  • Desire(欲求)
    ・実際に使用しているところを見せてもらうことができる
    ・購入や契約に至った決め手や購入後の感想など、購入者の生の声が聞ける
    ・リアルな情報を得ることによって自分に置き換えた場合のイメージが沸きやすくなる
    ・充実度や満足度が声のトーンや表情、雰囲気からも伝わってくる
    ・問題点やトラブルなど、従業員や店員に聞きづらいことも気軽に尋ねることができる
  • Memory(記憶)
    ・親交の深い相手から話を聞くほど記憶に残りやすい
    ・自身にとって有用であると感じた情報ほど記憶に残りやすい
    ・情報ではなく友人や知人との話題として扱うことで、忘れないように心掛けるようになる
  • Action(行動) ・ロイヤル・カスタマーの同行者として来店することで、組織や店舗との接点が生まれる
    ・ロイヤル・カスタマーに同行してもらうことで、不安感情を解消することができる
    ・事前にネガティブな情報を把握しておくことで、購入や契約の直前で躊躇しにくくなる

実際に長期間使用した人にしか分からないリアルな使用感や、ユーザー視点による発見や気付きといった使用者の生の声は、どんなセールストークやキャッチコピーよりも激しく人の心を揺さぶります。

顧客ロイヤルティ向上施策の実施によって多くのロイヤル・カスタマーを育成し、顧客ロイヤルティが十分に高まったロイヤル・カスタマーが自らの意思で組織やブランド、店舗、商品、サービスなどの魅力や活用方法を発信することによって、認知度の向上や新規顧客数の大幅な増加を目指すことが可能となるでしょう。

顧客単価と売上高の増加

一般的に顧客ロイヤルティの向上と顧客単価の増加は比例関係にあるといわれています。また、リピーター率向上と新規顧客数増加の相乗効果によって、定期的に商品を購入しているアクティブな顧客数や継続的にサービスを利用しているアクティブユーザー数を加速度的に増加させることができます。

定期購入者や継続者の数と顧客単価が同時に増加することで、対象となる商品やサービスの売上高は大幅に増加することになるでしょう。

マーケットシェアの拡大と競争優位性の確保

リピーター率の向上と新規顧客数の増加はマーケットシェアの拡大という結果をもたらしてくれます。また、市場占有率が高まることによって仕入れや販売、輸送などのあらゆる面で競合他社に比べて有利な立場を築くことができます。

顧客接点の増加

顧客接点とは、消費者が組織やブランド、商品、サービスに関する情報に接する全ての機会のことを指す言葉です。この顧客接点を増加させることによって、顧客ニーズの把握が容易となり、商品やサービスの質を効果的に高めることが可能となります。

顧客接点の増加を目的とした施策の多くは、組織からの積極的なアクションを必要とします。しかし、顧客ロイヤルティを高められたロイヤル・カスタマーは自らの意思で情報収集を行い、店舗へと出向き、周囲の人間に対してポジティブな情報を数多く発信してくれるため、CM広告やダイレクトメール(DM)、電話営業などの追加コストを支払わなくとも顧客接点を増加させることができます。

ヒット商品やロングセラー商品を生まれやすくなる

組織やブランドにとって最大の味方はロイヤル・カスタマーです。全てのロイヤル・カスタマーは組織やブランドを心から愛し、応援してくれています。また、大切な存在であると認識しているからこそ厳しい意見であっても真正面から伝えてくれます。

このようなロイヤル・カスタマーの声は、爆発的なヒット商品や世代を超えて愛されるロングセラー商品を生み出すための大きなヒントとなります。組織やブランドが顧客ロイヤルティの向上に努めることによって、より多くのロイヤル・カスタマーから新商品開発やイノベーション創出のヒントを得ることが可能となるでしょう。

従業員ロイヤルティ向上による影響やメリット

従業員ロイヤルティには単なる忠誠心だけではなく愛社精神や帰属意識、組織コミットメントなどの様々な要素が含まれます。

従業員と多くの接点を持つ企業経営者やトップマネジメント層、人事担当者、直属の上司が従業員ロイヤルティの向上に意欲的に取り組むことで発生する影響やメリットには、次のようなものがあります。

  • 離職率の低下と平均勤続年数の増加
  • 生産性の向上と売上高の増加
  • 商品・サービス品質と顧客満足度の向上
  • 戦略的かつ長期的な人材育成
  • 人材育成制度の効果判定の容易化
  • 社員紹介制度の活用
  • 人事制度の最適化
  • 組織やブランドのイメージ向上

離職率の低下と平均勤続年数の増加

従業員ロイヤルティが高められた従業員は、会社に尽くし、会社と共に成長しようと考えるようになります。そのため、たとえ給料や待遇などの面で現状より好条件を提示する同業他社が現れたとしても、転職を検討することなく、目の前の仕事に集中して取り組むことが可能となります。

このような従業員の心理的変化は、離職率の低下や平均勤続年数の増加といった形で数字として現れます。離職率や平均勤続年数は求職活動や転職活動を行う際に職場内の雰囲気を見極めるための重要な材料です。

従業員ロイヤルティの向上によって大幅に改善された離職率と平均勤続年数は、求職者や転職希望者に大きな安心感を与えてくれるでしょう。

生産性の向上と売上高の増加

従業員ロイヤルティが高められた従業員は、経営陣や管理職から高い評価を獲得し、自分が組織にとってかけがえのない存在であることを認めてもらうため、常に最高のパフォーマンスを維持して仕事に励むようになります。

そのため、従業員ロイヤルティの高まった人材の増加に比例して組織全体の生産性が向上し、それに伴って売上高も増加していきます。

商品・サービス品質と顧客満足度の向上

従業員ロイヤルティが高められた従業員は、組織やブランドが世の中から高い評価を受けるため、一つ一つの仕事を丁寧に行うようになります。

そのため、現場作業員や製造スタッフ、営業担当者、店頭スタッフ、お客様相談室担当者、コールセンタースタッフなど、商品やサービスの品質に直接的影響を及ぼす社員やスタッフの従業員ロイヤルティを重点的に高めることで、商品やサービスの品質向上と顧客満足度向上を同時に実現させることができます。

戦略的かつ長期的な人材育成

人材育成途中や人材育成直後に人材が離職し、組織外部に流出することによって組織が被る損失は多大なものとなります。そのため、人材育成を含めた具体的な将来ビジョンを描きながらも実行に移すことができない組織は数多く存在します。

しかし、戦略的かつ長期的な人材育成は、組織の将来を担う後継者や次世代リーダーを確保するために欠かすことのできない重要施策です。従業員ロイヤルティ向上効果によって従業員の離職率が低下することで、組織はリスクを恐れることなく、将来のビジョン実現に向けて戦略的かつ長期的な人材育成を実施することが可能となるでしょう。

組織やブランドのイメージ向上とマーケティング効果

従業員ロイヤルティが高められた従業員は、自発的かつ積極的に周囲の人間に対して自社の良い点をアピールしてくれるようになります。

従業員ロイヤルティの高まった従業員の中には自社の商品やサービスを長期間愛用している者も多く、そのような人物が愛用者の一人として発信するメッセージには多くの共感の声が寄せられます。また、商品開発や製造に携わる人物のメッセージには、商品やサービスに対する使用感や要望、問題点の指摘などの声が寄せられます。

個々の従業員が顧客接点となることによって、組織やブランドのイメージ向上とマーケティングを多角的に進めることが可能となります。ただし、個人情報や機密情報が漏洩するようなことは絶対にあってはならないため、情報管理方法や個人で発信可能な情報の線引き、情報倫理に関する研修など、情報発信を前提とした環境を構築し、周知徹底を図っておく必要があるでしょう。

リファラル採用制度によって発生するメリットの最大化

ロイヤルティ向上による情報発信効果は、新規人材の発掘や確保にも大きく役立ってくれます。

社員やスタッフの人脈を活用し、求職活動や転職活動を行っている友人や知人を紹介、推薦してもらうリファラル採用(リファラルリクルーティング、社員紹介採用)には、採用コストの削減効果やマッチング精度の向上など多くのメリットが存在します。しかし、組織がそれらのメリットを正しく享受するためには、紹介者となる社員やスタッフが自己利益を求めることなく、企業の求めている人材像を正しく把握した上で適切な相手に対してアプローチを行う必要があります。

従業員ロイヤルティが高まっている社員やスタッフは、組織の価値を最大限に高め、自分自身も組織から高い評価を受けるため、組織と被紹介者とのマッチングを第一に考えるようになります。従業員ロイヤルティを高めることによって、リファラル採用によるメリットの最大化とデメリットの最小化という最高の結果を手に入れることができるようになるでしょう。

【関連】リファラル採用の意味とは?メリットや組織に根付かせるポイントを解説 / BizHint HR

人事制度の最適化

人事制度とは、人材が組織の一員として加わり、組織から抜けていくまでの一連のプロセス全てに影響を及ぼす重要な制度です。しかし、人の出入りが激しく平均勤続年数が短い組織の場合、採用規定や新入社員研修など短期間で一定の評価判定を実施できる規定や施策の見直しを行うことはできても、評価判定に長い期間を要する規定や施策の見直しを行うことはできません。

従業員ロイヤルティ向上によって離職率が低下し、平均勤続年数が増加することによって、組織内のあらゆる規定や施策の評価判定を容易かつ正確に実施できるようになります。

【平均勤続年数の増加によって評価判定が実施可能となる人事制度の一例】

  • 評価判定制度(昇進昇格制度、定年制度)
  • 人材育成制度(次世代リーダー育成計画、育成対象者選出基準)
  • 報酬制度(昇給規定、退職金制度)
  • 福利厚生制度(財産形成に関する援助、従業員特典)

最適化された人事制度と従業員ロイヤルティの相乗効果によって、組織への人材定着率は更に高まり、組織と従業員の一体化を実現させることができるでしょう。

【関連】人事制度とは?設計・構築のポイントやトレンド・事例をご紹介 / BizHint HR

ロイヤルティを向上させる方法

顧客や従業員のロイヤルティは、企業経営者や人事担当者が正しい認識を持ち、意欲的に関わることによって、少しずつそして確実に向上させていくことができます。

顧客ロイヤルティを向上させる方法

以下の5つのステップを踏むことにより、顧客ロイヤルティを向上させることができます。

  1. 顧客やユーザーの声に耳を傾ける
  2. 本質的な問題を見極める
  3. 改善施策を検討する
  4. 改善施策を実施する
  5. NPSを用いて施策効果を評価する

顧客やユーザーの声に耳を傾ける

顧客満足度調査や顧客アンケート、顧客インタビューなど、多くの組織がすでに顧客やユーザーの意見を吸い上げる様々な施策を実施しています。しかし、これだけではサイレントカスタマー(物言わぬ顧客)の声まで正しく拾うことはできません。

サイレントカスタマー対策は全ての日本企業が早急に実施するべき重要施策です。なぜなら、他者を否定することに抵抗を感じる日本人は特にサイレントカスタマーになりやすいといわれているからです。

個人ブログやSNS上などで発信される声なき声に耳を傾けることによって、新たな問題や課題が見つかることもあるでしょう。

本質的な問題を見極める

収集した意見や要望を基に、『組織やブランド、自社製品に何が求められているのか』という本質的問題の見極めを行います。この際、純顧客価値を意識することで問題や課題の整理が容易となります。

純顧客価値とは、総顧客価値(特定の商品やサービスから顧客が得ることのできるベネフィットの総計)から総顧客コスト(顧客が商品やサービスを獲得、使用、処分するために必要となるコストの総計)を差し引いたものであり、一般的には純顧客価値が大きいほどリピート購入や継続利用に繋がりやすいといわれています。

顧客やユーザーの声がどのベネフィットやコストに対して向けられているものであるかを分別することによって、ベネフィット不足やコスト過剰など商品やサービスが抱えている問題や課題を整理し、重点的に取り組むべき本質的問題を正確に見極めることが可能となるでしょう。

改善施策を検討、実施する

前ステップで見極めた本質的問題を解決、改善するための施策を検討し、実施します。

なお、施策検討と施策実施の間に『顧客やユーザーに改善施策の是非を問う』という追加ステップを入れることによって、組織側の積極的コミュニケーション姿勢の表明と改善施策の正当性評価という2つの面でより確実にロイヤルティ向上を図ることができます。

ただし、顧客やユーザーの声の大きさと主張の重要性は必ずしも一致するわけではないため注意が必要です。一部の声に翻弄されることなく全体の反応を俯瞰的に捉え、総合的に判断するよう心掛けましょう。

NPSを用いて施策効果を判定する

施策実施後、顧客ロイヤルティの向上に効果的であったかどうかの判定を行います。この際、ロイヤルティを数値化する指標としてNPS(Net Promoter Score、ネット・プロモーター・スコア)を用います。

NPSとは、2003年にアメリカのコンサルティング会社であるベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)社のフレデリック・F. ライクヘルド(Frederick F. Reichheld)氏がハーバード・ビジネス・レビューで発表した指標です。Apple社やGoogle社など顧客志向を重視する企業が導入し、一定の有効性を証明したことで大きな話題となり、大手企業を中心とする多くの企業が成長率向上や収益向上を実現させるための経営指標として採用するようになりました。

NPSでは、顧客やユーザーに『この企業(ブランド、商品、サービス)を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?』という質問を行い、0~10点の11段階評価で回答してもらいます。

点数 分類 評価
10 - 9 推奨者(Promoter) ロイヤルティが十分に高まっている/良い口コミの発生源となってくれる
8 - 7 中立者(Passive) 現状に満足しているものの、熱狂的ファンとまではいえない/些細な理由で競合他社へ移ってしまう可能性がある
6 - 0 批判者(Detractor) 強い不満を感じている可能性がある/悪い口コミの発生源となることがある

対象となる全ての顧客やユーザーから回答を得ることができたら、上記の分類基準に従って3つのグループに分類していきます。その後、推奨者の割合から批判者の割合を引くことによって、現在の顧客ロイヤルティをNPSとして数値化することができます。

NPSとして数値化された顧客ロイヤルティの増減が施策実施による効果となります。NPSを指標として用いる場合には、比較対象となる施策実施前のNPSも忘れずに測定しておきましょう。

従業員ロイヤルティを向上させる方法

以下の5つのステップを踏むことにより、従業員ロイヤルティを向上させることができます。

  1. 職員やスタッフの声に耳を傾ける
  2. 本質的問題の見極めと整理を行う
  3. 改善施策を検討する
  4. 改善施策を実施する
  5. NPSを用いて施策効果を評価する

職員やスタッフの声に耳を傾ける

職員やスタッフの声を正しく吸い上げるためには、常日頃からオープンな関係性を構築しておくことが重要となります。また、面談や社内アンケートなどの方法に加え、ご意見箱など匿名による意見の投稿が可能な環境を設けることによって、ネガティブな意見や積極的に発言することが苦手な従業員の声を集めることが可能となります。

本質的問題の見極めと整理を行う

職員やスタッフから寄せられた声の大半は人事制度の見直しによって解決、改善を図ることができます。しかし、やりがいの追及や自己実現への悩みといった個人的問題や、人間関係への不満や不安といった心理的問題など、全体への一括対応ではなく個別対応が必要となる問題や課題も中には存在します。

個々の意見に含まれている本質的問題を見極め、それらを一括対応が可能な問題と個別対応が必要な問題に整理しておくことで、抜け漏れによる信頼関係の悪化を未然に防ぐことができます。

改善施策を検討、実施する

エンゲージメントやコミットメントがまだ十分に高まっていない従業員の中には、自身や自部署の利益確保だけを目的とした要望を出している者もいます。また、制度の大幅変更によって不利益を被る従業員や部署が発生する場合や、経営の安定に支障をきたしてしまう場合には、たとえ正当な要望であっても迅速かつ適切な対応を取ることができないことがあります。

このように、全従業員の要望に応えるということは決して容易ではありません。しかし、一人ひとりの従業員に対して真正面から向き合い、組織の一員として全面的に受け入れ、親身になって寄り添うことによって、従業員ロイヤルティは少しずつでも確実に向上していきます。

即座に要望に応えることが不可能な場合であっても、不可能だと判断した理由や実現可能となるための条件、それまでの代替案などをフィードバックとして丁寧に提示することで、最大限の誠意を示すことができるでしょう。

NPSを用いて施策効果を判定する

NPSは従業員ロイヤルティの評価にも有効な指標です。NPSを用いて従業員ロイヤルティを測定する場合には、質問文を『この企業への就職や転職を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?』に変更します。

この際、匿名回答にすることでより正確なデータを得ることができます。実名回答の場合、人事評価への影響を意識することで実際よりも推奨者(Promoter)が増加する傾向にあるため、回答結果に対する前向きな個別フォローアップの実施など明確な目的がない限り、匿名回答にて実施することが望ましいでしょう。

ロイヤルティ向上効果を最大化するためのポイント

以下のポイントを押さえることにより、顧客や従業員のロイヤルティ向上効果を最大化させることができます。

『満足度が高い=ロイヤルティが高い』ではないことに留意する

顧客満足度の多くは商品やサービスに対する絶対評価であり、競合他社の商品やサービスとの相対評価ではありません。そのため、顧客満足度が高いにも関わらずリピート購入や継続利用に繋がらないという現象が発生します。

同様に、従業員満足度も組織に対する絶対評価であるため、ロイヤルティとイコールで扱うことはできません。満足度とロイヤルティを混同することで大切な情報を見失うことがないように注意しましょう。

ロイヤルティの4つの状態を理解する

ロイヤルティは対象者の心理と行動によって『真のロイヤルティ』、『見せかけのロイヤルティ』、『潜在的ロイヤルティ』、『非ロイヤルティ』の4つの状態に分類することができます。個別対応が必要な対象者が現在どの状態にあるのか分類することで、最適なアプローチ方法を見つけ出すことが容易となるでしょう。

カスタマージャーニーマップを作成する

カスタマージャーニーマップとは顧客が商品と出会い、購入に至るまでの過程をマップという形で可視化したものです。

カスタマージャーニーマップの作成を通じてカスタマーエクスペリエンス(customer experience=顧客体験)を把握することで、顧客ロイヤルティに有効な改善ポイントの洗い出しや特定が容易となります。

カスタマージャーニーマップは顧客ロイヤルティだけでなく、従業員ロイヤルティの向上にも役立てることができます。採用活動から離職までの課程をカスタマージャーニーマップとして表すことで、従業員と組織の接点を正確に把握することができるでしょう。

ロイヤルティ・プログラムの導入を検討する

ロイヤルティ・プログラムとは、一定期間継続利用した顧客やユーザーに対して何らかのインセンティブを付与することで一般顧客との差別化による優越感や満足感を与え、より多くのインセンティブを獲得したいという感情を刺激することによって、企業利益と顧客ロイヤルティを同時に高めていく施策です。

このロイヤルティ・プログラムも従業員ロイヤルティ向上に応用することができます。永年勤続が大きな価値や利益を生み出すことが明確になることで、高いモチベーションを維持しながら日々の仕事に励むことができるようになるでしょう。

パレートの法則(80:20の法則)を間違って解釈しない

ビジネスやマーケティングの学習をしていると『パレートの法則(80:20の法則)』という言葉を目にすることがあります。

パレートの法則とはイタリアの経済学者であるヴィルフレド・パレート(Vilfredo Frederico Damaso Pareto)氏が統計分析によって導き出した『全体の2割程度の高額所得者が社会全体の8割の富を保有している』という冪乗則です。このパレートの法則は汎用性が高く、いわゆる経験則としてビジネス分野やマーケティング分野、自然現象や社会現象などあらゆる場面で活用されています。

売上と顧客との関係性にパレートの法則に用いることで『売上全体の8割はわずか2割の優良顧客によって生み出されている』という仮説を立てることができます。このことから、『顧客単価の高い上位2割の優良顧客に対して重点的に顧客ロイヤルティを高める施策を実施することが最も効果的である』という解釈をしてしまう方がいますが、それは大きな間違いです。

売上の大半を占める顧客に対して積極的に顧客ロイヤルティを高める施策を実施することは確かに重要です。しかし、一部の顧客だけに全意識を集中させてしまっては、大幅な売上増加を目指せないだけではなく、何らかの事情によって上位顧客が失われた際に急激な売上の減少が発生するリスクを抱えることになってしまいます。

パレートの法則をロイヤルティの向上に活用する際には、『顧客総数を増加させることによって、売上全体の8割を生み出す優良顧客の総数も増加させることができる』という解釈をしなければなりません。一部の顧客に執着し過ぎることなく全顧客の顧客ロイヤルティを満遍なく高められるよう努めることで、顧客総数、優良顧客数、売上総額の全てを大幅に増加させることが可能となるでしょう。

まとめ

  • ロイヤルティ(Loyalty)とは、消費者や従業員が特定の組織やブランド、商品、サービスなどに対して抱く愛着やこだわり、愛社精神や忠誠心などの好意的感情や精神的繋がりを指すビジネス用語である
  • ロイヤルティ(Loyalty)とロイヤリティ(Royalty)は綴りや発音が非常に似ているが、異なる意味を持っているため混同しないように注意する必要がある
  • ロイヤルティは、顧客やユーザーを対象とした『顧客ロイヤルティ』と従業員や社員を対象とした『従業員ロイヤルティ』の2つに大別することができる
  • ロイヤルティには5つの思考段階が存在する
  • NPSは『この企業(ブランド、商品、サービス)を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?』という質問によってロイヤルティを数値化することができる
  • 全てのロイヤルティ評価対象者はNPSによって『推奨者(Promoter)』、『中立者(Passive)』、『批判者(Detractor)』のいずれかに分類することができる

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