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2019年1月29日(火)更新

持株会社

子会社や関連会社などの複数の関係会社を有する企業にとっては企業グループ内での各企業の役割や構成は非常に重要な意味を持ちます。この記事では、企業グループを形成する上でよく利用される持株会社について、その意味やメリットを紹介します。

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持株会社(持株会社制)とは?

持株会社とは、他の会社(例えばA社)の支配を目的として当該A社の株式を保有する会社のことをいいます(持株会社に支配される会社を以下、「被支配会社」という。)。英語で“保有”を“Holding”ということから、ホールディングカンパニーと呼ぶこともあり、社名に「ホールディングス」を入れた〇〇ホールディングスなどの社名も増えています。

この持株会社には、「事業持株会社」と「純粋持株会社」と呼ばれるものが存在します。

「事業持株会社」は持株会社自体も事業を行っており、元々は事業を行っていた会社が被支配会社の株式を取得することにより、事業持株会社となるケースが多いです。

これに対し、「純粋持株会社」は事業を行うことはなく、被支配会社の株式を保有すること及び被支配会社の管理のみを目的として設立されることにより、純粋持株会社となるケースが多いです。

支配とは?

この持株会社について説明する上で最も重要な概念が「支配」という考え方になります。

支配するということは、持株会社の決定に被支配会社が従うことを意味します。ではどのような状態のときにこの支配関係が成立するかというと、一般的に被支配会社の発行済株式の50%超を持株会社が保有したときにこの支配関係が成立します。

発行済株式の50%超が保有される被支配会社のことを「子会社」、100%が保有される被支配会社を「完全子会社」といいます。また、当該株式を保有する持株会社を「親会社」といいます(以下、「持株会社」のことを必要に応じて「親会社」という。)。

この50%超というラインは会社法に基づいており、会社法第309条第1項(普通決議)で下記のように規定されています。

株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
【引用】電子政府の総合窓口(e-Gov)/ 会社法

株式会社の最高の意思決定機関は株主総会であり、株主総会で決定された事項に従い会社経営は行われます。すなわち株主総会による意思決定さえ自由に行うことができれば、会社を支配することができることとなります。

上記の条文でも分かるとおり、株主総会の決議は“議決権(一般的に1株=1議決権)を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数”をもって行うこととされていることから、発行済株式の50%超を保有すれば一部の例外を除き、株主総会による意思決定を自由に行えることとなり、支配関係が成立することとなります。

ただし、厳密には50%以下の保有割合であったとしても、重要な融資関係がある場合や親会社が役員を派遣している等で支配関係が成立する場合が実務上は存在します。

なお補足になりますが、親会社が発行済株式の20%以上を保有する当該会社のことを「関連会社」といいますが、本稿ではあまり重要性がないことから割愛します。

持株会社が増加した背景

持株会社の起源は戦前の四大財閥である三井・三菱・住友・安田に遡ります。

戦後GHQは、経済界を牛耳っていた財閥が市場を求めて戦争を起こし、経済的にも支援したと判断したため経済的な民主化を図る目的で財閥解体を命じました。その結果、1946年4月に持株会社整理委員会が発足、1947年12月には財閥解体の根拠法となる過度経済力集中排除法が制定されたことにより、持株会社であった財閥の解体が進められました。さらに、1947年7月に施行された独占禁止法によって持株会社・カルテル・トラストが禁止となり、財閥復活防止の目的で独占自体が制限されたのです。

こうした歴史から、事業持株会社自体の設立は認められていたものの、企業間での自由競争を確保しつつ事業支配力の過度の集中による弊害を防止するため、原則として純粋持株会社の設立は禁止されていました。ところが、企業買収や組織再編が頻繁に行われる動きに対しこの独占禁止法が足枷になるとして、1997年6月に独占禁止法が改正され、純粋持株会社の設立が解禁となったのです。

下図は経済産業省が公表している純粋持株会社の統計調査結果となります。2014年度末時点では純粋持株会社は485社あり、独占禁止法が解禁された1997年(平成9年)を契機に純粋持株会社数は増加傾向にあります。

【図表1】純粋持株会社となった年別企業の分布状況

【出典】経済産業省:純粋持株会社実態調査

持株会社のメリット

なぜ独占禁止法の純粋持株会社の解禁以降、持株会社数が増えているのか、そのメリットについて下図に基づいて解説します。

【図表2】企業グループ構成図

意思決定の迅速化

図表2でも分かるとおり、持株会社制は持株会社である親会社が頂点になり、その下に各被支配会社がぶら下がり事業を行う企業グループ構成となります。これに対し、持株会社制ではない場合は、1つの会社内ですべての事業を行う構造となります。

例えばA社が小売業に関する意思決定を行いたい場合、持株会社制ではないケースはA社の株主による株主総会の決議による意思決定が必要となります。一方、持株会社制のグループ構成のケースではA社の親会社のみの株主総会の決議で意思決定が可能なことから、迅速な意思決定が可能です。

事業ごとの組織設計が可能

図表2のとおり、持株会社制の場合は通常は事業ごとに会社の機能を持たせて運営されるケースがほとんどです。例えば小売業とシステムエンジニアなどの情報システム業では、行っている事業内容は全く異質なため、業績評価の指標や人事制度なども事業の性質に応じた制度設計をすることが理想的です。

したがって、持株会社制にした場合は被支配会社ごとに事業の性質に応じた制度設計が可能となります。

組織再編が容易

通常、企業が株式譲渡・合併・事業譲渡などのM&Aによる組織再編を実行する場合は事業単位で行われるのが一般的です。M&A時に自社にとって不要な事業に対してお金を払おうとする者がいないためです。例えばM&A対象の会社が一つの事業のみ行っている場合は、会社単位でM&Aが行われます。これに対し、M&A対象の会社が複数の事業を行っている場合は譲渡対象の事業単位でM&Aが行われます。

組織再編の手続き上、事業単位でM&Aを実行するよりも会社単位でM&Aを実行するほうが容易です。そのため事業ごとに会社が整理されて運営される持株会社制は組織再編が容易なグループ構造となります。

リスク分散

景気の影響などにより事業がうまく立ちいかなくなることもあります。持株会社制ではない場合、図表2のように複数の事業を1つの会社が行なってるケースがほとんどです。例えば小売業が大きな損を出ていて製造業など他の事業が益を出している場合でも、金融機関は会社単位で評価を行うため、資金調達ができずに倒産に至る可能性もあります。このように他の事業まで影響を受けることとなります。

一方持株会社制のグループ構造の場合、小売業を行っている会社Aが不振なら売却をするなど、持株会社や他の事業を行っている会社を守ることが可能です。

持株会社のデメリット

持株会社は良いことばかりなのかというと、やはりデメリットの部分も存在します。続いて持株会社のデメリットについて解説します。

管理機能の重複と方針の不統一化

図表2のとおり、持株会社制は事業ごとに会社が分かれるため、経理機能や人事機能などの管理機能を各会社で設けることが必要です。結果、管理部門の担当が多く、持株会社制ではない場合より人件費が増加するほか、経理方針や人事制度が異なるケースがよくあります。

ただし最近では、企業グループの経理方針や人事制度を取りまとめて親会社が管理機能を担うことで、このデメリットをある程度は解消することが可能です。

親会社への情報伝達の遅延

持株会社制は各事業が独立することから、持株会社制ではない場合に比べて親会社への情報伝達が遅延する傾向にあります。理由は様々で、管理者の情報伝達の意識が薄い、親会社との会議が少ない、子会社に不都合な情報を意図的に報告しないなどです。その結果、本来であれば対処できた事態を対処できなくなるリスクも存在します。

事業部間での連携の意識が弱まる

持株会社制ではない場合、会社としての業績を上げるために事業部間の連携を取る傾向があります。これに対し持株会社制の場合は、各社が自社の業績を上げるために活動を行う結果、各事業部間(各社間)の連携意識が弱まる傾向があります。

連結会計の適用の必要性

持株会社制の場合は、複数の会社で企業グループが構成されることから、各社の業績を取りまとめて企業グループとしての業績を表示するために連結会計が必要です。この連結会計は実務上の手間がかかるだけでなく専門的な知識が必要なことから、人材の確保など導入に時間がかかります。

持株会社の企業一例

最後に実際に持株会社制を利用している企業について紹介します。

東急不動産ホールディングス株式会社

東急不動産は2014年3月期にホールディングス化しました。それまでは東急不動産が不動産事業も行っていましたが、ホールディングス化に伴い東急不動産ホールディングスは管理機能のみを有する形に移行しています。

有価証券報告書によると、東急不動産ホールディングスの収益は、関係会社からの受取配当金、グループ貸付に伴う金融収益、そして各子会社への経営指導に関するグループマネージメントフィーによる収益で構成されています。販売費及び一般管理費もすべて一般管理費による費用により構成されていることから、グループ全体の管理機能のみを有する形になっていることが見て取れます。

【参考】東急不動産ホールディングス株式会社:有価証券報告書

ソフトバンクグループ株式会社

ソフトバンクの2018年3月期有価証券報告書では、グループ全体の従業員数が2018年3月末時点で74,952名で、そのうちソフトバンクグループの従業員数は195名です。セグメント別の従業員数を見ると、全社(共通)セグメントの従業員数が210名で、ソフトバンクグループの従業員はこのセグメントに含まれていると推察できます。

ソフトバンクグループ自体の売上高は44,051百万円あるものの、その全額は関係会社に対するグループ内での売上となっています。そのほか売上原価が発生していないことや販売費及び一般管理費には販売費に属する費用がないことから、ソフトバンクグループがグループ全体の管理機能を有していると判断できます。

【参考】ソフトバンクグループ株式会社:有価証券報告書

日本電信電話株式会社(NTT)

NTTグループでは、地域通信に関しては子会社である東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社が、国際通信に関しては各国の現地子会社が行っており、持株会社制を採用しています。

有価証券報告書によると関係会社からの配当金収入や各子会社への経営指導に関するグループ経営運営収入で構成されていることから、日本電信電話の役割はグループ全体の管理機能であることがわかります。また、日本電信電話は、東急不動産ホールディングスやソフトバンクグループと異なり、基盤的研究開発収入や試験研究費が計上されていることから、研究開発機能を有していることが特徴的です。

【参考】NTT:有価証券報告書等(金融庁への提出書類)

こうした事例から、規模が大きくなるほど各社の方針の統一・取りまとめが困難になるため持株会社制による管理機能の集約が行われていることがわかります。

まとめ

  • 持株会社とは、他の会社の支配を目的として当該他の会社の株式を保有する会社のことです。
  • 一般的には発行済株式の50%超を保有すると支配関係が成立します。
  • 純粋持株会社は1997年の独占禁止法改正による純粋持株会社設立の解禁により増加傾向にあります。
  • 持株会社制のメリットは、意思決定の迅速化、事業ごとの組織設計が可能、組織再編が容易、リスク分散、管理機能の集約が挙げられます。
  • 持株会社制のデメリットは、管理機能の重複と方針の不統一化、親会社への情報伝達の遅延、事業部間での連携の意識が弱まる、連結会計の適用の必要性が挙げられます。

<執筆者>
宇佐見 剛 公認会計士(合同会社UKトラストグループ

大阪市立大学商学部卒業。建設業系事業会社(経営企画室)で6年、経営コンサルティング会社で2年半の勤務経験を経て、2019年に「合同会社UKトラストグループ」に参加。

IPO全般に関する業務や予算作成、経理体制の構築等の会社の管理体制の建てつけに関する業務を多数経験。


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