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2017年12月16日(土)更新

PMI

顧客のニーズが多様化し、多角化経営やカンパニー制を導入する日本企業が増えています。中でもM&Aは、構築に時間がかかる知識・技術を入手できる点で有効な経営戦略といえますが、成功率は3割に満たないとも言われています。今回はM&Aを成功に導くPMIの意味やメリット、具体策や成功ポイント、失敗事例までをご紹介いたします。

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PMIとは?

経営の安定化を図るために、積極的なM&Aを実施する日本企業が増える中、しばしば見落とされるPMI。PMIの意味や注目される背景を掘り下げていくことで、理解を深めることができます。

PMIの意味とは?

PMI(Post Merger Integration)とは、企業の買収や合併後に行なう、新しい組織体制の構築を目指した統合プロセスを指すビジネス関連用語です。M&Aのメリットである事業間のシナジー効果を発揮させるためにも、買収・合併のための適切なPMIが欠かせません。

PMIの不徹底は、当初計画していた企業価値向上や長期的な成長はおろか、社員たちのモラル・モチベーションの低下、優秀な人材の流出を招いてしまいます。PMIは企業文化の違いを乗り越え、高い水準のプロジェクトマネジメントを行い、シナジー効果の具現化を推進する効果的な経営戦略のひとつです。

一方で、PMIには「購買担当者指数」(購買担当者景気指数)という景況感を示す指数である、製造業PMI(製造業購買担当者景気指数)が知られており、主に製造業やサービス業における調査に使用されています。世界各国の政府の統計調査やアンケート調査でも使用される指数でもあり、株式・金融市場においても景気動向を知る重要な指数として扱われるため、企業経営の中でもしばしば耳にする項目です。

統合プロセスであるPMIとは違う用途で使用されるため、意味の違いを明確にしなければいけません。

PMIが注目される理由とは?

経済のグローバル化が加速し、イノベーションが次々と興る中で、日本企業の経営の不確実性が増しています。そのため、日本市場の伸び悩みの打破や収益改善を目的として、積極的なM&Aを実施する企業が増えています。

しかし、本来、社内風土・文化、考え方、経営理念、ビジョンが異なる企業を買収・合併することは容易いことではありません。経済産業省にはM&Aを実施した海外子会社の経営に関する問題の発生や、想定していた成果が得られないというケースが顕在化していると報告しています。高いシナジー効果の発揮が期待できるはずのM&Aは、想定よりも成果が下回る事態も大いにあり得るため、買収・合併後の統治プロセスを重要視する動きが活発し、PMIが注目されるようになったと考えられます。

また、M&Aによるコーポレイトガバナンスの低下による不正会計事件もしばしば報告されており、企業内統治の重要性が一般社会に浸透してきたこともPMIが重視される要因であると予想できます。PMIは、企業価値の向上や長期的な成長だけでなく、統治後の混乱や顧客離れ、業績の低下、人材の流出といった買収・合併後の負の連鎖を防ぐ上でも高い効果が期待できるため、「M&Aを成功に導くための鍵」としても認識され始めています。

PMIを推進するメリットとは?

PMIを推進することは、その後の企業経営において、さまざまなメリットをもたらします。今回はPMIの推進で得られるメリットの一部をご紹介いたします。

経営戦略・ビジョンの浸透

M&Aは、自社が持たない知識・経験・技術を獲得できる有効な手段であり、また競合他社と一緒になることで高い競争優位性を実現できる優れた経営戦略のひとつです。しかし、従来、経営理念やビジョンが異なる企業の統合は社員の不満や対立を生み出すきっかけにもつながります。

PMIは「なぜ買収したのか?なぜ合併したのか?」といった社員たちの疑問を解消するために、経営トップによる基本方針のアナウンスが求められます。また、統合後の経営管理システムの一本化による混乱や不満を速やかに抑え、統合後の経営戦略やビジョンを速やかに浸透させなければいけません。

その他、組織体制、情報システム基盤の再構築、意思決定方式の策定、主要人事の発表などスピード感が求められる重要な決定を浸透させるためにも、段階的な統合プロセスを踏むPMIは有効といえます。

生産性向上とコスト削減

M&Aによる企業の買収や合併は、製品の設計・製造・運搬・販売といった一連の生産体制を統合し、効率化を図る取り組みも行なわれます。組織体制や情報システム基盤の再構築は生産性向上と人件費や材料調達といったコストの削減が期待できます。

しかし、異なる生産管理体制で企業活動を行なってきた企業同士を統合すれば、必ず混乱が生じ、現場の活動に支障が生じます。PMIは企業買収・統合後のプロセスを事前に計画し、スピード感を持った施策を実施するため、これらの生産管理体制の統合をスムーズに進められます。

現場の混乱や不満を最小限に抑えつつ、短期間で生産性向上とコスト削減を実現し、高い統合シナジーの発揮が可能となります。

社員のモチベーション・スキルの向上

PMIは経営・業務・意識の3つの要素に分けて取り組まれる統合プロセスです。中でも企業風土、組織文化の統合を指す意識統合には多くの時間を要します。

買収・合併した社員たちが持つ価値観を尊重し、モチベーションを向上させるためのマネジメントの検討はPMIが取り組む重要な課題です。「自分達が一緒になることで、どのような新しい価値を創出できるか」を現場の社員同士の交流を通して、従業員意識を向上させる取り組みを実施することはPMIの取り組みのひとつです。

社員たちのことを一番に考え、時間をかけて、意識統合を図っていくPMIは、社員のモチベーションにつながり、イノベーションの創出ができる労働環境の構築にも効果的です。

シナジー効果の発揮

シナジー効果とは、企業同士の事業提携や合併により得られる相乗効果を指します。シナジー効果は企業価値向上や事業の長期的・安定的な成長につながるため、多角化経営を目指す企業の目標に位置付けられます。そのため、高い統合シナジーを得るために積極的にM&Aを行う企業が増えています。

一方で、M&A以降、想定を下回るシナジー効果しか得られないケースも報告されています。PMIはシナジー効果を発揮する上で重視される、経営・業務・意識の統合を速やかに促進することを目的としているため、早期のシナジー効果の発揮につなげることが可能です。

【関連】「シナジー効果」の意味とは?事例や効果、実現方法から成功ポイントまでご紹介/BizHint HR]

統合によるリスクの軽減が可能

PMIは、経営・業務・意識の3つの要素を一本化できるプロセスだけでなく、統合前の阻害要因の検証や実態調査も可能です。予め統合の阻害要因を洗い出し、統合前に対応することができるため、統合後のリスク回避や早期問題解決につながります。

PMI推進のための具体的施策とは?

M&Aによる企業買収や合併を成功に導くためには、適切なPMI施策を推進しなければいけません。PMIには、経営・業務・意識の3つの統合プロセスがあり、それぞれ異なる施策を実施します。

「経営」の視点から観たPMIの具体的施策

PMI推進作業には、企業経営における方向性や新たな制度改革について検討することが含まれます。理念や戦略はもちろん、統合効果を踏まえた上で、統合以降の企業戦略の変更も可能です。

●人事制度の改革

統合後の人員の再配置は、その後の企業戦略やシナジー効果を発揮する上でも欠かせない作業のひとつです。適切な人材移管や人事部のアウトソーシングの検討、労働条件の同等性担保などの人事制度の改革が必要です。

また、日本市場の伸び悩みを解消するため、中国や東南アジアなどの海外市場への展開を目指したM&Aも多く、全世界共通の人事部門であるグローバル人事役割等級制度などの新たな評価制度の構築も求められます。

M&Aを実施する前に、PMIの取り組みのひとつである人事デューデリジェンス(投資対象先企業の人事面での価値・リスクを精査または検証する作業のこと)を行なうことで、統合後の適切な人事制度の構築が可能となります。

●新たな経営戦略の策定

シナジー効果を見込んだ統合を目指す場合、その後の経営戦略が鍵を握ります。PMIにおける経営戦略は「戦略→統合プラン→実行・評価」というプロセスで策定を行ないます。戦略策定の段階では、新規・既存のビジネスモデルの見直し・検討や事業領域の定義、マーケティング・ブランド戦略の策定、競争優位性の確立が含まれます。

次に策定した経営戦略を基に、今後の統合プランを作成していきます。この統合プランには現場への権限委譲やグループ会社の関係整理といった組織体制、会計・業績管理・人事制度の設計といった経営管理体制の構築プランも作成します。その後、統合プランに則った戦略を行動に移し、統合プランの実効・実現状況を調査・分析を行ないます。

これらの評価スキームの構築もPMIの重要な施策のひとつとして、認識されています。

●経営理念の共有

経営理念の浸透は、その後の社員のモチベーションやスキルの向上、人材流出に関わる、重要なPMIの施策のひとつです。経営陣や幹部社員はもちろん、従業員ひとり一人が現場で意思決定を行なう上でも重要な基準にもなるため、徹底した経営理念の共有が求められます。

また、経営理念の浸透方法にはトップダウン方式やクレドカード(経営理念や行動指針を記したカード。社員証ホルダーや会議室など社員の目に付きやすい場所に掲載することで、迅速な浸透が可能といわれています)を使った方法が有効です。

【関連】「クレド」の意味とは?メリットや導入方法、企業の事例をあわせてご紹介/BizHint HR

「業務」の視点から観たPMIの具体的施策とは?

PMIの根幹とも言われる業務統合は、統合される組織が一つの会社として滞りなく運営できる具体的施策を実施しなければいけません。

●間接部門の統廃合

M&Aの実施後、ほとんどの場合、人事・総務・法務・経理・情報システムなどの間接部門の一本化を目指した戦略が実施されます。業務管理システムやインフラの統合は、要員・人件費の最適化につながり、生産性向上の効果も期待できます。特に日本市場の伸び悩みの解消策として、グローバル展開を目指す企業にとっては間接部門の統廃合は欠かせない施策のひとつといえます。

しかし、間接部門は「会社の業績に直接結びつく業務ではない」という理由から軽視されがちな部門でもあります。間接部門の支援により、安定した企業の業績に貢献しているケースも多々あるため、統廃合には慎重なプロセスを踏まなければいけません。

PMIを推進する上でも、直間比率に依存しない、定量化された目標設定やアウトソーシングの活用、システム導入による業務改善プログラムの実施など間接部門における入念な準備が必要です。

【関連】「間接部門」とは?役割や直接部門との違い、今後の課題までご紹介/BizHint HR

●新たな業務システムの導入と改善

効率的な企業統合を目指す上では、新たな業務システムの導入と改善が欠かせません。同一業界内での企業の買収・合併においては、基幹業務やサプライ・チェーン・マネジメントのシステムの統一化は、シナジー効果を発揮させるための重要な要因となります。

さらに統合後のカンパニー制の実施に必要なビジネスシステムの導入や、販売網・生産体制再編を効率的に進める上での新たな業務システムの導入が求められます。今後はAIやロボット産業の発達により、より業務の効率化・削減が進むことが予想されるため、最先端技術を見越したシステムの導入を検討しなければいけません。

「意識」の視点から観たPMIの具体的施策とは?

異なる歴史を歩んできた企業を一つの組織にするためには、従業員意識の統合は避けては通れない項目といえます。合併後の会社の方向性や、理解を深めるための施策を実施しなければいけません。また、従業員意識の統合は統合が近付き、実現性が増した段階で行うことで、効率よく推進することができます。

●社内研修・ワークショップの実施

従業員意識の統合を行なう上での有効な手段として、社内研修やワークショップが挙げられます。PMIによる意識統合の対象者は現場のみだけでなく、経営陣や役職を持つ幹部社員も含めなければいけません。

新たなビジョンや企業戦略、行動指針を従業員に植え付け、意識統合を行う上では、意識統合に特化した社内研修や実務状況に沿ったワークショップの実施が効果的です。

●コミュニケーションインフラの構築

コミュニケーションインフラの構築は、異なる社内文化・風土で働いていた従業員の意識改革にも効果的です。そのため、PMIには統合後の経営陣や従業員同士をつなぐコミュニケーションの促進施策が含まれます。経営陣が統合における情報を積極的に発信していくためにも、社内イントラネットやチャット形式コミュニケーションツールなどの構築が求められます。

また、株主や投資家、取引先といったステークホルダーに対しても、統合後の経営理念や戦略を発信し、ともに成長していくという意識を持っていただく必要があります。

コミュニケーションインフラの構築は従業員意識の統合だけでなく、外部とのコミュニケーションの向上にもつながるため、PMI促進の具体策として欠かせないものといえます。

PMIを成功に導くポイントとは?

PMIの推進を促進し、統合を成功に導くためには、優秀な人材の介入が欠かせません。抜本的な改革が求められる中でもPMIの重要性はどんどん増しています。その中でもPMIを成功に導くポイントの一部をご紹介いたします。

強いリーダーシップを発揮する

M&Aによる企業統合には、トップ自らが強いリーダーシップを発揮して、PMIを促進する必要があります。今後、PMIの促進の難易度が高まることが予想されており、柔軟かつ機動的なPMIの施策を実行しなければいけません。そのため、統合において新たな経営理念やビジョンを示すトップの存在が必要です。

社員や株主・投資家、取引先といったステークホルダーへの統合に関する理由を説得力のあるものにするためにも強いリーダーシップを発揮できる人材が求められます。

目標と責任者の明確化

PMIのプロセスでは、統合後の事業戦略の策定やシナジー効果のシミュレーションが行われます。その上で、統合前に合意形成した目標を明確し、事業会社または事業部門の責任者に権限委譲を行った上で、達成しなければいけません。

統合後、持株会社の設立やカンパニー制を導入するケースもあり、ステークホルダーへの明確な責任を行なう上でも企業が掲げる目標と責任者を明確にする必要があります。

PMI推進プロジェクトチームの人選

PMIを効率的に促進するためには、PMI推進専門のプロジェクトチームを立ち上げ、PMI推進に相応しい人材の選定が大切です。プロジェクト・オフィス・マネジメント(PMO)が中心となって、検討体制の整備を行なうことも、トップダウン型のPMIの促進や全体の整合性を保つ上でも有効といえます。統合後の意思決定方式の制定や情報システム基盤の構築、主要人事の決定はPMIを促進する上で、早期の段階から検討・実施しなければいけません。

その上でもこれらの分野に精通した人材を巻き込みながら、PMIを推進していくことが大切です。

適切な情報発信

企業統合を行なう際は、従業員はもちろん、取引先や投資家・株主などの主要ステークホルダーに、適切なタイミングで情報発信を行なわなければいけません。統合後の企業方針やシナジー効果による想定売上高、将来のビジョンなどを発信することは、新規・既存の取引先との信頼関係の構築や従業員のモチベーション向上、株主・投資家の懸念の払拭と理解にもつながります。

PMI推進の失敗事例とは?

経済産業省の発表によると、M&Aによる海外子会社の買収には様々な問題が生じ、想定以上の統合シナジーを得ていないという報告がされています。そのため、M&Aを成功に導くPMIの促進は不可欠です。PMI推進の失敗事例を理解することで、今後のPMI推進に役立てることができます。

吸収合併による組織の弱体化

M&Aの中には、建前上の対等関係を構築し、実態に沿わない統合を行なっているケースがみられます。このような状況は強固な組織体制の構築が難しく、社員のモラル低下や業務ミスを誘発し、想定していたシナジー効果が発揮できなくなります。結果的に統合前に比べて、組織の弱体化が進行し、統合プロセスの長期化につながってしまいます。

これらの原因には、「先送り体質」や「責任感の欠如」などの社内風土の存在が挙げられます。強いリーダーシップを持つ経営トップとPMIを主導するPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)が責任を持って、組織強化に取り組むことが大切です。

PMI不徹底による人材と顧客の流出

企業の統合には、人員整理によるコスト削減が目的のひとつに掲げている場合があります。そのため、企業統合後に行なう人員削減の実施は速やかに行なわなければいけません。計画にない雇用の保障や業務体制の変更をちらつかせることは、従業員の会社に対する不信感やモチベーション低下に直結するからです。

これらのPMI施策の不徹底は優秀な人材の流出や、品質低下による顧客離れにもつながり、経営統合はおろか、経営破綻の危機まで招きかねません。

M&Aで獲得した海外子会社の不正会計

日本市場の伸び悩みを解消するために、海外への販売促進活動を促す日本企業は少なくありません。巨大な資本力を背景に海外企業を積極的に買収し、収益力の改善を図ることは合理的な企業戦略といえます。しかし、巨大な組織体制を構築する反面、ガバナンスが低下し、海外子会社を適切に管理できない事態も発生してしまいます。その結果、海外子会社の不正会計が原因で債務超過に陥り、経営危機を招くリスクが生じます。

これらの事態は、買収前に不正会計を行う体質を見抜けなかった、買収後に不正の早期発見や改善ができなかった親会社の経営管理体制やM&Aのプロセスが問題視されるきっかけにもつながります。PMIには適切なデューデリジェンスの実施も含まれており、違法な企業経営を事前に見抜き、防止する役割も担っています。

準備不足による統合失敗

「M&Aの失敗の原因は準備不足によるものである」と指摘する声があります。企業の統合はM&Aがスタートではなく、企業統合を見据えた事前の準備が本当のスタートといえます。買収先の強み・弱みの把握、市場価値やリスクを把握する徹底的な実態調査を行ない、統合後の事業運営がイメージできるかどうかが大切です。

また、その上で統合に時間がかかりやすい従業員意識の統合には、入念な準備と粘り強いコミュニケーションが欠かせません。経営陣や幹部社員、現場の従業員全国が一丸になってはじめて、企業統合はスムーズに進み、高いシナジー効果が得られます。

まとめ

  • 日本市場の伸び悩みや経済のグローバル化に伴い、日本企業の経営は不確実性を増しています。収益力の改善を目指した積極的なM&Aは、日本経済の景気拡大や企業の事業再生にもつながります。
  • 高いシナジー効果を得るためにも、統合前の念入りな準備を欠かせません。
  • 今後、グローバル経営組織の成立を目指す経営者にとって、M&Aを万全なものにするPMIは最重要の企業戦略といえます。

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