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PMI

2020年3月18日(水)更新

顧客ニーズの多様化に対応する経営戦略としてM&Aが注目されています。このM&Aの成功のカギを握っているのがPMI(Post Merger Integration/ポスト・マージャー・インテグレーション)です。本記事ではPMIの意味やメリット、対応策から成功ポイントまでご紹介いたします。

PMIとは

経営の安定化を目指しM&Aを積極的に実施する日本企業が増えていますが、効果を最大化するためのPMIは見落とされがちです。

ここではPMIの意味や注目される背景をご紹介します。

PMIの意味

PMI(Post Merger Integration/ポスト・マージャー・インテグレーション)とは、M&A後に行われる、新しい組織体制の構築を目指した統合プロセスを指す経営用語です。

M&Aの失敗や統合の遅れは、企業価値低下や長期的な成長機会の損失、社員のモラルやモチベーションの低下、優秀な人材の流出を招いてしまいます。PMIは、企業文化の違いを乗り越え、高い水準でのプロジェクトマネジメントを行い、事業間シナジーの発揮を推進させることができるため、M&Aの成功には欠かせません。

具体的に、PMIは以下の3つの視点に分けられます。

  • 経営の視点
    統合後の企業経営に大きく影響を与える経営理念やビジョン、経営戦略、人事制度改革などに焦点を当てて統合施策を行います。
  • 業務の視点
    統合後の人員の再配置、コスト削減、情報システムの統合などの企業活動に影響を与える業務を中心に統合施策を実施します。
  • 意識の視点
    異なる文化を持つ企業の従業員同士が合併後の方向性や従業員の相互理解を深めるための施策が実施されます。

同じPMIとして、「購買担当者指数」(購買担当者景気指数)という、景況感を示す製造業PMI(製造業購買担当者景気指数)があり、主に製造業やサービス業における調査に使用されます。世界各国の統計調査やアンケート調査でも使用される指数であり、株式・金融市場の景気動向を知る重要な指数として扱われるため、企業経営の中でもしばしば耳にする経営用語です。

統合プロセスであるPMIとは違う用途で使用されるため、明確に分ける必要があります。

PMIが注目される理由

経済のグローバル化が加速し、イノベーションが次々と興るなか、日本企業の経営の不確実性が増しています。そのため、日本市場の活性化や企業の収益改善を目的に、積極的なM&Aを実施する企業が増えています。

M&Aによる企業統合の増加

社内風土・文化、考え方、経営理念、ビジョンが異なる企業の買収・合併は容易ではありません。経済産業省には「M&Aを実施した海外子会社の経営に関する問題の発生」や「想定していた成果が得られない」というケースが顕在化していると報告されており、M&Aの難しさが伺えます。

M&Aは、適切かつ迅速に実施しなければ、想定よりも成果が下回る事態に陥る可能性が高くなります。PMIは、企業価値の向上や長期的な成長だけでなく、統治後の混乱や顧客離れ、業績の低下、人材の流出といった買収・合併後の負の連鎖を防ぐ上でも高い効果が期待できます。中でも従業員の意識統合や統合後の経営理念やビジョンの浸透には、多くの時間を必要とします。

スピード感ある企業経営が求められる現代において、早期に経営資源を有効活用する上でもPMIは欠かせない手段といえます。

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シナジー効果の発揮

シナジー効果とは、企業同士の事業提携や合併により得られる相乗効果を指します。シナジー効果は企業価値向上や事業の長期的・安定的な成長につながるため、多角化経営を目指す企業の目標にも位置付けられています。

PMIはシナジー効果を発揮する上で重視される、経営・業務・意識の統合を速やかに推進できる経営戦略であり、想定以下のシナジー効果に留まるという統合リスクを軽減できます。

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PMIを推進するメリット

PMIの推進は、買収・合併後の企業経営においてさまざまなメリットをもたらします。ここでは、PMIの推進で得られるメリットの一部をご紹介します。

経営戦略・ビジョンの浸透

M&Aは、自社が持たない知識・経験・技術を獲得できる有効な手段ですが、従来、経営理念やビジョンが異なる企業同士の統合は、両社の社員の不満や対立を生み出すきっかけにもつながります。

PMIでは、 経営理念やビジョンの周知、従業員同士のコミュニケーションを促進するインフラの構築なども行われます。新たな統合会社の経営戦略や経営理念・ビジョンの下、組織体制を磐石にする施策がPMIには盛り込まれています。

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生産性向上とコスト削減

M&Aによる対象企業の買収・合併は、製品の設計・製造・運搬・販売といった一連の生産体制を統合する事業統合を行い、事業シナジーによる効率化を図る目的でも行なわれています。

組織体制や情報システム基盤の再構築は、生産性向上と人件費や材料調達といったコストの削減が期待できます。

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統合によるリスクの軽減が可能

PMIは、「経営」「業務」「意識」の3つの要素を一本化できるプロセスだけでなく、統合前の阻害要因の検証や実態調査も可能です。予め統合の阻害要因を洗い出し、統合前に対応することができるため、統合後のリスク回避や早期問題解決につながります。

PMI推進のプロセス

M&Aによる企業買収や合併を成功に導くためには、適切なPMIを推進しなければいけません。ここでは経営統合・業務統合・意識統合の3つプロセスをご紹介します。

経営統合

PMI推進作業には、企業経営における方向性や新たな制度改革を検討する「経営」の視点から観たPMI施策が存在します。

経営統合では、企業統合後に会社全体に影響を与える人事制度や経営理念、経営戦略の策定、さらには統合効果を踏まえた上で行うべき施策が必要です。

項目 具体的なPMI施策
人事制度の改革 ・人事部のアウトソーシング化
・グローバル人事の実施
・役割等級制度の導入
新たな経営戦略の策定 ・新規・既存のビジネスモデルの見直し
・検討や事業領域の定義
・マーケティング・ブランド戦略の策定
・競争優位性の確立
・現場への権限委譲
・グループ会社の関係整理
・会計・業績管理・人事制度の設計
経営理念の共有 ・トップダウン方式やクレドカードによる経営理念の浸透

人事制度の改革としては、グローバル化に伴い、企業統合後の労働条件の同等性担保を目的とした、全世界共通の人事・評価制度の導入や、世界規模でのBPOの実施が増えています。

また、経営理念の共有は、その後の社員のモチベーションやスキルの向上、人材流出に関わる重要な事項であり、全従業員の意思決定を行なう上でも重要な基準になるため、非常に重要です。

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業務統合

PMIの根幹とも言われる業務統合は、統合される組織が一つの会社として滞りなく企業活動を行うために、「業務」の視点から観たPMI施策を実施しなければいけません。

業務統合では、コスト削減や情報システムの統合など、業務プロセスの改善につながる具体的施策が求められます。

項目 具体的なPMI施策
間接部門の統廃合 ・直間比率に依存しない、定量化された目標設定
・アウトソーシングの活用
・システム導入による業務改善プログラムの実施
新たな業務システムの導入と改善 ・基幹業務やサプライ・チェーン・マネジメントのシステムの統一化
・カンパニー制の実施

PMIでは、人事・総務・法務・経理・情報システムなどの間接部門の一本化を目指した戦略が実施されます。業務管理システムやインフラの統合は、要員・人件費の最適化につながり、生産性向上・コスト削減の効果が期待できます。

意識統合

異なる歴史を歩んできた企業を1つの組織にするために、従業員意識の統合は避けては通れない項目です。

合併後の会社の方向性や、理解を深めるための「意識」の視点から観たPMI施策の実施が必要になります。

統合に時間がかかりやすい従業員意識の統合には、入念な準備と粘り強いコミュニケーションが欠かせません。経営幹部や役職を持つ管理職、現場の従業員全員が一丸となってはじめて、企業統合はスムーズに進み、高いシナジー効果が得られます。

項目 具体的なPMI施策
全従業員へのアフターフォロー 社内研修・ワークショップの実施
コミュニケーションインフラの構築 ・社内イントラネット・チャット形式コミュニケーションツールの構築
・ ステークホルダー向けの無料パンフレット(企業案内)配布

PMIによる意識統合は、経営陣や役職を持つ幹部社員も含む全社員対象の社内研修やワークショップが、新たなビジョンや企業戦略、行動指針の浸透に効果的です。統合における情報を積極的に発信していくためにも、社内向け、社外向けの情報発信体制の構築が求められます。

PMI推進の失敗事例

経済産業省の発表によると、M&Aによる海外子会社の買収には様々な問題が生じ、「想定以上の統合シナジーを得ていない」という報告がされています。

そのため、M&Aを成功に導くPMIの推進は不可欠といえます。失敗事例を理解することで、今後のPMI推進に役立てることができるでしょう。

組織の弱体化

M&Aの中には、建前上の対等関係を構築し、実態に沿わない組織統合を行なっているケースがみられます。このような状況でPMIのプロセスが長期化してしまうと、強固な組織体制の構築が難しく、社員のモラル低下や業務ミスを誘発し、想定していたシナジー効果が発揮できなくなってしまします。

これらの原因には、「先送り体質」や「責任感の欠如」などの企業風土の存在が挙げられます。強いリーダーシップを持つ経営トップとPMIを主導するPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)が責任を持って、組織強化に取り組むことが大切です。

人材と顧客の流出

企業統合の目的のひとつに、「人員整理によるコスト削減」が挙げられることは珍しくありません。そのため、企業統合後の人員削減は速やかに行なう必要があります。計画にない雇用の保障や業務体制の変更を提示することは、従業員に会社に対する不信感を植え付け、モチベーション低下に直結してしまいます。

人員整理を目的にしている場合、PMI施策の不徹底は優秀な人材の流出や、品質低下による顧客離れにもつながり、経営統合はおろか、経営破綻の危機を招くリスクもあります。

M&Aで獲得した海外子会社の不正会計

PMIには適切なデューデリジェンスの実施も含まれており、違法な企業経営を事前に見抜き、防止する役割も担っています。しかし、これらの役割がうまく機能しないと、致命的なリスクが生じてしまうことがあります。

市場の縮小に対する打開策で海外での販売促進活動を強化する日本企業は珍しくありません。巨大な資本力を背景に、海外企業を積極的に買収し、収益力の改善を図ることは合理的な企業戦略といえます。しかし、巨大な組織体制を構築する反面、コーポレイト・ガバナンスが低下し、海外子会社を適切に管理できない事態も多く発生してしまいます。その結果、海外子会社の不正会計が原因で債務超過に陥り、経営危機を招くなどの状態になる可能性も否定できません。

これらの事態は、買収前に不正会計を行う体質を見抜けなかった、買収後に不正の早期発見や改善ができなかった親会社の経営管理体制やM&Aのプロセスが原因とされます。

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PMIを成功に導くポイント

PMIを推進し、企業統合を成功に導くためには、優秀な人材の介入が欠かせません。ここでは、PMIを成功に導くポイントの一部をご紹介いたします。

強いリーダーシップの発揮

M&Aによる企業統合には、トップ自らが強いリーダーシップを発揮して、PMIを推進する必要があります。今後、不確実性が増すグローバル経済において、PMIの推進難易度は高まることが予想されており、柔軟かつ機動的なPMIを実行しなければいけません。

そのため、企業統合において新たな経営理念やビジョンを示す優秀な経営トップの存在が必要です。

社員や株主・投資家、取引先といったステークホルダーに説明する、統合理由を説得力のあるものにするためにも強いリーダーシップを発揮できる優秀な人材が求められます。

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目標と責任者の明確化

PMIのプロセスでは、統合後の事業戦略の策定やシナジー効果のシミュレーションが行われます。その上で、統合前に合意形成した目標を明確し、事業会社または事業部門の責任者に権限委譲を行った上で、達成しなければいけません。

企業統合後、持株会社の設立やカンパニー制を導入するケース多く、ステークホルダーへの明確な責任を行なう上でも企業が掲げる目標と責任者を明確にしなければいけません。

また、PMIを効率的に推進するためには、PMI推進専門のプロジェクトチームを立ち上げ、PMI推進に相応しい人材の選定が大切です。プロジェクト・オフィス・マネジメント(PMO)が中心となって、検討体制を整備し、トップダウン型のPMIの推進の実施や全体の整合性を保つ上でも重要な役割を担います。

統合後の意思決定方式の制定や情報システム(ITシステム)基盤の構築、主要人事の決定はPMIを推進する上で、早期の段階から検討・実施することが重要です。

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適切な情報発信

企業統合を行なう際は、従業員はもちろん、取引先や投資家・株主などの主要ステークホルダーに、適切なタイミングで情報発信を行なわなければいけません。

統合後の企業方針やシナジー効果による想定売上高、将来のビジョンなどを発信することは、新規・既存の取引先との信頼関係の構築や従業員のモチベーション向上、株主・投資家の懸念払拭と理解にもつながります。

まとめ

  • 日本市場の縮小や経済のグローバル化に伴い、日本企業の経営は不確実性を増しています。収益力の改善を目指した積極的なM&Aは、日本経済の景気拡大や企業の事業再生にもつながります。
  • 高いシナジー効果を得るためにも、統合前の念入りな準備を欠かせません。
  • 今後、グローバル経営組織の成立を目指す経営者にとって、M&Aを万全なものにするPMIが最重要の企業戦略といえます。

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