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2018年3月2日(金)更新

ISO29990

現在の日本では、初等教育から学校外教育を活用する グローバル人材の育成強化の動きが活発化しています。同時に人材育成を担う学習サービス事業者の学習サービス品質の需要も高まり、国際規格であるISO29990の認証取得も盛んになっています。今回はISO29990の概要と導入背景から導入企業紹介までをまとめてご紹介いたします。

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ISO29990とは?

ISO29990とは、専門学校や学習塾、民間職業訓練施設などの学習サービス事業者を対象に、学習サービスの品質向上と継続的な改善を目的にした国際学習サービス規格です。現在、教育には公式教育と非公式教育の2種類があります。公式教育とは文部科学省が定める学習指導要領に従い、指導・教育する初等・中等・高等教育を指します。非公式教育とはこれら初等・中等・高等教育以外で行なわれる学校外教育を指します。

先にご紹介したとおり、公式教育は国の管理下で最適な教育が行われるため、教育内容の品質は担保されています。しかし、非公式教育においては学習指導要領に代わるものがありません。また、自国でのみ通用する教育内容では、グローバル化が進む国際社会で活躍できるグローバル人材が登場しません。

そこで提唱されたのが、非公式教育における国際サービス規格であるISO29990です。ISO29990が提示するサービス事業者向け基本的要求事項を満たすことで、従来、学習サービス事業者毎に行なわれていた学習サービスマネジメントシステムを統一し、学習サービス品質の担保と基盤整備が可能となります。

ISO29990の導入の背景とは?

ISO29990は2010年9月1日に発行された新しい規格です。しかし、非公式教育自体はISO29990が発行される前から提供されてきました。それにも関わらず、近年ようやくサービス規格が導入された背景には以下の理由が考えられます。

少子化による教育費の増加

日本は既に少子高齢化社会に投入しており、日本の経済界にも人材不足による弊害が生じています。厚生労働省が発表した「平成29年 我が国の人口動態」では、日本の出生数は1971~1974年の第二次ベビーブームの約200万人から減少に転じており、2015年には約100万人まで減少しています。また、第2子の出生率に関しては1970年代の約0.8から2015年には0.51まで下がっています。そのため、一人当たりにかける教育費も増加傾向にあると考えられます。

さらに経済産業省が発表した「家計における教育関係費の動向とその背景について (3) 教育費の増加の要因」では、授業時間数が多い中高一貫校への進学、専門学校・大学院などに代表される高度教育や専門能力への嗜好の高まりが指摘されています。

これらのことから、非公式教育へのニーズも高まっていると推測でき、学習サービスの明確化とサービス事業者の基盤整備のニーズも同時に高まっていると考えられます。

【参考】厚生労働省 平成29年 我が国の人口動態 9P-10P
【参考】経済産業省 家計における教育関係費の動向とその背景について (3) 教育費の増加の要因

社会人向け教育サービスの充実

経済のグローバル化に伴い、日本企業を取り巻く環境は年々厳しくなっています。そのため、国際社会で活躍できるグローバル人材のニーズが高まっていることから、英会話教室や資格取得講座などの社会人向け教育サービスが充実してきています。

これらの学習サービスは非公式教育(学校外教育)に該当し、学習者・受講者の利益を守る上でも学習サービスの品質の担保と継続的な改善活動は必要不可欠になりました。その結果、ISO29990のような国際サービス規格のニーズが高まったと考えられます。

新たな規格ISO 29991とは?

非公式教育事業者を対象とした国際規格であるISO29990以外にも2014年3月15日に発行されたISO29991という国際規格があります。これは「公式教育外の語学学習サービス-要求事項」を記した規格です。経済産業省が発表している「第2節 ニーズの変化に対応した海外事業活動支援 5.グローバル人材」でも指摘されているように、企業は英語力を前提とした一般業務スキル、業務遂行能力、マネジメント能力を有する人材を求めています。

このことは日本だけに限らず、世界中の企業や組織にも言えることです。そのため、語学学習サービスの品質担保、サービスの明確化、基盤整備のニーズが高まっており、語学学習サービス事業者を対象にした国際規格であるISO29991が登場しました。これにより、学習者・受講者は国際基準に則った語学学習サービスを受けることができ、自己成長の機会を創出することできます。

【参考】経済産業省 第2節 ニーズの変化に対応した海外事業活動支援 5.グローバル人材 第4-2-5-1図 企業が社員に求めている能力・スキル

ISO29990の取得対象とそのメリットとは?

学校教育外の学習サービスを提供している事業者にとって、ISO29990の取得はさまざまなメリットがあります。認証取得を希望している事業者は以下に記載する内容を確認し、認証取得を検討してみてはいかがでしょうか。

ISO29990の取得対象組織とは?

ISO29990の取得対象組織は、初等・中等・高等教育などの公式教育を担う教育事業者以外の教育サービス事業者となります。これには学習塾や英会話教室、民間主体の職業訓練機関、その他求職者支援訓練や資格取得を目的とした教育機関が該当します。また、社会人向け教育サービスとして、企業内研修請負事業者も該当します。社内にある教育研修部門においては、一部の学習サービス業務を適用範囲に限定して取得することも可能です。

大学や大学院などは公式教育訓練分野に位置づけられていますが、学内では生涯学習講座が実施されるケースもあり、公式教育と非公式教育の住み分けが曖昧になりつつあります。教育サービスを手掛ける自社もしくは組織がISO29990の取得対象組織であるかどうかは、ISO29990の審査・認証を手掛けている審査登録機関に問い合わせてみましょう。

ISO29990認証取得のメリットとは?

非公式教育の学習サービスを提供する事業者にとって、ISO29990の認証を取得することにはさまざまなメリットがあります。

学習サービス業務の整理

ISO29990を取得することで、提供する学習サービス業務の整理を行えます。ここで言う業務整理とは、学習者・受講者に対して、学習サービス業務を可視化することです。どのような学習サービスを受講できるかをわかりやすく伝えることは、学習者・受講者の利益に直結します。

他社との差別化

語学や学習塾、職業訓練・求職者支援訓練、資格習得などの非公式教育においては、学習する内容に差別化がつけにくい傾向があります。差別化がしにくいということは、学習者・受講者にとっても学習サービス事業者の選択が難しいことを意味します。ISO29990を認証取得することで、教育サービスの内容を明らかにでき、競合他社との差別化を図ることができます。

学習サービス品質を客観的に証明

ISO29990の要求事項には、学習ニーズの明確化や学習サービスの設計、実施、モニタリング、評価というサイクルを汲みます。これにより、提供する学習サービスの継続的な改善が可能となり、学習サービス品質を担保することができます。ISO29990を認証取得することは、学習サービス品質を客観的に証明されたことを意味し、学習者・受講者は安心して学習サービスを受けることができます。

提供事業者にとっても売上・利益の安定や従業員のモチベーション向上に役に立ちます。また、優秀な人材を確保したい企業にとっても、求職者がどのような学習サービスを修了したかを把握でき、採用基準や目安を作りやすいというメリットがあります。

顧客からの信頼向上

差別化が難しい教育サービスを提供する事業者にとって、顧客からの信頼向上は欠かせません。ISO29990の要求事項を満たすことで、学習者・受講者は自分のニーズに適した学習サービスを選択できるため、事業者に対する信頼が高まります。また、企業が支出する教育訓練費の推移は1991年をピークに減少に転じています。そのため、法人客も企業内研修の委託事業者を慎重に選択する傾向にあります。ISO29990は国際的に認められた規格のため、提供する学習サービスの品質を見極めやすいメリットがあります。

さらにISO29990の要求事項の中には、顧客からのフィードバックをモニタリングするプロセスも含まれているため、事業提供の実績があればあるほど、顧客から強固な信頼を勝ち取ることができます。その他にも顧客クレームの減少や固定客の確保も期待できます。

【参考】内閣府 人の活躍のための職業能力の育成 9.労働者の教育訓練の現状(企業の人材育成)10P

ISO29990取得方法とは?

先にご紹介したとおり、ISO29990の認証取得は非公式教育機関であれば可能です。ここでは、ISO29990取得方法について、ご紹介いたします。

審査登録機関による審査が必要

ISO29990を取得するには、審査登録機関による審査が必要となります。審査登録機関は複数あり、認証取得支援を兼ねた審査登録機関もあります。最短での取得(約半年~1年)を目指している教育事業者は、認証取得支援の実績があるコンサルティング会社とパートナーシップを結び、認証取得を目指すと良いでしょう。また、審査登録機関によっては、審査員が現地を訪問する現地調査を行なう場合もあります。審査登録機関と綿密に連携することが認証取得の鍵となります。

取得に必要な要求事項とは?

ISO29990を認証取得するためにはISO29990が提示する要求事項を満たす必要があります。要求事項には学習サービスそのものに対する要求事項と学習サービス事業者のマネジメントに対する要求事項の2種類あります。

学習サービスにおける要求事項

学習サービスにおける要求事項は、明確化、設計、実施、モニタリング、自己評価の5つに分けることができます。明確化の対象は学習サービスの内容ではなく、学習ニーズです。利学習者・受講者がどのような学習サービスを求めているかを明確化してはじめて、学習サービスの設計→実施→モニタリング→自己評価のステップを踏めます。

設計の段階では学習プログラムのプランニング、学習サービスの目的とその適用範囲を定める必要があります。設計が終われば、学習サービスを実施するための活動内容を整理します。活動内容は、学習のための経営資源(人的、物的、学習環境など)の明確化、情報提供やオリエンテーション、そして学習の実施が該当します。これらを運用した上で、学習者・受講者の評価をモニタリングします。

最後にモニタリング結果を基に、教育事業者が自身の提供する学習サービスに自己評価を行い、継続的改善を行なえる環境を構築します。

学習サービス事業者のマネジメントにおける要求事項

学習サービス事業者のマネジメントとは、主に内部監査、人事・財務・リスクの管理、ステークホルダー(利害関係者)からのフィードバックを実施できる組織体制を指します。これら組織体制に必要な要求事項を満たさなければ、ISO29990の認証取得はできません。また、細かい要求事項として、一般的に求められるマネジメント事項や戦略・ビジネスマネジメント、マネジメントレビュー、予防・是正処置も含まれます。

ISO29990審査のポイントとは?

ISO29990の認証取得には約半年から1年間の時間を要します。短期的に効果的な要求事項の構築のためにも以下のポイントを押えましょう。

組織マネジメントの徹底

ISO29990の認証取得においては、経営者や経営層の決断が重要となります。これはISO29990の要求事項に学習サービス事業者よるマネジメントが含まれるからです。経営陣からの具体的な見直し指示や問題点・課題の抽出、それに対する予防・是正処置はISO29990の認証取得に欠かせません。トップ自らが組織全体のマネジメントを徹底する必要があります。

学習評価やプロセスの徹底

ISO29990の目的は学習サービスの品質向上と継続的な改善です。そのため、審査で重視される点は学習サービスの評価体制の基盤整備です。学習者・受講者からのフィードバックを適切に把握し、トップ主導のマネジメントレビューが実施され、適切な改善措置が行なわれる体制の構築がポイントとなります。また、構築された学習サービスマネジメントシステムの学習評価やプロセスに問題がないかを確認し、適切に運用されているかも重要です。

学習サービス提供事業者としての力量の可視化

学習サービス事業者の要となるものが、学習サービスを補完する人材の個人的力量や商品・サービスの開発能力(学習プログラムや学習を補完するツールの開発)です。また、事業実績の可視化やステークホルダーの管理なども提供事業者としての力量を示す手段でもあります。

このようにISO29990の認証取得には、組織のマネジメント体制が不可欠です。しかし、ISO29990は組織のマネジメント要求事項を記したマネジメント規格ではなく、サービス規格となります。そのため、ISO29990を認証取得したとしても、組織マネジメント自体を認証する規格ではないことを覚えておきましょう。

ISO29990取得企業のご紹介

ISO29990の認証取得は学習サービスの差別化や顧客からの信頼獲得などさまざまなメリットがあるため、認証取得している企業や組織も多数存在します。

株式会社イーオン

英会話教室運営、語学教材の制作販売大手の株式会社イーオン。法人向け語学研修やセミナーをサポートする法人部が2014年にISO29990:2010を取得しています(ISO29990は社内部署で提供している学習サービスを適用範囲として限定し、取得することが可能)。

【参考】株式会社イーオンHP 沿革

株式会社ユーキャン

資格や趣味、実務スキルを習得できる通信講座・通信販売を手掛ける株式会社ユーキャン。2014年2月にISO29990の認証取得を機に、同年10月には海外事業部を米国カリフォルニア州サンノゼに設立し、通信事業をスタートさせています。

【参考】株式会社ユーキャン沿革

NECマネジメントパートナー株式会社

Webマーケティングや営業支援、レンタルサーバ、研修・人材開発・ラーニングまで幅広い事業を手掛けるNECマネジメントパートナー株式会社。2011年12月14日ISO29990を認証取得し、芝浦研修センターを拠点に、マネジメント・ビジネススキル・キャリア研修、IT研修など幅広い分野で学習サービスを提供しています。

【参考】NECマネジメントパートナー株式会社 Topics

株式会社東芝オー・エー・コンサルタント

人財育成、Web戦略、デジタルコンテンツ、アウトソーシングなどのソリューションを展開する株式会社東芝オー・エー・コンサルタント。2011年にISO29990を認証取得し、人財育成に関連するさまざまな賞を受賞。学習サービスの品質には定評があります。中でも芝大門塾では、急速に変化する経済市場に柔軟に対応できる人材育成サービスが提供されています。

【参考】株式会社東芝オー・エー・コンサルタント HP 会社情報 沿革

株式会社日立インフォメーションアカデミー

約1300の人財育成コースと年間500の研修コースを開催している株式会社日立インフォメーションアカデミー。2011年11月にISO29990を認証取得し、日立製作所を支え続けた情報通信部門の人材育成に強みを持ちます。基礎から実践まで網羅した幅広いコースから自社に合った研修制度を選択することができます。

【参考】株式会社日立インフォメーションアカデミー 会社除法 沿革

まとめ

  • 経済のグローバル化により、今後も日本企業は国際社会を舞台に熾烈な戦いを強いられます。そのため、学生・社会人問わず、個人の力量の強化は必須です。
  • また、企業においても従業員の人材育成に力を入れていくことが予想されます。非公式教育の学習サービス提供事業者にとっては、絶好の機会ともいえますが、同時に自社の学習サービスの品質担保と継続的な改善が不可欠となります。
  • ISO29990は国際社会にも通用する学習サービスの国際サービス規格であるため、さまざまなメリットがあります。まだISO29990を取得していない学習サービス提供事業者様は、この機会に認証取得を検討してみてはいかがでしょうか。

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