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2018年12月20日(木)更新

カニバリゼーション

カニバリゼーションとは市場で自社ブランド同士が競合してしまい、シェアを奪い合う現象です。非効率な経営状態を指す一方で、競争を促すために戦略的に活用するケースもあります。意味と問題点だけでなく、回避するための対策方法や、具体的な事例をご紹介します。

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カニバリゼーションとは

カニバリゼーションの意味や反対の意味で使われるシナジー効果との関係、さらにドミナント戦略との関係を紹介します。

カニバリゼーションの意味

カニバリゼーション(cannibalization)とは「共食い」という意味で、市場で自社ブランド同士が競合してしまい、シェアを奪い合う現象を指します。

例えばチェーン店を近隣どうしに出店する場合や、同じ会社から複数の似ている製品ブランドを発売して顧客を奪い合うケースです。カニバリゼーションは一般的に非効率の意味として使われます。

消費者を獲得して他社と市場シェアを争うために、様々な自社ブランドを取り揃えるのは有効な手段です。一方で、既存の自社ブランドが別の自社ブランドに流れるだけではグループ全体として売上が増えるわけではないため、経営にかけているコスト効率が悪い状態だと言えます。

他社とのシェア争いでは、品揃えの数だけでなく経営資源を効果的に活用するための製品ラインナップのバランスも求められます。カニバリゼーションの問題点と対策方法は後述します。

カニバリゼーションの反対語「シナジー」

シナジー(synergy)とは「相乗効果」「共同作用」という意味で、一般的にカニバリゼーションとは反対の意味で使われる用語です。経営でのシナジーとは、企業や自社ブランドが単独で事業を行うよりも、他社と提携したり複数の自社ブランドを併せ持つことで、より効率的に成果を得られる状況を指します。

普通、経営効率の点ではカニバリゼーションは好ましくなくシナジーを目指すべきだと考えられています。しかし、カニバリゼーションとシナジーは必ずしも相反する概念ではなく、市場のポジショニングの部分では自社製品同士でカニバリゼーションを許しながら、コスト削減のための物流や製造の部分で相乗効果を発揮するケースなどもあります。

【関連】「シナジー効果」の意味とは?事例や効果、実現方法から成功ポイントまでご紹介/BizHint

ドミナント戦略との関係

ドミナント戦略とは、地域や商品カテゴリーなど特定の市場セグメントに絞って経営資源を集中的に投入し、支配的なシェアを獲得する戦略です。

ドミナント戦略は、限られた人員数や資本であっても、他社が手薄な市場セグメントに絞ることで効率的にシェア争いを進めることができます。一方で、製品開発、流通、営業、プロモーションなど似たような業務を、同じターゲットに向けて自社内で別々の部署が重複して行う可能性もあるため非効率になるケースがあります。

例えば代理店による営業では、特定地域でシェアを拡大するために、地域をいくつかの区画に分け、それぞれに担当者を配置するという営業体制を組むことがあります。担当者は予め決められた区域で営業することが基本ですが、場合によっては自身の売上ノルマ達成のために他エリアで営業するケースもあり、別エリアの担当者とのカニバリゼーションが起こる可能性があります。

【関連】ドミナント戦略とは?メリット・デメリット、企業の成功例までご紹介/BizHint

カニバリゼーションによる問題点

具体的なカニバリゼーションの問題点として、「自社の経営資源を効率的に活用できない」という問題と、「その結果、競争優位性が劣ってしまい競合他社にシェアを脅かされる」という危険が挙げられます。

経営資源の浪費

カニバリゼーションの1つ目の問題は、自社内の競争に無駄なエネルギーを費やしてしまい、本来は他社とのシェア争いや消費者へのサービスにかけるべき経営資源を浪費してしまうことです。

企業経営では、規模を拡大すれば「規模の経済性」によってコスト効率が高まるというメリットがあります。小売店や飲食チェーンが、出店攻勢や同業とのM&A(買収合併)を活用してシェア争いを積極的に行う背景には、シェアを拡大すれば、商品開発、仕入れ、プロモーションや物流などで競合他社よりも優位な立場を確保できるという利点があります。

しかし、シェア拡大ばかりに意識が向き、出店数や製品ラインナップを単純に増やすだけの戦略では、互いに競合するエリアにいくつも店舗を抱えたり、差別化のできていない類似商品をいくつも持つなど、自社同士で顧客を奪い合う恐れがあります。このような非効率な状況では規模による相乗効果を生かせず、経営資源を浪費してしまう危険があります。

競合他社のシェア拡大

上記のように、闇雲に規模の拡大を目指す結果、カニバリゼーションに陥り非効率な経営が続くと競争優位性が低下する恐れがあります。

本来の経営では自社の資源を有効活用し、魅力的な商品やサービス、価格を実現して消費者を獲得することが優先事項です。しかし、規模が大きくなってカニバリゼーションの状態が続けば、他社よりも自社内での競争や社内ブランド同士のポジショニングのバランス調整などが発生します。これは、消費者のニーズとは乖離した点に労力を割くことにもなり、本来優先すべき経営が難しくなります。

そして、「純粋に消費者のニーズを追う」「全社一体でコスト削減を進めて適正価格を実現する」など消費者志向の競合他社が現れれば、商品差別化や価格などで競争優位性を引き離されてシェアを奪われる恐れがあります。

カニバリゼーションの対策方法

ここでは、カニバリゼーションを回避するための対策方法と、いざ発生した場合の対策方法を紹介します。

これらは商品・サービスの多角化や水平展開は顧客を満足させ、新規顧客を獲得するために有効な手段です。また、カニバリゼーションへの対策を予め準備しておけば、経営資源の浪費を避けながら効率的に成果を発揮できます。

市場のターゲットを定義

カニバリゼーションを回避するには、市場を細分化(セグメンテーション)し、ターゲットを明確に特定することが有効です。

市場のセグメントは性別、年齢、職業、地域、ライフスタイルなどの消費者特性で分けることができます。各々のセグメントの市場規模や競合の強さを検討して参入することになりますが、事業部または部署ごとに狙うターゲットを分ければ、重複してアプローチをするなどのカニバリゼーションを避けることができます。

売上に直結する商品開発やプロモーションなどはターゲットごとに分けます。しかし、物流や製造、品質検査やコーポレート部門など、消費者のシェア争いとは直接関わらない部門の業務は極力一括化することで、市場を細分化しながらもコストを抑えることが可能です。

例えば、アパレルブランドの場合、基本的にファッションは男女で市場が分かれているため、男性向けと女性向けにブランドを区分けすることで、売上を拡大させながらカニバリゼーションを回避できます。この方法は、商品開発・プロモーションのコストは男女別に発生しますが、生産体制は一つに統合することでコストを抑えられます。

定期的な組織見直し

定期的に組織体制を見直すことも有効です。カニバリゼーションを避けるために市場の棲み分けをしていても、どうしても顧客の奪い合いが発生するケースがあります。また、そもそもカニバリゼーションが発生しやすい組織構造もあります。

カニバリゼーションが発生しやすい組織構造とは、例えばカンパニー制を採用しているケースや、M&Aにより組織が急拡大したケースです。事業部制であれば「飲料水部門」「製菓部門」など市場の棲み分けが明確ですが、カンパニーごとに意思決定が分権化されている体制やM&Aを頻繁に行う場合は、組織間の情報共有に隔たりができ、非効率な経営になるリスクがあります。

また、多数の販売子会社や代理店を活用しているケースもカニバリゼーションが発生しやすい構造です。販売会社や代理店は販売奨励金やリベートの獲得を目的に自社の売上・利益を重視します。そのため、グループ会社同士で顧客を奪い合う状況になる可能性もあります。

いずれの場合でも、事業規模や組織の変動が多い場合は、定期的に組織体制と役割を見直すことがカニバリゼーションを回避するためには有効です。

カニバリゼーションの戦略的な活用方法

カニバリゼーションは経営資源を非効率に浪費するリスクがありますが、あえて戦略的にカニバリゼーションを起こすケースもあります。

一見すると自社内で顧客を奪い合う行為は無駄なように見えますが、競争させることでシェアの拡大や、商品・サービスの質を高めるという狙いがあります。

自社ブランドのシェア拡大

カニバリゼーションを活用すれば、自社ブランドのシェア拡大を狙うことができます。主な活用方法には「販売体制の強化」と「ドミナント戦略」が考えられます。

販売体制を強化に関しては、グループ内で多数の販売子会社を抱えたり、多くの販売代理店と間で販売委託契約を結ぶ方法があります。傘下の販売会社同士で売上を競わせることで、ブランド認知の機会が増え、客単価アップの工夫も生まれ、また競合他社にシェアを奪われる前に消費者を囲い込む効果が期待されます。

ドミナント戦略に関しては、特定の市場カテゴリーや地域に限定して集中的に販売を強化することで、ターゲット顧客にアプローチする機会が増えて売上アップやシェアの増加につながり、また同時にプロモーション、物流、管理などのコストも効率化することができます。

このように、自社グループによるシェアの奪い合いを恐れず、あえて営業担当の力を引き出すことでシェア拡大につながり、長期的に見て競争優位につなげる活用方法があります。

競争による品質・サービス向上

カニバリゼーションを引き起こし自社グループ内で競争させることで、製品やサービスの品質向上につなげる戦略もあります。

多角化を進める際に、市場カテゴリーごとに担当部門を分けて自社内で競争させない方法は経営資源の有効活用という点では優れていますが、一方で競争に慣れる機会が減るというデメリットがあります。一方で、あえてカニバリゼーションを起こせば味方からライバルが現れるため商品の品質管理、コスト削減、販売方法、サービスなどで創意工夫が生まれます。

このように、品質・サービス力の向上を目的にカニバリゼーションを活用する方法は、自社傘下の企業内だけで行うこともありますが、外部の提携企業や委託先で行うケースもあります。

自社内のケースではコストがかかる代わりに管理がしやすい利点があり、外部委託ではコストを減らしつつ得意分野に特化した優秀なパートナーを探すことができるというメリットがあります。

カニバリゼーションの事例

ここでは、カニバリゼーションの具体的な事例として、コンビニエンスストア、自動車メーカー、大手小売店の3社についてご紹介します。

コンビニのドミナント戦略

コンビニエンスストアは特定の地域に集中出店するドミナント戦略を取ることがあります。その場合はチェーン店同士でのカニバリゼーションのリスクは抱えていますが、あえて近隣に店舗展開することで商品の配送や、管理者の巡回などのコストを抑え、同時に地域の消費を取りこぼさずにシェアを確保するという狙いがあります。

例えば、大手コンビニチェーンのセブンイレブンは都心部に集中出店しています。セブンイレブンの商品の特徴は新鮮さと品揃えの多さですが、それを実現するためには同時大量配送ではなく多頻度少量配送にする必要があります。全国約2万店舗で効率的な配送を実現するには店舗同士が近いことが必須であるため、近隣への大量出店を行なっています。

これは戦略的にカニバリゼーションを回避せずに競争優位性を狙うケースです。シェア争いが激しい小売チェーンは、魅力的な商品力によるシェア獲得とコスト面での競争優位性の両立を目指すために、ある程度カニバリゼーションのリスクは許容するという考え方であると考えられます。

【参考】 セブンイレブン「物流システム」

トヨタの戦略的マーチャンダイジング

トヨタ自動車はマーチャンダイジングの最適化のためにカニバリゼーションを戦略的に活用しています。マーチャンダイジングとは、消費者にとって適正な時・品質・価格でのサービス提供を目指す仕組みづくりです。トヨタは主に製品ラインナップと販売体制の二点を工夫することで、マーチャンダイジングの最適化を実現しています。

トヨタの製品ラインナップは国内最多で、二位争いをする日産とホンダは車種数が20〜30程度なのに対し、トヨタは約2倍です。車種の多さに加えて1つの車種の中でも性能によって様々なグレードを採用しており、価格帯にも幅があります。車種ごとに厳密に価格帯を分けないためカニバリゼーションが発生しますが、車種同士を争わせることで品質工場を目指し、買い替えの際も自社で囲い込むという狙いがあります。

また、トヨタの販売店は主に若者向けのネッツ、家族層向けのカローラ、中・高級志向者向けのトヨペット、ハイクラス向けのレクサスなどと分かれています。ターゲットに応じて販売体制を分けるのは珍しくありませんが、トヨタの場合は販売店が扱うことができる車種を厳密に限定するのではなく、ある程度まで販売店の垣根を超えた販売が可能です。こうすることで、販売店同士でターゲット顧客が重複しますが、自社グループ内で争わせ、販売力やサービスを向上させるといった狙いがあると考えられます。

なお、近年の国内市場は新車販売台数が減少傾向であることを背景に、2018年9月、トヨタは販売店チャネルを統一して全店舗で全車種を扱う方針を検討していると発表し、ますます競争が激しくなることが予想されています。

【参考】トヨタ「ラインナップ」
【参考】トヨタ「販売店」
【関連】マーチャンダイジングとは?意味や5つの適正、実践方法から事例、本までご紹介/BizHint

プライベートブランドとナショナルブランド

小売店はメーカーのブランド名が記載された「ナショナルブランド」(NB)を仕入れて販売するのが通常ですが、大手小売店では小売店独自の「プライベートブランド」(PB)を販売するケースがあります。例えばイオングループはアサヒビールのNBビールを扱っていますが、同時に店頭ではイオンのPBである「トップバリュ」のビールも扱っています。

大手小売店の考え方は、集客力を背景に、メーカーから仕入れるNBよりも自社企画のPBを販売した方が自社の利益になり、さらなる集客が期待できるというものです。ただし、小売店は必ずしも製造の設備やノウハウを持っているわけではなく、普段からNBを仕入れているメーカーにPBの製造を依頼することがあります。

一方でメーカーの立場は、大手小売店から製造の大量受注があるため売上の増加が見込め、また使っていない製造設備を有効活用できるメリットもあります。しかし、店舗内では自社ブランドのNBとPBが競合するカニバリゼーションのリスクを抱えることになります。特に、PBがNBよりも安価な場合は、製造の受注は増えても粗利が増えないケースもあります。

このようにメーカーは、PBの受託製造はせずにあくまでも自社ブランドの価値を高める戦略をとるか、売上機会を増やすためPBの受託製造をする代わりにカニバリゼーションのリスクを抱えるかという、難しい状況にあります。

【参考】 イオントップバリュ「トップバリュ」

まとめ

  • カニバリゼーションとは市場で自社ブランド同士が競合してしまい、シェアを奪い合うことです。
  • カニバリゼーションの問題はシナジー効果を発揮できず経営が非効率になり、競争優位性が下がることにあります。
  • カニバリゼーションを回避するためには、市場セグメントの棲み分けと定期的な組織見直しが有効です。
  • あえて自社グループ同士を競争させることで戦略的にシェア拡大や品質・サービスの向上を狙うケースもあります。

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