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2018年12月20日(木)更新

管理会計

管理会計は、経営層の経営判断や意思決定に活用するために会計情報を基礎とした経営情報を報告する会計です。これは特に縛られるルールなどが無いため、企業の事業や経営スタイルに対応した情報を柔軟に提供することで、経営層の意思決定や業績評価にとってより有用となります。また、損益分岐点分析など管理会計の分析手法を理解・習得することは、企業の業績や活動実態をより正確に捉えるためにも重要なポイントとなります。

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管理会計とは

企業会計は、誰のために何の目的で作成し報告するのかよって財務会計管理会計の2つに区分されます。

財務会計は、一定の会計ルールに則して財務諸表を作成し、株主、債権者など利害関係者に対して、会社の経営成績や財政状態を適正に報告するものです。

それに対して管理会計は、企業の経営管理や経営者の意思決定に役立てるための会計とされています。もとは製造業における原価計算を前提とした原価管理の仕組みを意味していました。(伝統的管理会計と呼ばれることもあります)

管理会計を行う目的

管理会計の目的は、「意思決定」と「業績評価」に資する情報提供を行うことです。

意思決定のための管理会計とは、経営者が経営戦略に基づいて将来実現したい施策などについて判断や意思決定を行うために必要な経営情報を提供することを指します。例えば、新たな設備投資を行う場合に最適な投資効果が求められるよう、内外の経営環境の変化に伴い発生する収益やコスト・費用などを算出し報告することが求められます。

そして、業績評価のための管理会計とは、経営者が実績や予測を含む事業遂行上のPDCAを廻すために、細分化した管理単位で業績を評価する経営情報を提供することを指します。予算管理や月次決算を通して、組織単位や事業単位に業績を評価していきます。

財務会計との違い

財務会計と管理会計はその目的が異なることから、財務会計から導かれた会計情報を基礎としつつも、いくつかの点で大きな違いがあります。

管理会計は、

  • 将来の業績改善に向けた事業の遂行や意思決定に必要な情報を提供すること
  • 縛られるルールが無いため、企業の実態に即した有用な情報を柔軟に提供すること
  • 金額だけでなく、数量や時間など最適な指標を選択し提供すること
  • 速やかな判断や行動を行うために、精度よりも鮮度を優先した情報を提供すること

が求められ、それぞれが財務会計との相違点となっています。

財務会計と管理会計の違いはあるものの、会計情報を基礎としていることから、多くの企業では2つの会計制度の設計・運用を「財務会計」ベースとしています。

財務会計と管理会計は並列関係にあるものではなく、それぞれの会計情報を基盤とした異なる会計制度であることを理解することが重要です。

【財務会計と管理会計の違い】

  財務会計 管理会計
目的 利害関係者への情報開示 経営者の意思決定など企業の成長
開示先 株主、債権者など外部 企業内(現場から経営層)
視点 過去の実績 実績に基づく将来の予測
根拠法 会社法、有価証券取引法など なし(企業の任意)
作成方法 企業会計原則などを遵守 なし(企業の任意)
重点 法令順守性 迅速性
情報 金額換算 数量、時間など任意の数値
期間 四半期、年 任意(月、週、プロジェクト期間など)
書式 法令に定める財務帳票 なし(企業の任意)

管理会計の具体例

多くの企業が取り組んでいる管理会計の仕組みとして、「予算管理・月次決算によるPDCAサイクルの確立」「業績評価」「原価管理」の3つががあります。

予算管理・月次決算によるPDCAサイクルの確立

予算管理と月次決算は、事業の進捗状況などのPDCAサイクルを廻す両輪です。計画(予算)と実績(月次決算)を対比して事業の進捗状況の確認し、今後の行動プランを策定するなど、管理会計の仕組みの上で、重要な位置づけにあります。

予算管理

予算管理とは、予算を策定して実績管理を行うことをいいます。予算は、数値目標を明確にすることで、事業や組織のベクトルを合わせることができるために、効率的に事業活動を行うための欠かかせない要素となっています。

予算管理には、二つの機能、予算編成機能と予算統制機能があります。

予算編成機能はPDCAのPlan(計画)に該当し、予算統制機能は、PDCAのDo(実施)、Check(分析)、Action(是正)から構成されます。

  • 予算編成機能
    予算編成機能とは、企業の内外の経営環境などを予測し、人・もの・金・情報などの経営資源を効果的にかつ効果的に配分する機能です。経営層は、経営方針や経営戦略に基づいた利益計画を策定し、事業別や組織別に配分・調整します。
  • 予算統制機能
    予算統制機能とは、事業の進捗状況を決算に基づいた実績として測定し、予算と対比して確認・分析することを指します。組織別や事業別に業績を評価し、経営環境の変化や企業内の課題を洗い出し、問題点を是正する施策立案や実行計画を策定します。

月次決算

予算管理の仕組みがあっても、実績を把握する決算が四半期や上期下期の年2回では、PDCAを廻すことはできません。そのため、多くの企業が、決算の精度を若干犠牲にしてもスピードや情報の鮮度を優先した月次決算制度を採用しています。

月次決算とは、各月の経営成績と財政状態を測定し、日々の活動が経営目標に対してどのように進捗しているかを確認し、予想との乖離や今後の計画など経営を管理していくための決算です。そのため、経営情報の正確性とスピードのバランスを考慮した仕組みが重要となります。

業績評価

財務会計は、企業や企業グループの業績を表示した「全体会計」です。管理会計は、企業の経営管理を支援する会計ですので、PDCAを廻せるよう細分化した管理単位で業績を評価します。

組織(人)単位に評価する組織評価会計と事業(セグメント)単位に評価する事業評価会計に大別されます。

組織評価会計

組織評価会計は、組織別の予算実績管理など組織の業績評価を行います。個人を含む階層別の業績目標を設定し、その達成度を測定・評価することで、組織のトップから組織に属する個人に対して、業績向上の意識付けをすることを目的としています。人事査定と関連させて評価する企業も多く、各層の数値管理責任を明確にして、組織全体の業績改善を目指すことが可能となります。

例えば、社内売買制度は、営業部門と製造部門など異なる機能別組織の利益意識や利益責任を明らかにするための仕組みです。また、京セラのアメーバ経営を代表とされるようにより小さな組織を組織評価単位として全社員の利益意識向上に取り組んでいる企業も見受けられます。

【出典】日本経済新聞「社内売買と指標共有 刺激 進化するアメーバ経営(3)」

事業評価会計

事業評価会計は、事業別の予算実績管理など事業ごとの業績評価を行います。企業の有する事業の収益性や成長性を評価することで経営資源の配分など経営の意思決定や戦略立案に活用します。

重要なポイントとなるのは、経営資源を配分する事業管理の単位を明確にすることです。特に収益性と成長性の視点は、事業評価の単位を決定する上での重要な要素となります。

1:収益性
収益性の観点では後述する限界利益を活用して、生産・販売する製品や商品の最適な販売比率を決定できる単位を事業評価の単位とします。より事業の収益性を明らかにするために限界利益からその事業固有の固定費を控除した貢献利益を活用する企業も多く見受けられます。製造業で採用されている事業部制が良い例です。

限界利益が黒字でも貢献利益が赤字であれば、事業の存続を検討するなど事業単位の収益性を重視した分析が可能となります。

【限界利益と貢献利益】

【参考】
限界利益=売上-変動費
貢献利益=限界利益-個別固定費

2:成長性
成長性の観点では、市場との関連性を重視した事業の単位が業績評価の単位となります。事業の継続的な成長を図るためには、自社と市場との距離感の把握が必要です。

例えば、PPM分析は、市場の成長率と市場の占有率を重視して、自社の事業のポジショニングを分析する手法です。自社の売上規模の大小ではなく、現在および将来の市場規模や成長性などを踏まえた業績評価単位の決定が重要となります。

【PPM分析】

原価管理

原価管理は、既存製品のコストダウンを目的とした標準原価計算と将来市場に提供する製品の原価企画の二つがあり、管理会計の具体的な仕組みの一つです。

標準原価計算

製造原価は基本的に製造現場で使われる概念であり、製造現場では、コストダウンや生産性の向上などが課題となっています。標準原価計算は、この課題を解決するために採用されている管理会計です。

標準原価計算では、材料費、労務費、製造経費など原価費目に対して、時間や消費量など指標を関連付け・計算して、目標値である「標準原価」を設定します。この標準原価と実際に発生した「実際原価」を比較、分析して差異の要因を費目や指標ごとに明らかにすることで、ムダやロスを排除し、生産性を向上する改善策を立案・実行することができます。

【出典】リーンマニュファクチャリングジャパン「標準原価計算 J I T基本用語集」

原価企画

原価企画とは、将来市場に提供する製品の設計や生産を行う製品企画の段階で原価を設定する考え方です。作れば売れる時代は終わり、現在では、消費者志向の価格設定が必要な時代となっています。

従来の原価積み上げ方式での価格設定では消費者ニーズに応えられず、企画の段階で消費者が受け入れる価格設定を行い、得られる利益を決定した上で目標原価を設定することが一般的になっています。製造現場を含む企業内部の情報に加え、市場の需給予測や他社の動向など外部の情報を取捨選択して目標とする売価・利益・原価を設定する必要があります。

【出典】日経テクノロジー「技術者が極めるべき原価計算の秘密」

管理会計の代表的な分析手法「損益分岐点分析」

損益分岐点分析とは、売上高と費用が等しくなり、損益がゼロとなるときの売上高を求めることを指します。

売上高が損益分岐点を上回れば利益となり、逆に損益分岐点を下回れば損失となります。

損益分岐点分析は、固変分解(固定費と変動費を求めること)と限界利益を求める必要がありますが、これを行うことで、事業の収益性や安全性がわかるようになります。

固変分解

固変分解とは、売上原価を含む総発生費用を固定費と変動費に区分けすることです。

固定費とは売上との関係性がなく、売上の増減にかかわらず、必ず発生する一定の費用で、人件費や賃借料などが該当します。変動費とは売上の増減に対応して増減する費用で、原材料や商品仕入や運送費などが該当します。

また、総費用における変動費の割合を変動費比率といいます。財務会計をベースに変動費比率を算定することを基本としますが、実務的には非常に難しく、正確に行うのはまず難しいです。そのため、簡便的な手法で変動費比率を算出する方法が一般的となっています。

  • 勘定科目法
    勘定科目法とは、財務会計上の勘定科目に固定費・変動費の区分をもうけ、会計システム上に定義する方法です。表記上でも、間接運送費(固定)や直接運送費(変動)のように分かれます。正確性がある程度担保されるメリットはありますが、会計処理も含め事務処理が煩雑になるデメリットもあります。
  • 総費用法
    連続する会計年度2期間の売上と総費用を比較し、売上増減とともに増減する費用を変動費と考える方法で、次の計算式で求めます。変動費率や固定費は変わらないという前提で計算しますので、正確性が担保されませんので、数年分を時系列で算出し平均値を求めるなどの工夫が必要です。

【変動費率・変動費・固定費】

限界利益

管理会計の基礎的な利益概念である限界利益は、売上高から変動費を控除( 限界利益=売上高 – 変動費 )した利益です。限界利益は製品の売上高(金額)や数量が増えた時にどれだけ利益が増加するかを表しており、基本的には、「1単位当たりの限界利益」が高い製品を増やすことで、利益の最大化が図れます。

財務会計上の「損益計算書」を、固変分解したうえで限界利益や経常利益を表示するよう組み替えた損益計算書を「変動損益計算書」といいます。

【出典】株式会社合同会計 変動損益計算書の活用

【関連】限界利益とは?利益率の計算法や損益分岐点との関係性まで徹底解説/BizHint
【関連】損益計算書とは?見方や書き方のポイントまでを分かりやすく徹底解説/BizHint

損益分岐点売上高

管理会計で収益性分析を行う上で重要な指標である損益分岐点とは、営業利益がゼロのときの売上高で、損益分岐点売上高とも呼ばれます。

財務会計上の営業利益は、「 売上高-売上原価-販売管理費 」で計算しますが、管理会計上の営業利益は、「 売上高-変動費-固定費 」で計算します。

この数式を変形して損益分岐点を算出します。やや難しいですが、下表を参照してしっかりと理解する必要があります。

【損益分岐点売上高の算出方法】

  • 営業利益=売上高-変動費-固定費=0
  • 売上高=変動費+固定費
  • 売上高=売上高×変動費率+固定費
  • 売上高(1-変動費率)=固定費
  • 売上高=固定費÷(1-変動費率)

損益分岐点比率

損益分岐点比率とは損益分岐点と売上高を比較して、赤字に対してどの程度の耐性があるのかという企業の安全性を見る指標です。売上高を100%とした場合の損益分岐点売上高の割合を計算します。

損益分岐点比率は低いほど安全性が高く、不況などによる売上低下への抵抗力が強いとされています。当然ですが、100%を上回っていると赤字の状態を示しています。

損益分岐点比率は、以下の算式によって求められます。

損益分岐点比率(%) = 損益分岐点売上高÷売上高

良く使われる指標として安全余裕率があります。上記計算式を変形して算出します。

安全余裕率=1-損益分岐点比率

損益分岐点比率を下げるためには、変動費(変動費率)を下げること、固定費をさげることの二つのアプローチがあります。

【出典】中小企業活力向上プロジェクト実行委員会「安全余裕率」

まとめ

  • 管理会計は企業の経営層に提供される、経営判断や意思決定に資する会計情報を基礎とした経営情報です。
  • 管理会計は企業毎に多種多様であるが、月次決算などの仕組みや業績評価の視点などは、自社の業態や経営に即した制度構築を図る必要があります。
  • 限界利益や損益分岐点などは、管理会計を代表する管理手法なので、きちんと理解し活用することが必要です。

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