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2018年5月10日(木)更新

クロス・ファンクショナル・チーム

クロス・ファンクショナル・チームとは、全社的な課題解決のために全社横断的に選抜されたメンバーで構成されるチームです。CFT 導入にあたってはデメリットを克服する対策が必要ですが、活動次第で企業の慢性的な課題解決へ導く原動力になります。ここでは導入に成功している日産自動車を例にあげ、成功のためのポイントについてご紹介します。

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クロス・ファンクショナル・チーム(CFT)とは

クロス・ファンクショナル・チーム(Cross Functional Team)とは、全社的な課題解決のために、部門や職位によらず横断的に精鋭の人材が集められて構成されるチームのことで、最も有名なのは、日産リバイバル・プラン(NRP)策定のために構築されたクロス・ファンクショナル・チームです。

クロス・ファンクショナル・チームは、活動の目的に応じて継続的、あるいは逼迫した問題解決のために一時的に活動する場合があります。

クロス・ファンクショナル・チーム(CFT)導入のメリット

クロス・ファンクショナル・チーム(以下CFT)の導入には具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?

縦割り組織の再生・活性化

縦割り組織は経営層が管理しやすく、機能別組織ごとの効率化や専門性を高めやすいといったメリットがあります。一方で横断的な問題解決が必要な場合に、部門間の利害関係が発生して問題解決が図りにくいデメリットがあります。

デメリットが先行してしまった場合、組織を再生し、活性化するにはCFTを導入することが効果的です。CFT活動を通して全社的な視点で課題解決に取り組むことがきっかけとなって、縦割り組織の弊害が改善され、活性化の原動力になります。

機能別組織ごとの部分最適から全体最適化を図る

各部門での生産性や業務効率化に取り組むことで部分最適は進みますが、全社的にバランスがとれていない場合、競争力の低下や利益の伸び悩みが起こります。また、組織優先の考え方が強くなるとセクショナリズムが現れて、全社的な問題解決が難しくなります。

この場合、CFTを組織して全社的に問題解決に取り組むことが有効です。横断的に選抜されたCFTメンバーが複眼的に検討して解決策を立案し、現場で解決策が実行されることによって全社最適化を図ることができます。

クロス・ファンクショナル・チーム(CFT)導入のデメリット

一方、CFT導入のデメリットはどのようなものがあるのでしょうか?

CFTと現場との温度差

経営課題の解決を図るためのCFT活動と、日々の業務に追われる現場とでは自ずと取り組みに対する温度差があります。CFTに選抜されたメンバーは強い使命感と高いモチベーションによって活動を推進しますが、情報共有が行き届かない現場の社員は他人事として捉えがちです。全社的な活動にするためには、現場のモチベーションを高める工夫が必要です。一例として部門ごとの達成目標を明確に掲げ、成果に対する適正な評価や表彰制度を設けることがあげられます。

CFTで決めた解決策が現場で実行されない

CFTにより提案された解決策が現場で実行されない主な理由は、現場で即実行できるプランではないためです。そのためCFTが提案した改革や課題解決策を、現場で実行可能なレベルに落とし込むための組織的な仕組みが必要です。そこで決まった解決策を、部門トップが旗手となって現場での実行を促していきます。その他にCFTの意義や活動状況を定期的に社員へ共有し、関心を高めることも大切です。

クロス・ファンクショナル・チーム(CFT)の導入方法

ここではCFTの導入方法として、CFTの設計から運営までを3つのプロセスに分けてご紹介します。

1.CFTの設計

CFT導入にあたっては、経営層が中心となって組織の立ち上げに必要な設立要綱作成、メンバー選出を行います。

■CFT設立要綱作成

CFT設立には、経営層のコミットメントと理解を得たうえで、目的やミッションなどその活動についての設立要綱を作成することが必要です。設立要綱に含むべき項目は以下になります。

  • CFTの企業内での位置づけ
  • CFT活動の目的とミッション
  • CFT活動に必要な期間とコストの見積り
  • CFTに与えられる権限
  • CFTの管理者とスポンサーシップ

■CFTメンバー選出

一般的にCFTメンバーの構成は、リーダーとメンバーからなります。リーダーはCFT活動の責任者としてミッション達成に必要な専門的知識やスキル、コミュニケーション能力、プロジェクト管理能力を発揮してチームを正しい方向に導く役割があります。リーダーは、CFTのミッションに最も関わりの深い部門の管理職から選出されるのが望ましいでしょう。

メンバーの選出は、CFT管理者であるトップクラスとリーダーによって選出されます。ミッション達成に必要な専門知識を持ち、CFT活動を通して成長を期待できる有能な人材を中心に全社横断的に選出します。メンバーは通常業務と並行してCFT活動を担うため、部署のトップにCFT参加について説明を行い、予め理解を得ておくと後のトラブルを未然に防ぐことができます。

2.CFTの立ち上げ

CFTの立ち上げにあたって行動規範となるのが、チームマニュアルです。未だない場合は活動を通して確立していく場合もあります。チーム結成によって各メンバーについて認知し、活動を通して信頼を築きながら互いに協力し認め合う努力が必要です。最初にリーダーは、メンバー1人ひとりが役割を果たすことでチームのミッションが達成されることを共有しておきます。

議論を交わすことで葛藤や応酬を経験しながら、それぞれの役割が明確になるにつれてチームとしての成果が出はじめます。こうした経験を繰り返しながら、チームや各役割に必要なルールとナレッジをマニュアルに落としていきます。チームとして安定するまでの期間は、チームリーダーはプロジェクト管理と共にメンバーのメンター役として支援していくことが必要です。さらにリーダーに対してもメンターやサポート支援が大切な時期になります。

【関連】メンターとは?メンターの意味と役割はなんなのか? / BizHint HR

3.CFTの運営

課題解決や企業改革のための策を立案するには、メンバー間の信頼に基づいて各自の多様性を発揮し、相互補完しながらミッション達成にむけての努力が必要です。その活動のなかで新たな能力開発が必要になった場合には、部署での担当業務に活かせるか、あるいは今後のキャリアについて考慮して能力開発の行うかどうかを判断します。

また、リーダーやメンバーのスキルの向上には、CFT管理者のトップクラスの支援も必要です。必要に応じて指南やアドバイス、提案に対するフィードバックを通して知識やスキルを共有し、活動の活性化を図ることが大切です。さらに長期的なCFT活動を行う場合には、ミッション達成が企業改革や経営改善に貢献しているか、指標を設けて効果測定を行ってCFT活動の改善に活かしていきます。

クロス・ファンクショナル・チーム(CFT)を機能させるには?

CFTを導入したものの運営がうまくいかずに失敗するケースもあり、導入に二の足を踏む企業も少なくありません。ここでは、CFTが機能するためのポイントについてご説明します。

トップクラスの介入を制限する

CFT活動で最も重要なことは、クロス・ファンクショナルな人材を生かして多様な見方や考え方から活発な意見を交わし、斬新な発想を引き出すことです。経営層はCFT活動の方向性にズレがないかチェックし、解決策実行の判断などCFT活動の肝を押さえることに徹底します。

例えば、会議の冒頭に討議内容に対する質問に答えて重要事項などの情報を共有し、終了前に解決策の提案内容について確認を行います。経営会議で提案の実行判断し、経営戦略とCFT活動が一貫するよう舵取りをします。こうして会議におけるトップクラスの介入必要最低限に留めることで方向性に沿った斬新で大胆な提案が出されるようにます。

全社的に意思決定に関わる

CFT活動を組織全体に浸透させるには、現場の社員が意思決定に対してコミットすることが大切です。それによってCFTの提案実行への現場社員のモチベーションが高まります。部門トップから発表された解決策が現場では実行しがたい内容では、現場の社員のやる気は起きません。

そこで課題解決策を現場レベルまで落とし込むクロス・ファンクショナルな組織をつくります。メンバーには、中間管理職など部門トップと社員の橋渡し役や、社員に影響力のある有能な人材を選抜します。活動のなかで全社的な視点や多様な考え方が身につくことで、現場で関わる社員に影響を与えます。また、メンバーが活動についての情報共有や活動のための意見収集を行うことで、現場の社員に意思決定に間接的に関わっている意識を持たせることが大切です。

CFTメンバーに役割を与える

CFT活動を行うメンバーには役割を与えることで責任の所在を明確にすることが重要です。日産の例に挙げると、CFT活動の目的は解決策の提案を行うことでした。メンバーは10名前後で、構成は以下の通りです。

  • 課題設定や解決策立案など活動をリードするパイロットが1名
  • パイロットを選定し、CFTの支援やサポートを行うリーダーが2名
  • パイロットにより選抜された課題解決に向けて活動するメンバーが7名前後

メンバーは会議の中で知識や経験を基にアイデアを出し合い、解決策にしていきます。このとき各メンバーの役割を全て決めることで、行動におけるパフォーマンスとモチベーション向上に繋げました。

また、多すぎず少なすぎない人数構成がCFT活動を活性化させました。適度な人数と距離感が、自由に柔軟な意見を出させつつも、見解が割れて議論が長引くことを抑えることができたため、議論から提案までを迅速化することができました。

【参考】日産自動車におけるクロスファンクショナル・チーム (CFT) の活動

責任の所在を明確にする

全社横断的な組織であるCFT活動で危惧されることのひとつに責任の所在が不明瞭になることで活動が停滞してしまうことです。メンバーの役割と共に責任の所在を明確にしておくことが大切です。それによってメンバーの士気が高まり、高いパフォーマンスが引き出されてCFTのレベルが向上します。

その他に、会議の議事録は作成せずにボードにまとめられた提案内容をカメラ撮影しましょう。議事録を作成するときに作成者の認識違いなどで起こる討議内容の変更を回避できます。会議で決まった提案内容の責任を出席メンバー全員で取ることで、CFTとしての結束力を強め、活動を活性化させます。

明確なビジョンに基づくCFTの役割

CFTが機能するためには、目的の基に活動する必要があります。経営課題やビジョンに基づいてCFTの目的やミッションが掲げられます。経営トップが一貫した経営ビジョンを示すことで、CFT活動はその成果を上げることができます。

CFTは、ビジョンの実現に向けて現場で問題となっている原因を究明し、課題を見つけ出して現実に即した解決策を提案します。こうしたCFTの活躍は、クロス・ファンクショナルなメンバー構成によって支えられます。

クロス・ファンクショナル・チーム(CFT)と現場を連携させるには?

CFTによって提案された課題解決策を現場で実行して、全社的な取り組みとするためにはどうすればいいのでしょうか?ここではCFTと現場を連携させるためのポイントについてご説明します。

CFT活動と現場を繋ぐ課題解決プログラムの存在

CFTで提案された解決策には、そのまま現場で実行することが難しい場合もあります。その時は現場で実行可能な解決策に落とし込むことが必要になります。そのためには、部門ごとのクロス・ファンクショナルな課題解決策を立案し、CFTの提案を現場で実行するための組織をつくることからはじまります。

日産を例に挙げると、これにあたるものが「V-upプログラム」です。V-upプログラムは日産の組織の中で下記のように位置づけられています。

【出典】日産/V-upプログラムとは

V-upプログラムによってCFTと現場を連携させて課題解決を実行した日産は、2003年時点で2950件のプロジェクトチームを組んで、330億円の利益を生み出しています。

【参考】Nissan Annual Report 2003 P11

課題解決プログラム参加者は現場からもクロス・ファンクショナルに

部門ごとの問題でも、他部門に影響が及ぶ場合や、他部門の影響を受ける場合もあります。そのため、課題解決プログラムで組織されるプロジェクトチームはCFTと同様、クロス・ファンクショナルに選抜される必要があります。

こうして選ばれたメンバーによって、特定の部門に有利になるなどの偏りのない、斬新かつ有効なアイデアによる解決策を立てて実行します。また、役職にこだわらず現場で影響力のある有能な人材を充てることで、現場の社員のモチベーション維持に繋がります。

課題解決の目標と成果を数値化する

解決策の実行にあたっては、課題ごとの達成目標及び成果を数値化することが効果的です。それには3つの理由が挙げられます。

  • 数値化することで効果測定が可能になり、財務値に換算することもできる。
  • 具体的な数値なら現場の社員も認識しやすく、モチベーションにつながる。
  • 評価対象にする場合にも、明確な基準に基づいた客観的な評価を行うことができる。

こうしたメリットを活かすためには、目標が経営課題に結び付く指標であることが大切です。例えば、売上の拡大、コストの削減、サービス品質の向上などが挙げられます。

成果に対する適正な評価を行う

CFTと現場の連携によって課題解決が実行されたことによる成果に対して、社員に適正な評価とフィードバックを行うことが大切です。例えばインセンティブや表彰によって、社員の積極的な参加を促し、モチベーションを高めることで、CFTが全社的な取り組みとして活性化します。

なお、横断的な課題解決には複数の部門が関係するため、部門間の繋がりを捉えておくことが必要です。そのためには数値化された達成目標とは別に、成果を出すためのプロセス状況を評価する、プロセス評価指標を設定します。プロセス評価指標は問題の原因を把握して、再発防止や改善に役立てることもできます。関係する部門で平等で適正な評価を行うためには、課題ごとや部門ごとの達成目標と、プロセス評価指標の関係性を明確にしておくことが大切です。

【関連】プロセス評価とは?目的や導入のコツ、企業事例などをご紹介 / BizHint HR

クロス・ファンクショナル・チーム(CFT)成功事例

CFT活用の成功事例として最も有名な日産自動車の活用事例をご紹介します。日産自動車のV字回復の原動力となり、現在も続くCFT活動の活用方法にはどのような特徴があるのでしょうか?

日産自動車

日産自動車は1990年代、国内外シェアの減少と断続的な経営赤字によって倒産寸前まで追い込まれました。そんな中、1999年3月、ルノーとの資本提携を結び、同6月にカルロス・ゴーン氏を COO に迎えました。そして9つの課題ごとにCFTが結成され、メンバーは各テーマに関連する部署から1名ずつ選りすぐりの管理職が選ばれました。

そしてCFT活動開始からわずか2か月後の10月に「日産リバイバルプラン (NRP)」を発表。NRPには3つのコミットメントが掲げられ、すべてが1年前倒しで目標達成しました。こうして日産はV字回復を果たし、現在も好調な業績を維持しています。

日産における最初のCFTの活用は、NRP策定のためでした。しかし、V字回復後も持続的に成長するために、目標達成を確実にするための日産独自のマネジメント手法「日産マネジメ ントウェイ」を制定しました。この手法を支える2本柱がCFTとV-upプログラムであり、現在も活用し続けています。

日産におけるCFT活用の成功ポイントには以下の点が挙げられます。

  • 従来は縦割り組織による弊害があったが、CFT活動を通して組織に風穴をあけ、CFT活動を全社的に根づかせることができた。
  • NRP策定までの期間、CFTで長時間に渡って同席したメンバーがいる中で1対1もしくは1対2で問題について徹底的に議論を交わしたことで、部門を超えた根本的な解決策を提案できた。
  • 職位や部門間の利害に関係なく自由に発言できるよう、質問は付箋に匿名で記載したり、会議中はメンバーのみで議論を交わすなどの工夫を施した。
  • 経営トップがCFTの提案を重視し、それを基づく改革や改善を実行した。
  • CFTメンバー構成は、各部門のバランスがとれるように配慮した。
  • 企業再生後、引続き改善を積み重ね、成長し続けるためにCFTと連動して成果を生み出す「V-up プログラム」を生み出した。
  • CFTとV-up プログラムの連動が日産の成長を支えている。

【参考】Nissan Annual Report 2002 P12-13
【参考】Nissan Annual Report 2003 P11
【参考】日産自動車におけるクロスファンクショナル・チーム (CFT) の活動

まとめ

  • CFT活動が成果を出すためには、横断的なメンバー構成にすることにより現実に即した斬新な解決策の提案を可能にします。
  • CFT活動を全社的な取り組みにするためには、CFTと現場を連携させるための仕組みづくりと活動を行うチームが必要です。
  • CFTが機能するためには、社員の積極的な参加を促すことが大切です。そのために適正な評価とインセンティブの導入が効果的です。

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