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2018年8月4日(土)更新

MOT(技術経営)

経済のグローバル化が拡大する中で、イノベーションを中心とした高い技術力を重視する企業が増えています。そのため、高い技術知識と経営能力を兼ね備えた経営人材を中心としたMOT(技術経営)の品質が、企業の存続に大きく関わるといわれています。今回はMOT(技術経営)の意味やメリット、MOT人材の育成方法を中心にご紹介いたします。

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MOT(技術経営)とは

以前は経営スペシャリストである海外MBA(経営学修士)を取得している経営者が重宝されていた風潮がみられましたが、近年では高い技術知識と経営能力を合わせた経営手法であるMOT(技術経営)が注目されています。MOTの意味や求められる背景、MBAとの違いを知ることで、MOTへの理解を深めることができます。

MOTの意味

MOT(技術経営)とは、Management of Technologyの略称であり、企業が持つ独自技術を経営の立場から管理・推進するための能力を指す経営用語です。

日本の名目GDPにおける産業別構成比では、製造業が18.5%を占めており、独自の高度な技術力(テクノロジー)をコアコンピタンスとして位置付けている企業が多い傾向がみられます。それに伴い、MOTを重視する企業も増えています。

どんなに優れた技術力(テクノロジー)を持っていたとしても、製品化(商品化)・事業化し、経済的価値を創出していかなければ、意味がありません。そのため、自社が持つ独自の技術を経営資源と捉え、戦略的かつ効率的に活用できる経営人材の需要が高まっています。

経済産業省が発表している「特許庁ステータスレポート2017」では、2016年に日本国特許庁が受理したPCT国際出願件数が44,495件と過去最高の件数を記録しているものの、みずほ総合研究所が発表している「国際競争力後退の要因は何か」では、日本の国際競争力は8位と結論付けています。このレポートから、PCT国際出願件数の結果と比べて、高い技術力を事業に活かせていない傾向がみてとれます。また、同レポートでは国際競争力後退の主因は「企業経営者の自信欠如」とも結論付けています。

今後、日本企業が厳しい国際競争に勝ち残る上でも、コンセプト創造型リーダーシップマネジメント(新しいモノの創造力)への転換が必要不可欠といわれています。このコンセプト創造型リーダーシップマネジメントはMOTが目指すべきマネジメントであり、今の日本企業に必要とされる経営能力と考えられています。

【参考】経済産業省 第2節 我が国の産業構造を支える製造業
【参考】経済産業省 特許庁ステータスレポート2017
【参考】みずほ総合研究所 国際競争力後退の要因は何か

MOTが求められる背景

MOT(技術経営)が求められる背景には、日本型ビジネスモデル(キャッチアップ型)の崩壊と、技術革新を前提とした戦略的マネジメントの欠如が挙げられます。

日本型ビジネスモデルの崩壊

日本型ビジネスモデル(キャッチアップ型)とは、欧米で開発された製品から発想を得て、徹底した安全・品質管理および生産プロセスの合理化によって、実現した低価格・高品質(機能的価値を付与した)の製品を創出するビジネスモデルです。これにより、Made In Japanの製品(商品)は世界市場で絶大な支持を受け、戦後、世界第2位の経済大国へと発展することができました。

一方で、過去のビジネスモデルの成功体験に囚われるあまり、イノベーションを前提とした、戦略的な製品(商品)・サービスの創出であるフロントランナー型ビジネスモデルへの移行に遅れを取ってしまいました。その結果、MOT(技術経営)の需要が高まったと考えられます。

技術革新を前提にした戦略的マネジメントの欠如

経済が急速にグローバル化する中で、画期的な製品(商品)・サービスは高度な技術力と密接に関連していることが多く、イノベーションをいかに早く、短期的に創出できるかが、企業の持続可能な成長の鍵になります。そのため、オープン・イノベーションなどの手法を使い、外部資源を積極的に活用した技術開発や明確な技術開発の目標設定、開発戦略の策定などの戦略的マネジメントが不可欠です。

しかし、日本の経営者は技術的・戦略的マネジメントの経験が不足しており、日本の国際競争力の低下を招いたといわれています。そのため、現在の日本企業の多くは、自社の技術力を経済的価値に結びつけることができるMOT人材の需要が高まったと考えられています。

MBAとの違いとは?

経営のスペシャリストとして知られているのが、MBA(経営学修士)です。

MBAとは、Master of Business Administrationの略称であり、経営学の大学院修士課程(ビジネススクール)を修了することで授与される学位を指す経営用語です。世界第一位の経済大国である米国では、MBAの保有が経営幹部になるためのパスポートとして位置付けられています。2000年代にも日本だけでなく、アジアの経済発展に伴い、MBA取得の風潮が高まり、企業経営者やマネジメント層の育成プログラムとして、人気が高まっていました。

MBAは経営者としての姿勢(リーダーシップ)や欧米発の経営管理プロセス・方法論を重視しており、さまざまな経営課題に関して、最適な経営資源(ヒト・モノ・カネ)を配分することで、企業を発展させる役割を担います。

一方で、MOT(技術経営)は、高度な技術知識を持ち、その知識を経済合理化させる戦略的マネジメントを策定・実行する能力が求められます。この作業は不確実性が高く、適切な方法論が確立されていない高度なマネジメントに分類されます。

また、MOTはMBAと同様に大学院での教育プログラムを修了することで、技術経営修士(専門職)の学位を取得できます。

MOT導入のメリット

MOT(技術経営)を導入することで、企業には「新規事業の創出・収益化」、「研究開発マネジメントの向上」、「知財・外部資源の活用」などのメリットを享受できます。

新規事業の創出・収益化

MOT(技術経営)は、「自社の技術と社会のニーズを結び付ける」ことを前提に製品(商品)開発を行ないます。戦略的かつ横断的なマーケティングを実施し、新製品(商品)・サービスの創出のための専門組織を立ち上げる戦略が取れるため、新規事業を創出するための環境整備や、自社の技術が収益化につながる可能性が高まります。

これらの取り組みにより、社内ベンチャーの設立や分社化まで発展したケースも報告されています。

研究開発マネジメントの向上

プロダクトライフサイクルの短期化に伴い、スピード感のある研究開発が求められるようになった結果、M&Aが主流となり、自社内での研究開発が衰退するというデメリットが生じています。

しかしMOT(技術経営)では、アイデアのテーマ化や分析、事業性検証といった研究開発プロセスを適切にマネジメントすることができます。その結果、研究・開発段階で研究開発投資効率の向上・管理ができ、不確実性リスクを低減させ、事業化の可能性を飛躍的に高めることができます。

知財・外部資源の活用

自社技術を事業戦略として活用する場合、知的財産として特許出願を行い、価値を高めなければいけません。そのため、将来性の高い技術に関しては、研究開発部門と知財部門が適切に連携し、多方面での活用を検討に加えた上で知財保護に努めることが大切です。また、大学やベンチャー企業といった外部機関との連携を強化(外部資源の活用)することで、新たな技術の模索と開発を可能にできます。

パートナー企業の技術力を適切に判断し、活用の有無を判断することもMOT(技術経営)に求められる役割のため、企業価値および技術力の向上も期待できます。

MOT人材に必要な能力

MOT(技術経営)人材には、不確実性の高い事業化計画や戦略的マネジメントの策定・実施が求められます。日本企業の多くがMOT人材の不足を懸念しており、日本の国際競争力を高める上でもMOT人材の獲得・育成は急務といえます。

今回はMOT人材を育成する上で知っておきたいMOT人材に求められる能力をご紹介いたします。

イノベーションの先導力

MOT(技術経営)は、技術知を進化・展開、また実用化まで一貫したマネジメント能力が必要とされます。高い技術力がイノベーションに結び付くことが多く、新たな価値観と技術を如何に結び付られるかが鍵です。

MOTには、市場が求めている新たな価値を見出す「洞察力」と同時に、イノベーションを構築する上で重要な新たな価値や技術をどのように提供できるかという「構築力」、そして実際にイノベーションを実現できる「実践力」の3つが重要です。

この洞察力、構築力、実践力こそがイノベーションを興す先導力といえるため、MOTには必須の能力として認識されています。

組織をまたがった事業推進能力

部分最適が主流となっていた経営スタイルが、全体最適を前提とした組織力の向上を目指した経営に移行しつつあります。この動きは縦割り組織から組織をまたいで、企業全体として成長を目指すことを重視する動きと同義といえます。

イノベーションを興すためには、組織間の軋轢をなくす「変革対応力」や「対人折衝力」を活かした上で、事業を推進する「目標管理力」、「業務遂行力」などの事業促進能力が求められます。同時に高度なコミュニケーション能力や意思決定能力、リーダーシップといった人間力もMOTには欠かせない能力です。

実践性・学際性・学術性の総合力

MOT(技術経営)には、技術と経営に関わる総合力が重視されます。自社の技術をビジネス化できるだけの「実践性」や、技術と経営両方の高度な知識である「学際性」は必須といえます。

さらに技術を実用化させる上では、開発した技術を科学的な裏打ちを取れている状態が望ましいため、分析や研究による裏打ちを担保できる「学術性」も重視されます。MOTは社会系の要素が強いMBAよりも実践が伴う総合力を向上させなければいけません。

MOT人材の育成方法

過去の成功体験から、日本企業にはMOT人材が足りていないと指摘されています。また、日本の大企業は自動車産業をはじめとした製造業で占められており、今後もMOT人材の需要が高まることが予想されます。

本章では、MOT人材の育成方法についてご紹介いたします。

外部機関の育成プログラムの利用

経済産業省では産学連携によるMOT人材の育成の向上を目指しており、技術経営プログラムに求められる要件や施策展開(技術経営プログラムの開発や技術経営教育人材の育成など)を定義しています。また、経済産業省が発表している「技術経営のすすめ」では、MOT(技術経営)プログラムを提供している外部機関(主に大学や大学院、財団法人など)や研究科紹介も掲載されています。

MOT人材を育成するには、MOT研究やMOT教育を専門的に行っている教育機関を活用することが一般的です。

【参考】経済産業省 技術経営のすすめ

意識改革と社内体制の見直し

日本において、大企業と中小企業の割合はそれぞれ0.3%と99.7%となっており、圧倒的に中小企業の数が多く、日本経済を成長させる上ではMOT(技術経営)を前提とした中小企業による事業開発を促す必要があります。しかし、中小企業の多くが旧態の経営環境から脱却できておらず、イノベーションを創出できる環境ではないと指摘されています。

そのため、中小企業でMOT人材を生み出すためにも、社員全員を対象に意識改革を行い、社員一同で技術経営に取り組む体制作りを行なわなければいけません。

【参考】経済産業省 2017年版中小企業白書 概要

モチベーションを維持・向上できる労働環境の構築

MOT(技術経営)を導入し、成功に導くためには優秀な人材の確保・育成、公平公正なインセンティブ付与を前提とした評価制度が重要な要因となります。そのため、経営者が 企業理念や会社のビジョンを明確に示し、従業員が高いモチベーションを維持できる労働環境の構築が大切です。

人材マネジメントを行なう上では、従業員のモチベーション従業員満足度の向上を意識して、マネジメントを実施し全社的にMOTの導入を行うことが、MOT人材育成の近道といえます。

MOTを学べる研究機関

MOT(技術経営)を学ぶためには、MOT教育研究を専門にしている大学・大学院(専門職大学院)などの研究機関(MOTスクール)を活用することが一般的です。各研究機関によって、提供するMOTコースにも特徴があるため、修めたい経営能力を明確にし、選ぶ必要があります。

東京理科大学大学院 イノベーション研究科 MOT技術経営専攻

【参考】東京理科大学大学院 イノベーション研究科 MOT技術経営専攻

東京理科大学大学院では、新規事業の創出や起業のためのMOT(技術経営)を学べる研究教育機関として知られています。中でも経営学研究科 技術経営専攻 - 理科大ビジネススクール(MOT)では、学問、ビジネス、コンサルティングという3つの視点から専任教員を構成し、討議・演習・グループワークを主体にカリキュラムが進められます。

主にイノベーション・起業、戦略・組織、運営・システム、知財、マーケティング・販売、経済学・財務・会計などの幅広い領域で学ぶことができます。

立命館大学大学院 テクノロジー・マネジメント研究科

【参考】立命館大学大学院 テクノロジー・マネジメント研究科

立命館大学MOT大学院では、イノベーションプロダクトライフルサイクルの収益化、ビジネスモデルの創出を可能とする、新世代MOT人材の育成を目的としています。カリキュラムでは、理論と実践を重視し、ディスカッションとワークショップ形式を利用した双方向性の学びを採用しています。

論理的思考や多種多様な分析手法に基づいた行動・実践を行い、MOT(技術経営)の研究者ならびに高度な知識を有する専門家としての必要な能力の習得を目指します。

東京工業大学 環境・社会工学院 技術経営専門職学位課程

【参考】東京工業大学 環境・社会工学院 技術経営専門職学位課程

東京工業大学の環境・社会工学院 技術経営専門職学位課程は、平日夜・週1回で社会人が働きながらMOT(技術経営)を学ぶことができる、社会人アカデミープログラムです。少人数制の講義を中心に、受講者同士の相互学習を促し、MOT科目を履修できます。

経営者や管理職、若手社員まで幅広い層がMOTを学ぶことができる研究教育機関です。

東京農工大学大学院工学府産業技術専攻(専門職学位課程)

【参考】東京農工大学大学院工学府産業技術専攻(専門職学位課程)

東京農工大学大学院工学府産業技術専攻(専門職学位課程)は、産業技術イノベーションを推進する人材を育成する専門職大学院です。また、本課程ではMOT(技術経営)に関する知識を学べるだけでなく、工学系大学院の教育研究環境を活用できます。そのため、先鋭的な工学研究や実践性の高いビジネスプラン策定の能力が向上できます。

MOTコースも、4つのコースが設けられており、産業研究に特化した、専門性の高いカリキュラムを履修することが可能です。

まとめ

  • プロダクトライフサイクルの短期化と消費者の価値観の多様化・変化に伴い、企業は短期間でイノベーションを創出しなければいけません。
  • イノベーションは高い技術力と密接に関連していることが多く、自社の技術を経済的価値に変える経営能力であるMOT(技術経営)は、日本企業が国際競争力を高めていく上でも需要が高まっていくと予想されます。

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