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2018年11月20日(火)更新

コーポレート・ガバナンス

成果主義や職務給制度を会社に浸透させ、日本独自の雇用慣行からの脱却を目指す企業が増えると同時に、粉飾決算や違法な長時間労働などの企業の不祥事が明るみに出る事態が増えています。今回は企業の不正防止や経営体制の監視強化につながる、コーポレート・ガバナンスの意味や目的、メリットから強化方法までご紹介いたします。

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コーポレート・ガバナンス(企業統治)とは

コーポレート・ガバナンスは、投資家や株主、従業員などのステークホルダーの利益を守るための、企業の重要な取組みのひとつです。

コーポレート・ガバナンスの意味や注目される背景、内部統制との違いを知ることで、理解を深めることができます。

コーポレート・ガバナンスの意味

コーポレート・ガバナンスとは、企業経営を統制し、監視する役割を持たせる機能を意味し、情報開示のあり方や監査役や社外取締役、委員会などを指す経営関連用語です。

コーポレート・ガバナンスにおける明確な概念は定められておらず、主に企業活動に対する公平性、透明性を確保する目的で実施され、上場企業による株主重視の経営に活用されています。

東京・大阪証券取引所を傘下に持つ、日本取引所グループ(以下、JPX)が掲げるコーポレート・ガバナンスコードでは、「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する」と定義し、「株主の権利・平等性の確保」、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」、「適切な情報開示と透明性の確保」、「取締役会等の責務」、「株主との対話」を基本原則としています。

コーポレート・ガバナンスは企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に必要不可欠な概念と認識されており、上場を目指す企業をはじめ、健全な経営を行なう上でも参考にすべき概念といえます。

【参考】日本取引所グループ コーポレートガバナンス・コード

コーポレート・ガバナンスが注目される背景

コーポレート・ガバナンスが注目される背景には、「企業の不祥事の増加」、「エージェンシー問題の顕在化」が挙げられます。

企業による不祥事の増加

バブル崩壊以降の1990年代において、日本企業による不祥事が増えており、現在に至っても大手企業もしくは大手企業の子会社による不祥事が続いています。

企業の不祥事には、製品の品質チェックの水増しや不適切な会計処理における粉飾決算・横領、労働基準法に抵触する雇用問題などが挙げられます。これらの不祥事は、顧客や取引先、従業員、株主・投資家などあらゆるステークホルダーの利益を損失し、経済市場及び日本社会に多大なる悪影響を与えると考えられています。また、不祥事により経営危機に陥る企業も多く、主力産業の売却や倒産に発展しているケースも珍しくありません。

経済のグローバル化に伴い、国際競争力が激化していることから、日本企業内に成果主義職務給を前提とした人事・評価制度に移行する動きも活発化しており、これらの制度導入も企業の不祥事を増やした要因と指摘されています。

その結果、経営の監視機能を強化し、多方面のステークホルダーの利益を確保するコーポレート・ガバナンスの導入及び強化の需要が高まっていると考えられます。

エージェンシー問題の顕在化

エージェンシー問題とは、委託者(プリンシパル)が経営者(エージェント)に業務を委託する関係の延長戦上で発生する問題を指し、一般的に株主利益に一致しない経営者の行動を指します。資本市場から資金調達を行なう上場企業において、株主や機関投資家への利益還元は責務とされています。

一方で、株主の意向に沿わない、利益につながらない不必要な投資(生産性の低い事業部門・不必要な設備への経営資源の投入など)を行なう経営者に対する監視の強化を求める声が高まっています。

そのため、企業にはオーナー経営者を含む経営陣の監視を強化するコーポレート・ガバナンスの導入が一般化しつつありますが、コーポレート・ガバナンスに対する日本の経営者の意識はまだまだ薄いと指摘されています。

内部統制との違い

内部統制とは、「業務の有効性・効率性」、「財務報告の信頼性」、「法令順守」、「資産の保全」の達成を目的とした、経営陣を含む組織内全ての従業員によって遂行されるプロセスを指す経営関連用語です。

具体的な実施内容には、リスクマネジメント(リスクに対する評価と対応方法の作成)の実施、統制環境の構築(モニタリングやITシステムの導入など)、具体的な統制活動の作成(多重チェックが機能する承認システムの構築や、複数社員による職務の分掌など)が挙げられます。

一方でコーポレート・ガバナンスは、株主やステークホルダー(顧客、取引先、従業員)の保護を目的とした概念であり、企業運営の基本方針として掲げられることが多く、健全な企業経営を担保するプロセスである内部統制とは異なります。

しかし、透明性の高い、適切な情報開示や財務報告の信頼性の担保という点では、内部統制とコーポレート・ガバナンスの目的は共通しており、それぞれを適切に運用することが重要です。

【参考】国土交通省 金融庁 企業会計審議会 第 15 回内部統制部会 資料 1-1 内部統制の定義

【関連】内部統制とは?意味や目的、メリット、実施基準をご紹介 / BizHint HR

コーポレート・ガバナンスの目的

コーポレート・ガバナンスは企業が社会的責任を果たす上で、必要不可欠な企業戦略といえます。コーポレート・ガバナンスは主に以下の目的で実施されます。

ステークホルダーの保護と利益向上

コーポレート・ガバナンスは、株主や顧客、取引先、従業員といった企業に関わるステークホルダーの保護と利益の向上を目的としています。上場会社は資本市場からの事業資金の調達を可能とする一方、企業価値を向上し、支援する株主や投資家に対して、最大限の利益を還元することを使命としています。

また、粉飾決算やエージェンシー問題の防止は各ステークホルダーの保護・利益につながり、取締役と業務執行者の分離や監査業務を担う社外取締役(監査役員)の設置により、組織内での不正を抑止できると考えられています。一方で、株主保護の観点に偏ることで、中長期的な成長戦略を打ち出しにくく、短期的な売上高・利益を追求する経営戦略に終始しがちとなるため、日本企業はイノベーションを生み出しにくいという指摘もされています。

【関連】ステークホルダーとは?意味や語源、分析管理の方法、具体例をご紹介/BizHint HR

株主・投資家の権利、平等性の担保

企業として、株主・投資家に平等性を保つことは、資金支援を行なう株主・投資家の権利を確保する上で重要な取り組みです。株主や投資家が持つ権利を適切に行使するためには、肯定的・否定的な情報内容に関わらず、速やかな情報開示が求められます。コーポレート・ガバナンスは、企業側と株主・投資家との共同利益を向上させる上で、意思決定と監督強化を図るための体制整備に役立ちます。

また、株主総会における、株主の議決権行使を尊重し、企業が提案する議案に対する賛成票比率が低い場合は、その原因の特定と綿密な株主との対話を通して、経営戦略の実効性に理解を求めなければいけません。

経営の透明性の確保

株主や投資家だけでなく、顧客・取引先や従業員にとって、会社の業績や財務情報、経営戦略、経営課題、リスクマネジメントの実施状況は、企業経営の健全性を確認する上での重要な情報です。

そのため、上場企業は適切な情報開示と透明性の確保を行い、取締役会の債務(企業の持続的成長と中長期的な企業価値の向上)が果たしているかを示さなければいけません。

コーポレート・ガバナンスのメリット

コーポレート・ガバナンスを遵守した企業経営は資本主義社会における公正・公平な競争を促し、利益を社会に還元する優良企業への第一歩といえます。

コーポレート・ガバナンスを遵守することで、以下のメリットを享受できます。

企業価値の向上

コーポレート・ガバナンスの実施は、各ステークホルダーの保護・利益につながり、対外的に優良企業としての認知度を高めると同時に、中長期的な企業価値の向上につながります。

企業価値の向上は株価の算出の基準となり、金融機関から融資を受けやすくなる、中小企業の倒産を防ぐ効果も期待できます。現在、M&Aやマネジメント・バイアウトを基にした企業価値の向上が活発化していますが、企業経営の透明性の確保と株主に対する誠実な説明責任の履行こそが、真の意味での企業価値の向上といえます。

【関連】「企業価値」とは?企業価値の意味や評価方法、メリット、向上施策までご紹介/BizHint HR

不正の防止

1990年代のバブル崩壊以降、日本企業には成果主義の浸透、短期志向の株主の増加に伴い、組織ぐるみの不正が相次ぎました。これら、企業の不祥事は各ステークホルダーに甚大な損失をもたらし、日本経済の停滞につながりかねない深刻な事態といえます。

その結果、企業の不祥事を防ぐために、経営の監視強化の取り組みとしてのコーポレート・ガバナンスが生まれ、経営陣による不正や、組織内に蔓延する不適切な業務プロセスの改善を求める声が高まりました。

しかし、現在でも日本を代表する大企業による安全品質管理の偽証や不適切会計が見受けられることから、コーポレート・ガバナンスや内部統制の形骸化が指摘されており、経営者や幹部社員の意識はまだまだ薄いといえます。

過度な融資・担保に依存しない財務体制の強化

日本企業の大半を占める中小企業にとって、金融機関からの融資は必要不可欠です。一方で、過度な融資や担保に依存した財務体制は、中長期的な成長戦略を描きにくく、その場しのぎの経営になってしまいます。

中小企業といえども、各ステークホルダーに向けて、透明性の高い情報開示とコーポレート・ガバナンスの導入を行なうことは、自社事業の可視化と評価を適切に行なうことができ、現行の経営体制に見合った融資や出資を受けられます。

会社法を遵守した適切な財務体制の構築や会計監査人による客観的な評価は会社の持続的発展を促す、重要な経営戦略といえます。

コーポレート・ガバナンスの強化方法とは?

コーポレート・ガバナンスは明確な概念が定められておらず、企業の特性や社風を活かした上で制定することが可能です。

一方で、金融庁や日本取引グループ(JPX)はコーポレート・ガバナンスコードを定めており、コーポレート・ガバナンスを強化する上で参考となります。

東証コーポレート・ガバナンスコードを参考

コーポレート・ガバナンスには明確な定義がなされていないため、各企業が自発的に作成することが可能です。しかし、アジアの有力な証券取引所を傘下に置くJPXは株主・投資家の保護を目的に「コーポレート・ガバナンスコード」を制定しており、金融庁もコーポレート・ガバナンスの明確な定義の策定に向けた、有識者会議を頻繁に開催しています。

JPXでは、2015年3月にコーポレート・ガバナンスコードの策定を行い、関連する上場制度の整備を行ないました。株式公開を希望する企業の上場可否を判断する審査対象となるため、将来的に株式公開を目指している企業は、JPXが定める東証コーポレート・ガバナンスを参考に策定してみてはいかがでしょうか。JPXが定めるコーポレート・ガバナンスコード及び改正後の有価証券上場規定は2015年6月1日から適用されています。

【参考】日本取引所グループ コーポレート・ガバナンス

業務の可視化と評価

昨今、日本企業は海外企業に対するM&Aを積極的に実施しており、グローバル市場でのシェア拡大に向けた動きを加速しています。一方で、日本企業の多くが地域毎に異なる業務プロセスを展開しがちであり、グローバル標準をベースとしたマイグレーション化(事業移転)が遅れていると指摘されています。その結果、親会社におけるコーポレート・ガバナンスの弱体化を招き、子会社による大規模な不正や不祥事が生じてしまうリスクが高まっているといわれています。

海外進出を手掛けている日本企業は、プロセスオーナー制度(各業務のプロセスオーナーに、内部統制の目的を達成させるための責任・権限を付与する管理制度)によるグローバル規模での業務の可視化と評価が求められます。

内部統制の強化

コーポレート・ガバナンスは、株主や投資家を含む、企業が関わる全てのステークホルダーの保護を目的にした概念や経営方針であり、実際にコーポレート・ガバナンスを機能させるためには、組織内全ての人間が関わる業務プロセスである内部統制を強化する必要があります。

コーポレート・ガバナンスと内部統制には「透明性の高い情報開示の担保」と、「適切な財務状況の報告」という共通した目的を持っており、両者をセットで考えることで経営体制の監視強化につながります。また、コーポレート・ガバナンスの強化に向けた組織(取締役会や内部監査部門、執行役会など)の役割を明確にする上でも内部統制は欠かせません。

委員会・制度の設置

コーポレート・ガバナンスを強化する方法として、企業内部に経営体制を監視する組織の構築が大切です。一般的にコーポレート・ガバナンスを担う組織や役職として、社外監査役や社外取締役、報酬委員会などが挙げられます。

また、経営者(CEO)の暴走や不正(エージェンシー問題)を防ぐ上で、CEO抜きの取締会の開催は有効です。

社内への周知

コーポレート・ガバナンスの強化は経営陣への監視体制構築だけでなく、企業に関わる従業員全員にコーポレート・ガバナンスの重要性を浸透させなければいけません。現場の一般社員から管理職の意思決定において、判断基準となる倫理憲章や行動模範の周知、日々の業務上での違法行為、背任行為を防ぐための内部統制システムの導入もコーポレート・ガバナンスの周知に効果的です。

一般社員による内部統制は、組織の腐敗や不正を防止し、結果的に企業価値の向上につながります。

コーポレート・ガバナンスの企業事例をご紹介

一般的にコーポレート・ガバナンスはホームページやIR資料や会社情報(企業情報)等で公開されており、投資家や取引先の重要な判断軸として活用されています。コーポレート・ガバナンスを遵守し、忠実に社会的責任を果たす日本企業も多数存在します。

今回は優れたコーポレート・ガバナンスを実施している日本企業をご紹介いたします。

伊藤忠商事株式会社によるコーポレート・ガバナンス

日本を代表する総合商社である伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠商事)では、「豊かさを担う責任(Committed to the Global Good)」という企業理念を基に、コーポレート・ガバナンスの強化に日々取り組んでいます。

伊藤忠商事では、東京証券取引所が定めるコーポレートガバナンス・コードへの対応をはじめ、取締役会評価の実施、執行役員制度の導入、社外取締役の増員をいち早く導入したことでも知られています。2017年にはモニタリング重視型の取締役会へと移行し、社外取締役比率を3分の1以上、取締役の非兼任(プレジデントは除く)を導入しています。

【参考】伊藤忠商事株式会社 コーポレート・ガバナンス

パナソニック株式会社が導入するコーポレート・ガバナンス

日本を代表する電機メーカーであるパナソニック株式会社(以下、パナソニック)では、カンパニー制を導入しており、4つのカンパニーそれぞれが成長戦略の実現に向けた、独立した経営体制を敷いており、グループ会社の企業価値向上を担う「コーポレート戦略本社」を設置しています。

取締役会・執行役員体制の確立、取締役会・監査役会、任意の「指名・報酬諮問委員会」の設置、グループ戦略会議を実施することで、コーポレート・ガバナンスの強化を果たしています。また、コーポレート・ガバナンスコードの各原則を全て実施し、各原則に基づく情報の開示を行なっています。

【参考】パナソニック株式会社 コーポレート・ガバナンス
【参考】パナソニック株式会社 コーポレートガバナンスに関する報告書

株式会社ツムラによる監査等委員会設置会社への移行

日本の漢方薬品メーカー大手である株式会社ツムラ(以下、ツムラ)では、2017年6月にコーポレート・ガバナンス体制の強化に向けて、「監査役会設置会社」から「監査等委員会設置会社」を実施。新しいコーポレート・ガバナンス体制では、監査委員会に所属する複数人の社外取締役により、経営の業務監査を強化しています。

執行役員の選任・解任や報酬をはじめ、経営に関する適切な助言を行い、取締役会の独立性を担保しています。

【参考】株式会社ツムラ コーポレート・ガバナンス

まとめ

  • 株主・投資家の保護を目的としたコーポレート・ガバナンスは、企業が資本主義社会で生き抜くためには欠かせない経営戦略のひとつといえます。
  • イノベーションによる技術革新が進む中で、経営を取り巻く環境は不確実性を増しています。その影響により、売上高・利益追求の姿勢に偏ることで、不祥事に発展しまうことも珍しくありません。
  • 現在でも日本を代表する大企業で不祥事が頻発していることからも、日本企業はコーポレート・ガバナンスを形骸化させないように、会社経営の監視強化と意識改革を進めなければいけません。

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