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2018年8月27日(月)更新

レイオフ

レイオフとは、アメリカなどに見られる、企業の業績悪化などを理由とした労働者の一時解雇のことです。解雇規制の厳しい日本で用いられる制度ではありませんが、企業のグローバル化や解雇規制の緩和が検討されている中では、この仕組みを理解しておかなければなりませんし、レイオフと似た一時帰休、整理解雇との違いを整理しておくことも必要です。

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レイオフとは

レイオフとは、企業が業績の悪化などを理由として、労働者を一時的に解雇することを言います。

これは、主にアメリカやカナダなどにおいて採用されているものですが、実施にあたっては、これらの国の雇用慣行である「先任権制度」というものにより、勤続年数の長い労働者を有利に扱うことが一般的です。

【関連】解雇の意味や種類とは?解雇が認められるケースや解雇予告・解雇通知まで徹底解説 / BizHint HR

レイオフの意味・目的

「layoff」を辞書でひくと、「一時解雇」や「一時帰休」、あるいはそのまま「レイオフ」などされていますが、一般的な解釈としては、労働者を企業の業績の悪化などを理由として、一時的に解雇し、業績回復時には再雇用するというものです。日本でいう一時帰休(これについては後述します。)は、解雇ではなく休業であるため、本来のレイオフの意味合いとは異なります。

レイオフの目的は、解雇する労働者の長年の経験や、スキル、ノウハウなどが他企業に流失することを防ぐことにあります。人件費を削減することだけを考えれば、数ヶ月分の給与を支給しても完全に解雇した方が効果的ですが、再雇用ありきの一時解雇とするのはこのためです。

よって、レイオフは製造業を中心に実施され、サービス業や営業職などのようにスキルやノウハウの蓄積が薄い業界、職種では、レイオフとしていても再雇用を想定しない単なる解雇である場合もあります。

【参考】人材マネジメント用語集/株式会社アクティブ アンド カンパニー

先任権制度とは

これは、アメリカやカナダなどの雇用慣行で、レイオフのほか配置転換や昇進のような人事上の手続きについて、勤続年数の長い労働者を短い労働者よりも優遇する制度です。

例えば、レイオフを実施する際には勤続年数の短い労働者から順に解雇され、業績が回復すると勤続年数の長い労働者から再雇用されます。日本で言う労働協約(労働組合と雇用者との間で締結された、労働条件などに関する取り決め)などで規定化していることが一般的です。

【参考】「2005~2006年 海外情勢報告」諸外国における高齢者雇用対策 第2章アメリカ/厚生労働省

海外におけるレイオフ等の事例

2016年に実施された、海外企業の大規模なレイオフ、その他の解雇としては以下が挙げられます。前述のとおりですが、レイオフであっても再雇用を想定していない解雇も増えてきており、単なる整理解雇との線引きが難しくなってきています。(解雇人数は発表時のものであり、確定人数ではありません。)

  • インテル(アメリカの半導体メーカー)/1万2,000名解雇
  • エリクソン(スウェーデンの通信機器会社)/3,000名解雇
  • シーゲート(アメリカのハードディスクメーカー)/6,500名解雇
  • シスコシステムズ(アメリカのネットワーク機器開発会社)/5,500名解雇
  • デル・テクノロジーズ(アメリカのパソコンメーカー)/2,000~3,000名解雇
  • フォルクスワーゲン(ドイツの自動車メーカー)/2万3,000名解雇
  • マイクロソフト(アメリカのソフトウェア会社)/1,850名解雇

【参考】【2016年外資系・海外企業リストラ】世界の主要リストラ企業まとめ/20代働き方の未来会議
【参考】シスコ、5500人をレイオフへ/CNET Japan
【参考】デルが2千から3千人の人員削減へ、EMC買収完了受け/KlugFX

各国の解雇規制

OECD(経済協力開発機構)が2013年に公表している、加盟国の雇用保護指標というものがありますが、その中の「解雇の困難性」の指標(解雇に関係する各要素を点数化したもの)を比較することにより、日本の解雇規制のレベルを知ることができます。

この「解雇の困難性」の指標を各国別にまとめたものが以下の表になります。この結果によると、日本はOECD加盟国34か国(2013年時点)の中でも労働者に対する雇用保護が極めて強く(つまり解雇が難しい)、前述のレイオフ制度が浸透しているアメリカやカナダなどは、解雇に関する規制が弱いことがわかります。

【正規雇用労働者の解雇の困難性(2013年)】

【出典】【大和総研】日本は「正規雇用の解雇が最も難しい国」?

なお、OECDは加盟国の雇用保護指標のまとめの中で、日本の評価や勧告なども行っていますが、それによると、問題であるのは正規雇用に対する強い雇用保護ではなく、非正規雇用との格差であるとし、正規雇用に対する雇用保護を弱め、非正規雇用に対する雇用保護を強める(社会保障や年金などの適用範囲を拡大するなど)ことで、格差の是正を図るべきであるとしています。

【参考】日本は「正規雇用の解雇が最も難しい国」?/大和総研
【参考】経済協力開発機構の雇用保護指標2013について/独立行政法人労働政策研究・研修機構

日本における解雇規制の動向

前述のとおり、OECDからは正規雇用労働者の解雇規制の緩和が勧告されているところですが、2010年頃から自民党などのマニュフェストにも「解雇規制の緩和」や「企業が柔軟な経営を行える環境の整備」などが盛り込まれております。さらに2016年には、自民党の「2020年以降の経済財政構想小委員会」において、「解雇規制の緩和」に加え、「定年制廃止」、非正規を含めた企業の全労働者が社会保険に加入できる「勤労者皆社会保険制度の創設」などが提言されています。

これらは、非正規労働者が増加していることへの対策や、各企業間の労働力の流動性を高めることなどを目的としていますが、概ねOECDの勧告に沿った流れであるとも言えます。

現状、レイオフは日本において浸透していませんが、将来的に解雇規制の緩和が進めば、アメリカのような解雇制度に近づいていく可能性もあります。

【参考】自民党政策集 J-ファイル2010/自由民主党
【参考】自民 年金年齢引き上げなど提言 経済財政構想小委員会/毎日新聞
【参考】解雇規制の緩和は必要か?/エキサイトニュース

日本の一時帰休や整理解雇との違い

日本にはレイオフに似た制度として「一時帰休」というものがあり、人員整理を目的とした解雇としては、「整理解雇(いわゆるリストラ)」があります。

企業において、業績の悪化が深刻なものになった場合にはこれらを検討することになりますが、それぞれレイオフよりも労働者保護の規制が強いものであると言えます。

一時帰休とは

一時帰休とは、企業の業績の悪化などを理由として、企業に労働者を在籍させたまま一時的に休業させ、業績が回復した時に仕事に復帰させるものです。日本では、このあと説明する整理解雇を実施するためには、いくつかの要件を満たさなければならないため、整理解雇を実施する前に、まずは、役員報酬のカットや、従業員の理解を得ながら、賞与のカット、従業員給与のカットなどとあわせ、この一時帰休の検討を進めていくことになります。

一時帰休の目的は、解雇せずに休業させるという労働者保護の観点もありますが、基本的には、人件費の削減や、レイオフと同様、労働者のスキルやノウハウなどが他企業に流失することを防ぐことにあります。

レイオフと異なる点は、解雇ではなくあくまで休業であることです。このため、一時帰休期間中は、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当し、労働者の平均賃金(算定事由が発生した日以前3か月間に、その労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額のこと。)の60%を支給しなければならないことになっています。

一時帰休を選択するに当たっては、国からの助成金(以下参考リンクあり)を活用するか、それでも経営の回復が難しいのであれば、整理解雇を選択するのかなど、そのあたりの見極めが重要になります。

【参考】労働基準法第26条/電子政府の総合窓口e-Gov〔イーガブ〕
【参考】雇用調整助成金/厚生労働省

一時帰休の実施状況

企業における一時帰休の実施状況については、少し古いものになりますが、一般財団法人労務行政研究所が2009年(1月から4月)のデータとして、以下の表を公表しています。 不況対策として何らかの労働時間関連施策を実施した企業は、回答が得られた273社のうち33.7%で、さらにその何らかの施策を実施した企業の中で「一時帰休・休業」を実施した企業は80.4%と、突出して多い結果となっています。

「一時帰休・休業」を実施した企業を規模別に見ると、1000人以上では82.2%、300人~999人では87.5%、300人未満では69.6%となっており、製造業、非製造業の別に見ると、製造業では90%、非製造業では16.7%となっています。

この結果を見ると、一時休業は圧倒的に製造業において実施されることが多く、どちらかと言えば大企業の方が実施している傾向にあることがわかります。これは、レイオフと同様ですが、技術の流失を防ぐ目的もあるものと考えられます。

【不況対策としての労働時間関連施策の実施状況(2009年) 】

【出典】【一般財団法人労務行政研究所】景気低迷下における一時帰休・休業等の実施状況

整理解雇(リストラ)とは

整理解雇とは、企業の業績の悪化などを理由として、人員整理のために労働者を解雇することです。その目的は、一時帰休などの雇用調整を行っても立て直せない経営を再建することにあります。

レイオフと異なる点は、同じ解雇ではあるものの一時的な解雇ではなく完全に解雇するものであること(レイオフも最近では再雇用を前提としてないものもありますので、その場合には、この整理解雇と近い意味合いになります。)、また、このあと説明しますが、原則としてあらゆる経営上の施策や人事的な見直しを行っても業績回復の見込みがない場合にしか認められないなど、その実施にあたっては一定の規制があることです。

なお、「リストラ」(restructuring)とは、本来、「事業の再構築」などを意味しますので、賃金カットや労働時間の短縮なども含めて解釈すべきものですが、ほぼ、整理解雇を意味するようになってきているため、この整理解雇に近い言葉になってきています。

整理解雇の要件

整理解雇は、労働者の責任による普通解雇や懲戒解雇とは異なり、あくまで、企業側の経営上の問題を理由とした解雇です。このため、解雇権の濫用を防ぐことを目的として、概ね次の4つの要件を満たさなければならないとされています。

これらは、これまでの判例により確立されているものであり、労働基準法などで規定されているものではありません。

  1. 人員整理の必要性
    基本的には、その企業が客観的に経営危機下にあり、人員を整理することについてやむを得ない状態である必要があります。ただし、必ずしも人員を整理しなければ倒産は免れないところまでの状態を求められるわけではなく、合理的な必要性があれば足りるとされる場合もあります。
  2. 解雇回避努力義務の履行
    解雇は最終的な手段であるべきとの考えから、解雇の前に役員報酬の減額、新規採用の抑制、配置転換、出向、希望退職者制度の導入など、解雇を回避するための努力がなされている必要があります。
  3. 人選の合理性
    解雇の対象となる労働者の人選について、合理的で公平な基準を設ける必要があります。基準の設け方は企業により様々ですが、一般的には年齢、勤続年数、勤務成績、再就職の可能性や家族の状況を踏まえた不利益の程度などについて基準を定めることになります。
  4. 手続の妥当性
    解雇に至るまでの手続きについて、該当労働者に対して十分に説明し、納得を得る手順を踏んでいることが必要です。突然に解雇するようなことは認められません。

なお、過去には上記の4要件のすべてを満たしていなければ、解雇権の濫用として無効とする判例も見られましたが、現在では、必ずしも4要件すべてを満たしていなくても合理的な理由があれば認められるものも増えてきています。

【参考】ナショナル・ウエストミンスター銀行(第三次仮処分事件)/公益社団法人全国労働基準関係団体連合会
【参考】整理解雇の4要件/jin-Jour(株式会社労務行政)
【参考】JAL解雇無効訴訟に見る、整理解雇要件/企業法務ナビ

まとめ

  • レイオフは、日本の解雇規制の中では馴染まない制度であるが、グローバル化の進行や政府において解雇規制の緩和が検討されていることなども踏まえ、その仕組みを一時帰休や整理解雇とともに理解しておくことが必要である。
  • 日本には、レイオフと似た制度として一時帰休があるが、あくまで、経営上の都合による休業であり、その間については、該当社員の平均賃金60%の休業手当を支払わなければならない。(国からの補助金で一部を補填することは可能)
  • 整理解雇(リストラ)を実施するためには、その解雇に至るまでに回避方策をとったかなど、いくつかの要件を満たさなければならないことが判例により確立されている。

<執筆者>本田勝志 社会保険労務士* * *

<執筆者>
本田 勝志 社会保険労務士

関西大学 経済学部 経済学科 卒業。1996年10月 文部省(現文部科学省)入省。退職後、2010年に社会保険労務士試験に合格。社会保険労務士事務所などでの勤務経験を経て、現在は特定企業における労務管理等を担当。


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