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2019年4月12日(金)更新

外食産業

飲食店をはじめとする日本の外食産業は、市場規模25兆円の一大業界です。しかし近年では、中食市場との競合や少子高齢化、労働力不足等の要因により、長期的に見ると停滞している業界でもあります。外食産業の現状や歴史、経営形態、上位企業の売上ランキング、解決すべき課題や、勝ち残りのための今後の対応方向についてご紹介します。

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外食産業について

ここでは、外食産業の定義、歴史、経営形態についてご紹介します。

外食とは

外食とは、「食事の出来る空間を提供する業態」と定義されます。関連する用語として、材料を購入し家庭内で調理する「内食」、調理済み食品を持ち帰って家庭や職場で食べる「中食」といわれる用語があります。

外食産業の歴史

我が国に外食産業が始まったのは、江戸時代の中期、1657年の明暦の大火以降と言われています。その頃、江戸への人口流入が多く、参勤交代の武士も多く集まってきたため、外食の需要が高まりました。当初は「振り売り」や「屋台見世」といった移動販売が中心でしたが、その後店舗を構える形式も出現し、日本の外食の始まりとなりました。

明治・大正期には、洋食文化の流入により、日本の外食はさらに発展・多様化していきます。 そして1970年代初頭には、すかいらーくによるファミリーレストラン第一号店開店や、日本マクドナルドの銀座第一号店を皮切りにチェーン化が進展し、現在ある「外食産業」としての発展を遂げています。

外食産業の経営形態

「食」という商品の多様性から、ファーストフードやファミリーレストランを中心とした大手チェーンと、多くの個人オーナーが並存しています。

大手企業の経営形態としては、直営チェーンやフランチャイズチェーンが一般的です。また、多くが材料の加工や下処理を行う「セントラルキッチン」を持ち、各店舗での加工を簡単に出来る工夫が見られます。

外食産業の現状

ここでは、外食産業の市場規模と動向、企業売上ランキング、トレンドについてご紹介します。

市場規模と動向

平成29年の外食産業市場規模は、一人当たりの外食支出額の増加や、インバウンド需要の増加、企業の交際費の増加傾向などによって前年比0.8%増の25兆6,561億円と推計されています。

内訳は、飲食店やホテル、給食事業など食事をメインに提供する「給食主体部門」が1.3%増加し、喫茶や居酒屋、料亭、バーなどの「飲料主体部門」は0.9%の減少となっています。

しかし、長期的に見ると、外食産業の市場規模は平成9年をピークとして、減少傾向が続いています。その原因としては、少子高齢化による需要の減退、低価格志向による売上の縮小、為替変動や天候不順による食材価格の高騰、コンビニやスーパーなどの中食業者との競合が挙げられます。

業態別には、ファミリーレストラン、ファーストフード、カフェが堅調に推移しているものの、若者の飲酒離れや高齢化に伴い、居酒屋・パブ業態が減少傾向にあります。

【参考】一般社団法人日本フードサービス協会/平成29年外食産業市場規模推計について

企業売上ランキング

業界動向SESRCH.COM 「飲食業界ランキング」の調査では、以下の売上順位となっています。10位以内の企業の顔ぶれは、昨年と変わっていないようです。

1位:ゼンショーHD 5,257
2位:すかいらーく 3,511
3位:コロワイド 2,341
4位:日本マクドナルドHD 1,894
5位:吉野家HD 1,857
6位:プレナス 1,458
7位:サイゼリヤ 1,392
8位:ロイヤルHD 1,303
9位:ワタミ 1,282
10位:ドトール・日レスHD 1,247
(単位:億円)

【引用】業界動向SESRCH.COM 「飲食業界ランキング」

外食業界のトレンド

外食産業を巡るトレンドとしては3つの視点で把握することが出来ます。

まず、消費者ニーズのトレンドとしては、近年更なる健康志向が進み、スーパーフードなどの高栄養・高品質商品に関心が高まっています。そのため、食品偽装などが発覚した場合、その企業に対するイメージダウンも大きいと言えます。

さらに若者のアルコール離れが進み、ドリンク主体の業態が衰退傾向にあります。働き方改革を反映して残業時間が減り、「家呑み」というトレンドも生まれています。

企業側のトレンドとしては、特定品目メニューに特化した専門店が増加しています。また、外国人観光客の増加に伴うインバウンド需要の増大という傾向がある一方、根強い労働力不足が続いています。

また、間近に迫っている消費増税ということも、経営上の大きなインパクトになりつつあると言えます。

外食産業が抱える課題と対策

ここでは、外食産業が抱える市場の縮小化、労働力不足、食の安全問題と、その対策についてご紹介します。

市場の縮小

他の消費者向け産業も同様ですが、外食産業にとって実は最大の問題が「少子高齢化問題」です。少子高齢化は将来のターゲットの減少につながり、更なるパイの奪い合いとなっていきます。

また、バブルの崩壊以後、長い平成不況の間に消費者心理がすっかり冷え込み、ワンコイン(500円)やスリーコイン(300円)という低価格志向が定着し、単価の低迷が市場を一段と小さくしています。

さらに近年、外食産業がジリ貧になりつつあるのに対して、弁当や総菜を中心とした中食市場は更なる女性の社会進出と高齢化などを理由として拡大しています。人の食事需要は一般的に1日3食のため、中食市場とはパイの取り合いになります。つまり、外食の低迷分は中食が吸収している図式になっています。

また、2019年10月予定の消費税引き上げで、政府は低所得者対策として食品の持ち帰りは8%のまま据え置き、店内飲食は10%に引き上げる構想があり、外食産業は中食ビジネスとの差別化が急務であるといえます。

新業態の開発

そもそも、外食産業は活発な業態開発が盛んな業界でした。さらに「マクドナルド」や「ケンタッキー」など、外国からの業態導入も積極的でした。

最近では、「いきなりステーキ」や「俺のフレンチ」、「俺のイタリアン」など、ベンチャー企業によって新しい外食のニーズを掘り起しされ、本来の提供スタイルに革命が起きています。

メニュークオリティアップ、デリバリーの改善、テイクアウトメニューの充実

人材不足や材料費の高騰など難しい要因はありますが、まず店内飲食しかできないメニューのクオリティのアップが挙げられます。

さらに、中食市場への切り込み方法として、ウーバーテクノロジー社やLineなどの第三者によるシェアリングデリバリーの普及、テイクアウトメニューの充実などの方策が考えられるでしょう。

また、別ブランドや子会社を通じて、敢えて中食市場に進出するという戦略も考えられます。

設備やサービスの充実

この問題に対して外食産業が根本的な対策を講じる事は難しいですが、スロープや手すり、キッズコーナーの設置、シニア料金の提案など子供連れやお年寄りが立ち寄りやすい設備やサービスの充実が考えられます。

低価格化への対応策

バブル崩壊以降、長い平成不況中に、すっかり国民の中に低価格志向が定着しています。これは外食産業にとって大きな壁です。

低価格路線に合わせていくと大量販売が必要になり、人件費の高騰や法令違反の労務管理が常態化します。高級化、高単価路線に行ける外食企業や大量仕入れ・セントラルキッチン化を図れる大手チェーンでも対応には限界があります。

その対応策としては、先ず、ロスの削減が挙げられます。チェーン店はメニューが決まっているわけですから、POSシステムを使い、出品数から材料レシピ分解し、理論消費量を算出し、仕入量と棚卸データからロスを把握することが必要です。

中小企業においては、ボランタリーチェーン加盟により共同仕入れを実現し、低コスト化を図ることも可能です。

また、労務管理面においても、入客の時間帯別変化に応じたシフトの編成や、今後就労ビザの拡大が見込める外国人労働者の活用も重要です。

労働力不足

2014年、ゼンショーの運営する牛丼チェーン「すき家」における、深夜過剰労働が問題になりました。特にワンオペといわれる従業員一人での店舗運営のため、窃盗などの犯罪も増加し、飲食店の労働力不足は社会的にクローズアップされました。

外食産業は、慢性的な人材不足になり、どんなに時給を上げても充足できない事態に陥っています。

労働環境の改善

外食産業では、人手不足のために長時間労働が拡大し、休日の取得困難性により、募集しても人が集まらず、さらに現職の従業員が過重労働になるという「負のサイクル」から抜け出せないでいます。

困難性はあるものの、このサイクルを断ち切るためのオーダーテイクシステムや券売機の導入等による省力化を推進し、総労働時間の抑制を図り、福利厚生を充実していくことなどが求められるでしょう。

雇用の安定確保

今後、安定的に労働力を確保するためには、まず、労働環境が整備され、働きやすくなったことを認知してもらう、イメージのPRが必要です。

その上で、今後の政府の方針である外国人の在留資格拡大をいち早く活用し、留学生の時点からの青田買いや、今後増加が見込めるシニア人材の活用が重要です。

また、外食産業では導入が遅れている、インターンシップやリクルーターの活用、内定後の小まめなフォロー研修などの「攻めの採用策」や、採用後、人事担当者から従業員に対するフォロー(就業状況や配置転換希望の把握)などにより、「離職率の改善」を図ることも必要です。

【関連】飲食業界が人手不足である理由と改善策を徹底解説/BizHint

食の安全に対する不祥事

2007年の船場吉兆による産地・賞味期限偽装・食べ残し再提供問題や、2013年の有名ホテル・百貨店による食材や産地に関する虚偽表示・偽装表示、2014年のマックの鶏肉材料の賞味期限切れ問題など、食の安全に関連する不祥事が相次いでいます。

特にマックなど、統一ブランドでチェーン展開している企業は、仕入先に問題があったとしても、イメージダウンは避けられず、大きな打撃となっています。

リスクマネジメント体制の確立

食品偽装や食中毒などの食の問題は、イメージダウンが大きいため、企業側としては、どうしても隠蔽に走りがちです。

起こってしまったことは、後には戻れません。むしろ、事後処理のスピード感と、誠実な対応が大切です。そのためには、リスクマネジメントを独立して行える組織を作り、問題の発覚から行政への報告、被害者への救済・補償、プレスリリース等の一連の作業をシュミレーションしておくことが有効です。

攻めの安全対策

食品偽装等の問題は、常日頃からその芽を摘み取る、「攻めの対策」も重要です。

そのためには、内外部のモニターやアンケート結果を迅速に収集する体制、料理内容や接客態度を外部スタッフによって客観的にチェックするミステリーショッパーの導入、セントラルキッチンにおける異物混入を防ぐためのHACCP(ハサップ)システムの導入も有効です。

今後、外食産業で勝ち残るための3つのヒント

ここでは、今後、外食産業が勝ち残っていくための方策についてご紹介します。

ITシステムの導入

外食産業ではチェーンを中心にITシステムの導入が進んでいます。

売上管理のためのPOSシステムや店内のオーダーテイクから精算までを省力化できるオーダーエントリーシステム、従業員の勤怠管理システム、本部やセントラルキッチンに対する発注システムやポイントカードシステムなどです。

一方、個人オーナー店では資金力の面からITシステムの導入が余り進んでいないのが現状です。

作業効率を高めるオーダーエントリーシステムや、売上やメニュー別出数管理のためのPOSシステム、売上向上のためのポイントカードシステム等は、店舗規模・業態・コンセプトを勘案しながら、必要システムは導入していく事が求められます。

また、ITシステム機器については、2019年10月導入予定の消費増税に伴う軽減税率対策補助金を始めとする各種の補助金を積極的に活用して、コストダウンに努めることも重要です。

【参考】中小企業庁/軽減税率対策補助金

【BizHintオリジナル記事】なぜ、サービス業の生産性は上がらないのか

SNSの活用

せっかく美味しいメニューや自慢の味付けを行っていたとしても、利用客に認知されなければ、業績には結びつきません。

最近は、ツイッター、Instagram、フェイスブックなどのSNSを活用して、積極的に料理のPRを行うことが活発に行われています。

さらに、消費者に強い影響を及ぼすタレントを活用してインフルエンサーとしてSNS上でPRしてもらったり、アンバサダーといわれる熱狂的なファンを活用してつぶやいてもらったりすることで、口コミ効果が広がり、中小店においても大きな広告効果が期待出来ます。

インバウンド需要への対応

近年、外国人観光客数の驚異的な伸びに伴い、外食の需要も高まっています。しかし、メニューや従業員の語学面での対応が遅れています。メニューの英語化を始めとして、中国や韓国などの訪日客が多い国向けの対応は急務です。

飲食業向けサービスの「ぐるなび」などは、契約飲食店に対して日本語メニューを、希望の言語に翻訳してリリースするサービスを始めています。特に老舗で外国人にも人気の高い個店でも導入が必要です。

【参考】ぐるなび/ぐるなびインバウンド大作戦
【参考】外食産業の現況と今後の方向性
【参考】明暗わかれる外食業界 「勝ち組」企業の特徴は?

まとめ

  • 外食産業の現状は、少子高齢化による需要の減退や中食市場との競合、労働力不足、食の安全に対する不祥事など課題が山積みです。
  • 外食産業の課題対応策としては、新業態の開発、中食市場への積極的な対抗策、子供や高齢者が利用しやすい店作り、食材ロスの削減による低価格化への対応などがあります。
  • 外食産業が今後勝ち残る方策としては、ITシステムの導入やSNSの活用、増加するインバウンド需要への対応などがあります。

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