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2018年6月20日(水)更新

健康経営

「健康経営」とは、健康管理を経営的な視点から考えることを言います。従業員の健康づくりは、もはや個人の問題ではなく、企業にとって重要課題といえるでしょう。ここでは健康経営のメリットや進め方のほか、国の取り組みである健康経営優良法人、健康経営銘柄についてもご紹介します。

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健康経営とは

健康経営とは、従業員の健康増進に配慮して、健康管理を経営戦略として実施することによって、企業の発展を目指す経営手法のことです。

従業員の健康状態が悪化することは、労働生産性の低下を引き起こすリスクがあります。労働力を確保して人材の定着化を図ることは企業にとって重要な課題であり、従業員の健康に配慮することは有能な人材を確保するためにも不可欠です。

●健康経営の企業事例やサービスを知りたい方は、こちらの記事にてご確認いただけます。
【関連】健康経営のポイントと企業取組事例、健康経営支援ツールをご紹介

健康経営の意味

健康経営は、アメリカの臨床心理学者ロバート・ローゼン(Robert H. Rosen)が1980年代に提唱した「ヘルシー・カンパニー(Healthy Company)」という考えに端を発します。

ローゼンは、その著書『ヘルシー・カンパニー―人的資源の活用とストレス管理』の中で、健康であることが従業員の意欲を高め、それによって生産性が向上し、離職率・企業による医療費負担が減少すると論じました。従業員の健康が企業にとって良い効果をもたらし、それによって企業のパフォーマンス向上が期待できることを事例研究によって実証してみせたのです。

そうした考えに基づき、健康経営は、従業員の健康に配慮することで企業の継続的な成長の実現を目指す経営手法を指す言葉として用いられています。

健康経営が注目される背景

昨今、労働者不足問題が深刻化するなか、官民を挙げて働き方改革が推進されています。しかし、生産性向上を図るためには働き方を変えるだけでなく、前提として従業員が健康であることが重要です。そのため、健康経営を企業の経営戦略として取り組む必要性が高まっています。

さらに、少子高齢化などによって国民の医療費は年々増えています。それにより健康保険組合の経営赤字は全体の6割強で、平成30年度の赤字総額は1,381億円にのぼります。これは健康保険料の増額という形で企業負担の増加に繋がります。従業員やその家族の健康に配慮して医療費の削減を図ることは、企業としても取り組むべき課題になっています。

【参考】健康保険組合連合会/平成 30 年度健保組合予算早期集計結果の概要

健康経営普及に向けた国の取り組み

国では、健康経営の普及に向けて様々な取り組みを行っています。認知が広がっている取り組みとしては、経済産業省による「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人認定制度(大規模法人部門と中小規模法人部門)」があります。

どちらも健康経営に取り組む法人が対象となる点は同じですが、健康経営銘柄と健康経営優良法人認定制度の違いは以下に挙げられます。

  • 健康経営銘柄:東京証券取引所に上場している企業で、1業種から1企業ずつ選定
  • 健康経営優良法人認定制度:大規模法人部門、中小規模法人部門共に上場に関係なく、それぞれ経済産業省の定める法人規模を満たしている法人が対象

選定対象として条件を満たしている法人の場合、健康経営銘柄と健康経営優良法人 大規模法人部門(通称ホワイト500)を同時に選定されることもあります。

それぞれの詳細については、後ほど解説いたします。

健康経営の認知度と取り組みの現状

東証1部上場企業を対象に行われた「健康経営実態調査結果」から、健康経営の認知度と取り組み状況を見てみましょう。

健康経営について、「内容まで認知」と「見聞きしたことはある」を合わせた認知度は80%を超えています。

【出典】 株式会社電通/従業員への積極的な健康増進策で、生産性・収益性の向上を図る「健康経営」の実態を調査

また健康経営に取り組む企業は、全体の39.8%が「すでに取組んでいる」、49.6%が「今後取り組みたい」と回答しており、取り組みに前向きな企業が多くいことが分かります。

【出典】 株式会社電通/従業員への積極的な健康増進策で、生産性・収益性の向上を図る「健康経営」の実態を調査

さらに、経済産業省により中小企業を対象に行われた実態調査を見てみましょう。

健康経営については、「内容を知っており、取り組んでいる」と「内容を知っている」、「内容は知らないが、聞いたことはある」を合わせても41.4%と過半数を下回っています。

【出典】経済産業省/健康経営の啓発と中小企業の健康投資増進に向けた実態調査

中小企業の認知度は東証1部上場企業の半分しかなく、企業規模によって大きく異なることが分かります。

健康経営のメリット

ここでは、経営戦略として健康経営に取り組むメリットについてご紹介します。

業務効率化や生産性向上

企業として従業員の健康増進の取り組みを行うことで、将来的な疾病リスクに対する予防や、健康の回復による欠勤率低下や心身の充実を図ることができます。従業員の健康増進によって活力がアップすることは、モチベーション向上による業務効率化や生産性向上に繋がります。

【関連】日本経済の課題「生産性向上」の意味や改善方法、取り組み事例をご紹介 / BizHint HR

企業価値やイメージの向上

経営戦略の一環として健康経営に取り組むことによって、健康経営銘柄や健康経営優良法人に選出されるかもしれません。また、健康経営の取り組みを社外に情報発信することで、従業員の健康に配慮している企業として認知、あるいは評価されます。こうした健康経営への取り組みは、企業価値向上や優秀な人材の獲得に繋がります。

【関連】「企業価値」とは?企業価値の意味や評価方法、メリット、向上施策までご紹介 / BizHint HR

社員定着化による離職率の改善

人材不足が深刻化するなか、従業員の健康維持・増進に投資する健康経営は、企業にとっても重要な経営課題となっています。そのための施策として、がんなどの疾患やメンタルヘルスの不調による離職を防ぐため、仕事と治療の両立支援を行う企業もあります。

こうした一人ひとりの健康への配慮は従業員に安心感を与え、企業に対する貢献意欲を高めます。社員の健康づくりと仕事の両立を可能にする働き方や職場環境が整備されることは、社員満足度の向上や社員定着化による離職率の改善に繋がります。

【関連】離職率を改善するための対策とは?新卒社員の離職率・退職理由なども併せて解説 / BizHint HR

『健康経営銘柄』とは

経済産業省と東京証券取引所が共同で行う健康経営銘柄は、上場企業を対象とし、健康経営度調査の結果を基に、健康経営の優れた企業を1業種から1企業選定するものです。

健康経営の促進を目指す目的で4年前から行われ、調査に参加する企業は2018年には1,239社と昨年より約4割も増えており、健康経営の普及が着実に進んでいることが伺えます。

【参考】経済産業省/「健康経営銘柄」

健康経営銘柄を取得するメリット

健康経営銘柄を取得するメリットとしては、株価の上昇があります。これは、選定された企業の株価が東証株価指数より高いまま推移していることからも分かります。健康経営の実践によって投資家から信頼性や将来性のある企業として評価されることは、社会的信用の獲得や企業イメージの向上に繋がります。

【参考】厚生労働省/健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン

認定対象と選定までの流れ

健康経営銘柄の認定対象は、TOKYO PRO Market上場企業を除く、東京証券取引所上場企業です。

選定は以下の手順で行われます。

  1. 健康経営度調査票に回答して提出
  2. その中から必須項目(※)を満たし、健康経営度が全体の上位20%に入る企業が選出される
  3. その中からROEが直近の3年平均0%以上、かつ「2」における評価結果が業種内最上位の企業が健康経営銘柄として選定される

ただし選定候補がない業種があった場合には、被選定となります。

※後ほど紹介する「健康経営優良法人大規模法人部門(ホワイト500)」の必須項目と同じ内容となります。

【参考】経済産業省/健康経営銘柄2018の選定基準等について

『健康経営優良法人認定制度』とは

健康経営優良法人には、「大規模法人部門(ホワイト500)」と「中小規模法人部門」の2つの部門があり、健康経営優良法人認定制度に基づいて認定されます。

この制度により、健康経営を実践する優良法人の規模に関わることなく、金融企業や求職者などから社会的評価を受けられる環境の整備が進んでいます。

【参考】経済産業省/健康経営優良法人認定制度
【参考】経済産業省/健康経営優良法人認定制度について

大規模法人部門~ホワイト500~

大規模法人部門~ホワイト500~は、2017年から日本健康会議と共同で認定する制度として設けられ、2018年は541法人が認定されました。

日本健康会議の「健康なまち・職場づくり宣言2020」のなかで「健保組合等保険者と連携して健康経営に取り組む企業を500社以上にする」を目標にしていましたが、開始からわずか2年で達成しています。

認定対象となる企業規模は、製造業その他の場合は301人以上、卸売業の場合は101人以上、小売業の場合は51人以上、医療法人やサービス業の場合は101人以上となっています。

【参考】日本健康会議/日本健康会議について
【参考】経済産業省/健康経営優良法人2018(大規模法人部門)認定法人一覧

認定基準

「経営理念」、「組織体制」、「制度・施策実行」、「評価・改善」、「法令遵守・リスクマネジメント」の5つの大項目について、項目ごとに認定要件として満たすべき基準が設けられています。加えて、健康経営度調査の結果が回答企業法人のうち上位50%に入ることが認定要件として定められています。

【参考】経済産業省/健康経営優良法人(大規模法人部門)2018認定基準

認定までの流れ

大規模法人部門~ホワイト500~の認定は以下の手順で行われます。

  1. 健康経営度調査に回答して提出
  2. 経済産業省から送付された「健康経営度調査結果サマリー」に同封の申請書に記入して提出
  3. 健康経営優良法人(大規模法人部門)に申請

こののち日本健康会議健康経営優良法人認定委員会による審査を経て、健康経営優良法人 大規模法人部門~ホワイト500~に認定されます。

中小規模法人部門

中小規模法人部門は、健康経営に取り組んでいる優良企業を「見える化」することで、様々な社会的評価を受けることができる環境の整備を目標に、2016年から設けられた制度です。2018年は 775法人が認定されました。

中小規模法人部門は、全国健康保険協会あるいは健康保険組合連合会による健康宣言に参加している企業を対象に認定されます。さらに認定対象となる企業規模は、製造業その他の場合は300人以下、卸売業の場合は100人以下、小売業の場合は50人以下、医療法人やサービス業の場合は100人以下となっています。

【参考】経済産業省/健康経営優良法人2018(中小規模法人部門)認定法人一覧

認定基準

ホワイト500と同じく、「経営理念」、「組織体制」、「制度・施策実行」、「評価・改善」、「法令遵守・リスクマネジメント」の5つの大項目について、項目ごとに認定要件として満たすべき基準が設けられています。ホワイト500と異なるのは、「制度・施策実行」の評価項目のうち、認定要件として定められた項目数が「6項目以上」で、約半分になっている点です。

【参考】経済産業省/健康経営優良法人(中小規模法人部門)2018認定基準

認定までの流れ

中小規模法人部門の認定は以下の手順で行われます。

  1. 全国健康保険協会や健康保険組合連合会の各支部が実施している健康宣言に参加して、認定に必要な申請資格を取得
  2. 評価基準の評価項目の取り組みを実施して、自社の取り組みが認定要件を満たしているかを確認
  3. 認定要件を満たしている場合、健康経営優良法人(中小規模法人部門)に申請

こののち日本健康会議健康経営優良法人認定委員会による審査を経て、健康経営優良法人 中小規模法人部門に認定されます。

健康経営普及に向けたその他の取り組み

政府をはじめ、民間の経済団体などが企業の健康経営の普及を促進するために様々な取り組みを実施しています。

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者に対する処遇改善など取り組みを実施した企業に対して行われる助成制度です。健康診断制度コースは、助成の対象となる労働者に対して一定の健康診断制度を規定し、実施した事業主に対して要件を満たす場合に助成されます。

【参考】厚生労働省/キャリアアップ助成金

【関連】キャリアアップ助成金とは?各コースの助成額・流れ、ポイントなど総まとめ / BizHint HR

職場定着支援助成金(雇用管理制度助成コース)

職場定着支援助成金のうち雇用管理制度助成コースでは、健康づくり制度などの雇用管理制度の導入や実施を通して離職率低下に取組む事業主に対し、要件を満たす場合に助成されます。

【参考】厚生労働省/職場定着支援助成金

中小企業向けの健康経営指標・取組事例集

中小企業がどのように健康経営進めていけばよいかの支援策として、国などによる健康経営指標や中小企業取り組み事例集があります。

健康経営研究会が提示する健康経営指標は、各項目の必要性と効果が解説されているため、取り組みの計画や実施の要となる健康経営の方針や目標設定をサポートしてくれるでしょう。

【参考】健康経営研究会/健康経営宣言

経済産業省の「中小企業における健康経営のススメ」では、中小企業の取り組み事例が多数紹介されており、健康経営の実践に役立ちます。

【参考】経済産業省 近畿経済産業局/中小企業における健康経営のススメ~健康経営の実践に役立つ事例集~

また、東京商工会議所が発行している「健康経営ハンドブック」では、健康経営に取り組む企業へのインタビューなど取り組みの参考になる情報が複数掲載されています。

【参考】東京商工会議所/健康経営ハンドブック2017

データヘルスガイドライン

厚生労働省は、健康保険加入者の健康データに基づいて加入者一人ひとりに応じた疾病予防や健康づくりを行う「データヘルス」という取り組みによって、健康経営推進活動を支援しています。

データヘルスガイドラインは、各企業が実施する健康経営と連携してデータヘルスを実施することの意義や実践方法、コラボヘルスの企業事例など、詳しく紹介されています。

これにより、経済産業省が推進する健康経営優良法人や健康経営銘柄の取り組みと共に各企業が実施することで、健康経営の効果をより高めることができるでしょう。

【参考】厚生労働省/データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン

健康経営の具体的な進め方について

組織の統率力が高い日本の企業の場合、健康経営の具体的な進め方としては、次のようなトップダウン型の健康施策が好ましいと考えられています。

トップが明確なビジョンを提示する

まずは社長自らが健康経営に関する明確な認識を持ち、そのビジョンを全従業員に通知する必要があります。それによって健康への取り組みが企業としての取り組みであるという理解が従業員に促されます。

組織内の体制を整備する

次に必要なのが組織内の体制整備です。人事・総務部が中心となるのも良いですが、健康経営の推進を担当する部署や責任者を置くケースも考えられます。

従業員の健康状態を把握・分析する

大規模企業であれば、産業医に健康診断の結果分析を依頼し、必要な取り組みについて指導を求めるとよいでしょう。産業医がいない小規模企業であれば、地域産業保健センターを活用するなどして、外部の医師の指導を受けることが可能です。

【関連】産業医の選び方・契約の仕方、報酬の相場とは? / BizHint HR

目標を明確化し、具体的な取り組みを検討・実施する

従業員の健康状態が把握できたら、浮かび上がった課題に応じて、企業の方針に基づき、その改善・維持・増進に役立つ取り組みを検討し、中長期的な計画を策定・実施します。

取り組みの効果を検証する

具体的な取り組みにどのような効果があったかを検証します。設定した数値目標の達成度合いの計測やアンケート調査の実施を通じてさらなる取り組みの立案に生かします。

健康経営ガイドブックについて

健康経営の取り組みを促進するためには、経済産業省によって策定された「企業の「健康経営」ガイドブック」が役立つでしょう。

このガイドブックでは、健康経営についての根本的な考え方のほか、組織体制の整備や取り組みの進め方から実施後の評価方法などが詳しく掲載されています。企業での健康経営の促進と普及、さらに社外への情報発信に役立つポイントが詳しく掲載されています。

【参考】経済産業省/企業の「健康経営」ガイドブック

健康経営について学べる本のご紹介

自社に合わせた健康経営のために知識を深め、事例集を参考にしたい方のために、ここでは健康経営について学べる本についてご紹介します。

先進10事例に学ぶ「健康経営」の始め方/井上俊明

健康経営の先進企業10社の取組事例のほか、有識者による健康経営の取り組みの意義と動向について分かりやすく書かれています。健康経営について知識を深めたい人事担当者におすすめの本です。

【参考】Amazon.co.jp/先進10事例に学ぶ「健康経営」の始め方/井上俊明

「健康経営」推進ガイドブック/岡田 邦夫

健康経営の基本的な考え方から健康経営推進に必要なポイントまで詳しく解説されています。健康経営のノウハウについて学びたい人事担当者におすすめの本です。

【参考】Amazon.co.jp/「健康経営」推進ガイドブック/岡田 邦夫

まとめ

  • 健康経営とは、従業員の健康管理について経営的な視点から戦略的に施策を実施することです。認知度が高まるなか重要性も認識されるようになり、取り組む企業が増えています。
  • 健康経営に取り組むことは、生産性向上や企業イメージ向上、優秀な人材の確保など企業にとっても大きなメリットがあります。
  • 政府等は、健康経営を普及させるために様々な取り組みや制度を設けるなど社会的な評価も受けられるよう、環境の整備を進めています。

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