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2018年11月12日(月)更新

事業ドメイン

企業が継続的に売上・利益を上げるには、経営資源を有効活用し、結果が出る経営戦略の策定が不可欠です。そのためにも自社のコア・コンピタンスを理解し、競争優位性を確立させなければいけません。そこで重要となるのが、事業ドメインの設定です。今回は事業ドメインの意味や設定のポイント、自社分析、設定方法、事例をご紹介いたします。

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事業ドメインとは?

事業ドメインの設定は、企業が市場で競争優位性を獲得するための重要な経営戦略の一つです。事業ドメインの意味はもちろん、似た意味である市場セグメンテーションや企業ドメインとの違い、事業ドメインの設定が重要視される理由をご紹介いたします。

事業ドメインの意味とは?

事業ドメインとは、企業が経済活動を展開する事業領域、または主力事業となる本業のことを指す経営学の用語です。企業が継続的に成長していくためにも事業活動の範囲を設定し、必要な経営資源を投資するための重要な経営戦略と位置付けられています。

事業ドメインの設定は事業の将来性や可能性、顧客・技術・機能を軸としたコア・コンピタンスを正確に理解・把握し、競争優位性を獲得できる最適な市場調査と市場の選択が求められます。

市場セグメンテーションと企業ドメインとの違いは?

事業ドメインを設定する際は、市場の選択が重要な鍵となります。一方で、事業ドメインの設定と似た手段として、市場セグメンテーションと企業ドメインがあります。しかし、事業ドメインと、これらの用語には明確な違いがあります。

市場セグメンテーションの意味とは?

市場セグメンテーションとは、企業が商品(製品)・サービスを展開する際に対象顧客の趣味や嗜好を分類し、市場を細分化した上で、事業展開を行うマーケティング分野の用語です。顧客や消費者のニーズが多様化・複雑化する中、市場を細分化し同質のニーズを持つ顧客群を見つけ出した上で、効率的に事業展開を行うための有効な市場戦略の一つとなっています。

従来のように全ての顧客ニーズに対応することが難しくなった日本経済において、マス・マーケティングの反対のマーケティング手法として活用されています。

企業ドメインの意味とは?

企業ドメインとは、企業が複数の事業を適切に統括し、効率的に経営、運営するための活動領域を指します。また、企業ドメインはコア・コンピタンス以外にも経営理念を含む大きな枠組みとして定義されており、事業ドメインの上位概念として使われています。企業の成長性、将来性に大きな影響を与える概念でもあり、企業が事業の選択を行う上でも重要な概念です。

事業ドメインの設定が重要な理由とは?

事業ドメインの設定が重要視される理由として、過度な経営資源の投入や分散を防ぎ、不必要な多角化を避けることが挙げられます。経済のグローバル化が急速に進み、イノベーションによる技術革新が、顧客・消費者ニーズを多様化させ、ビジネス課題も高度化・複雑化しています。そのため、企業が競争優位性を保ちつつ、継続的に成長を続ける上でも事業の多角化は重要な経営戦略といえます。

しかし、少子高齢化の影響を受ける日本社会において、労働人口の減少は深刻な社会問題となっています。限られた経営資源を効率よく投入・分散するためにも、コア・コンピタンスケイパビリティを適切に理解・把握し、入念な市場調査を行ったうえで、最適な市場を選択しなければいけません。その上で、自社の事業活動の領域を定める事業ドメインの決定は、会社の経営を担う経営陣の最重要の職務といえます。

事業ドメイン設定におけるCTMフレームワークとは?

事業ドメインを設定するためには、自社のコア・コンピタンスの発揮とCTMフレームワーク分析が欠かせません。

コア・コンピタンスを発揮させる必要性とは?

コア・コンピタンスは継続的に企業経営を行う上でも、中心的な役割を担います。そのため、コア・コンピタンスは事業ドメインの設定に欠かすことができない要素と考えられています。自社のコア・コンピタンスの特徴を正確に把握し事業領域を定めることは、企業経営の基本です。

現在では、コア・コンピタンスが生み出した新商品・新サービスにより開拓された市場において、競争優位性を発揮する多角化戦略が重要視されています。そのため、コア・コンピタンスと事業ドメインは密接な関係にあると考えられます。

【関連】コアコンピタンスの意味とは?分析の方法と経営への活用・事例/BizHint HR
【関連】「多角化」の意味とは?多角化戦略の分類、メリット・デメリット、成功要因から事例までご紹介/BizHint HR

CTMフレームワーク分析とは?

事業ドメインの設定において、有効な分析手法に、CTMフレームワーク分析があります。CTMフレームワーク分析とは、米ハーバード・ビジネススクール教授で経営学者であるデレック・エイベル氏によって、提唱された分析方法の一つです。このCTMフレームワーク分析は、自社の強みを活かせる「顧客」、「技術」、「機能」の3軸を規定する分析方法として活用できます。

自社の強みを活かせる「顧客軸」

CTMフレームワーク分析における顧客軸の決定は、顧客の年齢、性別、地域、嗜好性、志向性などの属性をそれぞれに分類し、「誰に」対して、自社の商品(製品)やサービスを提供し、価値を発揮させるかを特定できます。事業の強みを活かしたシェアの拡大、新規顧客の開拓などに役立ちます。

自社の強みを活かせる「技術軸」

CTMフレームワーク分析における技術軸の決定は、競合他社にない技術の特定に役立てることができます。自社が持つ差別化された技術はどんな技術であるかを特定することで、将来の主力事業立ち上げの大きな原動力となります。 イノベーションの創出はもちろん、事業の多角化にも大きく寄与してくれる軸です。この技術軸はコア・コンピタンスに近い概念でもあります。

自社の強みを活かせる「機能軸」

CTMフレームワーク分析における機能軸の決定は、自社が提供する商品(製品)やサービスが顧客にどのような価値を提供できるかを規定することができます。大企業が競争優位性を保つ上で重視する経営戦略の一つ、持続的イノベーションの軸にもなります。機能軸を強化することは、高機能・高価格化の商品(製品)・サービスを実現し、優良顧客の獲得にもつながるため、事業ドメインの決定にも大きな影響を与える軸です。

このように「顧客」、「技術」、「機能」の3本の軸を特定・規定することで、事業ドメインの設定がしやすくなります。事業ドメインの設定の際には、ぜひ参考にしたい分析方法といえます。

事業ドメイン設定のポイントとは?

事業ドメインを設定する際には、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。そのポイントが「コア・コンピタンスとケイパビリティの把握」、「自社に合った市場の選択」です。

コア・コンピタンスとケイパビリティの把握

コア・コンピタンスとは、自社が持つ技術の中で、核となる技術や特色を示す用語です。経営学者ゲイリー・ハメル氏と元米ミシガン大学ロス経営大学院教授のC・K・プラハラードによって、提唱された自社能力の総称でもあります。このコア・コンピタンスを適切な理解・把握は、先にご紹介したCTMフレームワーク分析の精度を高めることにも影響します。

また、事業ドメインの設定にはケイパビリティも重要な要素となります。ケイパビリティとは、「組織としての能力」を指します。経営資源である人材が結束・連携することにより、内部環境を整え、「組織としての能力」を最大限に発揮できるかを判断する必要があります。ケイパビリティの強化は、外部環境の変化に対して、柔軟に対応するためにも必要不可欠な要素と考えられます。

【関連】コアコンピタンスの意味とは?分析の方法と経営への活用・事例/BizHint HR
【関連】ケイパビリティ(ケイパビリティー)の意味とは?/BizHint HR

自社に合った市場の選択

コア・コンピタンスケイパビリティを把握し、最大限に活かすためには市場の選択が鍵となります。

成長市場の選択

企業が持続的・安定的な事業運営を果たすために、成長市場を選択することは合理的な経営判断といえます。この成長市場とは、市場全体が伸びている市場を指します。市場自体が新しく、新規参入が相次ぐブルーオーシャン市場に多く見られ、ソーシャルネットワーキングサービス関連の市場が該当します。

特定セグメントが見られる成熟市場の選択

成熟市場の中には、全体的な成長は横ばいだが、特定のセグメントのみ成長している市場も存在します。ローエンド型破壊的イノベーションが得意とする市場でもあるため、自社の差別化された技術を展開する上では魅力的な市場と考えられます。

いずれの市場においても、自社のコア・コンピタンスケイパビリティと相性の良い市場を選択することが大切です。

しかし、自社が持つ技術の特性上、成長市場や特定セグメントへの参入が難しい場合もあります。また、新規事業への参入は、不確実性も高く、多くの経営資源を投資しなければいけません。そのため、無謀な多角化は自滅を招きます。市場調査の結果、不利な事業ドメインと判明した際は、別の事業ドメインを検討することも考えておきましょう。

事業ドメイン設定方法は?

今までご紹介した内容は事業ドメインの設定を行うための事前準備となります。本格的に事業ドメインを設定するためには、以下のステップを踏んで、取り組むことがおすすめです。

STEP1:現在の事業ポジションの確認

まずは現在手掛けている事業ポジションを明確にする必要があります。これは本業を支える自社の差別化された技術やサービス内容を把握・理解するきっかけにもなります。先にご紹介したCTMフレームワーク分析の顧客、技術、機能の3つの軸で、アプローチすることがおすすめです。

STEP2:将来の方向性を決定

自社の技術やサービスを展開するにあたって、将来の方向性を決定します。「既存市場の既存顧客において、領域を拡大できるのか」、それとも「新市場・新顧客に対して、新たな価値を生み出し、領域を拡大できるのか」を見極めなければいけません。さらに将来の事業として運営していくためにも顧客、技術、機能の3つの軸を明確しておきましょう。

STEP3:現在・将来の整合性とベンチマーク

現在の事業、将来の事業の整合性を精査します。多角化戦略は、それぞれの事業がシナジー効果を発揮することができます。現在の事業と将来の事業にシナジー効果を発揮させるためにも、事業ドメインの設定の段階で整合性を確認しなければいけません。また、現在はもちろん、将来の競争相手になりそうな他業界の企業ベンチマークもこのステップで行います。

STEP4:取締役会での承認

これら、3つのステップを繰り返し、事業ドメインの領域を決定します。事業ドメインの設定は投資対象として相応しいかを判断する材料にもなります。設定した事業ドメインに最適な経営資源配分を決定するために、取締役会を開催し承認を行います。

事業ドメインの設定の注意点とは?

事業ドメインを設定する上で注意したいのは、最適な領域に定めることです。設定領域が広すぎると、過度な経営資源の投入となり、本業を含むその他の事業が悪化し、会社の経営そのものを危うくしてしまいます。また、事業領域が狭すぎると、事業展開において、制約が発生し、失敗の可能性が高まります。

企業が生き残りを図るためには、多角化戦略は避けられない企業戦略ですが、無謀な事業の多角化は避けながらも、多角化した事業同士が高いシナジー効果を発揮できるバランスの取れた事業領域の設定が大切です。

明確化された事業ドメインの事例

顧客・市場ニーズが多様化・複雑化する中で、日本の企業にとって、自社の強みを活かした事業ドメインの設定は必要不可欠といえます。また、日本国内にも適切な事業ドメインを設定し、優良顧客の獲得に成功し、成長を果たした優良企業も存在します。今回は優れた事業ドメインを展開する日本企業の一部をご紹介いたします。

株式会社モスフードサービスの経営戦略

ハンバーガーチェーン店「モスバーガー」を全国展開する株式会社モスフードサービスは、高品質・高価格の商品を提供することで、他のハンバーガーショップとの差別化を図ってきました。現在も経営ビジョン、経営理念を基に事業を展開しています。ニュースリリースでは、地元農家との密接な連携が伺える情報(「モスの産直野菜フェスタ」の開催など)が発信されており、低コストの海外のセントラルキッチンに依存することなく、安心・安全を前提にした高品質な商品の提供を心がけているといえます。

この経営戦略は、「高価格でも美味しくて、安心できるハンバーガーを食べたい」という顧客ニーズに応え、モスバーガーが独自に作り上げた直産食材の調達機能を活かした事業ドメインと考えられます。このように、顧客、機能を軸にした事業ドメインの設定は、企業が生き残っていく上でも重要な戦略となります。

【参考】ニュースリリース / モスフードサービス企業サイト

タニタの事業ドメインの変更

体重計の製造を主力とした計測器メーカーの大手である株式会社タニタは、主力事業の計測機器を通して、「人々の健康を作る」というコンセプトを打ち出したマーケティング活動が有名です。ダイエットや健康作りに適したメニューを提供するタニタ食堂が、世間から注目されたことも記憶に新しいかと思います。

この経営戦略の変更は、事業ドメインを「健康を測る」から「健康を作る」という領域に変更したことで、新たな市場(ダイエット市場や外食市場)への参入を成功させ、新たな顧客獲得に至った好事例といえます。

【参考】株式会社タニタ 健康の作り方

株式会社ヤナセの高級車路線の事業ドメイン

伊藤忠商事株式会社の傘下で、高級外国車の輸入販売・中古車販売を手掛ける株式会社ヤナセも独自の事業ドメインを設定している企業です。富裕層顧客を対象に、高価格・高機能の高級外国車を提供することで、「クルマのある人生を創る」という企業理念のもと、事業を展開しています。独自の技術で作り出した自動車をもたず、メルセデス・ベンツやBMWといった「既にある優れた自動車を提供する」という明確な事業ドメインを設定しています。

このように、自社の顧客(富裕層)、機能(高い販売力)、技術(優れたメンテナンス技術)を活かした経営戦略も、優れた事業ドメインの設定がもたらした成功事例といえます。

【参考】株式会社ヤナセ 企業理念

まとめ

  • 企業が継続的に事業運営を行うためには、自社のコア・コンピタンスケイパビリティを適切に理解・把握し、それに適した市場を選択することが大切です。
  • 事業ドメインの設定は重要な経営戦略となります。大企業はもちろん、資金力が少ない中小企業にとっても有効です。

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