はじめての方はご登録ください(無料)会員登録
search

2018年11月20日(火)更新

ステークホルダー

ステークホルダーとは、組織が行う活動によって直接的または間接的な影響を受ける利害関係者です。コンプライアンス(法令遵守)やコーポレートガバナンス(企業統治)など、企業の社会的責任に対する関心が高まり続ける現代社会においてステークホルダーの存在を無視することはできません。ステークホルダーの理解と協力を獲得し、長期的な信頼関係を構築するために必要となる情報やノウハウを、ステークホルダーという言葉の意味や語源、一覧や具体例、分析管理(ステークホルダー・マネジメント)の方法、関係を良好に保つポイントなどの項目に整理して分かりやすく解説致します。

ステークホルダー に関するビジネス事例や製品の情報を受取る

ステークホルダーとは

ステークホルダーとは、組織が行う活動によって影響を受ける全ての利害関係者を指すビジネス用語です。

組織視点によるステークホルダーは多くの場合、団体や属性単位で大きくまとめられます。しかし、プロジェクトや事業視点によるステークホルダーの場合には、個人単位や事業部単位、事業所単位など細分化して扱うこともあります。

ステークホルダーの英語表記と日本語訳

ステークホルダーは英語でstakeholderと表記します。このうち、stakeという英単語には『杭』や『掛け金』、『利害関係』、『関与』などの意味が、holderという英単語には『所有者』や『保有者』、『入れもの』などの意味があります。

様々な意味を持つ2つの英単語で構成されているstakeholderですが、ビジネス用語として用いる場合、日本語では一般的に『利害関係者』と訳されています。

『利害関係者』という意味の語源

stakeという英単語には元々『杭』という意味しか存在していませんでした。しかし、昨今のビジネスシーンでは当たり前のように『利害関係者』という意味でステークホルダーというビジネス用語が用いられています。では、『利害関係』や『関与』などの意味はどのような経緯で加わったのでしょうか。

ステークホルダーの語源として有力なものにアメリカ開拓時代の移住民説があります。アメリカを開拓する際、移住民たちは開拓した土地の周辺にいくつもの杭(stake)を打ち、第三者に対して杭の保有者(holder)である自分が土地の所有者であることを主張したといいます。

このような移住民たちの言動により、stakeという英単語に『正当な権利』や『所有権』などの要素が加わり、次第に『利害関係』や『関与』といった意味合いへと変化していったのではないかと考えられています。

ビジネス用語としてのステークホルダーの歴史と定義

『利害関係者』という意味合いでのステークホルダーは、1963年にSRIインターナショナル(SRI International)内部のメモ書きで初めて用いられました。その際、ステークホルダーは『グループからの支援がなければ、当該組織が存続し得ないようなグループ』と定義されていました。

その後、1984年にアメリカの哲学者であるR.エドワード・フリーマン(R. Edward Freeman)氏が著書『Strategic Management: A Stakeholder Approach』の中で『ステークホルダーは、組織体の目的の遂行に影響するか影響を受けるグループまたは個人である』と定義したことでビジネス用語として認知されるようになり、世界中に広まっていくことになったのです。

このフリーマン氏の定義について「定義が広義すぎて曖昧である」との批判が相次いだことから、フリーマン氏は2004年に『ステークホルダーとは,組織体の存続および成功にとって不可欠なグループである』という狭義の定義を示しました。

しかし、時代の変化や企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility、CSR)に対する関心の高まりといった社会的背景から、近年のビジネスシーンにおいては多くの場合、『直接的かつ継続的な金銭的利害関係者』という狭義的意味ではなく『直接的な利害関係を持たない間接的関係者や一時的な利害関係者を含む全利害関係者』という広義的意味でステークホルダーというビジネス用語が用いられています。

【関連】CSRとは?意味(定義)や事項、メリット、作り方から企業事例までご紹介 / BizHint HR

ステークホルダーを使用した例文

ステークホルダーというビジネス用語は、ビジネスシーンのあらゆる場面で登場します。実際の現場では、以下のような形でステークホルダーという言葉が使用されています。

  • 企業経営者やトップマネジメント層の想いをステークホルダーに向けて発信する
  • ステークホルダーと多くの情報を共有することで信頼関係の構築を図る
  • ステークホルダーの理解と協力を得られるように最大限の努力をする
  • 組織はステークホルダーに対する責任を果たさなければならない
  • 環境マネジメントに関してまとめたサステナビリティレポートをステークホルダーに公開する
  • ステークホルダーの意見を積極的に吸い上げることで組織の価値や評価は高まっていく

例文を見ると分かるように、ステークホルダーというビジネス用語は前後の文脈や経営活動および事業活動の内容や実施目的によって、『顧客』や『株主』、『取引先企業』、『地域社会』など様々な利害関係者を指して用いられます。

そのため、ステークホルダーの対象範囲を理解した上で自社のステークホルダーを把握していないと、会議や会話の中でステークホルダーという単語が出現した際に「どの利害関係者を指しているのか分からない」といった事態が発生してしまいます。

ステークホルダーとの2種類の関係性

『組織体の目的の遂行に影響するか影響を受けるグループまたは個人である』という広義の定義によるステークホルダーの範囲は非常に幅広く、全てのステークホルダーをもれなく洗い出すことは容易ではありません。

しかし、『直接的ステークホルダー』と『間接的ステークホルダー』という2つの関係性を正しく理解することによって、自社活動や個々のプロジェクトに対するステークホルダーの洗い出しや見極めがスムーズに行えるようになります。

直接的ステークホルダー

直接的ステークホルダーとは、消費者や顧客、ユーザー、従業員、取引先企業、株主、金融機関、その活動において絶対的な権限を持つ意思決定者など、活動規模や活動内容に対して直接的な影響を与えるもしくは活動結果によって直接的な影響を受ける人々や団体のことを指します。

活動資金の資金源やバリューチェーンの各レイヤーに深い関わりを持つ人物や団体をリストアップしていくことで、直接的ステークホルダーの大部分を洗い出すことができます。

間接的ステークホルダー

間接的ステークホルダーとは、消費者や従業員の家族、労働組合、地域社会、行政など、活動規模や活動内容に対して直接的な影響を与えず、活動結果からも直接的な影響を受けることはないものの、一時的もしくは間接的な相互作用関係にある人々や団体のことを指します。

間接的ステークホルダーの中には日常的な係わり合いがほとんど存在しないものも多く、その全てを一度に洗い出すということは非常に困難です。

直接的ステークホルダーを通じて影響を与え合うことになる人々や、組織活動の延長線上に存在する組織など、常日頃から組織に関わるあらゆる要素に対して強い関心を示し、活動全体を俯瞰的に捉えながら少しずつリストアップしておくことで、必要時に間接的ステークホルダーの洗い出しや見極めを行うことができるでしょう。

ステークホルダーに与える2種類の影響

組織とステークホルダーが双方に及ぼす数多くの影響は、その性質によって『物理的影響』と『心理的影響』の2つに分類することができます。

物理的影響

物理的影響とは、売上や利益、賃金などの増減や市場におけるパワーバランスや役職、肩書きの変化など、事業やプロジェクトの活動内容や活動結果によって影響が発生したことが明確であり、その事実を客観的に認識することが可能な性質を持つ影響のことです。

新規にプロジェクトチームを作成して自社独自の技術を惜しみなく投入したフラッグシップ商品の開発を行う場合には、他社製品との差別化による『市場シェアの拡大』や『売上の増加』、『プロジェクトリーダーやプロジェクトメンバーへの抜擢』や『職務に対する手当の発生』、プロジェクトの成否に伴う『株主配当金の増減』などの物理的影響が発生します。

心理的影響

心理的影響とは、興奮や感動、不安や疑念など、ステークホルダーの心理状態に刺激を与えることによって喜怒哀楽をはじめとする様々な感情を生み出させる性質を持つ影響のことです。

心理的影響は客観的に認識することができる物理的影響とは異なり、第三者が確認することは通常できません。そのため、相手の立場に立つことで活動内容や活動結果がステークホルダーに与える心理的影響を予測したり、交流機会やコミュニケーションツールを活用することで隠された本音を引き出すなどの工夫を施すがあります。

フラッグシップ商品開発事例の場合、プロジェクトリーダーやプロジェクトメンバーは自身のパフォーマンスやポテンシャルを高く評価されたことに喜びを感じるとともに、与えられた職務を達成することができるだろうかという不安やプレッシャーを感じることになります。また、債権者は組織の積極的姿勢を評価すると同時に失敗時の損失に対する不安を、ユーザーは期待値の高い新商品の発売に対する喜びと商品価格が現行商品よりも大幅に上昇することへの不安を感じます。

このように、心理的影響はポジティブな感情とネガティブな感情が同時に発生します。しかし、そのバランスが保たれていることは少なく、多くの場合、片寄ったどちらかの感情だけが表面化されてしまいます。

一方の感情だけを参考材料として扱うことは非常に危険です。心理的影響の予測や引き出しを行う際には、ポジティブな感情とネガティブな感情の両方を表面化させるように心掛けましょう。

ステークホルダーの一覧と具体例

企業や会社、団体によってステークホルダーとして扱う範囲は実に様々です。しかし、その分類方法には大きな差がないため、一覧としてまとめておくことによってリストアップ時の参考や確認に活用することができます。

ステークホルダーの一覧

以下が広義的意味によるステークホルダーの一覧となります。

なお、『直接的ステークホルダー』と『間接的ステークホルダー』の分類については、事業やプロジェクトの内容やステークホルダーの与える影響力、組織とステークホルダーの関係性などによって異なるため、ここでは行なわないものとします。

  • 消費者、顧客、ユーザー
  • 社員、従業員、スタッフ、現場作業者
  • 仕入先企業、メーカー、サプライヤー、加工業者
  • 取引先企業、卸問屋、代理店、小売店、お得意様
  • 株主、機関投資家、個人投資家、海外投資家、債権者
  • 金融機関、銀行、保険会社
  • 関連企業、親会社、子会社、グループ会社
  • 協力企業、提携企業、下請け会社、ビジネスパートナー
  • 同業他社、競合他社、競争会社、ライバル店
  • 運送業者、配送業者
  • 地域経済、地域社会、地域住民
  • 行政機関、政府、地方自治体、税務局、政治家、議員
  • NPO、NGO
  • 地球環境、グローバル社会、次世代
  • 業界団体、教育機関、研究機関、報道機関、マスコミ

ステークホルダーの具体例

小規模プロジェクトの実施や制度の新規導入など、多くのプロセスが組織内で完結し、組織外部に対して大きな影響を及ぼさない場合には、ステークホルダーを個人単位や事業部単位、事業所単位に細分化することがあります。

以下は組織内部で完結する小規模プロジェクトの実施を想定したステークホルダーの具体例です。それぞれの関係性や全体像をしっかりとイメージし、小規模な活動であっても広範囲に影響を及ぼすという事実を正しく理解しましょう。

【組織内部のステークホルダーと影響】

  • 社長、部長、上司 … プロジェクト実施に関する許可や承認を行う
  • 社長、部長、上司に強い影響を与える人物 … 事実上の意思決定者となる場合がある
  • 法務部 … 活動内容が法的トラブルに発展する危険性がないか確認
  • 人事部 … 人員配置や勤務時間の調整、不足人材の補充を行う
  • プロジェクトリーダー … プロジェクトに関する総合的な権限と責任を有する
  • プロジェクトメンバー … 新しい仕事に対するやりがいとプレッシャー
  • 人員削減の対象となった部門、部署 … 業務の再分配、業務計画の再調整、従業員の負担増加
  • プロジェクト結果に影響を受ける部門、部署 … プロジェクトの成否に対する関心
  • プロジェクトメンバーに選ばれなかった希望者 … モチベーションの低下やフラストレーションの増加

【組織外部のステークホルダーと影響】

  • プロジェクトリーダーやメンバーの家族 … プロジェクト実施によるストレスや疲労蓄積の心配
  • 業界団体、同業他社、競合他社 … プロジェクトの内容や成否に対する関心
  • 株主、投資家 … プロジェクトの内容や成否に対する関心
  • 求職者 … 人員補充による求人枠や職種の増加
  • 報道機関 … プレスリリースの受信とメディアへの配信
  • 読者や視聴者 … プロジェクトの内容や成否に対する関心

ステークホルダーの分析管理(ステークホルダー・マネジメント)の方法

実施規模や具体的内容に関わらず、全ての活動には利害関係者となるステークホルダーが存在します。そして、ステークホルダーはそれぞれの視点から事業計画や活動経過、活動結果に対してポジティブな感情やネガティブな感情を抱き、影響を受けたり与えたりします。

この際、ステークホルダーからプラスの影響を多く受けるほど、活動の質や成功率は高まります。そのため、組織はステークホルダーを正しく分析し、管理する必要があります。

組織がより良い活動結果を得るために各ステークホルダーと良好な関係を構築し、それぞれの参画意識や協力意識を促していくことをステークホルダー・マネジメント(Stakeholder Management)といいます。

ステークホルダー・マネジメントは次の5つのステップから構成されています。

  1. ステークホルダーの洗い出しを行う
  2. ステークホルダーの評価を行う
  3. ステークホルダーの分析を行う
  4. ステークホルダーの理解や承諾、合意を得る
  5. ステークホルダーの管理を行う

ステークホルダー・マネジメントには、活動中や活動後に発生することが予測されるトラブルを未然に防ぐリスクマネジメントとしての効果も期待されています。適切なステークホルダー・マネジメントを実施するため、個々のステップの内容や方法、必要性について正しく理解していきましょう。

【ステップ1】ステークホルダーの洗い出しを行う

ステークホルダー・マネジメントの最初のステップはステークホルダーの洗い出しです。活動の実施や継続、結果に対して影響を与える利害関係者や、活動によって影響を受ける利害関係者の洗い出しを行います。

ステークホルダーの特定は、この後の全ステップに影響する重要な作業です。活動準備段階から活動終了後までの流れと、各プロセスにおいて発生する影響を具体的にイメージし、前述したステークホルダーの一覧や具体例を参考にしながら、全てのステークホルダーを抜け漏れのないように丁寧に洗い出していきましょう。

【ステップ2】ステークホルダーの評価を行う

ステークホルダー・マネジメントにおける2番目のステップは評価です。活動の成否の鍵を握るキーパーソンの見極めや優先順位の設定を適切に行うため、『関心度』、『ポジション』、『影響力』、『ニーズ』、『課題』、『対話方法』の6つの項目について、ステークホルダーごとに評価していきます。

  • 関心度:活動内容に対してどの程度の関心を持っているか
  • ポジション:活動内容や活動方針に対して肯定的か否定的か
  • 影響力:活動全体へ与える影響や活動によって受ける影響の大小
  • ニーズ:組織や活動に期待されている内容や果たすべき責任
    ・ステークホルダーの利益に繋がる取り組み
    ・CSR活動に対する期待 など
  • 課題:ニーズに応えるために解決しなければならない課題
    ・潜在的ニーズの顕在化
    ・安心安全で価値のある商品やサービスの提供
    ・健全な経営と公正公明な取り引きの徹底
    ・適切な情報管理と情報開示が行える環境の構築
    ・社会問題や環境問題の解決や緩和に向けた提案
    ・ダイバーシティの受け入れや人権の尊重 など
  • 対話方法:良好な関係を構築し、維持するために必要な施策
    ・お客様窓口やカスタマーセンターの設置
    ・Web会議システムや社内SNSの導入
    ・IR情報の配信やIR説明会の実施
    ・取引企業に対する説明会や意見交換会の実施
    ・地域活動や地域イベントへの積極的参加 など

【ステップ3】ステークホルダーの分析を行う

ステップ3では、評価結果を基にステークホルダーの分析を行います。この際、実務の現場ではステークホルダー分析用ツールとして『一覧表分析』や『マトリクス分析』が多く用いられています。

一覧表を用いたステークホルダー分析

一覧表を用いたステークホルダー分析では、各ステークホルダーを縦軸に配置し、すでに評価を終えている『関心度』、『ポジション』、『影響力』、『ニーズ』、『課題』、『対話方法』に『優先順位』を加えた7項目を横軸に配置した一覧表を作成することで全体像を把握し、相対的に優先順位の設定を行っていきます。

【メリット】

  • ステークホルダー分析において重要な『関心度』、『ポジション』、『影響力』の3項目を同時に扱うことができる
  • 『ニーズ』の達成や『課題』解決の難易度も優先順位設定の参考にすることができる

【デメリット】

  • 分析前にあらかじめ重視する項目を選んでおかないと優先順位を決めかねてしまう
  • 分析時に重視する項目について組織内で情報を共有しておく必要がある

マトリクスを用いたステークホルダー分析

マトリクスとは、行と列という2つの要素で構成される格子状の配列や表です。マトリクスを用いたステークホルダー分析では、行(横軸)と列(縦軸)に異なる2つの項目を配置し、各ステークホルダーをポイントしていくことによって活動とステークホルダーの関係性や全体のバランスを可視化することができます。

ステークホルダーの分析を目的としたマトリクス分析では、一般的に『影響力』と『関心度』の2項目が用いられます。しかし、活動詳細や分析目的によっては、『影響力』と『ポジション』の2項目や『影響力』と『組織との関連性(そのステークホルダーが組織内部の存在か、組織外部の存在か)』の2項目など異なる項目を用いて実施する場合もあります。

【メリット】

  • マトリクス分析の場合、それぞれのエリアに対する一般的な判定基準が存在しているため、誰が実施しても同様の結果を導き出すことができる
  • 影響力が高いにも関わらず否定的な立場にいるステークホルダーや組織外部に存在するステークホルダーをマトリクス上で可視化することによって、見落としによるトラブルを未然に防ぐことができる
  • ステークホルダーの全体像を分布図として可視化することができるため、一目で現状を把握することができる

【デメリット】

  • 1種類のマトリクス分析だけを実施する場合、選択されなかった項目を加味しない優先順位設定を行うことになる
  • 『ニーズ』の達成や『課題』解決の難易度が優先順位に一切反映されない

【ステップ4】ステークホルダーの理解や承諾、合意を得る

ステークホルダー分析によってキーパーソンの見極めや優先順位の設定を終えたら、活動の実施目的や計画内容についてステークホルダーの理解や承諾、合意を得るための働きかけを開始します。

この際、全てのステークホルダーの理解や承諾、合意がスムーズに得られるとは限りません。なぜなら、ステークホルダーにはニーズという自身を中心とした希望や要望が個別に存在しており、その中には別のステークホルダーの利益を減少させることでしか達成することのないニーズというものも存在するからです。

ステークホルダー間で相反する希望や要望が発生してしまった場合、まずは両者の希望や要望を同時に実現させる方法がないか組織内で十分に検討します。そして、その実現がどうしても困難であるという結果に至った場合には、設定しておいた優先順位に基づいて両者に対する対応を決めていくことになります。

このように各ステークホルダーからの意見や指摘を取り入れ、修正と確認を繰り返しながら活動計画の詳細を詰めていきます。

活動を成功へと導き、多くの成果を獲得するためにも、可能な限り全てのステークホルダーの理解や承諾、合意を得られるように心掛け、組織側から積極的にコミュニケーションを図ることで組織とステークホルダーの両者にとって最適な活動計画の完成を目指しましょう。

【ステップ5】ステークホルダーの管理を行う

ステークホルダー・マネジメントの最終ステップは管理です。活動実施状況を常に把握し、活動計画の内容と一致しているかを確認するとともに、ステークホルダーへ与えている影響や効果がイメージ通りのものであるかと見極めます。

この際、活動の現状が計画と異なっている場合には早急に軌道修正を図り、ステークホルダーへの影響や効果が想定していたものと異なっている場合には、原因を究明した上でステークホルダーに対して原因と対策についての説明と謝罪を行います。

ステークホルダーとの繋がりは活動の終了とともに解消されるものではありません。今後の活動においても良好な関係を維持し続けることができるよう、相互信頼関係の構築に努め、責任ある行動を心掛けましょう。

ステークホルダーとの関係を良好に保つポイント

企業のグローバル化や地球環境問題の深刻化などの影響によってステークホルダーの対象が拡大することで、組織内におけるステークホルダー・マネジメントの難易度は年々上昇し続けています。

中長期ビジョン実現や経営目標達成の可否はステークホルダーとの関係性によって決定付けられるといっても過言ではありません。組織が実施する事業活動や企業活動、プロジェクト活動の成功率と成果を最大限に高めるため、ステークホルダーとの関係を良好に保つポイントについてしっかりと押さえておきましょう。

ステークホルダー・エンゲージメントを理解する

ステークホルダーである個人や団体が組織の経営理念や経営方針を正しく理解し、活動が自身に与える影響や効果を把握した上でポジティブに受け入れている状況や、ステークホルダーとの良好な関係を構築、維持するために組織側が実施する取り組みのことをステークホルダー・エンゲージメント(Stakeholder Engagement)といいます。

ステークホルダー・エンゲージメントを高めるメリット

組織が意識的かつ積極的にステークホルダー・エンゲージメントを高め、より多くのステークホルダーと双方の成長と利益に貢献しあう関係性を築くことによって次のようなメリットを得ることができます。

  • 職場環境の改善や従業員満足度の向上による売上や企業利益の増加と労働生産性の向上
  • 活動の実施や成功に必要な情報を正確かつ迅速に得ることができる(マーケティングの容易化と情報正確性の向上)
  • 組織のブランド力が高まり、ヒット商品やロングセラー商品が生まれやすくなる
  • ステークホルダーの協力を得ることで自社だけでは実現不可能だった大規模な活動を実施することができる
  • 社会的責任を果たすことで、社会的信頼度を大幅に上昇させることができる
  • 地域住民に愛され、必要とされる組織に成長することができる

ステークホルダー相関図(関係図)を作成する

組織と各ステークホルダーの間に存在する関係性や影響の方向性を一つの図としてまとめたものをステークホルダー相関図やステークホルダー関係図といいます。

自社活動のステークホルダー相関図を作成し、活動とステークホルダーとの関係性や影響力を可視化することによって、全体像の把握や組織内の活動関係者内における情報共有を容易に行えるようになります。

ステークホルダー相関図を作成する際に以下のような工夫を施すことで、ツールとしての効果を最大化させることができます。

  • 組織とステークホルダーを繋ぐ線の太さで関心度を表現する(関心が低いほど細く、高いほど太く)
  • ステークホルダーの名前と囲む丸の色でポジションを表現する(肯定的であれば青色、否定的であれば赤色、どちらでもなければ黒色)
  • 名前の大きさで影響力を表現する(影響力が弱いほど小さく、強いほど大きく)

なお、ステークホルダーや一般向けに公開する場合には、ステークホルダーをいくつかのグループに分類し、個々のステークホルダーとの関係性や個々に対する社会的責任のみを記載した簡易的なステークホルダー相関図が多く用いられています。

優先順位を低く設定したステークホルダーに対しても真摯な態度で向き合う

ステークホルダー・マネジメントの実施方法の中で述べたように、全てのステークホルダーの利害は必ずしも一致しません。そのため、活動によっては優先順位の設定に基づき、どちらか一方のステークホルダーのニーズにだけ応えるということも起こりえます。

ただし、その際に絶対に忘れてはならないことがあります。それは、設定された優先順位はあくまでもその活動に限定されたものであり、たとえどれだけ低い優先順位を設定されていたとしても別の活動においては最も優先すべきステークホルダーとなる可能性があるということです。

多くの場合、一度に全ステークホルダーのニーズを実現させることは不可能に近いため、優先順位を活用しながら組織として最善の選択肢を選んで実施するようになります。しかし、全てのニーズを実現させることはできなくても、全ての声に耳を傾け、自社としての方針や意見、今後の活動予定を伝えることはできます。

優先順位を低く設定したステークホルダーに対してもフォローアップやフィードバックなどを十分に行い、真摯な態度で向き合うことによって、必要時に支え合い、利益を与え合うことのできる素晴らしい関係を構築、維持することができるでしょう。

参考資料:大手企業によるステークホルダーの分類と具体的事例

大手企業の多くは自社のWebサイト上でステークホルダーに対する基本姿勢やステークホルダー・エンゲージメントに関する具体的な取り組みを示しています。

企業独自のステークホルダー分類やニーズ設定、ステークホルダー・エンゲージメントを高めるために設けている対話方法やコミュニケーション機会などを参考にすることで、自社のステークホルダー・マネジメントの質と効率性を高めることが可能となるでしょう。

●株式会社みずほフィナンシャルグループ(みずほフィナンシャルグループ)
みずほFG/みずほにおけるステークホルダー

●富士フイルムホールディングス株式会社(富士フイルムグループ)
ステークホルダーとのコミュニケーション / 富士フイルムホールディングス

●トヨタ自動車株式会社(トヨタグループ)
トヨタ / ステークホルダー・エンゲージメント

●株式会社ワコールホールディングス(ワコールグループ)
ステークホルダーとのかかわり / CSR / ワコールホールディングス

●株式会社東芝(東芝グループ)
東芝グループのステークホルダー:東芝 CSR(企業の社会的責任)

●アサヒグループホールディングス株式会社(アサヒグループ)
ステークホルダーとのコミュニケーション / アサヒグループホールディングス

●ヤマハ株式会社(ヤマハグループ)
ステークホルダーとのかかわり - CSR/環境・社会活動 - ヤマハ株式会社

●株式会社ローソン(ローソングループ)
ステークホルダーとともに/ローソン

●東日本電信電話株式会社(NTT東日本グループ)
ステークホルダーとのコミュニケーション / CSR活動 / 企業情報 / NTT東日本

まとめ

  • ステークホルダーとは、組織が行う活動によって直接的または間接的な影響を受ける全ての利害関係者を指すビジネス用語である
  • 昨今のビジネスシーンでは多くの場合、『組織体の目的の遂行に影響するか影響を受けるグループまたは個人』という広義的意味でステークホルダーという言葉が用いられている
  • ステークホルダーは組織との関係性によって『直接的ステークホルダー』と『間接的ステークホルダー』の2つに分類することができる。そして、『物理的影響』と『心理的影響』という2つの性質の影響を与え合う
  • 組織内で初めてステークホルダー・マネジメントを実施する際、ステークホルダーの一覧や具体例、大手企業のWebサイトなどを参考にすることで、ステークホルダー・マネジメントの質や効率性を高めることができる
  • ステークホルダー・マネジメントやステークホルダー・エンゲージメントを単なる関連用語としてではなく本質的に理解することで、ステークホルダーとの信頼関係を長期的に維持することができる

注目のビジネス事例トピックを、逃さずチェック。

大手やベンチャー含め計150,000人以上の会員が利用しています。

BizHint の会員になるとできること

  • 事業運営のキーワードが把握できる
  • 課題解決の事例や資料が読める
  • 厳選されたニュースが毎日届く
  • アプリで効率的に情報収集できる
いますぐ無料会員登録

ステークホルダーの関連キーワードをフォロー

をクリックすると、キーワードをフォローすることができます。

キーワードフォローの使い方

戦略・経営の記事を読む