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2018年10月21日(日)更新

マネジメント・バイアウト(MBO)

ビジネス課題が高度化・複雑化する中で、オーナー経営者や会社経営陣による柔軟かつ迅速な意思決定が、企業の明暗を分ける時代に突入しています。マネジメント・バイアウト(MBO)は、企業が成長戦略を描く上で重要な経営戦略として認識されています。今回はマネジメント・バイアウトの意味やメリット、実施方法から企業事例をご紹介いたします。

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マネジメント・バイアウト(MBO)とは

大企業の事業拡大だけでなく、中小企業の事業承継にも有効なマネジメント・バイアウト(MBO)。マネジメント・バイアウトの意味や注目される背景、上場廃止との関連を知ることで、理解を深めることができます。

マネジメント・バイアウトの意味

マネジメント・バイアウト(MBO)とは、M&Aのひとつで、オーナー経営者や会社経営陣、従業員が参加する自社企業の株式買収を指す経営関連用語です。銀行や投資ファンドからの融資・出資によって、資金調達を行い、自社の事業部門、もしくは全てを買収し、独立した経営権を手にする手法を指します。

自社株の経営陣買収により、経営権の強化を目指し、株主を意識した短期的な収益戦略からの脱却や、中長期的な成長戦略(関連企業の「選択と集中」、最適な経営資源の分配など)を実践できることがメリットです。、そして、株式公開(株式上場)によるメリットの低下や経営権争奪を巡るTOB(敵対的買収)からの防衛策、事業部門の事業会社化、中小企業の事業承継や事業譲渡など広く活用されることから、今後も活用が増える経営戦略でもあります。

一方で、上場企業が中長期成長戦略の実施を目的にマネジメント・バイアウトを行なう場合、株主や投資家から自社株式を買い戻す必要があり、買収価格の決定プロセスにおいて、難航するリスクことが予想されます。また、マネジメント・バイアウトが成功し、非上場化が実現することによって、経営への監視機能が低下する傾向が強まるため、コーポレート・ガバナンスを強化し、健全な企業経営を目指さなければいけません。

マネジメント・バイアウトが注目される背景

マネジメント・バイアウトが注目される背景には、主に「経営体制の見直し」、「株式公開(株式上場)によるメリットの低下」、「情報公開の厳格化」、「短期志向の株主による弊害」などが挙げられます。

経営体制の見直し

日本企業の多くが少子高齢化による市場の縮小に苦戦を強いられています。さらにIT技術の発展に伴い、異業種からの参入が相次ぎ、日本市場全体が成熟化していることから経営戦略の変更を余儀なくされています。その結果、海外市場への進出や営業形態の移行といった中長期的な成長戦略を選択する企業が増えており、非上場化によって、短期的収益に左右されない経営体制の需要が高まっていると考えられます。

マネジメント・バイアウトは経営陣と少数の株主(銀行や投資ファンド)の意思決定権が強化されるため、柔軟かつ迅速な経営が可能となります。

株式公開(株式上場)によるメリットの低下

株式公開(株式上場)は資本市場から事業資金の調達を可能とし、同時に会社の知名度や従業員のモチベーション向上にも効果的です。また、IPO(新規上場株式)による創業者・ベンチャーキャピタルの資金回収の手段としても活用されています。

株式公開は製造業を主力産業と位置付ける企業にとって、設備投資資金の調達の優れた手段として活用されていましたが、情報・通信業やサービス業を主力とするIT企業にとっては、メリットが低いと考えられます。また、メディアやSNSの発展により、従来よりも知名度の向上が容易な時代となっているため、株式公開前から既に知名度が高い企業にとっては、株式公開によるメリットが低いといえます。

情報公開の厳格化

株主の利益保護や企業の不祥事の増加によって、企業に対する、透明性の高い情報公開の要求が年々厳しさを増しています。東京・大阪証券取引所を傘下に置く日本取引所グループ(以下、JPX)では、IFRS(国際財務報告基準)を適用済、適用決定会社一覧を公開しており、上場企業の信用度を高める取組みを強化しています。

一方で、IFRSに沿った情報公開は多大なコストがかかり、後継者問題の増加や上場維持のための厳しい事業経営と相まって、企業の財務状況を圧迫する事態が起こっていると考えられます。

短期志向の株主による弊害

株券等売買代金は、2013年度より3兆円を超えた横ばい状況を保っていますが、日本政府の後押し(一般家庭向けの少額投資非課税制度「NISA(ニーサ)」の策定など)と、IT技術の発展により、株式投資自体のハードルが下がっていると考えられます。そのため、短期志向を持つ株主や投資家が増加しており、短期的な売上高、利益を追求する経営方針に偏っている企業も増えていると指摘されています。

企業が掲げる中長期的な成長戦略は、短期志向の株主に理解してもらいにくく、経営の足枷となってしまうことも少なくありません。目まぐるしいスピードで移り変わる市場環境に適応するためには、迅速かつ柔軟な意思決定が必要不可欠です。その結果、短期的収益に左右されない、中長期的な成長戦略を描くためにも経営陣の決定権を強化できるマネジメント・バイアウトの需要が高まっていると考えられます。

【参考】日本政府広報オンライン 資産づくりの第一歩に、投資優遇制度「NISA(ニーサ)」があります
【参考】日本取引所グループ 主要商品の一日平均売買代金・取引高等の推移

上場廃止との関連

上場廃止とは、各取引所が定める上場廃止基準の該当やマネジメント・バイアウト(MBO)によって、取引所で株式の売買ができなくなる経営関連用語です。

2018年2月時点で、JPXが管理する取引所にて、上場廃止となった非公開企業は6件にのぼり、その全てがM&A関連による上場廃止とされています。マネジメント・バイアウトによる株式併合は2件となっており、MBO案件が多いことがみてとれます。

マネジメント・バイアウトによる上場廃止は、短期的な収益に固執することなく、中長期的な成長戦略を選択できる一方で、既存株主との間で利益相反が起こりやすいため、上場廃止には各取引所グループが制定する上場廃止基準に従わなければいけません。株主数や流通株式数、時価総額、売買高などにおいて、猶予期間内の上限数が定められているため、適切なタイミングに応じて、実行する必要があります。

【参考】日本取引所グループ 上場廃止銘柄一覧

マネジメント・バイアウトのメリット

経営の建て直しや事業拡大、事業承継などで広く活用されるマネジメント・バイアウト(MBO)を行なうことで、以下のようなメリットを享受できます。

意思決定のスピード化

マネジメント・バイアウトのメリットのひとつに、創業者や経営陣による意思決定のスピード化が考えられます。

イノベーションによる経営環境・市場環境の激変と プロダクトライフサイクルの短期化により、経営陣は既定戦略を変更する柔軟性が求められるようになりました。一方で、上場企業は投資家や株主に対して、利益を還元する義務を負っているため、短期的な収益改善施策に囚われがちと指摘されています。また、短期志向の株主や機関投資家などによる「物言う株主」の増加も中長期的な視野を持った意思決定や成長戦略の策定の障害になっていると考えられます。

マネジメント・バイアウトにより、経営陣の自社株占有率を増やすことで、会社の経営権を強化でき、市場情勢に応じた柔軟な意思決定が可能となります。

組織内の結束力の強化

経営陣による自社企業買収であるマネジメント・バイアウトは、雇用の継続にもつながるため、労働組合の理解が得やすく、従業員の安心感を得ることができます。また、思い切った中長期的な成長戦略に舵を切ることができ、「新たな挑戦を体験できる」という従業員のモチベーションにもつながります。

その結果、経営陣と従業員との間に一体感が生まれやすくなり、結束力の強化にも効果が期待できます。

事業承継の促進

事業承継とは、親族や従業員、第三者の売却先企業に事業を譲渡、または承継させるM&Aの手法のひとつです。

近年、日本の中小企業は深刻な後継者問題に直面しています。60歳以上の中小企業経営者の50%以上が廃業を検討しており、そのうち「後継者がいない」という理由を掲げる割合が28.6%も占めています。その結果、M&Aによる事業承継が活発になっており、中小企業の後継者不足の打開策としても注目を集めています。

M&Aは第三者の企業に事業承継を行なう広義的な企業買収・売却を意味しますが、マネジメント・バイアウトは、現場を共にした役員や従業員に事業を承継することに長けたM&Aのひとつといえます。信頼のおけるパートナーに直接、高い技術や事業を継続させることができるマネジメント・バイアウトは、今後も広がっていくことが予想されます。

【参考】経済産業省 中小企業庁 事業承継に関する現状と課題について

【関連】「事業承継」とは?実施手順や事業承継税制、補助金についても解説/BizHint HR 

マネジメント・バイアウトの実施方法

元々、海外で活発に活用されていたマネジメント・バイアウト(MBO)ですが、今では多くの日本企業が重要な経営戦略のひとつとして位置付け、幅広い目的で活用してます。また、マネジメント・バイアウトを成功させるためには適切なプロセスを辿り、着実に実施していくことが求められます。

企業価値の算出

企業価値とは、企業の全体的な価値を意味する経営用語のひとつで、株価の算定やM&A・マネジメント・バイアウトに向けた買取価格を算出する際に活用されます。自社企業の業績や財務状況、時価総額を参考に、買収者である創業者や会社経営陣の恣意的意思を排除した上で、客観性が担保された適性価値を算出しなければいけません。

企業価値の算出方法には、コストアプローチやインカムアプローチ(DFC法)、マーケットアプローチがあり、複数もしくは最適な算出方法を使って、企業価値の算出を開始します。

また、一株あたりの企業価値の算出方法は、1株当り株主資本+ 1株あたり純利益×n年(nは任意)が一般的とされています。

【関連】「企業価値」とは?企業価値の意味や評価方法、メリット、向上施策までご紹介/BizHint HR

新会社の設立と、買収、合併

マネジメント・バイアウトを実施するためには、株式買取のための受け皿となる新会社を設立しなければいけません。

新会社では、事業承継後の理想的な株主配分になるように、経営陣の自己資金と資金提供者である金融機関や投資ファンドからの借入金の資本比率を決め、マネジメント・バイアウトに必要な資本金を集約させます。新会社は集約させた資本を使って、現株主から自社株を買い戻し、新会社に株を移していきます。

買収完了後、マネジメント・バイアウト対象の自社と新会社を合併させ、新会社を新株主とした資本比率となり、マネジメント・バイアウトが完了します。

マネジメント・バイアウト用資金の準備

マネジメント・バイアウトは現株主から自社株を買い取るため、多額の資金(MBO資金)が必要です。そのため、大企業によるマネジメント・バイアウトの場合、創業者や経営陣の自己資金のみでの実施が難しく、資金提供者や関係会社(親会社)からの借入金で賄い、実施することが一般的です。

借入金を利用する場合は、以下の手法による資金調達が一般的です。

銀行・投資ファンドとの協力

銀行や投資ファンド(ベンチャーキャピタル)などの金融機関から出資金を募り、マネジメント・バイアウトを行なう際は、事業計画書の作成・提出が必要です。提出した事業計画書に基づいて、金融機関は出資・融資可否を審査し、マネジメント・バイアウトの協力を決定します。

銀行や投資ファンドから協力を得るには2ヶ月以上の時間が必要であり、マネジメント・バイアウトのタイミングを逃す、企業の時価総額が下がるなどの機会損失のリスクも生じます。

ビジネスローンの活用

創業者や経営幹部によるマネジメント・バイアウトでは、金融機関以外にもビジネスローンを利用することで、買収資金を補充することが可能です。また、ビジネスローンは法人だけでなく、個人事業主の利用も可能なため、中小企業に所属する従業員によるマネジメント・バイアウトにも有効といわれています。

一方で借入金の限度額が小額なため、大規模な設備投資が必要な関連事業の事業承継などには適さず、あくまで経営陣や従業員個人による小規模なマネジメント・バイアウトでの利用が最適です。

日本政策金融公庫の利用

日本政策金融公庫とは、「セーフティネット機能の発揮」、「日本経済成長・発展への貢献(海外事業支援)」、「地域活性化への貢献」の3つの役割を果たすために設立された、日本政府100%出資の政策金融機関です。金融機関などからの借入が難しい中小企業や個人事業主を対象に融資を行なっており、小口融資が必要な方に最適です。

その他にもマネジメント・バイアウトの資金調達方法として、クラウドファンディングや助成金・補助金、ファクタリング、個人投資家からの支援、小規模私募債の発行などの利用が挙げられます。

マネジメント・バイアウトの注意点

上場会社によるマネジメント・バイアウトは経営・意思決定のスピード化や組織内の結束力強化、事業承継の促進などのメリットがある一方、買取価格のプロセス上、既存株主との利益相反が発生しやすいというデメリットがあります。

また、買取に応じない少数株主がそのまま株主として残ってしまうケースもあり、マネジメント・バイアウト後も適切かつ誠実な対応が求められます。そのため、買取価格は買収者であるオーナーや経営陣の恣意的な見解を排除し、公正・公平な情報開示を行なった上で、客観的な財務データに基づいた買取価格を設定しなければいけません。

そして、マネジメント・バイアウトの多くが銀行などの金融機関からの融資で行なわれます。新会社と自社の合併後、銀行からの融資はそのまま現行会社の債務となります。既存の債権者との関係や企業経営にも大きな影響を与えるため、マネジメント・バイアウト前には、買収後の債務の割合をしっかりと把握しておかなければいけません。

マネジメント・バイアウトの企業事例

上場企業にとって、マネジメント・バイアウト(MBO)は、投資家や株主との利害相反が発生することも少なくありません。しかし、マネジメント・バイアウトは経営危機に向けた経営再建や事業拡大に有効です。

日本においても、マネジメント・バイアウトを実施し、柔軟な企業経営を実施している企業も数多く存在します。今回はマネジメント・バイアウトを実施した企業をご紹介いたします。

市場対応能力強化を目的とした、株式会社アデランスによるマネジメント・バイアウト

男性向け育毛・増毛サービスを展開する株式会社アデランスは、2017年1月21日開催の臨時株主総会において、株主併合(マネジメント・バイアウト)の承認を得て、2017年2月10日をもって、上場廃止(東京証券取引所 市場第一部)に至りました。

株式会社インテグラルと共同でマネジメント・バイアウトを実施し、株式の非公開化に踏み切った理由としては、治療薬、発毛・育毛剤などの隣接市場との競争激化への対応力強化と短期的な売上高・利益追求の経営体制からの脱却を挙げています。経営の意思決定スピードを強化し、多様化するウィッグ・増毛市場への対応とグローバル市場でのシェア拡大を目指した経営に取り組んでいます。

【参考】株式会社アデランス 当社株式の上場廃止のお知らせ
【参考】株式会社アデランス 臨時株主総会召集ご通知

「集中と選択」を目指した、株式会社U-NEXTによるマネジメント・バイアウト

音楽配信事業、IoTプラットフォーム事業を展開する株式会社USENは、完全親会社であえる株式会社U-NEXTの代表取締役社長及びその支配株主である株式会社UNO-HOLDINGSのマネジメント・バイアウトによって、対象者株式の非公開化を実施しました。

マネジメント・バイアウトを実施した背景には、主力事業である映像配信事業と通信事業において、事業運営コストに見合った収益が得られていない状況への対応が挙げられています。その他の集客支援事業、エネルギー事業などにおいても市場環境が激変していることから、徹底したコスト削減、圧縮による利益の創出による体質強化が求められていました。

そのため、安定的な収益を獲得している音楽配信事業に注力することで、企業価値の向上を目指すという結論に至り、マネジメント・バイアウトの実施に踏み切ったとしています。

【参考】株式会社U-NEXT 連結子会社による株式会社USEN株式n位対する公開買付けの開始及び経営統合に関する基本合意書締結に関するお知らせ

まとめ

  • 市場環境の変化や経営状況の悪化、さらには中小企業の事業承継にも活用されるマネジメント・バイアウト(MBO)。創業者や経営陣、従業員による買収のため、事業再編に向けた経営・意思決定のスピード化や組織内の結束力強化に効果的です。
  • 上場企業によるマネジメント・バイアウトは現株主との利益相反が起こりやすく、客観的な財務審査に基づいた誠実な対応が求められます。
  • 今後も経済のグローバル化に伴い、競争環境が激化する中で、中長期的な成長戦略を描く上でもマネジメント・バイアウトは重要な経営戦略のひとつとして活用されていくことが予想されます。

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