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連載:第11回 老舗を 継ぐということ

首相演説にも登場。50歳退任を宣言したマスオさん社長の壁壊し経営20年

BizHint 編集部 2020年9月22日(火)掲載
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創業70年を超える塗装会社、株式会社竹延。現社長の竹延幸雄さんは2003年初頭、当時の社長の娘婿というマスオさん的立場で会社に飛び込みます。そこで目にしたのは、旧態依然とした多くの「壁」でした。個人まかせの仕事、職人間の偏見・上下関係、男性社会…。会社の成長のために一つ一つ「壁」を壊していくうちに、後に安倍元首相の施政方針演説(2019年)に登場し、社会課題を解決した「中小企業長官賞(2019年)」を受賞する株式会社KMユナイテッドの立ち上げに至ります。今回は、竹延社長の社内改革について伺います。

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株式会社竹延 / 株式会社KMユナイテッド
代表取締役社長 竹延 幸雄 さん

早稲田大学卒業後、大手鉄鋼メーカー、広告代理店を経て、2003年に義父の会社である株式会社竹延に後継者候補として入社。2013年に社内ベンチャーとしてKMユナイテッドを起業。ビジネススクール終了後、株式会社竹延の社長に就任。社内改革を推進し、首相演説に取り上げられる(2019年1月)。同年、中小企業長官賞受賞。2020年9月から早稲田大学大学院創造理工学研究科・棟近教授の下、現在取り組んでいる塗装ロボットの開発についてアカデミックな見地からもアプローチする。


入社した義父の会社。「組織の力を発揮できていない」

――株式会社竹延の業務内容について教えて下さい。

竹延幸雄さん(以下、竹延): 当社はいわゆる塗装業を営んでいます。塗装業は、住宅から高層ビルまで、さまざまな建築物の外壁や内壁、屋根や床にペンキを塗るなど、建物の最後の仕上げを担う専門技術職です。

塗装職人になるには、特段の資格は必要ありません。そのため、塗装業者のバックボーンは中学校を卒業してすぐに手に職をつける方から、大卒の方、他業種から転職した方など様々です。

――広告代理店を経て竹延に入社されました。どのようなところにギャップを感じましたか?

竹延: 全部ですね(笑)。前職では課題をチームで解決していくスタイルでした。しかし竹延では、当時社長だった義父が、野球でいうところの四番でピッチャー、そして監督まで兼ねるような会社だったのです。

元々、建設業界では強い求心力を持つ社長の下、それぞれが自分の与えられた業務をきっちりこなしていくというスタイルが一般的でした。これは組織として決断が早いという強みがあります。しかし僕の目には、 個々の従業員はがんばっているものの「組織として力を発揮できていない」 ように見えていました。

――組織として力を発揮するとはどういうことでしょうか。

竹延: 例えば「情報共有」です。入社当時、メールアドレスを持っていたのは親族だけでした。お客様に見積りを渡すにしても、メールで送る人、パソコンで印刷した紙を持っていく人、手書きで作成して渡す人…バラバラでした。

契約書のひな型やうまくいった事例、クレーム対応なども共有できていませんでした。それぞれは間違いなく一所懸命に仕事をしていました。 しかしそれは「すべて個人のがんばり」であり、会社として、組織としてのノウハウになっていなかった のです。この「個人の壁」を取り除く必要がありました。

――どのように変えていかれたのでしょうか。

竹延: まずは、社員全員にメールアドレスを配布しました。そして自社サーバー内に良好事例やノウハウを蓄積する場所を作り、組織全体へのノウハウ共有を進めやすくしました。

――有益なノウハウはありましたか?

竹延: お付き合いがあった大手ゼネコンからいただいた資料は大いに役立ちましたね。それまでは社内の担当者が個人で目を通して、その後スルーしていたものに、会社全体で触れることができるようになったのです。 一人ひとりの社員が外部から持ち込む情報を共有して活用できるようになれば「絶対に今よりいい会社になる」 と思いました。

実際、仕事のやり方を「標準化」させることができましたし、成功や失敗から学ぼうという姿勢が組織の中に生まれていきました。

入社予定の女性が、事務所まで足を運んで入社を止めた

――その他、課題に感じられていたことはありますか。

竹延: 実は2008年まで、当社には女性は一人(義理の祖母)だけで、それ以外の女性はおりませんでした。しかし、会社の発展に伴って事務が回らないという状況になり、事務職の女性の採用を決定しました。

しかし、その女性が入社することはありませんでした。 彼女は当社まで足を運んだものの、事務所のある2階に上がることなく、竹延で働くことを止める決断をした のです。

――なぜでしょうか?

竹延: 臭いです。当時の竹延は同業他社と同じように、油性の塗料を使っていました。油性の塗料は強靭な塗装ができ、つやを維持しやすいなどのメリットがある反面、シンナー臭がきつく、溶剤中毒が発生するリスクがあります。

油性塗料と水性塗料の比較

当時の竹延には、シンナーの臭いが充満していました。後々聞いた話によると、先ほどの女性は「ここで働いたら、将来子供を産むことを諦めなければならないかもしれない」と恐怖を感じたとのことでした。

――強烈なできごとですね。

竹延: この経験は、当社が体や環境に優しい塗料に目を向けるきっかけになりました。かつて、油性塗料は仕上がりなどの面で大きな優位性がありましたが、技術開発が進んだ現在では、水性塗料も引けを取らないレベルに至っています。

「女性でも安心して働ける職場」は当社の成長に不可欠な要素 です。これを機に、当社は現場の内部で使う塗料を100%水性塗料としました。今ではもう、事務所でシンナー臭はしません。こういったことは、 男性の採用ばかりを続けていては気付けなかった と思います。

――100%水性塗料への変更は、大きな変化ですね。

竹延: はい。しかしそれをきっかけとして「女性が働きやすい職場」を作る流れができ、事務職だけでなく、女性の塗装工もどんどん増えてきています。更には、水性塗料にいち早く目をつけブランド化できたことで、収益面でもプラスになりました。

KMユナイテッドがオンライン販売する水性塗料 BenjaminMoore

内装工と外装工。職人間に存在していた見えない上下関係

――職人の現場で変えられたことはありますか。

竹延: 塗装工は大きく「外装工」と「内装工」に分かれます。外装工は屋根や外壁などを塗り、内装工は建物の内壁を塗り上げます。この両者の壁を取り払いました。

外装工の塗装作業の様子

両社は同じ塗装工ですが、作業内容はもちろん、求められるものが大きく違います。内装工は屋内に入るので、身だしなみが重視されますが、外装工は服装についてはあまり要求されません。

また、内装工は屋内作業に限定されるため、天候に左右されず作業を行うことができますが、外装工は雨天時に作業できません。それによって、雨が多い時期には一人親方のような外装工は収入が大きく減少してしまうといった問題がありました。同じ塗装工でも、 内装工と比べて外装工は低く見られがちなところがあったのです。こういった固定観念も組織・チームで仕事をする上では、見逃せませんでした。

外装工と内装工の比較

――内装工と外装工の壁、どのように取り払われたのでしょうか?

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