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連載:第53回 組織作り その要諦

新潟の事業再生の経営者が見つけた働く喜び 「会社の存在意義は、今いるお客様が教えてくれる」

BizHint 編集部 2022年9月13日(火)掲載
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味噌や日本酒など、日本の発酵食に欠かせない米糀(こうじ)。この糀を用いた甘酒の濃厚な甘さ、栄養価の高さに着目し社内ベンチャー「古町糀製造所」を立ち上げて糀ブームを巻き起こした葉葺正幸さん。NSGグループが事業承継した新潟企業を次々と再建してきた手腕を認められ、現在はそれら6社を束ねる株式会社和僑商店ホールディングスの代表として手腕を振るいます。ですが本人は「残念ながら、“新潟のために”なんて、かっこいい志はありませんでした」と言います。働く方も満足できる環境にしたい。その信念で走り続けた先には、お客様の喜びを追及して働く充実感がありました。

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株式会社和僑商店ホールディングス
代表取締役 葉葺 正幸(はぶき まさゆき)さん

1973年新潟県生まれ。法政大学経済学部卒。NSGグループ入社後、企業内起業でおむすび屋「銀座十石」をスタート。その後、「古町糀製造所」を立ち上げ、糀・甘酒ブームの一翼を担った。以降も、経営難に悩む老舗を再建。2012年に「今代司酒造」、2013年に味噌蔵「峰村醸造」、さらに「越後味噌醸造」「新潟小川屋」などNSGグループが買収した企業の立て直し、経営に携わる。2017年、それら6社を束ねる株式会社和僑商店ホールディングスの代表取締役に就任。


糀の魅力を世の中に伝え直さなければならない

――和僑商店ホールディングスは、どのような経緯で立ち上がった会社でしょうか?

葉葺正幸さん(以下、葉葺): 元はNSGグループという新潟に本拠地を置く教育会社に新入社員として入社しました。そして、27歳のときに東京でおむすび屋「銀座十石」の立ち上げをまかされました。

当時、会社としては新潟の特産品を用いたビジネスを立ち上げたいという思惑があり、その1つが新潟の米を使ったおにぎり屋だったというわけです。そのおにぎり屋が軌道に乗ったところで、会社から「新潟へ戻って米を使った事業を立ち上げてほしい」と頼まれました。その依頼を受けて2009年に立ち上げたのが甘酒専門店の「古町糀製造所」です。

その後、親会社が買収したものの経営状態が思わしくなかった今代司酒造の取締役に就任し、立て直しに努めました。こちらは、なんとか2年ほどで良い経営状態にすることができました。その実績を評価いただき、後継者が見つからず困っていた味噌蔵「峰村醸造」からも経営参画のお声がけをいただいた形です。米を使った甘酒や日本酒とは違い、味噌蔵の経営は本当に大変でしたが、試行錯誤を繰り返しなんとか改善していくことができました。

その後、酒蔵と味噌蔵を持つ「越後味噌醸造株式会社」と焼漬け・漬魚専門店の「新潟小川屋」などの経営に加わることになり、それらを運営する母体が必要になり和僑商店ホールディングスが誕生したというわけです。

※焼漬け・やきづけ:焼いた鮭の切り身を醤油タレに漬けた新潟の郷土料理

――おにぎり屋の次に甘酒の「古町糀製造所」を立ち上げられますが、責任者になった経緯を教えてください。おむすび屋と同様、辞令などがあってトップダウンで降りてきたものですか?

葉葺: おにぎり屋が軌道に乗ったとき、ご飯と相性のいい発酵食品の勉強を始めたのがきっかけでした。日本の食を学びながら、伝統産業、醸造業などの文化に踏み込み、お客さんに伝えられたら、やりがいに繋がると思いました。

その時に、糀(こうじ)に出会ったんです。「麹」とは米・麦・大豆などに穀物にこうじ菌を繁殖させたもので、今でこそ塩糀、醤油糀というように糀を前面に出した商品がありますが、当時は食品として糀はほとんど認知されていませんでした。いわば縁の下の力持ちです、僕は勉強のため訪れた新潟の蔵で、糀に加水したものを飲ませていただいたことがあるのですが、お米の甘さがすごく出ていることにびっくりしました。調べてみると、糀から作った甘酒は栄養価も高い。

僕は、日本の発酵食に欠かせない糀の魅力を世間に伝え直さなければならないと思い、おにぎり屋でこっそり甘酒の販売も始めました。凍らせた甘酒のパックは商品としては無骨でしたが、お米の甘さにお客さんがどれだけ驚いてくれるか、観察しながら販売していました。

きちんとプレゼンテーションすれば事業化できそうだなと考えていたちょうどその時に、 新潟に戻って事業を立ち上げて欲しいとオファーがきたんです。会社側は酒粕を使った甘酒をイメージしていましたが、酒粕を使うと甘酒にごくごく微量のアルコールが含まれてしまいます。一方で、米と糀から作った甘酒なら アルコールは一切含まれず誰でも飲むことができる。そうして誕生したのが古町糀製造所です。

後で聞いたところ、NSGグループの創業者が元々神職についていて、以前から甘酒を事業化できないか考えていたそうです。おにぎり屋をやりながら、こっそり甘酒を販売していた僕と偶然、意向が合致したわけです。

「貴方には期待しません」から始まった経営再建。どう信頼を勝ち取ったのか

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