close

はじめての方はご登録ください(無料)

メニュー

BizHint について

カテゴリ

最新情報はニュースレター・SNSで配信中

連載:第19回 経営・SaaSイベントレポート2022

幾度の絶体絶命を乗り越え、国内利用者数No.1*サービスへ。戦略とは“しないことを決める”こと

BizHint 編集部 2022年12月8日(木)掲載
メインビジュアル

2019年には上場を果たすなど、日本の中小企業向けビジネスチャットで圧倒的なシェアを誇る「Chatwork(チャットワーク)」。2021年の売上高は昨年比39%増の33.7億円、コロナ禍においてはさらなる成長を遂げています。しかし、順調に見える事業成長の裏側には、何度も絶体絶命のピンチが訪れていました。今回はChatwork株式会社代表取締役CEOの山本正喜さんに、同社が歩んできた道のりと、大手企業に負けない小さな会社が勝つための戦略について語っていただきました。

メインビジュアル
山本 正喜さん
山本 正喜さん
Chatwork株式会社 代表取締役CEO

電気通信大学情報工学科卒業。大学在学中に兄と共に、EC studio(現Chatwork株式会社)を2000年に創業。以来、CTOとして多数のサービス開発に携わり、Chatworkを開発。2011年3月にクラウド型ビジネスチャット「Chatwork」の提供開始。2018年6月、当社の代表取締役CEOに就任。

今井 達也さん
モデレーター
今井 達也さん
株式会社鶴 代表取締役

1978年生まれ、山口県出身。大学卒業後、SE、出版社の新規事業担当を経て(株)スコラ・コンサルトへ入社。組織改革コンサルタントとして優良上場企業、通信系トップ企業、地方自治体などを担当。2014年株式会社鶴を設立。日本を支えている99.7%の中小企業の組織が輝くことで日本を元気にしたいという信念のもと、組織コンサルティングで得たノウハウをもとに作られたAIシステム「BUSINESS DRIVE組織」のサービスなどで組織づくりを支援している。

* Nielsen NetView 及びNielsen Mobile NetView Customized Report 2022年5月度調べ月次利用者(MAU:Monthly Active User)調査。調査対象はChatwork、Microsoft Teams、Slack、LINE WORKS、Skypeを含む47サービスをChatwork株式会社にて選定。

中小企業に圧倒的なシェアを誇るあのツールの誕生は、意外な経緯だった

今井 達也さん(以下、今井): Chatwork株式会社の始まりは、2000年に兄弟で創業された株式会社EC studio。お兄さんが社長、弟の山本さんはエンジニアとしてプロダクトサイドを担当していたそうです。事業は順調な成長を続け、2010年に社運を賭けたアクセス解析ツール「WebAnalyst」をリリースしたものの、ビジネス化に失敗して億単位の赤字となってしまったそうですね。

山本 正喜さん(以下、山本): 創業から10年、ビジネスは全てうまくいっていたし、社内のエースメンバーを集めて1年半をかけた本気のプロダクトだったので、絶対にうまくいくと思っていたのですが…。

無料で使いはじめてもらい、途中から有料化するフリーミアムのビジネスモデルを採用したものの、収益化につながらなかったんです。収益化はできないもののツールの人気は高かったので、撤退の決断がなかなかできず…。結果的に、 サーバーや開発、マーケティングの費用まで含めると3、4億の赤字 でした。当時は2~30人の会社だったので、かなりの致命傷です。

その後、当社は研修やDXコンサルティングの領域へと業務転換しました。しかしそうなると、開発の仕事がなくなってしまうんですよね。当時CTOだった私としては、エンジニアの仕事を作らなくてはいけないし、「Web Analyst」の失敗も取り返したかった。そこで中小企業のDX化や業務効率化の文脈なら開発が認められるだろうと思い、プロダクトについて考えました。

目をつけたのは、社内で一番使われていたツールであるSkypeのチャット機能。社内でチャットを運用している経験から、プロダクトの試行錯誤が圧倒的に少なくて済むためスピーディーにリリースできるだろう。この企画を今やるなら、世界的にも先行できるのではないかと考えました。

しかし、役員全員から猛反対。必死で社長を説得して「社内ツールとして開発するなら」と、しぶしぶOKをもらいました。そしてSkypeチャットを自社開発ツールに置き換えて定着させることを目標に、社内副業として1人ではじめました。 これが「Chatwork」のはじまりです。

小さな企業が勝つための方法

今井: 社内ツールが事業化につながったきっかけは何だったんでしょうか?

山本: Ustreamという動画共有サービスで、当社が活用しているツールとして紹介したことがきっかけです。コメント欄がものすごく盛り上がり、それを見た社長が「これはいける」と判断し、事業化のOKが出ました。そして2011年3月、ビジネスチャットツール「Chatwork」をリリース。

当時はまだ「ビジネスチャット」という言葉すら認知されていないような時代でした。そのため最初は評価も低く、1~2年は競合がほぼゼロだったんです。リリースしたら真似する企業が出てくると考え全力で走っていたのですが、後ろを振り返っても誰も追いかけてこない。 「これはブルーオーシャンなのか、間違ったところを全力で走っているのか、どっちなんだ…」 と不安になったくらいです(笑)。グローバルで見てもビジネスチャットはなくて、当社が世界初ぐらいだったのではないでしょうか。

しかし、同年の6月にLINEがリリースされ、携帯メールがあっという間に置き換わり、2013年頃には仕事のやり取りをLINEで行う人が増えてきました。一方でビジネスで使うにはセキュリティや情報漏洩の問題もあり、2014年頃に「ビジネス向けのチャットツール」のブームが訪れたわけです。

ビジネスチャットの認知が上がると「Chatwork」の契約数も増えますが、競合も爆増します。 「Chatwork」のリリースは早すぎましたが、後から来たブームに先行できたのは良かった と考えています。

今井: ブームに乗ることが大事なんですね。

山本: それは違います。

この記事についてコメント({{ getTotalCommentCount() }})

close

{{selectedUser.name}}

{{selectedUser.company_name}} {{selectedUser.position_name}}

{{selectedUser.comment}}

{{selectedUser.introduction}}