連載:第32回 成長企業 社長が考えていること
「稼ぐ会社は○○をしない!」V字回復&利益率25%の企業が語るシンプルな思考法
自動車部品の製造という「ルーティン作業」に明け暮れていた日々を打破すべく、シェア8割だった顧客の依頼を断り、新たな仕事の獲得に奔走したのがHILLTOP株式会社相談役の山本昌作さん。やがて職人技をデータベース化し、工場の24時間無人稼働を可能にした「HILLTOP System」を確立。かつて同じものを大量生産していた同社は、「量産ものはやらない」「ルーティン作業はやらない」「職人はつくらない」というビジネスモデルを掲げた、新たな鉄工所に生まれ変わりました。収益構造も改善し、一般的な鉄工所の利益率が3~8%と言われているなか20~25%という数値を叩き出します。毎年、見学に訪れる人は3,000人以上。そんな注目の鉄工所が出来上がった背景にあったのは、山本相談役の「楽しくなければ、仕事じゃない」というモットーでした。今回は山本さんに、職人の技を定量化した具体的な方法、企業が「ジリ貧」にならないために経営者がやるべきこと、そして製造業の未来を見据えた今後のビジョンについて詳しく伺いました。
HILLTOP株式会社
相談役 山本 昌作(やまもと しょうさく)さん
1954年島根県生まれ。立命館大学経営学部を卒業後、家業である山本精工に入社。ルーティンワークからの脱却を目指し、工場の24時間無人稼働を可能にした「HILLLTOP System」を開発。少品種大量生産から、多品種少量・単品生産へシフト。2014年HILLTOP株式会社へ社名変更。2022年6月より現職。モットーは「楽しくなければ仕事じゃない」。著書に「ディズニー、NASAが認めた 遊ぶ鉄工所(ダイヤモンド社)」がある。
シェア8割のルーティン業務を断り、技術力向上と顧客獲得のため赤字覚悟のチャレンジ
山本昌作さん(以下、山本): 当社は1961年に父が「山本鉄工所」として創業しました。当時はメーカーの孫請で同じ部品を大量生産していましたが、現在はITを駆使して受注から納品までを自動化し、スピーディーで高品質な部品加工を実現しています。2014年に社名をHILLTOP株式会社に変更。現在は京都だけでなく、アメリカにも工場やオフィスを構えています。アメリカ法人ではディズニーやNASAからも部品の発注をいただいており、日米合わせた顧客数は4,000社以上。一般的な鉄工所の利益率が3~8%と言われているところ、当社は20~25%をキープしています。
――まず、山本さんが事業承継された経緯を教えてください。
山本: 僕は大学を卒業後、大手商社への内定が決まっていましたが、母親に懇願されて家業に戻ることを決めました。当時は従業員数が5名程度で、主に大手自動車メーカーの孫請として部品を作っていました。
毎日毎日、全身油まみれになりながら同じ作業の繰り返し。ある時先輩に「同じことを繰り返していて、しんどくなりませんか?」と聞くと「バカか。仕事なんだからしんどいのは当たり前だ。」と言われました。時間が経つのがあまりに遅く感じ、時計が壊れていると勘違いしていたほどです。とにかく「頭を無にしろ。何も考えず、手だけ動かせ」と言われる日々でした。
そのときに「人は機械じゃない。僕は人にしかできない仕事、つまりもっと創造的な仕事をすべきだ」と強く思いました。また、人生の大半の時間を仕事に費やしているのに、仕事がしんどいなんてもったいない。「楽しくなければ、仕事じゃない」そう思っていましたが、ルーティン作業ではそのどちらも実現できない……。
その上、業務自体も孫請けで、毎年「今年は5%」「今年は8%」とどんどんコストカットされていたんです。「このまま続けていても、ジリ貧になってしまう」。悶々とした思いが積もって、思い切って父に「この仕事を断ろう」と伝えました。
とはいえ、売上シェアの8割ほどを占めていた業務です。父は「断った後、どうするんだ?」と渋りました。それでも「大丈夫、僕が必ずお客さんをつかまえてくるから!」と説得し、その仕事から手を引きました。
――実際に、新しい仕事は獲得できたのでしょうか?
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