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連載:第12回 新規事業の作り方

「この事業に命をかけられるのは日本で僕だけ」。大手の競合が相次いで撤退、家族からも反対されても続けた社長の信念

BizHint 編集部 2022年11月29日(火)掲載
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株式会社Casie 代表取締役CEO 藤本 翔さん/1983年大阪生まれ。画家の父が苦労した経験から、才能ある画家が経済的理由で創作活動を断念するアート業界に疑問を感じる。総合商社、コンサルティング会社勤務を経て、2017年に株式会社Casieを創業。2019年にオンラインで気軽に絵が借りられるサブスクリプションサービス「Casie」を開始する。

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満を持して公開したはずが…バグを疑うほど静かだった注文ページ

――株式会社Casieの事業内容について教えてください。

藤本翔さん(以下藤本): Casieはオンラインで1点モノの原画をレンタルできるサブスクリプションサービスです。おかげさまで現在の会員数は約6,000名。

提供しているプランは絵画のサイズによって、月額2,200円、3,300円、5,830円の3種類があります。絵画は毎月別の作品に交換可能で、ユーザーは約13,000点の中から絵画を選ぶことができます。レンタルできる絵画は今後も増やしていく予定で、来年は30,000作品を目指しています。

また、レンタルされた作品数に応じてアーティストと弊社で利益を分配する仕組みができており、アーティストにとっても収入が安定して得られるメリットがあります。

取り扱い絵画は約13,000点。ユーザーは好きな絵を借りられる

――創業からサービス開始までに2年間の空白がありますね。

藤本: 2017年に創業。2019年サービス開始。2年間ひたすら絵の収集に時間をかけました。当然、売上は2年間ゼロです。

2019年の1月14日にホームページを公開しました。正直、すぐに1,000件くらい注文が集まるかと思っていたのですが、その日注文は1件もありませんでした。これはおかしい、バグかと思ってエンジニアにも確認したのですが、ホームページは正常に動いていました。虚しかったですね。

そして、その夜に初めて注文してくれたのが、私の母でした。その後は、知り合いのお店、飲食店、病院に直接営業を行い、1件1件ユーザーを増やしました。個人経営の病院に出向き受診しながら営業をしたこともあります。

サブスクリプションタイプの事業はマネタイズできるまでに非常に時間がかかります。Casieの客単価が3,000円~4,000円くらいですから、新たに100人のお客様が増えても売り上げは30万か40万にしかなりません。当初は、月商100万円を越えることすらままなりませんでした。

良いサービスができるまで、拡大は絶対にしないと決めていた

―2年間売り上げがゼロの状態で社内の意見はどのようなものがありましたか?

藤本: 資本金や借入金が目減りしていく中、銀行も妻も撤退を進めましたが、共同創業者の清水(宏輔)だけが唯一賛同してくれました。「翔さんがやることをフルコミットで支えると決めた。翔さんが折れたら自分もやることがなくなるから折れたらだめやで」と常に励まし続けてくれました。彼がいなければ続けられなかったかもしれません。

もともと、Casieは他のベンチャー企業のようにJカーブの成長曲線は考えていません。中堅~老舗の優良企業のように前月対比110%くらいで成長する積み上げ型のビジネスモデルを創業期から意識していました。

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