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2019年1月9日(水)更新

解雇

ドラマのワンシーンでは労働者をいとも簡単に解雇する場面がありますが、実際に使用者が従業員を解雇するためには相当の理由や手続きが必要です。解雇に伴う労働基準法違反や労使トラブルの発生を回避するため、解雇の種類や解雇が認められる例、解雇予告・解雇通知の手順等、会社側が知っておくべきポイントを解説します。

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解雇とは

労働者が自らの意思で退職をする権利があるのと同様に、会社側もまた、労働者に対し、一方的に労働契約の解約を言い渡すことができます。映画やドラマで、社長が「君はクビだ」等と宣告するシーンがありますが、まさしくこの「クビ」が解雇を意味します。

解雇の意味

「解雇」であれ一般的な「退職」であれ、結果的に「退社」の扱いとなるものの、両者は同義ではありません。「どうせ辞めるなら、退職も解雇も同じではないか」と考える使用者もいるかもしれませんが、通常の退職と解雇とでは、労使双方にとって様々な違いがあります。

退職事由として解雇扱いとなれば、労働者側にとっては「経歴にキズがつく」「退職金が減額または不支給となる場合がある」ことが想定され、一方で会社側にとっては「労使トラブルの火種となる」「雇用関係助成金の支給に影響が生じる」等のリスクを挙げることができます。

このように、労使双方の今後に爪痕を残す可能性のある解雇は、“どうしてもそうせざるを得ない場合の最終手段”として位置付けるのが望ましいと言えます。

解雇の理由

解雇は、労働者側に重大な規律違反や非行があった場合や、会社の経営悪化等によりやむを得ず人員整理を行う場合でも、労働契約法16条に「客観的かつ合理的理由があり、なおかつ社会通念上相当と認められなければ、権利濫用として無効とする」旨が規定されています。

つまり、会社側には解雇権があるとはいえ、いつでも自由に労働者を解雇できるわけではなく、必ず労働基準法や社内規程の枠組みの中で適切に行われる制度でなければなりません。

万が一、解雇について客観的合理的理由が不十分と判断される余地がある場合、労働者は退社後に、労働組合を通して解雇撤回を求める団体交渉を申し入れてくる可能性があります。さらに、交渉によっても解決が難しい場合には、労働審判や訴訟に発展することがあります。事態の悪化を避けるためにも、解雇の妥当性への判断や手続きについて、会社側は慎重に慎重を重ねた対応を心がけるべきであると言えます。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov:労働契約法
【参考】裁判所:労働審判制度について

退職勧奨との違い

前述の通り、労働契約の一方的な解除となる解雇は、労使双方にとってメリットはありません。会社が一方的に労働契約を終了させる解雇の場合、労使関係にわだかまりが残るケースが極めて多く、ともすれば労働者が退社した後にまでトラブルが継続してしまうリスクを伴います。また、労働者にとっても、解雇の事実がその後の職業生活に暗雲を落とすことは明らかです。

そこで、実務上、解雇に先立ち行われるのが「退職勧奨」です。退職勧奨とは、会社側が促すことにより、労働者に自らの意思で退職を決断させることです。たとえ労働者の責めに帰すべき何らかの事由があって退社をさせる場合にも、会社としては極力穏便な方向で手続きを進める目的で、解雇ではなくまず退職勧奨を選択するのが一般的です。その際、当該労働者が退職すべき理由を十分に説明し、理解してもらうことが大切です。

しかしながら、退職勧奨に強制力はありません。労働者が退職に応じなければ、必要に応じて解雇の手続きに進むことになります。

【関連】退職勧奨は会社都合?解雇との違いや失業保険についてもご紹介/BizHint HR

解雇の種類

ひと口に「解雇」と言っても、企業秩序に違反した労働者に対する制裁として行われる「懲戒解雇」、人員整理が目的の「整理解雇」、前者以外の「普通解雇」と、大きく分けて3種の形態があります。それぞれの定義やどのようなときに認められるかを、次項以降、ケースごとに解説します。

普通解雇とは

普通解雇とは、懲戒解雇や整理解雇以外の解雇全般を指します。

通常、労働者側に起因する何らかの理由により労働契約の継続が困難となった際、会社側が解雇を回避するための努力をしたにも関わらず状況が好転しなかった場合に、普通解雇の手続きを進めることになります。

解雇が有効となるケース

具体的にどのようなケースが普通解雇に該当するかは、就業規則内に定められる「解雇事由」に依ります。万が一、社内規程に解雇事由の定めがない場合、普通解雇を行うための根拠が不十分となり、仮に解雇を強行したとしても、後々の労使トラブルの引き金ともなり得るでしょう。もっとも、労働基準法上「解雇の事由」は就業規則及び労働契約書上の必要記載事項であり、解雇に相当する事例については具体的に記載しておかなければならないことになっています。

ただし前述した通り、規定さえあればどのようなときにも解雇が有効になるかと言えば、そうではありません。労働者を解雇する場合には、必ず客観的合理的理由が求められます。加えて、法令で解雇が禁止されている期間については、たとえ解雇事由に該当したとしても解雇することができません。

以下に、ごく一般的な普通解雇の事由の例をご紹介しておきましょう。

1.心身の疾患による就労不可能

労働者の健康上の理由により、長期間、当該労働者からの労務の提供を受けられなくなった場合、会社側に解雇が認められることがあります。ただし、この場合、会社側は直ちに解雇できるわけではなく、軽易な業務への転換や休職制度を活用した療養支援等、解雇を回避するための対策を講じる必要があります。

なお、心身疾患が業務に起因するものである場合、当該疾患の療養のための休業期間とその後30日間は解雇することができません。同様に、産前産後休業期間中とその後30日間についても、解雇制限期間となります。

2.試用期間後の解雇

本採用に先立ち、雇入れ当初の一定期間を試用期間と定め、その間に本採用の可否を見極める形式は、日本企業におけるごく一般的な採用スタイルであると言えましょう。この場合、試用期間満了時に不採用と判断することに違法性はありません。ただし、試用期間満了を以て雇い止めをする際には、必ず労働者の勤務態度不良や業務への適格性欠如等、相当の理由があることが求められます。

また、試用期間が14日を超える場合、後述する解雇予告の対象となり、解雇予告手当の支払いが必要になることがある点に注意が必要です。

3.成績不振・ノルマ未達成

数多くの社員を雇い入れていれば、中には、自己申告の経歴やスキルと入社後の働きぶりに大きなギャップのある労働者に出会うことがあります。その差異が極めて著しいものであれば、会社は勤務成績の不良を理由に労働者を解雇することができます。

とはいえ、会社が期待する成績を出せないからといって、すぐに解雇の手続きを進めることはできません。会社は、労働者に反省・努力の機会を与え、能力を向上させるために必要な指導を十分に行わなければなりません。それでもなお改善が見込めず、なおかつ業務遂行に支障をきたす可能性がある場合に初めて、解雇に踏み切ることができます。

4.契約書で明示されたスキルに欠けている

前項に挙げた「成績不振・ノルマ未達成」による解雇と類似しますが、特に契約上、職務遂行に必要な能力や経験が明示されており、それを有していることを前提とした労働契約が締結されている場合には、使用者側は労働者に対し「労働契約の債務不履行」を理由とする解雇が認められる可能性が高いと言えます。

5.度を越した宗教活動

労働基準法上、「労働者の信条」を理由とする解雇は禁止されています。ただし、労働者による過度な布教活動が職場環境に著しい悪影響を及ぼした場合や、それによって業務遂行が困難となった場合に、解雇が認められることがあります。

懲戒解雇とは

懲戒解雇とは、社内のルールに著しく違反したり、身勝手かつ悪質な行動によって職場秩序を乱したり、犯罪行為に手を染めたりした従業員に対する罰則として、会社が一方的に雇用契約を打ち切ることです。会社が労働者に対して科す懲戒処分のうち、最も重い罰則として位置づけられます。

どのようなケースが懲戒解雇にあたるかは、就業規則や懲戒規程に具体的な事由が明記されている必要があります。万が一何の規定もない場合には、実務上、懲戒解雇として扱うことが難しく、普通解雇としての手続きを進めることになります。

【関連】懲戒処分とは?その意味や種類、就業規則の規定内容や実施手順まで徹底解説 / BizHint HR

解雇が有効となるケース

しかしながら、普通解雇同様、具体的事由さえ規定すればどのような場合にも懲戒解雇が認められるのかといえば、やはりそうではありません。労働者に対し極めて重い処分を科すにあたり、客観的かつ社会的にみて相当の理由があるかどうかが判断の基準となります。

加えて、懲戒解雇が適正な手順で行われていることも必要です。具体的には、会社は事実関係の適正把握に努めると共に、必ず「本人の弁明機会」を設けなければなりません。社内の懲罰委員会にてあらゆる要素が総合的かつ慎重に審議し、その後に量刑を決定します。

労働者のどのような問題行為が、どの程度の懲戒措置の対象となるかは、各社で判断が分かれるところです。財団法人労務行政研究所が実施した「懲戒制度に関する実態調査」では、30のモデルケースについての対応がまとめられています。

【参考】財団法人労務行政研究所:懲戒制度に関する実態調査

以下は、一般的に懲戒解雇事由として認められる一例です。

1.法律に抵触する行為

どのような違法行為が懲戒解雇事由にあたるかは、会社への背信行為の深刻さや悪質性に依ります。例えば、会社の金品を横領したり、他の従業員や顧客等を死傷させたりした場合等、事業場内において軽微とは言い難い犯罪が行われたときに、懲戒解雇事由に該当します。

2.正当な理由なき無断欠勤

長期の無断欠勤が続いた場合で、労働者に対し再三の注意をしたにもかかわらず状況が改善されない場合、懲戒解雇として扱うことができます。

「長期の無断欠勤」の目安として、厚生労働省の通達では「2週間(14日間)」とされています。その根拠は、民法627条第1項に規定される「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」の条文にあります。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov:民法

3.故意または重大な過失

労働者の行為によって会社が重大な損害を被った場合、その行為が懲戒解雇事由に該当することがあります。具体的には、故意に機密情報を漏洩したり、災害を発生させたり、企業への信用を失墜させる行為をしたりする例が挙げられます。

ただし、こうした事例が懲戒解雇の事由として認められるか否かは、会社側が事故防止への適切な体制を整えていたかどうか、管理体制に問題がなかったか等を十分に考慮した上で、慎重に判断されなければなりません。

4.経歴詐称

採用選考時の経歴詐称について、仮に本当のことが告げられていたとすれば採用に至らなかった、もしくは現行の労働条件での雇い入れをしていなかった等の重大性があったとする場合、判例では「経歴詐称」を理由した懲戒解雇が認められています。

例えば、学歴や職歴の詐称により、当該労働者が業務上必要な知識・経験を有していなかった場合、企業運営に支障をきたすことにもなりかねません。また、過去の犯罪歴を申告しないことは、そもそも労使間の信義則違反であることに加え、場合によっては会社秩序を混乱させ、企業イメージを傷つける原因となります。

ただし、求人の段階で学歴や職歴等を不問としていた場合には、その部分の情報に詐称があったとしても、懲戒解雇事由に該当する重大な偽りと判断することはできません。

5.職場の風紀を乱す行為

特定の労働者による職場規律を乱す行為のために、他の従業員に悪影響を及ぼす、もしくは業務に支障をきたすことになれば、当然、懲戒解雇事由に該当します。代表的な例で言えば、パワハラやセクハラ等の迷惑行為ですが、その他にも仕事中にたびたび酒気を帯びていたり、社内で賭博行為を行っていたりする例があります。

ただし、これらの事由による懲戒解雇が可能となるのは、会社側からの再三の指導にもかかわらず、なお常態的に行為が行われる場合に限ります。労働者による迷惑行為等が正当な懲戒解雇事由として認められるために、会社側は労働者に対し、いつ、どのような指導をしたかを記録しておくと良いでしょう。

【関連】【社労士監修】ハラスメントの意味とは?定義や防止策も交えご紹介 / BizHint HR

6.度重なる遅刻・欠勤

常習的に遅刻や欠勤をする労働者について、会社側が都度指導を行っているにも関わらず状況に改善が見られない場合、解雇の手続きを進めることができます。

ただし、勤怠の状況を以て懲戒解雇とするためには、第一に「会社側が適切な勤怠管理を行っていること」に加え、その者の遅刻・欠勤によって職場秩序が乱されたり、業務に支障が出たりしていることが明らかでなければなりません。

7.無断の副業

最近では副業を容認する例が増えてきていますが、社内規程に副業禁止を盛り込む企業は未だ多く見られます。

副業が禁止されているにもかかわらず無断で行っている場合、その労働者は当然処分の対象となりますが、特に「労働時間が長時間化することで本来の業務に支障をきたしている」「本業の機密事項を他社に漏洩している」「競合他社で勤務する等、会社の利益と相反する行為をしている」等に該当する例では懲戒解雇が認められることがあります。

副業を理由とする解雇を検討する上では、従業員の副業について会社としてのスタンスを明らかにした上で、関連する規定を整備することが大前提となります。

【関連】【事例あり】副業を解禁した場合のメリットとデメリットとは / BizHint HR

諭旨解雇とは

本項では、あらゆる懲戒解雇事由について、具体的な事例を交えて解説しました。ただし、実務上、懲戒解雇事由に該当する場合であっても、労働者の功績や将来を鑑みて「諭旨解雇」として扱う場合があります。

諭旨解雇については別記事にて解説しているので、本稿と併せてご一読ください。

【関連】【社労士執筆】諭旨解雇の意味は?退職金の有無、普通解雇・懲戒解雇との違い/ BizHint HR

就業規則による規制

すでに触れたとおり、懲戒解雇の手続きに進むためには、就業規則や懲戒規程にその事由が明記されていなければなりません。懲戒解雇事由について何も規定がない場合には、たとえ会社に重大な損害を及ぼしたとしても、普通解雇として処理することになります。

加えて、就業規則に法定を上回る解雇制限の規定を盛り込んでいた場合、就業規則の定めが適用されます。この場合、仮に懲戒解雇に該当する従業員がいたとしても、その者が会社の定める解雇制限の対象である以上、解雇することはできません。

懲戒解雇は、必ず就業規則や懲戒規程を根拠として行われなければなりません。会社側にとっては、どのような定めを置くのが適切なのか、あらゆるケースを想定した上での規程の作り込みが重要となります。

【関連】 就業規則とは?作成~届出までの手順・ポイントをご紹介/ BizHint HR

整理解雇とは

「解雇」というと、一般的には、労働者側の問題によって会社を辞めさせられるケースが頭に浮かぶかと思います。しかしながら、こうしたイメージとは別に、会社都合による労働契約の解除を意味する「整理解雇」という種類の解雇もあります。

解雇が有効となる要素

どのような場合に整理解雇の必要が生じるかと言えば、具体的には「経営不振によりやむを得ず人員削減をしなければならないとき」です。

ただし、たとえ事業存続の危機に陥ったとしても、会社側は直ちに労働者の解雇を行えるわけではありません。整理解雇の判断基準について、下記に挙げる要件を満たすかどうかがカギとなります。

1.人員削減

前述の通り、整理解雇とは人員削減のための手段ですが、使用者側の独断で勝手に行えるものではありません。

整理解雇が認められるためには、会社の経営悪化が現状どんな状況であるのか、そのためにどの程度の人員を削減する必要があるのかを、数字から客観的に判断できることが求められます。合理的根拠があって初めて、会社は整理解雇の手続きを進めることができるのです。

2.解雇回避努力

会社を立て直すための手段として、整理解雇はあくまで最終手段です。人員削減に乗り出す前に、会社は解雇回避のために考えられるあらゆる努力をしなければなりません。

具体的には、まず、役員報酬の減額や希望退職者の募集、一時帰休、配置転換等を検討します。それでもなお厳しい状況が継続する段階になって初めて、整理解雇を視野に入れることができます。

3.適切な基準による解雇者の選定

解雇を実施するにあたり、対象者の選定は、極めて慎重に行われる必要があります。事業主や人事担当者の独断ではなく、合理的かつ客観的な基準に基づいて、公正に判断されなければなりません。勤務成績や会社への貢献度、担当業務等の直接的に業務に関わる事項だけではなく、年齢や家族構成等、労働者の身上についても加味した上で、総合的に検討していきます。

もちろん、選定の結果、解雇者に該当することとなった労働者に対しては、その理由や必要性を十分に説明し、労働者側の希望があれば交渉や協議に応じなければなりません。

4.整理解雇の妥当性

整理解雇を行う際には、解雇そのものや手続きに関わる妥当性について、常に配慮する必要があります。大前提は、本項で挙げた「人員削減の必要性が客観的に判断できること」「解雇回避努力が履行されていること」「適切な基準によって対象者が選定されていること」の基準を満たすことですが、その他にも下記に挙げる手順を欠かすことはできません。

  • 30日以上前の解雇予告、もしくは解雇予告手当の支払い
  • 解雇者への十分な説明

繰り返しになりますが、会社都合の整理解雇を実施するためには、必ず客観的かつ合理的に考えて「妥当」と判断できなければなりません。要件が揃わなければ、整理解雇は無効の判断を下されることになります。一つひとつの手順を、慎重に進めましょう。

解雇を行う場合(解雇予告・解雇通知)

解雇を行う場合、原則として労働基準法の定めに従って「解雇予告」を行う必要があります。テレビ等では、上司からクビを宣告されたら即時に解雇が成立するシーンを散見しますが、実務では、適正な手順を経なければ解雇無効となってしまいますのでご注意ください。

解雇予告とは

労働基準法20条によると、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」と定められています。

つまり、労働者を解雇する場合には予めの告知が必要であり、次章にて解説する特別な事情がない限り、即時解雇は認められません。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov:労働基準法

解雇予告期間とは

解雇予告期間は、解雇を予告した日の翌日から解雇前日までの間、少なくとも「30日」が確保されている必要があります。解雇を予告した日について、郵送で行う場合には、使用者からの発送日ではなく「相手側に通知が到達した日」となるので注意が必要です。

万が一、解雇予告期間が30日を下回っていた場合には、不足日数分について、後述する「解雇予告手当」を支払わなければなりません。

月給制・年俸制の場合

月給制や年俸制等、期間によって報酬が定められている場合には、民法627条の定めに従い、雇用契約の解約申入れは、次期以後について、当期の前半までにすることとなっています。

例えば、月給制の労働者を6月いっぱいで解雇する場合、遅くとも5月前半までに解雇予告をする必要があります。また、同条によると「六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない」とされているため、年俸制の労働者に対しては解雇予定日の3ヵ月前までに予告を行わなければなりません。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov:民法

解雇予告手当が必要な場合

解雇予告手当とは、解雇予告期間を確保する代わりに支払われる手当を指します。労働者を解雇する場合には、原則「30日間」の解雇予告期間を確保できるように解雇に関わる予告を行うことになりますが、何らかの事情により解雇予告期間の確保が困難である場合、労働基準法20条では「一日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる」と定められています。

つまり、労働者を即時に解雇する場合には30日分、使用者が解雇予定日の20日前に解雇を予告した場合には10日分の平均賃金を解雇予告手当として支払うことになります。

【出典】東京労働局:しっかりマスター労働基準法~解雇編~

解雇予告手当の額は、下記のいずれかの計算式で算出した額のうち、高い方となります。

  • 過去3か月間の賃金の合計÷過去3か月間の暦日数
  • (過去3か月間の賃金の合計÷過去3か月間の労働日数)×0.6

ただし、解雇予告手当を支払った場合でも、解雇を成立させるためには、解雇が認められるだけの客観的かつ合理的理由が必要となります。手当さえ支払えば解雇が成立する、というわけではないので、注意が必要です。

【参考】電子政府の総合窓口e-Gov:労働基準法

解雇予告通知書とは

労働者に対し解雇を予告する際、使用者は「解雇予告通知書」を作成し、書面によって本人に通知すると良いでしょう。

解雇予告自体は口頭で行われた場合も有効とされていますが、労働者から求めがあった場合には、書面交付の義務が生じます。もっとも、後々の労使トラブルを回避するためには、解雇日や解雇理由を文書にまとめ、その内容を労使で正しく共有しておくことが肝心です。

解雇時の退職金支払い

解雇に伴う退職金支払いについては、しばしば労使トラブルの原因となる事項です。まずは、御社の退職金規程でどのような取決めがされているかを確認しましょう。本来、退職金は退職事由によってではなく、労働者の長年の功労に報いる目的で支払われるものです。よって、たとえ悪質性の高い行為が行われたとしても、安易に「解雇=退職金不支給」と結びつけることは妥当ではありません。原則、解雇対象者にも退職金規程に則って支払われる必要があります。

ただし例外として、規程に「懲戒解雇に伴う不支給条項、減額条項」が定められていれば、労働者の行為の悪質性に応じた不支給・減額が認められることがあります。ただしこの場合、退職金不支給・減額として扱われるだけの妥当性が求められます。

ちなみに、財団法人労務行政研究所が実施した「懲戒制度に関する実態調査」では、解雇における退職金の支給状況について、諭旨解雇では「全額支給する(38.8%)」、懲戒解雇では「全額支給しない(69.3%)」が最も多いことが明らかになっています。

【出典】財団法人労務行政研究所:懲戒制度に関する実態調査

【関連】退職金制度とは?種類や相場、設計方法や導入までの流れをご紹介 / BizHint HR

解雇後の失業保険

労働者は、解雇された後にももちろん、雇用保険の基本手当(一般的に「失業保険」として知られる給付)を受給できます。基本手当の給付日数や額は、「退職理由」に応じて下記の通り異なります。

自己都合退職扱い

諭旨解雇や、労働者の悪質性が原因で懲戒解雇に該当する場合、雇用保険の基本手当は、通常通り、7日間の待機期間と3ヵ月間の給付制限を経て、次表の通り支給されます。

【出典】ハローワークインターネットサービス:失業された方からのご質問(失業後の生活に関する情報)

会社都合退職扱い

整理解雇等、会社の経営悪化により人員整理の目的で解雇される場合、解雇対象者は特定受給資格者として扱われ、7日間の待機期間満了後から、基本手当の受給期間が開始されます。

【出典】ハローワークインターネットサービス:失業された方からのご質問(失業後の生活に関する情報)

退職理由の区分

退職者がどのような理由で退職したかについては、「離職票-2」の「離職理由コード」によって区別されています。ここに記載されるコードによって、雇用保険の基本手当の支給日数と額が判断されることになり、「離職理由とコードの不一致」はしばしば労使トラブルの原因ともなります。

企業の担当者は、下記を参照の上、適正に離職理由欄を記入できるよう注意して離職票を作成する必要があります。

【参考】ハローワーク:記入例:雇用保険被保険者離職票

【参考】厚生労働省:離職票-2の離職理由欄等(⑦欄及び⑰欄)の記載方法について

即時解雇が可能な場合とは

従業員を解雇する際、原則として事前の解雇予告、もしくは解雇予告手当の支払いが必要であることは、すでにご紹介した通りです。ただし、例外的に、これらの手続きを経ない即時解雇が有効となる場合もあります。

監督署の認定を受けた場合

即時解雇が有効になる条件として、「労働基準監督署から解雇予告除外認定を受けること」が挙げられます。認定は、使用者からの申請を受けて労働基準監督署長によってなされますが、大きく分けて下記のいずれかのケースに該当する場合に認められます。

  • 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
  • 労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合

天災事変等

大震災、もしくはそれと同程度に不可抗力かつ突発的な事由により、使用者側が必要な措置を講じてもなお事業継続が困難な状況である場合、監督署に解雇予告除外認定を受けることで、即時解雇が認められます。

具体的には、事業主の故意又は重大な過失によらず事業場が火災によって焼失した場合、震災によって事業場や工場が倒壊した場合等の理由により、事業の継続が不可能と判断されるケースが該当します。

労働者の責に帰すべき理由

例えば、事業場内で窃盗、横領、傷害等の軽微とは言い難い犯罪行為を起こした場合や、度重なる賭博行為やセクハラ行為等によって他の労働者に悪影響を及ぼした場合、重大な経歴詐称によって入社し業務遂行を滞らせた場合等、労働者の責めに帰すべき事由に基づき解雇するとき、監督署から解雇予告除外認定を受けることで、解雇予告や予告手当の支払いをせずに即時解雇することができます。

監督署は、使用者の申請に基づき、従業員本人やその他の関係者からヒアリングをする等して状況を判断し、解雇予告除外認定の妥当性を判断します。

その他の対象者

即時解雇は、労働基準監督署による認定を受ける場合だけではなく、労働基準法上、下記に該当する従業員についても適用されます。

ただし、いずれの要件に該当する労働者であっても、解雇されるべき客観的かつ合理的理由がなければ、即時解雇の対象とすることはできません。

日雇い労働者

継続的に雇用されておらず、日々雇い入れられている労働者を指します。ただし、名目上「日雇い」とされていても、実態として1ヵ月を超えて引き続き雇用されている労働者については、事前の解雇予告もしくは解雇予告手当の支払いが必要となります。

2ヵ月以内の期間雇用者

臨時雇用として、契約期間を2ヵ月以内に定めて雇い入れられている労働者を指します。ただし、当初の契約期間を超えて引き続き雇用している場合、即時解雇の対象とすることはできません。

4ヵ月以内の季節的業務従事者

本要件については「季節的業務」に該当するか否かの判断に迷うところですが、実務上「その業務が季節、天候その他自然現象の影響によって、物理的に一定の時季にしか従事できないかどうか」で判断されます。

具体的には、スキー場や海の家での業務や、農作物の収穫作業等をイメージしていただくと分かりやすいでしょう。基準としては、単なる繁忙期であることのみでは足りず、季節や天候による自然現象に影響を受ける業務であることが求められます。

試用期間中の労働者

しばしば「試用期間中であればいつでも辞めさせることができる」と勘違いされがちですが、たとえ試用期間中であっても、14日を超えて雇用されている場合には、労働基準法上、解雇予告もしくは解雇予告手当の支払い対象となります。

まとめ

  • 「解雇」とは、会社側からの一方的な労働契約の解約を意味します。解雇の実施によって労使双方に様々なリスクが想定されることから、“どうしてもそうせざるを得ない場合の最終手段”と考えておくべきです。
  • 解雇には、「懲戒解雇」「整理解雇」「普通解雇」の3種類があります。いずれの場合にも、解雇に至るだけの客観的合理的理由がある場合にのみ、適正な手続きを経ることによって認められます。
  • どのような場合に労働者を解雇することがあるかは、就業規則や労働契約書上、具体的な事由が明記されている必要があります。規定がない場合、労働者の責めに帰すべき事由があっても、解雇無効と判断されることがあります。
  • 労働者を解雇する場合、少なくとも30日前までに解雇予告をしなければなりません。何らかの事情により30日前までの解雇予告が困難な場合、30日に不足する日数分の解雇予告手当を支払う必要があります。
  • 労働基準監督署から解雇予告除外認定を受けた場合、又は解雇予告の対象とならない労働者を解雇する場合、例外的に事前の解雇予告や解雇予告手当を支払いをすることなく、即時解雇が認められる場合があります。ただし、この場合にも、解雇されるべき客観的かつ合理的理由がなければ、即時解雇の対象とすることはできません。

<執筆者>
丸山博美 社会保険労務士(HM人事労務コンサルティング代表)

津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。一般企業(教育系)勤務時代、職場の労働環境、待遇に疑問を持ち、社会保険労務士を志す。2014年1月に社労士事務所「HM人事労務コンサルティング」を設立 。起業したての小さな会社サポートを得意とする。社労士業の傍ら、cotoba-design(屋号)名義でフリーライターとしても活動中。


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