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2018年6月23日(土)更新

人事評価

「人事評価」とは、社員の業務の遂行度や業務への取り組み姿勢、能力の高さを分析し、判定することを言います。人事評価によって、明確な評価基準で評価ができるように、事前に基準を決めておくことで、毎回の人事評価で迷うことが無い、評価の一貫性を保つことができるというメリットがあります。

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「人事評価」と「人事考課」の違いとは?

人事担当者にとって、『人事評価』『人事考課』は毎期ごとに発生する大きなイベント。円滑に人事評価と人事考課を行うために、覚えておきたい基本の知識と適切な運用をするために留意するポイントを特集する。

会社の規模が大きくなればなるほど『人事評価』と『人事考課』をどう設計し、運用していくのかは経営者にとって重要なテーマである。そもそも『人事評価』はどのような意味を持つのか。人と組織の関係に詳しい小野田孝氏に聞いてみた。

■小野田 孝(おのだ たかし)氏

[現職] 株式会社小野田コミュニケーションデザイン事務所 代表取締役
[生まれ] 1959年 横浜市
[学歴] 横浜国立大学経営学部卒業
[職歴] 1958年4月 株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)入社。21年間に渡り、人材総合サービス事業部門、情報通信ネットワーク事業部門等にて、企業のHRM領域やコミュニケーションエンジニアリング領域の強化を支援。在籍中にエグゼクティブマネジャー、関連会社取締役を歴任。2005年9月に独立。現在は、個々の企業におけるビジョンや戦略を全社で確かに共有するための仕掛け作りや、次世代経営幹部候補者との未来構想セッションの運営を数多く実施

 

「人事評価とはあらかじめ上司と考え、共有しあった業務遂行設計図を当該期間が終了したら『その業務遂行設計図に対してどう活動したのかか』を振り返る行為です。部下の業務の進捗度や期間中に発揮した能力について管理者が判断をするのです。また、全社員に対して人事評価が行われたのちに、『全体集合のなかでの個々のポジション』を確定する行為を人事考課と言います。人事評価は絶対評価として行うもの。人事考課は相対的に行うものなのです。人事考課は、経営資源とポストの分配の基準になるために相対的に行うのです。人事考課の結果、ボーナスの配分や昇給の幅を決めたり、誰が昇進するかを決める。会社は業績に応じてボーナスに回せるお金も決まっていますし、管理職のポスト数も決まっていますからね」

ところで、人事評価を行う前に、作成しておかなければいけないものがある。それが業務遂行設計図である。目標管理シートやMBOシートとも呼ばれる。

業務遂行設計図(MBOシート)の作成から始めよう

「業務遂行設計図は『一定期間内に“何”をすることを通じて、“どのように”経営貢献をするのか』の内容が具体的に書かれた文章シートです。この内容に沿って仕事をするメルことが部下にとっては一番健全な状態。その業務遂行設計図は、会社の中期経営計画に関連して作成されます。会社には経営理念があります。経営理念とは、その会社が成し得たいことを文言にしたものです。その経営理念を実現するために、会社は中期経営計画を3年単位くらいで作ります。中期経営計画はときに見直されますが、会社にとっては事業運営のグランドデザインに位置付けられるものです。そして、その中期経営計画が各部署、個人に因数分解されます。中期経営計画と連関している『あなたがやるべきコト』が一人一人のミッションになるのです」

ただ、“何をするのか”だけでは業務遂行設計図は決まらない。そのやり方が大切である。 「何をするのかは“WHAT”で、どのように“WHAT”を遂行するのかが“HOW”です。“HOW”では部下の強みを発揮させたり、弱みを克服させたりすることを期待します。同時に、革新的に進める、安定的に進める、チームで協業しながら進めるなど、事業の成長度や習熟度によって優先するものが変わってきます。さらに、個人のキャリアデザインを考え、“どのように”仕事を通じて能力を高めていきたいのか、を考慮することも重要です」

キャリアデザインは、女性社員であれば「例えば、出産の回数や期間を考慮しながら、“どのように”仕事をしていきたいのか」を仮説化すること。この“HOW”を業務遂行設計図にどのように盛り込むのか。業務を始める前に部下は上司と十分に検討しなければならないのだ。

「ところで、人事評価には被評価者の年代は関係ありませんが、キャリアデザインは被評価者の年齢が関係してきます。20代の場合はそもそも自分を語る要素が少なく、強みも分からない。自身の能力が見えていません。30代になれば、徐々に『自分の強み』が見えてきますし、弱みも分かってくる。また、それなりに失敗と成功の蓄積もあります。仕事における『will、can、must』が確立してくるのが30代から40代にかけてです。キャリアデザインで『今後自分はどうなりたいか』が分かってくるのです。それを業務遂行設計図では、“HOW”の部分に入れ込んでいきます。50代になると、今度は『残りの人生をどうしよう』とライフデザインも関わってきます。評価・考課に直接関係はありませんが、管理者となる上長はその点も気にかけてあげてください」

キャリアデザインはさまざま。自分自身が“どう”なりたいかかは個人が考えるべきものなのだ。

設計図通りにできたかを問うのが評価

業務遂行設計図を描く上で、注意するポイントがある。小野田氏は「設計図が曖昧だと、のちのちの評価も曖昧になる」と指摘する。

「業務遂行設計図の書き方が漠然としていると、半年から1年後に振り返る時にも漠然としか振り返られなくなります。極端な話ですが、ミッションが『10億円の売り上げを上げる』であったとしましょう。これが“WHAT”です。では、“HOW”をどのように決めてるのか。『とにかく遮二無二、一生懸命頑張る!!』は心がけとしては素晴らしいですが、設計図に書く言葉としては向きません。

10億円の売り上げ目標でも、既存顧客の取引を伸ばすのか、新規顧客を開拓するのか、はたまた関連会社からの売り上げなのか……。それぞれのケースで難易度が違ってくるのです。この難易度が他の社員とのバランスでどの程度の差異があるのかを考慮した上で、“HOW”をしっかりと決めることが大切なのです。プロセスにおいて正当に努力をしたのか、能力はどの程度向上したのか。期間後に明確に分かるような設計をしておかなければなりません」

この業務遂行設計図は、周囲の誰がみても進捗が分かるように具体的に書くべきである。

「評価をする管理者が設計図を作るときに詳細まできっちりと理解していれば、途中の進捗も確認しやすいですね。ですから、目標は可能な限り定量化しておくことがよいでしょう。営業ならば売上げや利益の数字が元になるはず。企画職や技術職のケースでなかなか定量化が難しいときは、小項目化したり、時系列化してみましょう。『第一段階として○○をやる』や『この時期までに△△をやる』と決めておくことで“HOW”は具体的になります。

業務遂行設計図の内容が決まって実行に移すとき、どこのタイミングで進捗を聞いても当該者が『今のところ六合目です』や『やや遅れています』『予定よりペースが早いです』と言えるようになると理想です。誰が見ても『設計図を通じて行動でき頑張っている様がイメージできる』と判断しやすいですよね。また業務遂行設計図を書く際には、“WHAT”や“HOW”以外にも上司は部下との会話の質にも気を配る必要があります」

「“WHAT”を特定するときには、“なぜ”このミッションを“あなた”にお願いするのかを本人が納得できるように明確に伝えること。『今期の会社の戦略は○○で、事業部の戦略は△△で、部の戦略は・・・、とあなたにお願いする“WHAT”の背景を中期経営計画から紐つかせる。そして、あなたのグレードは□□なので、◎◎という能力を発揮しながら“HOW”を進めてくれることを期待しています」と伝え、本人が納得すれば、部下の仕事へ向かう活力が自然と生まれてきます。周りから言われなくても、粋に感じたり、“WHAT”の意味にプライドが持てる。このことを『内発的な動機が形成された』と言います」

内発的な動機を誘引する力に長けている上司は、組織の中でも信頼を得られやすく事業の中核に登用されやすい。管理職ならば、覚えておきたい。

「この“WHAT”と“HOW”を盛り込んだ業務遂行設計図、おおよそ2回程度の面談を経て作り上げるのが一般的です。1回目は『目標設定の概要とあらあらの方向性を上司と部下双方で共有する』こと。2回目は『部下が詳細を設計して上司と合意形成をする』。それぞれ1時間ずつ、合計で2時間ぐらいが所要時間でしょうか」

あくまで時間は目安。新入社員だったり、転職したばかりの方に対しては、会社のミッションがどのように部署に降りてきているのかを詳しく説明する時間があってもよいだろう。

目標から漏れ落ちたモノは……?バランスを見て調整する

目標を設定する際、どうしても抜け落ちてしまう内容がある。それをどのようにフォローすればよいのか。

「会社の理念や方向から考えると、設計当初の優先度が高くはないために、漏れ落ちてしまう“WHAT”は発生する可能性がある。 漏れ落ちた“WHAT”を期中で入れる場合、初期に作成した業務遂行設計図が変わることになりますから、上司と部下の合意のもと、軌道修正をすることが必要になります。この対応をスムーズに行うためにも、半年間を想定して業務遂行設計図を作成したら、例えば1か月程度で小さな確認面談を行うのがよいと思います」

仮に目標を変えるときはしかるべき手続きを

仮に目標が変わってしまう場合、どのような流れで進めるべきか、小野田氏はこう言う。

「会社の動きや部の動きが変わると、個人も影響をうけることがあります。異動が最たる事例です。その場合には目標はリセットされることになるでしょう。異動の例で考えると、大切なのは評価期間のなかで“WHAT”が再設定される期間は何割なのかを、しっかりと上司と部下で合意することです。組織が変わるときや上司が変わるときが一番デリケートなタイミングです。部下の内発的動機が崩れてしまう可能性がありますから前上司と新上司による異動した被評価者に関する引き継ぎはとても大切な業務です」

期の途中で組織が変わる場合、管理者である上司は部下各位の仕事内容に加えて、内発的動機を維持することにも気を配るべきなのだ。

「トップとなる経営者は、朝令暮改で判断することはよくあります。『アイディアを思いついたら深夜であろうと担当者に電話をかける』といったエピソードには事欠きません。ただし、全社が呼応して行動するまでには、時間差があります。新規事業をメインで行う部署などで、トップの指示が朝令暮改になりがちな場合は、その時間差も考慮して評価をした方がよいでしょうね」

新規事業の割合が高い会社の場合、事業環境の変化に即時に対応して戦略を打ち出すことが成功の条件であるならば、あまり評価体系や運用ルールをきちんと設定しないのも一案。30人前後の新規事業部ならば、試行錯誤を是とする場合もある。“WHAT”と“HOW”に応じて評価を柔軟に運用する前提ならば部下の内発的動機も維持されていくであろう。

人事が気を遣うべきなのは公正で冷静な評価

では、人事部の目線で見て人事評価・人事考課に対してもっとも必要なモノは何だろうか。

「ズバリ、『評価者・考課者が公正で冷静に部下と面談ができるかどうか』に尽きます。そのためには『評価者はどのようなコミュニケーションを部下とするのか。どのように合意を形成しているのか』を人事担当者が見ていくしかありません。そもそも管理職に上がった人の要件に、『部下面談力が一定レベルを超えている』や『内発的動機誘因力に長けている』などがあるとよいのですが、そのような明確な昇格基準がない場合には、上司の評価力の向上を目的として、評価者や考課者研修を実施する会社は多いです。また、評価を各人にフィードバックしたあとに『目標設定と評価はクリアでしたか』と評価フィードバック満足度調査を被評価者に行い、管理職の適性を測る会社もあります。評価者を育てるためには、個別に対応していくしかないでしょう」

きちんと、評価者がフィードバックを行えないと組織が壊れていく。

「上司が部下の内発的動機を形成するコミュニケーションができないと次第に部下は組織から漂流します。『この評価で決まったのだから不満があっても諦めて前に向きたまえ。仕事は前進あるのみだ』と言われてしまえば部下は会社や上司に不信感を持ち始めてしまいます。

企業の業績が悪くなるときや、ミスやトラブルが多くなるとき。最初の兆候で組織内部の人心の離反が見てとれます。内部から『なんだかなぁ、辞めようかな』と思う人が増えると顧客とのトラブルや大規模なミスに繋がります。原因は、組織から個人が漂流してしまうこと。“WHAT”と“HOW”を基づいた目標設定とフィードバックに合意ができないので事業計画や所属組織の方針から自身が漂流してしまい、目の前のタスクとだけ向き合う日々を過ごすことになってしまう。担当業務と事業や経営がいかに関わりをもっているのかを確認する行為。それが人事評価と人事考課なのです」

毎年一定のサイクルで行う業務遂行設計図の設定と人事評価。このサイクルを安定的に運用するためには、一つ一つのプロセスを丁寧に進めていく意識を醸成することが人事部と評価者に求められている。

まとめ

・『人事評価・人事考課』をしっかりと行うためには業務遂行設計図の作成が不可欠

・ 業務遂行設計図は“何(WHAT)“を”どのように(HOW)“行うかの起点。できる限り具体的に

・上司は最低でも1ヶ月程度の頻度で、部下との進捗確認面談を忘れずに

・人事担当者は評価者が『公正で冷静な評価と考課ができる』ことに気を配る

もっと勉強したい方には

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