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2017年7月5日(水)更新

エバンジェリスト

エバンジェリストとは、自社製品の特徴からITのトレンドや最新テクノロジーまで、分かりやすく広く伝える職種のことで、近年IT業界で注目を集めています。今回は、このエバンジェリストについてご紹介します。

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1.エバンジェリストとは

まず、エバンジェリストとはどのような意味なのでしょうか。

エバンジェリストの意味

そもそも「エバンジェリスト」という言葉には、キリスト教において「伝道師(伝道者)」という意味があります。この伝道師とは、「物事の良さを人に伝えて広める人(デジタル大辞泉より)」という意味です。

そして今回ご紹介するのは、近年IT業界で注目されている職種の「エバンジェリスト」です。一言で言えば、自社の商品の特徴からITのトレンドやテクノロジーに関する技術的話題まで、分かりやすく広く伝える職種を指します。近年、専門的なポジションとしてこの職種を新設する企業も増えてきています。中には担当技術毎に「テクニカルエバンジェリスト」「クラウドエバンジェリスト」「セキュリティエバンジェリスト」など、それぞれの専門分野に特化したエバンジェリストも存在します。

営業や広報との違い

エバンジェリストは、企業に属して製品の啓蒙活動を行うという立ち位置から、しばしば「営業」や「広報」と混同される事があります。

しかし、エバンジェリストは当然自社製品についての啓蒙活動も行いますが、基本的な立ち位置としては常に中立で、顧客の視点を持っているという事に違いがあります。あまり企業の中での体面にとらわれず、独立した立場にあります。その上で、専門家として正しく、一方に偏らない情報を提供します。必要であれば自社製品の短所についても説明したり、競合他社製品との組み合わせ等も提案する場合もあります。

エバンジェリストが注目される背景

この「エバンジェリスト」という職種が注目されるようになった背景には、昨今のIT技術の飛躍的な進化があります。IT技術は高度で複雑なものになってきた上に、様々な企業から次々に新しい製品やサービスが開発されています。それにより、その全てを個人で理解し、自社に最適な物を判断する事が困難になってきました。そこで、その最新のITの技術情報を常に把握し、自社製品についても知り尽くした「エバンジェリスト」が求められているのです。

エバンジェリストの活動の場

基本的にエバンジェリストは、企業訪問や講演会などでのプレゼンテーションを主な活動の場としています。具体的には、顧客企業の担当者に向けた個別セミナー、自社の新製品発表会、IT関連のエンジニア等を集めたイベント、IT 技術者やシステム開発者などを集めた業界全体での会議などです。様々な場でプレゼンテーションを実施し、製品やサービスについて広く啓蒙します。

分かりやすい例では、世界的に有名な米アップル社の故スティーブ・ジョブズCEOによる「iPhone」のプレゼンテーションがあります。スティーブ・ジョブズCEOは、アップル社のエバンジェリストであったと言えます。

2.エバンジェリストの役割

それでは、エバンジェリストに求められる役割を詳しくご紹介します。

情報を正しく啓蒙する︎

先ほども触れたように、エバンジェリストとは「自社製品の特徴からITのトレンドや最新テクノロジーまで、分かりやすく広く伝える職種」を指します。

エバンジェリストは常に顧客目線に立ち、自身の持っている情報を正しく、そして偏りのないように相手に伝えます。自社製品やサービスについての情報はもちろん、IT環境についての最新の技術情報発信や、それを踏まえたプレゼンテーションを行います。

課題解決方法を提供する

エバンジェリストは、ただ情報を伝えるだけではありません。プロのエンジニアという視点でまず顧客の課題を見つけ出し、あるいはこの製品に興味のある顧客はどのような課題を抱えているのかを洗い出し、その解決方法を模索します。この製品やサービスを利用し、どのようにその課題を解決するのかという新しいパラダイムを広めるのもエバンジェリストの仕事の一つです。

新しい価値を創造する

製品・サービスのスペックについての情報だけを提供するのではなく、その製品・サービスを利用する事によって実現できる「未来」を提示する事も重要です。つまり、その製品にとってのスペックだけではない「新しい価値」を見い出し、正しく伝える事が求められます。

3.エバンジェリストに求められる資質

それでは、エバンジェリストにはどのような資質が求められるのでしょうか。

いちエンジニアである事

まず、エバンジェリストにはIT業界やシステム開発等についての専門的な知識が必要です。常に最新のITテクノロジーについて理解しておく必要があるため、基礎的な知識は必須です。実際に、エバンジェリストはエンジニア出身者が多いと言われており、近年ではエンジニアの将来の選択肢の一つともされています。

プロのプレゼンテーターである事

エバンジェリストの役割を達成するために、最も重要な手段は「プレゼンテーション」です。そして、プレゼンテーションの成功のためには徹底して「準備」をする事が重要です。

年間200件以上のプレゼンテーションをこなし、日本を代表するエバンジェリストである西脇資哲氏(日本マイクロソフト社)でも、1時間のプレゼンテーションに対し、資料作りに1日〜1週間かけるケースもあると言います。そして資料が完成すれば、何度も何度もプレゼンテーションの練習を繰り返します。エバンジェリストには、知識だけではなく地道な努力も必要です。

製品の︎熱心なユーザーである事

最後に、まずは自分自身が自社製品の「熱心なユーザーである事」が必要です。西脇氏をはじめ、世界で活躍するエバンジェリストは自腹で製品を購入し、とことん使い込んで消費者目線での利点や短所を研究する努力を怠りません。これにより、顧客目線の獲得と、製品への愛着、そして自信が生まれます。

【参考】Career Supli「ITエンジニアの新たなキャリア、『エバンジェリスト』という生き方」

4.企業事例

それでは、エバンジェリストに関する企業事例についてご紹介します。

ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社には、米Apple社公認の「iPhoneエバンジェリスト」が2名存在します。うち1名は経営者である孫正義社長、そしてもう一人はソフトバンク主席エバンジェリストの中山五輪男氏です。

ソフトバンクにおいてエバンジェリストが誕生したのは、2008年に発足した「iPhone事業推進室」において、所属していた中山氏が「製品をアピールするため、”エバンジェリスト”という立場でやります」と言った事が発端です。今や日本におけるスマートフォンのシェアの50%以上を誇るiPhone。世界的に見ても、iPhoneのシェア率の高さは日本がトップであると言われています。そして、その日本でiPhoneを普及させたのは、中山氏を含むエバンジェリストによるプレゼンテーションなのです。

中山氏はApple公認のエバンジェリストになってから、年間300回以上のセミナーや講演を実施しています。半分は個別に企業を訪問して講演し、その場で製品の販売に繋げます。また、大学や一般の聴衆を集めた講演会などへの登壇も多く、近年ではペッパーやワトソンについて語り、その啓蒙に勤めています。

【参考】ビブリオン「ソフトバンク史上初のエヴァンジェリスト。未来を見せる仕事術。」

日本ユニシス株式会社

クラウドサービスやシステム開発を行う日本ユニシス株式会社では、自社の最前線で活躍しているエンジニアを「エバンジェリスト」として育成する取り組みを始めています。これにより、自社の技術力を啓蒙するだけではなく、今まで裏方であった「エンジニア」への注目を集め、モチベーションをアップさせるという相乗効果も期待しています。

具体的には「先端領域に精通しており、技術や知識も持っている事」「技術の特徴を分かりやすく伝えるスキルがある事」「情報の発進力を持っている事」、この3つを兼ね備えた若手や中堅社員を選抜。候補者は、今後SNS等による日常的な情報発信や、社内外でのプレゼンテーションなどの活動を行う予定です。

【参考】日本ユニシス「最前線で活躍するエンジニアをエバンジェリストとして育成し、先進技術の魅力や可能性を社内外に訴求」

日本ヒューレット・パッカード株式会社

日本ヒューレット・パッカード株式会社では、新入社員に向けた「人財育成プログラム」として「エバンジェリスト・プログラム」が運用されています。自社の技術の「顔」となるエバンジェリストを養成するため、自社の最先端のテクノロジーをプレゼンテーションできるエバンジェリストの育成に力を入れています。

プログラムでは、プレゼン手法や資料作成のためのキャッチコピーのトレーニング、課題解決のスキルなどについて学ぶとともに、エバンジェリスト自身を輝かせるための服装や自身のイメージ作り、色選びなどについても習得します。

【参考】日本ヒューレット・パッカード「エバンジェリスト・プログラム」

5.エバンジェリストについて学ぶ方法

まだ情報の少ないエバンジェリストですが、それについて学ぶ機会や書籍についてご紹介します。

セミナー

出版社「翔泳社」の主催で、「新エバンジェリスト養成講座」が開催されます。

日本マイクロソフト株式会社のエバンジェリストである西脇資哲氏が、視点誘導・資料作成・話術やプレゼンテーションについて語るセミナー。対象は主にIT関連の営業マン、プレゼンテーションを行うエンジニア、コンサルタント等とされています。現在までに延べ3万人が受講しています。

【参考】企業のIT、経営、ビジネスをつなぐ情報サイト EnterpriseZine「新エバンジェリスト養成講座」

書籍

次に、書籍をご紹介します。

新エバンジェリスト養成講座

翔泳社より出版されている「新エバンジェリスト養成講座」は、先ほどご紹介したセミナーと同じ西脇資哲氏の書籍。大人数を対象としたプレゼンテーション手法や、資料作成、話術、プレゼンテーションのテクニックなどについて記載されています。エバンジェリストのみならず、企画提案や営業などの現場でも活用できるスキルが満載です。

【参考】翔泳社の本「新エバンジェリスト養成講座(西脇資哲)」

エバンジェリストの仕事術

日本実業出版社より出版されている「エバンジェリストの仕事術」も、西脇資哲氏が著者です。エバンジェリストについての仕事の全貌、プレゼンテーションやデモンストレーションのテクニック、資料やスライドの作成方法などを解説した書籍です。

【参考】日本実業出版社「エバンジェリストの仕事術」

ラジオ

TOKYO FMのラジオ「エバンジェリストスクール」では、セミナーや書籍でもご紹介した西脇資哲氏が、最新のITトレンドやビジネススキルをテーマとして、様々なスキルについて語るラジオ番組です。エバンジェリストについてのみならず、例えば社会人のビジネスマナーなど、より敷居の低い話題から学ぶ事ができます。

【参考】TOKYO FM「エバンジェリストスクール!」

6.エバンジェリストマーケティング

自社製品についてSNS等で広く発信したりする個人を、エバンジェリストとして「公認」する制度も広がっています。

エバンジェリストマーケティングとは

エバンジェリストマーケティングとは、自社のエバンジェリストではなく、社外において製品・サービス等について周囲に熱心に広める個人を「エバンジェリスト」として認定する事、そしてそのエバンジェリストを企業側も支援する事を言います。 近年ではIT企業を中心に、各地で「認定エバンジェリスト」を選定し、製品やサービスについて積極的に広める活動が盛んになっています。

企業事例

それでは、実際の企業事例を見てみましょう。

サイボウズ株式会社

まず、グループウェア「サイボウズOffice10」等のソフトウェア開発を行うサイボウズ株式会社です。サイボウズではビジネスアプリ作成クラウド「kintone」について、自社の社員以外で広く周囲に勧め、広めようとする個人について「kintoneエバンジェリスト」を任命しています。

2016年には全国で21名が認定されており、主な活動としては、自信のSNS等でkintoneについてのカスタマイズやプラグイン、連携についての情報を配信しています。その他にも、サイボウズ主催のイベントに登壇したり、kintoneのユーザーコミュニティサイトに参加するなどの活動の場があります。サイボウズ側は、エバンジェリストがkintoneについての最新のコアな情報を知る機会を提供しています。

【参考】kintone hive online「全国各地で活躍するkintoneエバンジェリスト」

7.まとめ

  • エバンジェリストは、ただ情報を伝えるのではなく、その製品やサービスを使った先にある課題解決方法や新しい価値も提供する
  • エバンジェリストには、まずエンジニアとしての幅広い知識や技術、プレゼンテーション能力、そして何より製品やサービスの熱心なファンである事が求められる
  • 近年では、自社のみならず社外において自社製品を啓蒙する個人を「認定エバンジェリスト」として選定する動きも始まっている

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