はじめての方はご登録ください(無料)会員登録
search

2018年3月20日(火)更新

配置転換

配置転換は人事の一環として定期的に行われるほか、就業上の措置として実施されることもあります。しかし、中には労使間の深刻な争いに発展することもあるので、配置転換を適法に行うためには法規制の理解も重要です。本稿では、配置転換について詳しく解説します。

配置転換 に関するニュースやイベントの情報を受取る

配置転換

配置転換は同一企業内で職種や職務内容、あるいは就業場所(勤務地)などを長期間にわたって変更することを指します。略して配転(はいてん)と呼ぶことも多く、人事異動の一つでず。

会社側(使用者)は従業員に対する人事権を有し、就業規則などの雇用契約上の根拠がある場合には配転を命じる「配転命令権」をもつとされています。しかし、配転命令権の行使が権利濫用に該当する場合は認められず、その配転命令は無効となります。

企業内と企業外の配置転換

人事異動には配置転換のほかに、元の企業とは異なる企業で働く出向や転籍といった異動、さらに、採用や退職、昇進、昇格なども含まれます。しかし、人事異動と配置転換を同じような意味合いで使うこともあるので注意してください。

また、配置転換は一般的に企業内の異動(職種や勤務先などの変更)を指しますが、出向や転籍を「企業外の配置転換」ということもあります。配置転換や出向、転籍などの用語は混同しやすいので、それぞれの違いを整理しておきましょう。

配置転換・転勤・出向・転籍の違い

4つの用語について、企業内の異動と企業外の異動に分けて違いを説明します。

【1】企業内の異動

  • 配置転換
    配置転換は、前述のように同一企業において職種や勤務先を変更することをいいますが、狭義の意味では「同一事業所内」の異動を指します。

  • 転勤
    転勤は同一企業内の配置転換のうち、事業所間にまたがる異動、勤務先の変更を伴うものをいいます。

【2】企業外への異動

  • 出向
    元の企業(出向元)に従業員としての地位を維持した状態で、他の企業(出向先)に異動します。そのため、籍は出向元のままです。

  • 転籍
    元の企業との労働契約関係を終了させて転籍先の企業と新たに労働契約を結ぶため、籍そのものを移すことになります。

出向と転籍は籍を移すかどうかが異なるので出向を「在籍出向」、転籍を「移籍出向」あるいは「転籍出向」と呼ぶことがあります。

出向と転籍における「同意」に関する相違点

出向と転籍は、いずれも従業員の同意が必要です。異動に関する労働者の同意は包括的な同意でよいか、個別に得る必要があるかが法的に問題になることがあるので注意してください。

出向の場合、就業規則などに出向に関する根拠が明記され、包括的な同意があると解釈できるケースでは、個別の同意がなくても異動命令が「有効」とされています。一方、転籍は、元の会社を辞めて別会社の従業員になるという大きな変化をもたらす異動です。そのため、包括的な同意ではなく、従業員の明確な同意を必要とします。

なお、配転命令権と同様に、出向に関する命令も権利濫用とみなされた場合は無効です。

【参考】
独立行政法人 労働政策研究・研修機構:Q16 配転・出向・転籍についてどのような法的問題がありますか。
埼玉県:労働相談Q&A 4出向・配置転換 4-1出向・転籍について

人材育成における配置転換の意義の有無

労働政策研究・研修機構が行った配置転換に関する実態調査をみると、従業員1,000人以上の企業ではおよそ半数が定期的に配置転換を行っています。また、配置転換の目的としては、以下のように適材適所や組織の活性化などを挙げる企業が多いです。

配置転換を行う企業における配置転換の目的(複数回答)

  • 従業員の処遇・適材適所(70.1%)
  • 異動による組織の活性化(62.5%)
  • 事業活動の変化への対応(56.0%)
  • 従業員の人材育成   (54.7%)

【出典】独立行政法人 労働政策研究・研修機構:調査シリーズ No.5 労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査 ―労働契約をめぐる実態に関する調査(Ⅱ)―第3章 配置転換・出向・転籍について 第1節 配置転換について 2. 配置転換の目的 p41

従業員の人材育成は、人手不足や人材不足に陥っている企業では重要な対策の一つです。労働政策研究・研修機構の調査でも、配置転換の目的として人材育成を挙げた企業は半数を超えています。しかし、人材育成という視点でみたとき、配置転換は本当に意味があるのでしょうか。

実は、配置転換が人材育成においてどの程度、効果があるのかといった有効性に関する検討はいまだ十分に行われていません。ただし、配置転換によって従業員の人材育成を図るには、次のようなポイントが重要といわれています。

人材育成につなげるための配置転換のポイント

配置転換をすることにより、従業員はさまざまな業務に携わる機会を得て、経験を積むことができます。しかし、人がスキルや技術を身につける(学習する)ためには、単に経験すればよい訳ではありません。

スキルや技術を効率よく身につけるには、会社任せにせず従業員自身が仕事における成長を「自分の責任」として捉えるという意識づけと成長に向けた努力が必要です。たとえば、身近にいる先輩から学んだり、経験したことを振り返ったりしながら、日々の中でスキルや技術を身につけていく努力が要求されます。

一方、企業は教育訓練に関するプログラムを構築し、資格取得の奨励などを通して従業員がキャリアアップに意欲を持てるように働きかけることも大切です。また、配置転換後には、人材育成としてどのような効果があったかを検証し、人材育成につながる配置転換のあり方を検討する必要があります。

【参考】 厚生労働省:新たな職種や他部署への異動に挑戦する意欲を女性社員に高めさせるには、どうすればよいか。

不当になる配置転換とその事例

配置転換については、あっせん申請や民事上の個別労働紛争の相談などが増加傾向にあります。ここでは、どのような配置転換が不当になるのか、事例を挙げてご紹介します。

不当になる配置転換の理由

前述したように、使用者には配転命令権があるとされていますが、以下の2つの点が重要です。

  • 配置転換の根拠が就業規則などに記載されている
  • 配転命令が権利濫用に当たる場合は無効となる

多くの企業が就業規則の中に、業務上、必要がある場合には配置転換を命じることがあるといった規定を置いています。しかし、配置転換(配転命令)が「有効」となるのは就業規則などに根拠が記載されているだけでなく、配転命令が規定の範囲内にあることが必要です。

では、権利濫用に該当するのはどのようなケースなのでしょうか。

配置転換に関する判例法理

配置転換における権利濫用について理解するうえで、重要な最高裁判決があります。家庭の事情により転勤命令を拒否したことで懲戒解雇となった従業員が、使用者の権利濫用であるとして訴えた東亜ペイント事件(最二小判昭61.7.14、労判477-6)です。

東亜ペイント事件における転勤命令は大阪地裁、大阪高判のいずれの判決も使用者の権利濫用で無効とされましたが、最高裁は権利の濫用に該当せず有効となりました。判例によると、次のような配転命令の場合には権利の濫用に当たり、無効となる可能性が高いです。

  • 業務上の必要性が認められない

必要性が認められる場合でも、

  • 不当な動機や目的に基づいて行われている
  • 労働者に通常、受容すべき程度を越えた著しい不利益を与える

条文では以下のように述べられています。

当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもつてなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではないというべきである。

権利濫用に当たる3つの要件について、それぞれ解説します。

■業務上の必要性が認められない
業務上、配置転換が必要なのかを判断する際は、業務上の必要性とともに人選の合理性も重要です。最高裁は、必要性の有無を判断する視点を以下のように具体的に挙げています。また、人選については高度の必要性に限定しておらず、使用者の裁量を広く認めるものでした。

業務上の必要性についても、当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは、業務上の必要性の存在を肯定すべきである。

東亜ペイント事件の判決は、業務上の必要性や人選の合理性を判断するときの判断枠組みを示すものとしてその後の裁判にも影響を与えています。

■不当な動機や目的に基づいて行われている
不当な動機や目的というのは、特定の社員を職場から追い出す、あるいは退職させるために嫌がらせとして行う配転命令などが該当します。

しかし、不当な動機や目的の有無を判断するのは容易ではありません。労働者と企業側双方の訴えが分かれることが多いため、一般的な傾向としては配転命令の内容や配転を命じるまでの経緯などの客観的な事実に基づいて判断されます。

また、配置命令に関する司法判断には、会社の慣例としてこれまでにどのような配転が行われたかという点が考慮されることもあります。さらに、後述の判例でも指摘されていますが、配置転換を命じる際はその理由について合理的な根拠をもとに説明できることも重要です。

■労働者に通常、受容すべき程度を越えた著しい不利益を与える
労働者が被る不利益としては、配転によって給与が大幅に下がったなどの職業上の不利益、また、家族の介護ができなくなるなどの生活上の不利益があります。

過去の裁判で労働者側の不利益として挙げられたのは本人の病気、あるいは家族が病気や介護の必要性、また、転勤によって単身赴任となった、通勤に長時間かかるなどの事情です。しかし、単身赴任や長時間の通勤といった不利益については一般的に「甘受すべき範囲内」とされる傾向があり、その事情だけで違法となる可能性は低いと考えられます。

なお、職種の変更なども労働者にとって大きな負担となることが多いです。特に、職種や勤務地を限定した労働契約を結んでいる場合は問題が起こりやすいので注意してください。労働契約で職種や勤務地が限定されている(限定に関する「合意」がある)場合には、本人の同意が必要になります。

【引用】裁判所:昭和59(オ)1318 「従業員地位確認等」 昭和61年7月14日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄差戻 大阪高等裁判所

【参考】
独立行政法人 労働政策研究・研修機構:東亜ペイント事件
独立行政法人 労働政策研究・研修機構:(36)【異動】配転の意義
埼玉県:労働相談Q&A 4出向・配置転換 4-2転勤命令の妥当性について
埼玉県:労働相談Q&A 4出向・配置転換 4-3職種を変更する配置転換について

不当な配置転換の判例・事例

親の介護をしている従業員(A氏)に対する配転命令が、無効となった事例をご紹介します。

ネスレ日本事件(大阪高判:平成18.4.14、労判915-60)

会社は、経営合理化のためにA氏が従事していた工場(兵庫県)の係を廃止することになり、A氏のほか同じ係の従業員全員を茨城県の工場に配置転換させようとしました。しかし、A氏は妻が病気で、実母も要介護の状態にあることから配置転換を拒みましたが、会社側が受け入れなかったためA氏は転勤命令の「効力停止の仮処分」を申請したのです。

仮処分決定ではA氏への転勤命令は経営上、必要と認めながらも家族の介護などの事情を考慮すると労働者が通常、甘受すべき不利益を著しく超えるものであり、無効とされました。また、その後の第1審でも無効となったことから、会社側は取消しを求めて控訴したという事例です。

大阪高裁は、育児介護休業法26条を適用して以下のように述べています。

改正育児介護休業法26条の配慮の関係では、本件配転命令による被控訴人らの不利益を軽減するために採り得る代替策の検討として、工場内配転の可能性を探るのは当然のことである。 裁判所が企業内の実情を知らないというのであれば、控訴人は具体的な資料を示して、工場内では配転の余地がないこと、あるいは他の従業員に対して希望退職を募集した場合にどのような不都合があるのかを具体的に主張立証すべきである。

大阪高裁も、本件の転勤命令は、A氏にとって受容すべき程度を著しく超えた不利益を与えるもので使用者の権利濫用に当たるとし、無効としました。またこの裁判では、労働者が被る不利益に対して企業が代替措置を検討すること、客観的な事実を示すことの重要性について一例を挙げて示しています。

なお、一般的な代替措置としては、転勤の場合であれば社宅を提供する、単身赴任をする人には手当を支給して帰省しやすい環境を整えるなどの配慮が考えられます。

【引用】女性就業支援バックアップナビ(平成29年度厚生労働省委託事業):ネスレジャパンホールディング配転拒否本訴控訴事件

【参考】
厚生労働省:確かめよう労働条件 裁判例
独立行政法人 労働政策研究・研修機構:(94)【女性労働】産前産後・育児・介護休業の取得に対する不利益な取扱い

仕事と生活の両立にも必要な配置転換

配置転換は労働基準法の妊産婦に対する保護規定、あるいは労働契約法の安全配慮義務などに基づき必要になることがあります。また、労働安全衛生法による長時間残業や、ストレスチェック制度における高ストレス者の面接指導などでも、必要な場合には就業上の措置として就業場所の変更などが行われます。

さらに近年、仕事と生活の両立を推進するための配慮として配置転換が行われるようになりました。たとえば、育児や介護、あるいは治療を受けながら就労を継続する労働者に対し、職務内容や勤務先などを変更することがあります。このように働き方が多様となる中で配置転換の目的も変化し、配置転換の必要性や重要性は一層高まっているのです。

一方で、就業上の措置として行った配転が、結果として労働者との深刻なトラブルに発展したケースもあります。遠隔地への異動や給与の低下など労働条件が著しく変わる場合には、労働者と事前によく話し合うことが重要です。企業としては、労働者に著しい不利益が生じないよう意向の確認や配転の必要性、手当などの代替措置などについて説明するなど誠意のある対応を心がけてください。

まとめ

  • 配置転換の効果をより高め、トラブルを回避するためには慣例に従うだけでなく、配転の目的や必要性、また、人選方法などを整理しておくことをおすすめします。
  • 就業規則や労働契約書などは、配転命令の根拠となるため点検や見直しも大切です。

注目の人事トピックを、逃さずチェック。

大手やベンチャー含め計20,000人以上の会員が利用しています。

BizHint HRの会員になるとできること

  • 厳選されたニュースが毎日届く
  • BizHint HR限定公開の記事を読める
  • 実務に役立つイベントに申し込める
  • アプリで効率的に情報収集できる
いますぐ無料会員登録

この記事の関連キーワード

フォローボタンをクリックすると、キーワードをフォローすることができます。

キーワードについて

チーム・組織開発の記事を読む

ニュースやイベントの情報を受取る

フォローしたキーワードの最新トピックをトップページに表示します。 フォローはでいつでも変更することができます。
フォローを管理する

目次