抜擢人事
「抜擢人事」とは、企業が人材を登用する際に年齢や年次、学歴を飛び越えて優秀な人材や未経験者を選んだり、若い人を高いポストに起用したりすることをいいます。中には社外から採用した人間を部署の責任者に据える、といった人事も見られます。人事評価の制度が従来の年功重視から成果・業績主義に変わりつつあるため、近年はこのような「後輩が先輩を飛び越えて出世する」ケースが増えています。「抜擢人事」においては有能な人材の育成、若手社員のモチベーションアップといったメリットが考えられる一方、抜擢されなかった社員の合意と賛同をどうやって得るかが重要な課題です。
1.知っておくべき抜擢人事のポイント
抜擢人事とは、年齢や学歴、役職を飛び越えて行う人材の登用のことで人材育成や組織活性化を狙いとして行われています。
1-1抜擢人事の概念について
抜擢人事とは、年齢や学歴、役職を飛び越えて主要な要職に起用するという人事のことです。抜擢人事を行うことで若い人が年次の高い人を飛び越してリーダーに就任するということもあり得ます。従来の年功序列制に代わって、導入する企業が増えてきています。
年功序列は、経験を積むことによってスキルや能力が身につくという概念をもとに設計されており、年次に応じて昇進していく制度です。一方、抜擢人事は成果をあげられる人物に相応のポストを任せて会社と人を成長させるという考え方に基づいています。
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1-2抜擢人事が今注目されている理由について
抜擢人事が増えているとし背景として、グローバル化をはじめとした社会の急速な変化があります。
年次を積むと経験を積むという年功序列制度では限界がきている会社も少なくなく、成果に応じて評価する成果主義が急速に企業へ導入されています。そのため、成果主義とマッチする考え方として抜擢人事が注目されているのです。抜擢人事は思い切った改革とそれに伴う成果を期待して行われています。
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2.抜擢人事のメリット・デメリット
2-1抜擢人事のメリットとは?
思い切った改革や、組織を活性化するために行う抜擢人事。そのメリットは大きくわけて2つ挙げられます。
1つは、組織の活性化です。この活性化により能力がある人材がふさわしいポストに抜擢されることで、個々の能力が発揮されやすくなるというメリットもあります。 「器が人を創る」と言われるように、能力のある人を抜擢人事で重要なポストに登用することによって、その人の潜在能力をより引き出してくれるのです。
もう1つは、社員のモチベーションアップにつながるということです。経験年数に応じた年功序列制度に比べて、能力のある人が年数に関係なく主要なポストを得られることがその理由です。若手の育成にもなり、結果的に、業績への貢献度が高まります。 業績主義の会社が増えつつある昨今、このようなメリットを求め、抜擢人事を行う企業が増えているのです。
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2-2抜擢人事のデメリットとは?
抜擢人事の最大のデメリットは、抜擢されなかった社員の不満やモチベーションダウンです。年功序列の意識が高い会社であれば、その傾向は強くなります。 評価に正当性がない、選考のプロセスが不透明な場合、新しく抜擢した人に他の社員がついていかないなど組織が正常に機能しないケースもあります。社員に不公平感が残り、しこりになることも考えられます。
抜擢人事では、抜擢されなかった人への処遇も考えておくことが必要です。
3.抜擢人事導入の成功ポイント
3-1段階的な導入が抜擢人事の成功のポイント
抜擢人事を成功させるためのポイントは、段階的に導入していくことです。これは、年代による不公平感が起こらないようにするためです。年功序列制度から急激に抜擢人事へ切り替えると、次に主要ポストへとスライドするはずだった世代からの不公平感を生まれます。 それゆえ、導入にあたり他の社員に、「抜擢人事を行うメリット」をしっかりと理解してもらうことが必要です。
急激な改革ではなく、まずは成果主義の導入や、役員から抜擢人事を行うといったように、段階的に取り入れていくとよいでしょう。
3-2抜擢人事の選考のプロセスを明確に
抜擢人事にあたり、その評価制度及び抜擢人事の選考プロセスは明確化しておくことも重要なポイントです。評価によって能力のある人を抜擢するので、その評価基準が明確であることは人事の正当性の証となります。
3-3抜擢されなかった社員への配慮
さらに人事として行うべきは、抜擢をされなかった社員への配慮を考えることです。抜擢されなかった社員にも、それぞれの役割を活かした活用の仕方を考えることで、社員の不満も減り、より人材を最大限に生かすことができるのです。
4.抜擢人事の事例
4-1松下電器産業「伝説の山下跳び」
古くは1977年、当時の松下電器産業で、25人を抜いて社長に抜擢された山下俊彦氏が挙げられます。この抜擢人事は「山下跳び」と呼ばれ、今でも伝説になっています。抜擢人事により社長になった山下氏はこの後、松下電機を大胆に改革していきました。その功績は、現在のパナソニックの発展につながったと言っても過言ではありません。
【参考】抜擢人事「26人中25番目の男が選ばれた理由」 / アサ芸プラス
4-2 当時44歳で社長に!yahooの例
2012年、当時44歳の若さでyahooの社長に抜擢されたのが宮坂学氏です。前社長である井上雅博氏から受け継ぎ、託された使命は「改革」。その使命の通り、宮坂氏は「爆速」をスローガンにyahooを牽引し続けています。
【参考】既存の組織、サービスを「爆速」で変えていく–ヤフー社長兼CEO 宮坂 学 : 企業戦略 / 東洋経済オンライン
まとめ
- 抜擢人事は、年数や経験によらず能力のある人を要職へと「抜擢」する新たな人事制度
- メリットは組織の活性化と社員のモチベーションアップ
- デメリットは抜擢されなかった社員の不満やモチベーションダウン
組織の活性化、生産性のアップにもつながる抜擢人事は今後、さらに増えていく可能性があります。一方で、抜擢されなかった社員への配慮も忘れずに導入することが抜擢人事成功のポイントとなるでしょう。
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