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2017年12月24日(日)更新

ピア効果

情報技術の進化により働き方や社会構造が変化する中で、経営者にとって強い組織作りは至上命題です。そんな生産性の高い組織やチームを作るために注目されているのが、ピア効果という用語です。今回はピア効果の意味や導入背景、ピア効果を取り入れた人事施策や活用方法をご紹介いたします。

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ピア効果とは?

元々、教育心理学や行動心理学の研究結果として注目されていたピア効果は、教育分野に留まらず、経済界からも注目されています。

労働経済学におけるピア効果とは?

労働経済学におけるピア効果とは、仲間や同僚とともに切磋琢磨することにより、お互いの生産性や行動力に影響を与え合う現象を指す用語です。一般的に能力の高い者同士が同じ環境に集まると、お互いに影響し合い、集団・個人の能力や行動力が向上するといわれています。

ピア効果はレベルが近いもの同士を競わせることで、成長や成果の向上効果を生み出します。一方で、競争相手とのレベルの差が離れすぎている場合は、慢心や油断、努力の放棄などが生じ、向上意欲を削いでしまいます。

このピア効果という現象は元々、教育分野での生徒の学力向上を目的とした教育心理学や行動心理学の研究から始まりました。組織、チーム内で適切な競争を促すことで、従業員の生産性と能力を向上できることもわかったため、企業の人材育成施策としても活用されています。

ピア効果の研究によると、個人作業よりもチーム作業の方が、生産性が上がることが判明しました。そのため、従業員個人に報酬を出すよりも、チームに報酬を出す制度の方が生産性を高められます。特に専門性の高い知識や能力を有するブルーカラー労働者の場合、お互いに教え合い、弱点を補完し合う関係が構築され、成果を出しやすい傾向にあります。また、チーム作業のため、周りのメンバーの足を引っ張らないようにという意識が芽生え、個々人の能力・生産性向上にもつながります。

負のピア効果とは?

前述でご紹介したとおり、ピア効果は集団の中において、レベルの差が少ない者同士を適切に競争させることで、成果や能力の向上に役立てることができます。これを一般的に「正のピア効果」と呼びます。一方で、集団の構成によっては、お互いに悪影響を及ぼし、集団・個人の生産性や能力を低下させてしまうこともあります。この現象を「負のピア効果」と呼びます。

負のピア効果は職場を無駄に疲弊させてしまい、職場全体の雰囲気を悪くしてしまいます。負のピア効果が持続されると、最悪の場合、休職者や退職者を出してしまい、事業継続が困難となってしまいます。そのため、人事部はお互いを切磋琢磨し合える適切な人員構成を考え、人員配置に気を配る必要があります。

ピア効果が注目される背景とは?

ピア効果が注目された背景には、以下の要因が考えられます。

教育分野から生まれた研究

元々ピア効果は、教育分野における子供の学力向上研究の一環として発見されました。

独立行政法人経済産業研究所が行なった研究では、埼玉県学力・学習状況調査の個票データを用いて、ピア効果による勉強への影響を調査しました。その結果、成績の良い子どもと同じクラスになった子どもは、相対的に自分の学力は低いと認識し、翌年の成績が落ちる傾向があるとわかりました。これは負のピア効果による影響で、「どうせ勉強しても無駄だ」という諦めの心理が表れたものと考えられると結論付けています。

【参考】独立行政法人経済産業研究所 負のピア効果 ―クラスメイトの学力が高くなると生徒の学力は下がるのか?―

実はチームワークに向いていない日本企業

戦後、高度経済成長を迎えた日本では、チームワークを重視した生産体制を確立しました。内需・外需ともに高かった時代では、個人の能力よりもチームワークを重視した体制の方が利益を獲得しやすく、現在でもその傾向は踏襲されています。この成功体験により、日本企業はチームワークに向いていると思われがちですが、実はそうではないと指摘されています。

そもそも残業を前提とした長時間労働や転勤を前提とした雇用体制は前近代的であり、経済合理性に乏しいといえます。経済のグローバル化や新興国の台頭により、従来の働き方が見直される今、ピア効果を使った労働生産性の高い組織作りが急務となっています

働き方改革に不可欠なピア効果

現在、日本では「働き方改革」が叫ばれており、労働時間を削減しようとする動きがあります。ピア効果は同僚や仲間に影響を受けて、集団・個人の能力向上につながる現象です。そのため、チーム一丸となって、帰宅時間を早めるように業務に取り組めば、就業時間内に業務を終えることができる生産性の高い組織を生み出すことができます。

逆に、上司が残っているから残業する、ダラダラと仕事をする職場には負のピア効果が生じています。日本人の労働生産性はOECD加盟国35カ国中22位、先進国では最下位となっています。人口減少社会や少子高齢化に伴う労働人口の減少が確実なものとなっている日本では、 一人ひとりの労働生産性 の向上が求められています。

また、政府が掲げる「働き方改革」の一環に女性活躍推進があります。女性の社会進出を促すためには、育児施設の充実、保育士の確保が挙げられますが、男性による協力も欠かせません。日本企業では、男性の育児休暇取得への理解が進んでいません。周りに積極的に育児参加する男性が増えれば、ピア効果によって、男性の育児休暇取得の理解が広がると考えられています。

人事部としても、負のピア効果を生み出す職場環境や企業風土を見直し、正のピア効果を生み出す職場環境を構築する必要があります。

【参考】公益社団法人 日本生産本部 労働生産性の国際比較2016年版

ピア効果による人材育成のメリット

ピア効果を活用した人材育成は、さまざまなメリットがあります。

相互モニタリングによる生産性の向上

前述でご紹介したように、チームの生産性向上を図るためには、個人ではなく、チームに報酬を与えることが有効です。しかし、チームに対する報酬の付与には一つ問題があります。それがタダ乗りです。

チームに対する報酬はチームメンバー全員に還元されます。しかし、一部のメンバーが努力を怠り、周りのメンバーの成果に便乗することで、チーム内で不平等な関係が生まれてしまいます。しかし、組織やチームに所属するメンバーのレベルが高い場合、ピア効果によるメンバー同士の相互モニタリングが働き、長期的かつ良好な人間関係が生まれ、チーム・個人の生産性の向上につながります。

【参考】東京大学 チーム導入による人材活用 経済学からの知見

業務コーディネーション による対応力の向上

東京大学社会科学研究所教授の大湾秀雄教授の「チーム導入による人材活用 経済学からの知見」では、米国の衣料工場で行なわれた業務コーディネーションによる対応力の向上について触れています。組織・チーム内に業務の再配置を行なう権限を持った人間がいる場合、製品や労働環境に変化が起きた際の対応力が向上するというものです。これは不測の事態に対しても適切に人員の再配置が成され、他のメンバーによる作業の補完が可能となったことから、チーム全体の対応力が向上したと結論づけています。

一般的にレベルに差があるメンバーが所属する集団では、ピア効果が発揮されにくい傾向にありますが、業務コーディネーションにより、同僚同士の学習効果(ピア効果)が表れ、対応力や生産性が向上します。

【参考】東京大学 チーム導入による人材活用 経済学からの知見

チームとしての問題解決力の向上

常日頃から問題解決を図るメンバーが多い集団では、集団・個人ともに問題解決力が向上する傾向にあります。業務中に発生した問題に、チームメンバーが日頃からアイディアを共有することで、チーム内に知識や情報の多様さが生まれ、問題解決に至る可能性が高くなります。

このように、組織やチームメンバーが高いレベルで日頃から問題解決のためのアイディアを出し合うことは、正のピア効果が生まれ、チーム・個人ともに問題解決力の向上につながります。

【参考】東京大学 チーム導入による人材活用 経済学からの知見

ピア効果による効果的な人事施策とは?

ピア効果を活用した人事施策は、既に実施されており、企業の人材育成や生産性の向上に役立っています。

ピア・コーチングによる人材育成

ピア・コーチングとは、従来の上司から部下に行なうコーチングではなく、職級に関係なく、チームメンバー間で行なうコーチングを指します。ピア・コーチングは新しいことを始める人の不安や恐れを克服させる効果があります。これは上司から部下に教えるという作業では得られない仲間意識を芽生えさせ、双方に良き影響を与えるためです。

ピア・コーチングを行なう際は、自由回答方式から始まる「問いかけ」から始まり、対話を通して、診断的な問いに昇華させ、別の新たな仮説や見解を示します。次に対話をする際は相手の発言に「耳を傾ける」ことが大切です。これにより、話の内容からだけでなく、相手の表情やしぐさにより、相手についての情報を多く知ることができます。そして、メンバーに対して「共感する」ことが重要となります。共感によって、仲間同士のつながりが生まれ、ピア・コーチングによる高い成果を得ることができます。

ピア・プレッシャーによる組織力強化

ピア・プレッシャーとは、相互監視を行なう水平管理の組織において、決められた価値観や規律、行動様式に従わなければいけないという同化圧力を意味する用語です。組織やチームを結束させる上では、適度な心理的圧迫感が生産性を向上させ、目標達成に導く刺激にもなります。

このピア・プレッシャーは日本企業によく見られる家族主義的な経営に表れやすく、製造業やサービス業で高い品質を保つ源泉にもなっているといわれています。しかし、ピア・プレッシャーは自律性、統率性、チームワークが高い職場においては、しばしば悪影響を及ぼす傾向があります。ピア・プレッシャーの相互監視による過剰適応により、長時間労働やストレスを生みやすく、労働環境が悪化する可能性があります。長時間労働、サービス残業を良しとする企業風土やワーク・ライフ・バランスの推進阻害の要因として、指摘されることがあります。

新たな成果給ピア・ボーナス

【出典】https://unipos.me/ja/

ピア・ボーナスとは、経済的報酬を送る権限を従業員自身に委譲し、従業員同士が同僚の仕事の成果や行動を評価し、報酬を送りあう評価制度です。Fringe81株式会社はピア・ボーナスをサービス化したシステム「Unipos」を提供しています。情報技術の進展により、働き方や社会環境の変化に応じた新たな評価制度として、現在、注目されています。

【参考】Fringe81株式会社 Unipos

その他のピア効果の活用方法とは?

人材育成に高い効果を発揮するピア効果はさまざまな分野でも活用されています。ここでは、ピア効果による経済活動をご紹介いたします。

SNSの普及によるマーケティング強化

現代のコミュニケーションツールとして使用されているメッセンジャーやSNSは、マーケティング対象としても重要な役割を担っています。SNSの普及は自分に共感してくれる対等な関係である「仲間」や「友達」を簡単に増やせます。SNS上に投稿したコンテンツに好感的なコメントが帰ってくる、自分にとって有益で信憑性の高い情報が流れてくることからピア効果が働きます。そのため、Webマーケティング業界でも重要な要素として、マーケターに認識されており、Web広告などのコンバージョン率向上施策としても活用されています。

新製品投入に役立つピアデータ

ピア・データとは、顧客に提示する他者との比較を示したデータを意味するマーケティング用語です。このピア・データを基に仲間同士が盛り上がれる機能を、新商品や新サービスに盛り込むことで、顧客の行動をコントロールできる可能性があります。

このピア・データは先にご紹介したピア・プレッシャーと併用することで、顧客に高い影響力を与え、新製品を使用する行動に変化させることができます。例えば、家計簿アプリに自分と同世代の平均貯蓄額(ピア・データ)を提示することで、ピア・プレッシャーを与え、家計簿アプリの使用を促すことができます。

ピア・レビューによるコスト削減

ピア・レビューとは、制作された成果物を同僚やチームメンバーによって行なわれるレビューを指します。主にソフトウェア開発の品質保証を行なうプロセスの一つです。ソフトウェアの開発においては、作成者以外の人間が検証作業を行なうことで、高い品質を担保することができます。

また、ピア・レビューではチームメンバーの相互依存関係が構築され、お互いの知識や技術を補完し合える仲間意識が生まれ、生産性の向上にもつながります。結果的に不具合やバグ対応におけるコストを大幅に削減することができます。

まとめ

  • ピア効果は教育分野だけでなく、人材育成やマーケティングなどの分野でも注目され、経済界に大きな影響を与えています。
  • 優れた生産性や対応力を持つ、強い組織を目指したい経営者や人事担当者は、ピア効果を活用した施策の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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