フリーライダー
フリーライダーとは、自分では仕事を怠けて、労働対価以上の報酬を得ようとする社員のことです。フリーライダーはそのままにしておくと他の社員もフリーライダー化するリスクが高まります。そのため、フリーライダーをなくすには、組織を挙げてフリーライダーでいつづけることが損になる仕組みを導入することが効果的です。
フリーライダーとは?
フリーライダー(free rider)を和訳するとタダ乗りする人となります。組織におけるフリーライダーとは、自分は仕事を怠けて楽をして、他の社員の成果を横取りする、あるいは報酬はしっかりいただこうとするタダ乗り社員のことです。昔は「給料泥棒」と呼ばれ、以前からフリーライダーは存在していましたが、雇用形態の多様化や労働人口減少などにより、組織でフリーライダーの対処がしきれなくなり、問題として表面化してきています。
ぶら下がり社員との違い
ぶら下がり社員とは、上司の指示に従って仕事に真面目に取り組みますが、仕事に対する姿勢が受け身で、新しい仕事にチャレンジする自己成長や企業貢献の意欲に欠ける社員のことです。
フリーライダーとの違いは勤務態度にあります。ぶら下がり社員は与えられた仕事は真面目に取り組みますが、フリーライダーは怠慢で楽をしようとします。
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フリーライダーが生まれる背景
フリーライダーが生まれる背景には、どのような要因があるのでしょうか?
労働者をとりまく環境の変化
終身雇用が一般的だった頃は、フリーライダーの兆候がある社員に対しても時間とお金をかけて育成する余裕がありました。また、長期間同じ職場と人間関係の中で働く環境では、真面目に働くことが昇進や昇給など安定した将来に繋がり、自然とフリーライダーになりにくい企業風土づくりになっていました。
それに対し、昨今では成果主義が主流になったほか、雇用期間の短縮化、雇用形態の多様化が進み、不安定な人間関係や職場環境に変化しています。また、人材育成にあまりコストをかけずに即戦力として活躍することが求められるものの、収入やキャリアに対して安定した将来を実感しづらくなっています。フリーライダーが生まれる背景には、このような労働者を取り巻く状況の変化があります。
雇用保蔵者がフリーライダーになる可能性も
企業では、生産に見合った最適な雇用者よりも多く労働者を雇用している状態である、雇用保蔵の問題を抱えているケースが多くあります。職場での雇用保蔵者は、役職定年によって重要な仕事から外されて仕事を与えてもらえない人や、将来の生産拡大の必要性に備えてそれなりの仕事のみ与えられている人などです。
このような待遇が続くと、雇用保蔵者がフリーライダー化する可能性があります。雇用保蔵者の労働力をどのように活かすかがこの問題の課題となっています。
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フリーライダーが存在することの弊害
フリーライダーをそのまま放置する、またはその存在に気がつかないでいると、やがて企業の存続に関わる大きなダメージを与える可能性があります。ここでは、フリーライダーが企業に存在することの弊害についてご説明します。
周りの社員もフリーライダーに
あるとき、フリーライダーになったほうが得をすることに気づいてフリーライダーになる社員が現れます。それを見て、自分も得をしたいと思ってフリーライダーになる社員がでてきます。あるいは、フリーライダーが得をしているのを知って、努力することに意味を見出せなくなってフリーライダーになる社員もいます。フリーライダー分の業務負担は増えても報酬が変わらないなど、モチベーションを維持できなくなるためです。
このようにして、企業に1人だったフリーライダーをきっかけに他の社員もフリーライダーになってしまうことで、企業存続の問題にまで発展するリスクがあります。
企業の発展を阻む
仕事には、複数で担当する業務もあります。こうした業務をフリーライダーがやらなければ、他の社員が行わなくてはなりません。こうしてフリーライダーの存在の裏側で、業務負担を強いられる社員がでてきます。また、フリーライダーの中には自分を守るために、他の社員のやる気をそぐような発言をして、精神的ストレスを与える人もいます。
こうしたフリーライダーの存在に、他の社員はモチベーションが低下し、不満を持ちます。それによって職場の人間関係に歪みがでて円滑なコミュニケーションが取りにくくなると、仕事の質や生産性、顧客満足度の低下を招きます。こうした状況が続けば、企業の発展を阻む大きな要因となってしまいます。
フリーライダーの特徴と見極める方法
フリーライダーは、タダ乗りするための行動にはどのような特徴があるのでしょうか?また、フリーライダーを見極める方法についてもご紹介します。
仕事をさぼる
仕事をさぼって他の人に業務負担をかけます。このタイプは、やる気や業務遂行能力が低い人に見られます。必要最低限の仕事だけを行いますが、自ら進んで仕事をすることはありません。また、口では立派なことを言うものの、仕事は他の人に回したり、言われるまで仕事をしないなど、何かと理由をつけて仕事をしないで済ますそうとする特徴があります。
他人の成果を横取りする
仕事の成果が出たときのみ、他人の成果を横取りすることがあります。このタイプは、やる気や業務遂行能力も人並みにありますが、他人を利用して昇進や昇給することを目論み、実力以上の出世や報酬を得ようとする人です。そのため、仕事が失敗したときには、他人を批判して自分に責任がないことを大げさに主張します。また、仕事が成功したときには、自分の貢献度を実際より大きく主張します。人事部や上司など、人事評価に関わる人へのアピールも上手いのが特徴です。
他人へ業務負担をかける
仕事をさぼることで他人に業務負担をかける人は、自分が楽をすることで他の社員に迷惑をかけていることの自覚があります。しかし、自分の立場が危うくならない範囲でさぼる程度を上手くコントロールしているため、人事や上司が気づかないケースもあります。
また、他人の成果を横取りする人は、他人にアイデアを出させる、調べさせることで業務負担をかけています。しかし、他の社員への発言や態度が横柄、あるいは攻撃的など、周りの社員が極力関わらないで済まそうとするため、職場環境の悪化や生産効率低下を招きます。
他人へ精神的負担をかける
他人へ業務負担だけでなく、精神的負担をかけるフリーライダーもいます。このタイプは、居場所を守るために自分に都合よく現実を解釈していることを本人が自覚していないという特徴があります。
仕事をさぼるタイプの場合、他の部署と協力して問題解決が必要な場合や自分の業務負担が増える提案があった場合、否定的な発言や非難することによって妨害することで相手をあきらめさせます。また、他人の成果を横取りするタイプの場合、自分の仕事について客観的な評価を認めようとせず、相手や組織に対して様々な手段を使って攻撃することで相手を精神的に消耗させます。
フリーライダーかどうか見極める方法
社員がフリーライダーかどうか見極めるためには、以下に挙げる方法で人事担当者や管理職が一定期間、社員の働き方を観察しながらチェックすることで判定できます。
- フリーライダーになることが可能な職場環境で、一定期間以上フリーライダーでいるかどうかをチェックする。
- 1にあてはまる社員で、以下の3つのパターンのいずれかに当てはまる意図的なフリーライダーかどうかをチェックする。
・どの部署に所属していてもフリーライダーになる
・フリーライダーでいることが得にならなければ、フリーライダーにはならない
・誰もがフリーライダーになれる職場環境で、他の社員は真面目に働くが、その社員だけがフリーライダーになる - 1と2でフリーライダーと思われる社員に、人事評価に関わる仕事など、フリーライダーでいることが損になる状況を与えて仕事ぶりの変化をチェックする。変化があれば意図的なフリーライダーであり、変化がなければ能力的な問題があるフリーライダーの可能性がある。
【参考】フリーライダー あなたの隣のただのり社員
フリーライダー問題の解決方法と防止対策
フリーライダーでいることが損になり、勤勉な社員が報われる職場環境や仕組みを導入することが、問題解決には効果的です。また、フリーライダー防止には社員一人ひとりの努力が欠かせません。
貢献度に応じた人事評価制度への見直し
どの企業も人事評価制度によって社員の企業貢献度を測ります。そのため、貢献度に応じた適切な評価が行われない場合、フリーライダーの存在に気付かない、あるいは他の社員もフリーライダーになるリスクが高まります。
このリスクを防ぎ、意図的なフリーライダーをなくすためには、以下のような評価制度の見直しが有効です。
- 成果のみの評価制度ではなく、能力やプロセスに対する評価制度を導入して、多角的な評価を行うようにする。
- 評価面談では目標達成についてのヒアリングだけではなく、社員がさらに高い目標を達成できるようになるための方法を共に模索し、アドバイスを行うなど必要なサポートを行うようにする。
- 評価者へのアピールが上手なフリーライダーの評価を誤らないよう、360度評価を導入する。このとき、互いの評価が甘くなって評価制度が機能しなくならないように注意する。
- 社員の評判について、関わった社員から長期間にわたってヒアリングを行い、社員の人格や働きぶりについて幅広く情報収集を行う。登用や能力開発を行うときには、この情報も参考にする。
- 多面的な評価制度を導入するだけでなく、評価基準を明確にして社員に共有することで、フリーライダーをなくし、モチベーション向上に役立てるようにする。
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必要な人材育成の機会を与える
評価の結果、仕事に必要な知識やスキル不足を補う必要がある場合には、研修などの教育機会を与えることも大切です。やる気を引き出し、業務上の問題が解決することによって、フリーライダーを脱却するチャンスになります。
フリーライダーに教育機会を提供しないリスクは以下に挙げられます。
- 評価のフィードバックを受けて努力してみたが、知識やスキル不足のために結果を出せずにフリーライダーでいつづけてしまう。
- 自分を自主退社に追い込むためにわざと低い評価をつけたと思い込み、不満やストレスから人事担当者や上司、周りの社員に精神的な負担をかける。
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こまめに適切なフィードバックを行う
フリーライダー問題の解決や防止には、社員にとって厳しい内容だとしても、日ごろの業務や人事評価をきちんとフィードバックすることが必要です。それが、社員の成長や自己を客観的に捉えられる教育機会になります。フィードバックを行うときのポイントは以下に挙げられます。
- 事実に基づいて、褒められる点は褒める。改善すべき点はきちんと指摘し、改善方法を示して改善できるようにサポートする。
- 自分を客観的に見ることが出来ない社員には、自分自身で考えさせ、解決策をみつけるコーチングの手法を用いたフィードバックが効果的。
- 時間と手間は取られるが、フリーライダー問題の解決や防止には、適切なフィードバックを行うことが長期的に見た場合には有効になる。
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さぼれず、努力が報われる仕組みをつくる
フリーライダーをなくすためには、仕事をさぼると損をする、さらに努力が報われる仕組みを作って社員に共有することが効果的です。こうした仕組みづくりのポイントとして以下が挙げられます。
- 企業のビジョンや方針を明確にして共有することで、社員一人ひとりが何のために努力しているのか、目標達成によってどうなるのか理解させる。それにより、努力を惜しまずにモチベーションを維持しやすくなる。
- 組織が役職にふさわしい能力をもった人を登用し、その能力にふさわしい報酬を支払う代わりに、相応の成果と責任を求めるという健全なプレッシャーを与える。
- 仕事に必要な権限や、仕事のやり方に自由度を与える代わりに、相応の責任を求めることで、モチベーションを維持または向上させる。
- プロジェクトの失敗などで企業に損失を与えて降格したとしても、そこからまた努力して成果をあげれば再び昇格できるなど、誰にでも平等に昇格やキャリアアップなどのチャンスを与える。
自分自身がフリーライダーにならないようにする
社員一人ひとりがフリーライダーにならないように努力することが組織全体の防止に繋がります。防止策には以下がポイントとして挙げられます。
- 上司、部下など役職や立場によらず、誠実で前向きに、自分自身の成長努力を怠らないようにする。それは周りの人からの信頼を得るだけでなく、他の社員のやる気を引き出す。
- できない理由づけではなく、できる理由づけを習慣化する。それは仕事の可能性を広げ、能力を引き出して自己成長するチャンスになる。
- 仕事を通して得た学びが、次の仕事に活かせるような仕事のやり方をする。具体的には、より良い改善を考える、より良いやり方に挑戦する、顧客満足に繋がるように考えるといったことを念頭に置いておく。
フリーライダーについて具体例から学べる本のご紹介
ここでは、フリーライダーについて学べる本についてご紹介します。
フリーライダー あなたの隣のただのり社員/河合 太介、渡部 幹
この本では様々なフリーライダーを調査、分析して4つのタイプに分類しています。それぞれがなぜ生まれるのか、組織としてどのように問題解決をすればよいのかについて具体例を挙げて分かりやすく書かれています。そのほか、フリーライダー化しないために社員個人がとるべき行動についても解説されています。多くのノウハウが紹介されているので、フリーライダーの問題解決や防止策の参考になるでしょう。
【参考】Amazon.co.jp/フリーライダー あなたの隣のただのり社員/河合 太介、渡部 幹
まとめ
- フリーライダーとは、自分は仕事を怠けて楽をするのに労働対価以上の報酬を得ようとする社員のことです。
- フリーライダー問題の解決には、フリーライダーになることが損になる仕組みを組織全体で導入することが有効です。
- 企業という集団の中では、誰もがフリーライダーになりえます。フリーライダー防止には、社員一人ひとりがならないように努力することも大切です。
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