連結ピン
経済のグローバル化により意思決定の速さが求められ、従業員一人ひとりが当事者意識を持って、業務に取り組むことが求められるようになりました。組織内の意思疎通の活性化や生産性向上のためにも、重複小集団モデル型の組織経営を取り入れる企業が増えています。今回は重複小集団モデル型組織に必要不可欠な凍結ピンの役割をご紹介いたします。
連結ピンとは?
連結ピンとは、企業や組織において、複数の人や組織をつなげ、相互のコミュニケーションを促進する役割を指す人事用語の一つです。
リーダーシップ論や組織行動を論じる際に度々使用され、マネ―ジャやー管理職の重要なスキルとして位置づけられています。
この連結ピンは、米国ミシガン大学の心理教授・ミシガン大学社会調査研究所長であるR.リッカート氏によって定義づけられました。元々、電子部品の一つである連結ピンソケットや、足場の建枠やローリングタワー関連部材などの土木資材を連結させる部品の名称であり、人と組織を結びつける役目と似ていることから人事の関連用語として使用されています。
組織を繋ぐミドルマネジメントの重要性
連結ピンが特に重要となるのは、ミドルマネジメントです。
ミドルマネジメントとは、組織の中間に位置する役職の総称であり、トップマネジメント層の経営方針や描いている成長ビジョンを正しく理解し、目標や課題の達成に向けてロワーマネジメント層や現場従業員のコントロールを実施する組織の要です。
このミドルマネジメントは、ただの伝達係ではありません。トップとロアーの間での高度な調整能力が必要となります。これが連結ピンの役割なのです。
【関連】ミドルマネジメントとは?意味や役割、課題や育成のポイントをご紹介 / BizHint
連結ピンがマネジメントにおいて必要不可欠な理由
企業や組織で働く管理職にとって、「連結ピン」としての役割が必要不可欠とされています。
この理由を理解するためには、リッカート氏が提唱したシステム4理論に基づいて考えるとわかりやすいです。
リッカートが提唱したシステム4理論
システム4論とは、リッカート氏によって提唱されたリーダーシップ行動論のひとつで、リーダーシップのスタイルによる組織のの違いを、4つのシステムとして分類しています。
独善的専制型システム(システム1)
- 上司と部下との間に信頼関係が構築されておらず「アメとムチ」を使ったマネジメントを行う
- 部下の意見を汲み取ることはせず、経営層をはじめとした上層部が意思決定を行うトップダウン方式
管理者が一方的に部下を支配するため、相互のコミュニケーションや判断調整が活性化しません。そのため、従業員の労働意欲の低下をもたらしてしまいます。
マニュアルを使用する、機械的な作業を管理するには一定の効果がありますが、個人の創造性や能力を活かしたい場合は適切ではありません。
温情的専制型システム(システム2)
- 管理者が部下に対して温情的に接することで親子関係に似た人間関係を構築する
- 人間関係を前提にした管理システムのため、一定の範囲内での意思決定や意見の汲み取りが行われる
基本的には親子関係に似た上下関係、つまり部下を格下として捉える心情心理があるため、建前上のコミュニケーションが主体です。その結果、部門間といった枠組み以外での意思疎通が難しく、それが部下のモチベーション低下の要因にもなり得ます。
参画協調型システム(システム3)
- 管理者と部下との間に「尊敬」と「信頼」という相互関係が構築されている
- 部下の意見を尊重し、能力のある部下に対しては個別の職務や作業プロセスへの権限を委譲する
双方向的なコミュニケーションが積極的に行われる組織に導入されているシステムです。
従業員一人ひとりの当事者意識を確立し、自発的に考え、行動する生産性の高い人材の育成にも役に立ちます。しかし部下は、組織経営に影響をもたらす重要な意思決定までは関わることができません。
民主主義型システム(システム4)
- 強い人間関係と当事者意識を前提とし、経営含む意思決定をメンバー全員が行える
- リーダーや管理者は部下に対して、強い信頼を寄せており、権限委譲も幅広く行われている
民主主義型システムは、企業が掲げる理念や価値観を共有した組織運営を前提にしています。
上司や部下だけでなく、同僚同士の間でもコミュニケーションが積極的に行なわれ、意見交換や業務改善が活発になる傾向があります。また、個人の能力を最大限に活かしやすく、ひとり一人が責任感を持つため、組織全体が活性化します。
経営組織の業績が最も高いのは「民主主義型システム(システム4)」
4つのシステムの中で経営組織の業績が最も高いのは「民主主義型システム(システム4)」であると、リッカート氏は主張しています。
しかし民主主義型システムでは、組織全般で経営に影響を与える意思決定がなされるため、各組織(小集団)をつなぐ「連結ピン」の機能が欠かせません。
連結ピンの役割を果たす人材が各組織に在籍することで、組織間の相乗効果を生みやすく、経営組織の連携や経営と現場のバランスが保ちやすくなるのです。
「独善的専制型システム(システム1)」のような組織は淘汰されていく
しばしば表面化する長時間労働やハラスメントの問題は、昔ながらの独善的な管理システムが原因といわれています。
部下の意見を取り上げない「アメとムチ」を使い分けるマネジメント、トップが全て意思決定を行なうトップダウン型経営では、生き残りが難しい時代となったのです。
これには労働者、特に若い世代の労働者の意識の変化が要因とされています。
厚生労働省が発表した「第2章 働く人の意識と就業行動」では、若い世代の離職理由として、「人間関係がよくない」という理由が「仕事が合わない」に次いで多い傾向にあります。
この「人間関係が良くない」という理由は男女共に多く、組織内のコミュニケーション不足や不適切なマネジメントが原因と考えられています。
また、仕事上の悩みにおいても「職場や人間関係(セクハラ・パワハラ等を含む)」を上げる女性が40%となっています。
このように従業員のパフォーマンス低下を防ぐためにも、組織内のコミュニケーションを円滑にする連結ピンを担うマネジメントが必要とされているのです。
【参考】厚生労働省 第2章 働く人の意識と就業行動 求められる職場定着に向けた取り組みの強化
まとめ
- 連結ピンとはR.リッカート氏が提唱した、人と組織を結びつけて、コミュニケーションを円滑にする役割を果たすためのスキル
- 高い業績を上げるための組織には「連結ピン」の役割が必要不可欠
- 今後「連結ピン」の能力を持つ人材育成は優先順位が高いものといえるであろう
組織開発の記事を読む
- 企業文化
- コミュニケーションスキル
- ファシリテーション
- ピア・ボーナス
- エバンジェリスト
- ノーレイティング
- ラインマネージャー
- コーチング研修
- OKR
- 行動科学
- 人事考課
- 目標管理制度
- 人事評価制度
- コンピテンシー評価
- コンピテンシーモデル
- ノンバーバル・コミュニケーション
- ピアプレッシャー
- ストレスマネジメント
- アンガーマネジメント
- 社内コミュニケーション
- ロジカルシンキング
- ティール組織
- インポスター症候群
- アシミレーション
- 感情労働
- メラビアンの法則
- ストーリーテリング
- マネージャー
- デザイン思考
- クリティカル・シンキング
- チェンジ・エージェント
- ピア効果
- ぶら下がり社員
- 業績評価
- 等級制度
- ポータブルスキル
- 女性リーダー
- 学習性無力感
- 配置転換
- エンゲージメント
- エンパワーメント
- プレイングマネージャー
- チームワーク
- ネゴシエーション
- チェンジ・マネジメント
- 組織風土
- リーダーシップ
- リーダーシップ研修
- リーダーシップ 種類
- フィードバック
- マネジメント能力
- マインドセット
- 人材管理
- セクショナリズム
- ホラクラシー
- ナレッジマネジメント
- 社内SNS
- レコグニション
- ゼロベース思考
- オーナーシップ
- SMARTの法則
- フィードフォワード
- ピーターの法則
- フィッシュ哲学
- KJ法
- 統率力
- パフォーマンスマネジメント
- PM理論
- フリーライダー
- マネジリアル・グリッド理論
- 人材マネジメント
- ピラミッドストラクチャー
- クリエイティブシンキング
- イントレプレナー(イントラプレナー)
- 組織マネジメント
- 行動理論
- ローパフォーマー
- スパン・オブ・コントロール
- 行動科学マネジメント
- チームマネジメント
- プロセス評価
- ダイバーシティ・マネジメント
- 相対評価
- コーチングスキル
- リーダーシップ・パイプライン
- 抜擢人事
- マネジメントレビュー
- アサーション
- 集団凝集性
- 成果主義
- コンフリクト・マネジメント
- グループシンク
- システム思考
- SL理論
- 情意考課
- 複線型人事制度
- 役割等級制度
- 職能資格制度
- 社内FA制度
- ハイパフォーマー
- 専門職制度
- 自己申告制度
- 組織デザイン
- 人事評価
- 学習する組織
- 社内公募