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2018年1月16日(火)更新

社内公募

「社内公募」とは人事異動制度のひとつを指しますが、通常の異動と異なる様式を取ります。今回は、企業や会社の人事制度の中でも注目を集めている「社内公募制度」についてご説明します。

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社内公募制度とは

社内公募制度とは、いわゆる人事異動の制度ですが、上層部や人事部からの指示ではなく、企業や会社が必要とするポストや職種などの条件を社員にあらかじめ公開し、希望者を公募し、応募者の面接などにより人事配置が決定される制度です。

新プロジェクトの発足などで増員が必要になった場合、増員したい部署がそれぞれの業務内容や必要とする能力の条件などを公開し、社内で募集します。その際、本人が直接人事部門へ申し出て応募し、現在所属している直属の上司に承認をもらう必要がないというのが一般的です。

社内公募制度が注目される理由

従来の人事制度では、上からの指示による人事異動というのが一般的でしたが、社内公募制度は、社員が希望する部署やポストに異動できる可能性がある人事制度です。

なぜ、社内公募制度が注目されるようになったのか、従来の人事制度や現在のほかの制度と比較しながら、その理由を探ってみましょう。

従来の社内異動との差異

従来の人事異動とは一般的に、社員が企業や会社の命令により配置転換や地位を与えられ、勤務の状態が変更されることでした。

具体的には、担当部署の変更による職種・職務内容、勤務地などの変更、昇進・昇格、降格などによる役職への転換や解任などの企業内人事異動や、出向や転籍などのグループ企業間での人事異動です。

それとは異なり、社員の応募により希望する部署や職種、役員などのポストへの勤務変更を実施するのが社内公募制度です。

異動することには違いありませんが、「与えられたポストや職種」と社員が自ら「希望して得た職務」とでは、大きく異なります。

社内公募を行う目的

企業が社内公募を行うのは、従来の人事異動では得られない社員の仕事への動機づけや「やりがい」を感じることによるモチベーションアップを期待すること、また人材需要に応じて適材適所の人事管理を目指すという目的があります。

社内FA制度・自己申告制度との違い

社内公募制度のほかに企業に取り入れられているものに「社内FA制度」と「自己申告制度」という人事異動制度があります。

社内FA制度とは、社員が自分の経歴や資格、能力を希望する部署などにアピールして売り込み、自由に異動を希望できる制度です。

人事はこれに応じて面接などを行い、異動が決定されます。

自己申告制度は、社員自身に現在の仕事の遂行状況や職務の適正、問題点などを判断させるもので、社員の自己評価による申告で人事管理を行う制度です。

社内公募制度がこれらの制度と違うのは、会社が募集する部署やポストに「社員の希望による選択」で応募するという点です。

社内FA制度は、自分自身を売り込むことができ、社員主導という点では社内公募制度と似ていますが、必ずしも希望する職種やポストにつけるとは限りません。

また、自己申告制度は自己中心的な評価や希望に偏る傾向があったり、異動の希望が特定の部署に集中してしまうことがあり、希望にそぐわない異動などにより人事への不信感がつのる恐れがあります。

社内公募制度を導入するメリット

  • 業務や職位を「与えられる」のではなく、社員本人が自ら「勝ち取る」ものとすることで社内の活性化、仕事への意欲が期待できます。

  • 社内の重要なポストに欠員が出た場合、ほかの部署で働く優秀な人材が応募すれば、すぐに戦力として活躍してくれるので、業務に支障がありません。

  • 希望する部署や業務につけるという期待感から、仕事に対する意識が「面白いもの」や「やりがいを感じるもの」となり、モチベーションアップにつながります。

  • 新入社員が会社の戦力になるまでには時間がかかり、そのための投資も必要ですが、社内の人材を即戦力とすることで時間の節約になり、コストもかかりません。

  • 社内で「希望する仕事に就くことができる」「キャリアアップできる職種に就ける」など社員の希望を叶えることで、転職などによる有能な社員の流出を防止できます。

  • 管理職社員については、部下に対する公正な評価をしなければ有能な部下が逃げてしまうという危機感や緊張感が生まれ、管理能力の向上が期待できます。

社内公募制度を導入するデメリット

役職に適した社員の選定

明らかに仕事の成果を上げている社員でも、管理職には適任ではなかったという場合があります。 そのために今までのモチベーションが下がり、部署全体のコミュニケーションにも影響が出てきます。 役職にふさわしい人材であることを見極めるには、まずプロジェクトリーダーを務めさせるなど統率力を見極める必要があります。

応募による人間関係の変化

優秀な社員で、上司との関係も良好で信頼されている人が社内公募制度によりほかの部署への異動希望をした場合、上司との間に生じるわだかまりのために人間関係に変化がみられ、業務に支障が出るなどの影響が考えられます。

逃避による応募

業務内容に不満はなくても、現在の上司との関係がよくないために異動希望するケースも考えられます。

その場合、志望動機はキャリアアップが目的ではなく、この制度の目的とは異なる利用になってしまいます。

意欲の低下

落選により、現在の部署への不満がつのり、意欲が低下することで業務に支障をきたすなど、制度の目的に反した結果となる場合があります。

社内公募制度の導入プロセス

社内公募制度の導入にあたっては、そのプロセスも重要となります。社内公募を成功させるために必要な条件を挙げておきます。

導入前準備

  • 制度の方針、規則の整備をします。どのような問題が発生するか、問題が発生した場合の対策や戦略も立てておく必要があります。

  • 制度について人事担当者だけでなく、各部門に規則の説明をします。公募について社員の周知も図ります。

公募の手順

  • 各部門から人材の公募申請を受け付けます。  ↓

  • 部門ごとに職務を選定し、社内メールやイントラネットなどで社員に向けて公募内容を発信します。応募者の限定(入社3年目以降)などの制約をつけることもできます。  ↓

  • 社員は職場の上司を経由することなく、直接人事部門へ応募します。  ↓

  • 応募による書類審査を行い、審査を通過した社員に対し、募集部門と人事部門による面接を実施します。  ↓

  • 選考結果により、異動を発令します。  

社内公募制度が機能不全に陥るポイント

社内公募制度の設計にあたり、考えておかなければならない点を挙げておきます。

応募者の数が少ない

社内公募制度を導入しても、応募がなくては制度は活かされません。自分の希望する部署ややりたい職種に就くために応募する社員は、現在の仕事に満足していない社員です。 逆に言えば現在の業務に満足していている人や親しい仲間と離れてまでほかの部署に行きたくない人は応募しないでしょう。

応募者のレベルが低い

現在の部門での評価が高く、あえてリスクを負う必要のない社員は異動の希望をしません。レベルの高い社員ほど別の部署に移りたいという考えがないことが多いようです。

公募する部門が日陰部署である

公募する部署や業務に魅力があるかどうかも重要です。現在の慣れた業務内容や安定した日常から、わざわざ目立たない日陰の部署への異動を希望することはありません。

公募する部門の専門性が極めて高い

新規事業を立ち上げる場合の社内公募では、専門性の高いスキルが要求されることがあります。社内にそんなにすごい人がいるのだろうかと思われるほどの募集では、せっかくの制度が敬遠されるものになってしまいます。

異動後、社内に敵が生じる

社内公募制度は、社員のだれもが希望すれば応募することができ、また応募の秘密は守られ、合格した場合も上司に拒否権がないのが基本です。 レベルの低い社員であれば問題がなくても、だれもが認める社内のスタープレイヤーが現在の部署に満足せず応募したとなると、その周辺は穏やかではありません。 期待していた上司からは裏切りととられ、またいずれ上司になる可能性もありますから、その後の関係に響く可能性があります。また、その社員だから高レベルで流れていた業務が、引継ぎによってレベルが下がり、他部署の業務にまで支障をきたしかねません。 応募した社員に不当性がなくても、途中で業務を投げ出したという非難を浴びる可能性もあります。

社内公募導入時の注意点

社内公募制度導入については以下のような注意点も見逃せません。

秘密を厳守する

秘密の厳守は絶対です。採用・不採用のどちらであっても、情報が洩れてしまえば本人が会社に居づらくなってしまいます。

人材が抜かれる部署の拒否権

応募による異動の決定時、その社員が優秀であれば所属の上司が抵抗することが考えられますが、その拒否権についてしっかりとした対策が必要です。 拒否権は一切認めない、または進行中の業務などの事情により一定期間の猶予を考慮するなど、いくつか方法がありますが、制度の徹底のため、必要最小限にとどめることが重要です。

人事部門の役割

人事部門の役割は重大です。各部門の人材ニーズの把握と社内にどんな人材がいるのかという情報収集力、適材適所のマッチングを行う力量が求められます。

アフターケア

期待して応募したにもかかわらず、希望が叶わなかった社員へ登用が見送られた理由を説明するなど、今後のモチベーションダウンにならないような対策や社員へのアフターケアが必要です。

制度の安定

一度の社内公募により、希望の叶った社員が新部署でどのような成果を上げるのか、また希望が叶わず現在の部署で働き続ける社員のその後の働きぶりなど、社内公募制度の導入によってどのような成果を上げることができるのか、今後の問題点は何かを検討し、精度の安定を図ることも重要です。

社内公募を活用する企業事例

社内公募制度を積極的に活用し、成功している企業の例を参考に導入を検討しましょう。

ソニー株式会社

ソニーでは、自己申告制度、チューター制度(新規学卒者へ先輩社員がマンツーマン指導を行う)とともに「キャリアチャレンジ」として社内公募制度を導入しています。

社内公募制度は年一回行われており、毎年一定数の社員が異動しています。募集部門のニーズにマッチすれば、自らのチャレンジにより希望の仕事に就くことができる制度として定着し、1966年から続けられています。

ソニーの掲げるキャリアチャレンジ制度(社内公募制度)は、チャレンジ精神の醸成、キャリアプランを社員が自ら創造する、そして公平な異動機会を社員に提供することの3点を基盤としています。

この制度により、漆原さんは現在、企画部門でキャリアを磨いています。

エンジニアとして入社して4年間、ブルーレイレコーダーなどのソフトウェアエンジニアとして働いた後、社内公募制度により、パーソナルデバイス部門の企画に異動しました。

技術職から企画へと自ら希望して異動した動機は、ソニーのものづくりに関わっていく上で製品の企画の立ち上げから販売、購入する顧客の反応まで経験したいと思ったからだといいます。

エンジニアとしてずっと働いていくのだろうという自分の意識が変化したのは、毎年20万人が来場する「シーッテックジャパン」の展示会で説明員として3年間務めた際、ユーザーの声を直接聞いたことがきっかけだそうです。

ソニーの商品は人気が高く、ユーザーからはさまざまな質問が寄せられます。漆原さんが開発に関わったブルーレイレコーダーについては、画質や音質、操作性についても、提供側の自分には思いつかない細かな設定がユーザーの心を惹きつけていることに感心したといいます。

彼は自分が意識していなかったユーザーの目線を知り、エンジニア目線でしか物事を見ていなかったということに気づかされました。企画部門で働き、今までとは違う目線で物事を見る目を養いたいという気持ちから社内公募制度で企画を希望し、現在の仕事をするようになりました。

企画の現場は、人間関係がすべてだと彼は言います。エンジニア時代、ほとんどの時間をコンピュータと向き合ってきた彼にとっては、まさに異文化です。今まで関わることが少なかった専門用語が飛び交う現場で、ひとつの製品に最初から最後まで向き合っていく。そんな中で「製品がユーザーの手に届くまでの全体の流れが見えてきた」という彼の目線は、さまざまな分野へと広がっているようです。

企画の経験を活かしてエンジニアとして活躍したい、マーケティングも、または社外に飛び出すという選択肢も・・・異文化へ飛び込んだことで自分の可能性をさらに広げていく漆原さんは、自分の能力をどの分野で高めていくか、これからのキャリアプランを模索中です。

社内公募制度は、社員のチャレンジマインドの尊重であるとソニーの人材開発部、池山さんは説明しています。ソニーでは毎月、新規事業立ち上げのプロジェクトチームなどが人材募集を社内ネット上で告知し、条件を満たした社員は誰でも応募できます。

社内公募制度には強い強制力があり、応募の際に上司に報告する必要がありません。どんなに優秀な人材でも、現在のキャリアに満足せずチャレンジするという後押しがこの制度です。会社と社員の双方が成長するために必要な方策だとソニーの人事部は自信を持っているようです。

【参考】社内公募、有力資格【3】ソニー -エンジニアから企画マンに

【参考】ソニー株式会社の人事制度

プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)株式会社

P&Gのダイバーシティへの取り組みは多岐にわたります。時短勤務などの柔軟な勤務形態を取り入れた制度や、出産・育児、介護のための休業制度、社員の健康やメンタルについての取り組み、そして社内公募制度もそのひとつです。

P&Gは、社員一人ひとりが個々の違いを尊重し、それが活かされ、個人の持つ能力が最大限に発揮できる組織を目指すとしています。P&Gの人材育成システムには職種別採用、成果に基づく報酬、競争力のある給与、意欲を引き出す職場環境などがあり、その中に社内公募制度で行われる内部からの登用と昇進も挙げられています。

社員の一人ひとりを尊重する取り組みがP&Gの人事部で働く社員の考え方にも表れています。P&Gの人事部は「HR」Human Resources(人材を労働力ではなく会社の有する資源とする考え方に基づく)と呼ばれています。

HRのキャリアについてのFAQのページでは、P&GのHRで働くことの魅力として鈴木さんは、年齢や社歴、タイトルに関わらず大きなプロジェクトを任され、その裁量権に恵まれるという環境の中で「やりがいと自分自身の成長を感じながら仕事ができること」としています。

多数の工場人事を任されるなど、ほかの企業では20代ではできないであろう経験をし、だからこそ感じる責任感と緊張感の中で「自分の力で会社を変えていく」という意欲と大きな仕事へのやりがいを得られているといいます。

また、「自他ともに人事のプロになれる」「世界の人事のプロと切磋琢磨できる」という前田さんは、労働法や仕事環境の異なる海外で活躍する同僚と接し、自分の力量を常に自覚しながら、「人を軸にした視野が広がっていく実感が持てる」と話しています。

【参考】P&G社のダイバーシティに関する取り組みについて

また、社内公募制度についての質問にはこのような回答があります。

Q:HRとして入社した後に他のキャリアに異動は可能ですか?その様な例はありますか?

A:今のところ日本での前例はありませんが可能です。逆の例(例:SalesからHR)はあり、オープンジョブポスティング(社内公募制度)により、社内異動をする社員は大勢います。 職種別採用を行なっている以上、HRで入社された場合HRのキャリアにてエキスパートを目指していただくことが基本ですが、主体的に自分のキャリアをデザ インすることができるのがP&G。他の部署でのキャリアに興味を持った場合その道を切り開く手段・環境は整っています。

【参考】P&G社におけるHR関連のFAQ

社内公募制度を実施している日本企業

2006年5~6月に日本経済新聞が実施した「働きやすい会社」という調査では、日本企業の79%が社内公募制度を導入しています。(日経株価指数300銘柄およびそれに準ずる有力企業の計632社に依頼、回答は252社による)

しかし、この中には導入済みとはいえ、制度を活発に利用していない企業も多数含まれています。日本企業の社員に根付いていない「自己責任でキャリアを気づくという意識」という点が制度の利用を妨げているのでしょう。

それは、日本企業が長年行ってきた勤続年数を重ねれば自動的に昇給・昇進できる年功序列制という人事制度のあり方から抜け出せていないからです。

近年、年功序列制の崩壊や成果主義など社員の成果を問われる人事制へと変化する中で、成果で評価されるなら、自分の得意分野で仕事をしたいと願う社員が増加してきているといいます。

社内公募制度を進んで利用している欧米の企業では、「人は一番したいことをする時に最も満足し、良い成果を出す」とされ、「キャリアプランは自己責任で描く」という考え方が定着しています。

やりたい仕事として選んだ職種で経験を積んでいくうちに、自分のしている仕事がほかの部門でどんなふうに活かされているのかなど、異なる職種に関心を持つ人も出てきます。そんな時に利用できるのが社内公募制度です。P&Gの社員が自らのキャリアプランを描くという考え方は米国P&Gの当たり前の文化によるもので、これがP&Gジャパンにも活かされています。

【参考】社内公募制度について(ITpro)

まとめ

  • 社内公募制度とは企業や会社主導ではなく、社員主導の人事制度である。

  • 会社全体の取り組みとして、特に勤続年数の長い社員の固定観念を変化させることが必要である。

  • 「与えられた仕事」から「希望して得た職務」により、自己実現のチャンスが広がることを社員に伝え、ネガティブからポジティブへと思考の転換を働きかける。

  • 人事部門は導入の準備から採用者・不採用者のアフターケアを行う重要な役目を担う。

  • 制度を成功、定着させるには、社員が自己のキャリアプランを意識することを働きかける。

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