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2018年4月6日(金)更新

職能資格制度

日本独自の等級制度で知られる職能資格制度。長らく日本独自の等級制度として活用されてきましたが、時代の流れとともに職能資格制度を廃止にする企業も増えています。今回は職能資格制度のメリット・デメリット、職能資格制度や役割等級制度との違い、さらには職能資格制度を導入していた事例をご紹介いたします。

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職能資格制度とは?

職能資格制度とは、従業員が有する職務遂行能力を基準に区分・序列化する日本独自の(人を基準にした)等級制度を指します。1960~70年代の高度経済成長期はもちろん、1990年代初頭のバブル景気までは右肩上がりの経済動向だったため、多くの日本企業に浸透していった等級制度でもあります。

職能資格制度の評価対象となる職務遂行能力は、勤務する企業が社員に期待する能力であり、職務等級制度で求められる職務(仕事)とは異なります。そのため、勤務している会社では役に立つ能力ですが、他の会社では通用しない可能性があります。また、勤続年数が長くなれば、それだけ職務を遂行する能力が高いと定義付けられているため、 年功序列終身雇用を前提にした等級制度でもあります。

しかし、経営の不確実性の増加や役職・ポスト不足により、職能資格制度を維持することが難しくなってきました。また、人を基準にした曖昧な評価基準のため、不公平な人事評価になりやすく、若手社員のモチベーション低下の原因とも指摘されています。

2015年1月に一般社団法人 日本経済団体連合会が発表した「2014年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」によると、基本給の賃金項目の構成要素として「職能」を採用している割合は※管理職で52.2%、非管理職で66.6%と未だ高い水準に至ります。日本の労働市場は労働人口が減少していくことが確実視されており、「若手社員の即戦力化」が急務となっています。そのため、勤続年数を考慮しない仕事を基準とした職務等級制度や、役割や会社への貢献度(成果主義)を前提にした役割等級制度(ミッショングレード制)を段階的に取り入れる企業が増えています。

日本を代表する電機メーカーである日立製作所では、2014年10月以降、管理職を対象に職能資格制度を廃止し、職務等級制度役割等級制度がベースになった、新たな人財マネジメント体系を発表しています。今後も職能資格制度を廃止する企業が増えるとされています。

【参考】一般社団法人 日本経済団体連合会 2014年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果 10P
※調査対象会社数は管理職が250社、非管理職が450社
【参考】首相官邸 2014 年 10 月 22 日 政労使会議配布資料

職能資格制度のメリットとは?

職能資格制度は年功序列終身雇用を前提とした等級制度のため、職能資格制度特有のメリットが存在します。

優秀な人材の長期確保が可能

職能資格制度は、人を基準にした職務遂行能力を評価する等級制度です。この職務遂行能力は企業が社員に期待する能力であり、勤務する会社で最大の効果を発揮します。そのため、職能資格制度で評価されるためには、勤続年数を重ねる必要があります。結果、優秀な人材が競合他社に流れることを防ぐことができます。また、ジェネラリスト(総合職)は短期的な育成が困難のため、長期的な人材育成が必要です。職能資格制度により、従業員の長期雇用が可能ため、長期的な人材育成を行なえます。

組織改変を迅速に行なえる

職能資格制度はジェネラリスト(総合職)を育成するのに適した等級制度でもあります。ジェネラリストの職務遂行能力はどんな仕事にも対応できる能力を指します。そのため、市場環境の変化により、新しい組織やプロジェクトへの配置転換も迅速に行なうことができます。ジェネラリストジョブローテーション(定期人事異動)により、転勤や転籍を命じられます。同時に新しい環境での役職やポストも用意されることも多く、昇格基準にも活用されています。

役職やポスト不足に対する不満解消につながる

職能資格制度は知識や経験、資格の有無、組織への協調性など人の能力を基準にした等級制度です。そのため、役職やポストについていない一般社員でも、管理職同等の処遇(上位等級と下位等級の細分化)を受けることが可能となります。数の少ない役職やポストに付けない社員に対して、細分化された等級(能力等級)を与えることで、高い処遇を維持できます。その結果、従業員の不満を解消することができます。

職能資格制度のデメリットとは?

日本独自の等級制度である職能資格制度は、経済のグローバル化や国際競争の激化により、制度の運用が困難になってきました。そのため、近年ではメリットよりもデメリットの方が多くなっている傾向にあります。

人件費が高騰する

職能資格制度は年功序列終身雇用などの長期雇用を前提とした等級制度です。勤続年数に応じて、昇格・昇給をしていくため、従業員が歳を重ねていくにつれて、人件費も高騰していく傾向があります。また、部長や課長のポストにつけない社員を給与面で優遇しがちになってしまい、人件費の負担増加につながってしまいます。

年功序列による若手社員のモチベーション低下

勤続年数に応じて、評価される職能資格制度は日本特有の雇用慣行である年功序列に傾斜しています。具体的な成果を出しても昇格や昇給がしにくく、上の世代が詰まっているため、なかなか役職やポストにつけない状況が発生してしまいます。その結果、若手社員のモチベーション低下を招きやすく、社員全体の生産性を低下させる要因になります。

評価基準が曖昧になる

職能資格制度は人を基準にした評価のため、客観的な評価がつけにくい傾向にあります。どんな仕事でも対応できるジェネラリストは知識や経験、資格、協調性を基に人事評価が下されます。人事部は上司(管理者や評価者)の主観的な能力評価に頼らざる得なくなるため、不平等な人事評価になってしまう可能性があります。

職能資格制度・職務等級制度・役割等級制度の違いとは?

職能資格制度は日本独自の等級制度の一つですが、近年では仕事に焦点を当てた職務等級制度や役割に焦点を当てた役割等級制度を採用する企業が増えています。これらの等級制度はそれぞれ異なる特徴があります。

職務等級制度とは?

職務等級制度とは勤続年数に関係なく、仕事を基準にした等級制度です。アメリカをはじめ、西洋諸国が主に採用する等級制度でもあります。職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)に記載されている職務を基準に従業員が区別・序列化されます。職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)に記載している職務に応じて、賃金・賞与を決定するため、同一労働同一賃金を原則にしています。

仕事を基準にした評価のため、企業・従業員ともに公正・公平な人事評価をすることができ、人件費の抑制にもつながります。主に専門性が高い職務を果たすスペシャリスト(専門職)に採用される等級制度です。

しかし、短期で職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)の見直しをする必要があるため、人事側の管理の負担が増加してしまいます。また、職務内容がはっきりしているため、市場環境の変化に応じた柔軟な組織転換がしにくいデメリットもあります。

役割等級制度とは?

役割等級制度とは、管理職・非管理職に関わらず、仕事や役職に求められる役割を基準に社員を区別・序列化する等級制度です。職能資格制度や職務等級制度のメリットを集約した等級制度でもあり、明確なフォーマットがないため、導入する企業に合った等級制度を構築できるメリットがあります。

職能資格制度が根強く残る日本企業では、職務等級制度がなかなか根付きにくいため、近年では職能資格制度と、役職や仕事に求められる役割を明確にした役割等級制度を併用する企業が現れました。役割等級制度の役割は職務等級制度で作成する職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)ほど、明確に定める必要がなく、人事部の負担も軽減できます。

また、数値を基準とした目標設定を定めやすく、成果に応じた人事評価を下しやすい特徴もあります。また、管理職だけでなく、非管理職の一般社員にも企業が求める役割を設定しやすく、目標管理をしやすいメリットがあります。

職能資格制度・職務等級制度・役割等級制度の違い

等級制度には職能資格制度 、職務等級制度役割等級制度の3つがあります。この3つの制度には「評価対象となる人材と評価基準」、「導入された背景」に違いがあります。

対象となる人材と評価基準

職能資格制度は「人」を基準にした等級制度で、従業員が会社内のさまざまな業務を担当することで培える知識や経験、協調性、ストレス耐性などが評価基準となります。そのため、対象となる人材は正社員が対象となります。

職務等級制度は勤続年数に関わらず、純粋に仕事(職務)の成果を評価基準とするので、対処となる人材はスペシャリスト(専門職)が対象となります。

役割等級制度は複数の役割を設定することができます。例えば、管理職の場合はリーダーシップや部下のマネジメント能力の他に担当するプロジェクトの予算達成、非管理職は業務遂行能力や問題解決能力、個人ひとり一人に割り振られた営業成績などが設定し、役割を評価対象にします。管理職や非管理職など役職やポストに関わらず、全社員が対象となります。

導入された背景

等級制度が複数存在するのは、時代の変化に伴い、人事管理のあり方に見直されるようになったからです。職能資格制度は1960~1970年代の高度経済成長期に定められた等級制度です。そのため、右肩上がりの経済動向を前提にしないと制度の運用が困難となります。

職務等級制度は1990年代のバブル景気が終焉を向かえたこときっかけにIT企業や外資系企業を中心に導入されました。しかし、長らく職能資格制度を採用していた日本企業にはなかなか馴染まなかったため、職能資格制度と職務等級制度を掛け合わせた「役職×仕事」を「役割」と設定し、等級ごとの役割を評価基準にした役割等級制度が登場しました。

職能資格制度の過去の導入事例

日本独自の等級制度である職能資格制度は大企業を中心に多くの会社が採用していました。現在では職能資格制度の運用が困難になったため、 職務等級制度役割等級制度を導入する企業が増えています。

今回の事例紹介では過去に職能資格制度を導入しており、現在は職務等級制度役割等級制度に移行した企業をご紹介いたします。

大日本印刷株式会社

2000年12月、大日本印刷の100%子会社である株式会社ディー・エヌ・ピー・デジタルコムは年功序列要素を完全に排除したスキル評価主義への移行を発表しました。今までの職能資格制度であった役職制度を廃止し、プロフェッショナル資格を新たに新設。社員の専門能力を向上させ、社員の自己実現への支援を開始しました。

【参考】DNPデジタルコム 人事制度を改定 年功序列要素を排除しスキル評価主義へ移行

(株)荏原製作所

2017年3月、荏原グループでは、役員・管理職層を対象に従来の年功序列(職能資格制度)を廃止し、公正・公平な人事評価実現のため、社員の実力・成果を取り入れた役割等級制度を実施することを発表しました。

【参考】荏原製作所 組織体制及び人事制度の変更について

ソニー株式会社

ソニー株式会社は年功序列を前提にした職能資格制度を完全に廃止し、役割を明確に定義した「ジョブグレード制」を導入すると発表しました。これにより、部長・課長職の管理職は「現在担当している役割」の成果に応じて、賃金・賞与が決定されます。成果達成などの要件を満たしていれば、20代の課長職昇格も可能とする「若手社員の登用」に力を入れる方針です。

【参考】日本経済新聞 ソニー、年功要素を全廃 賃金制度改定、組合と交渉へ

まとめ

  • 日本独自の等級制度である職能資格制度は、時代の流れによって運用が困難となってきました。
  • 企業が経営の不確実性を懸念することもあり、従業員に対しても成果に応じた職務等級制度役割等級制度を基にした公正・公平な評価を行なうことで、従業員の生産性向上を図る動きは今後も加速するとみられます。
  • 企業側、従業員側双方に評価に対する考え方の転換が求められる時代に突入したといえるでしょう。

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