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2018年1月16日(火)更新

ノーレイティング

日本的慣習が根強く残る日本企業の多くが、グローバル化する経済に対応するために、今までの人材評価システムを見直す動きが加速しています。今回は社員を相対的に評価するレイティングとは異なる、「ノーレイティング」の意味や従来のレイティングの問題点、導入のポイントから企業事例までをご紹介いたします。

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ノーレイティングとは?

日本企業の多くが「S評価、A評価、B評価、C評価」といったレイティングによる人材評価制度(人事評価制度)を見直し、敢えて数値や記号による評価を行わない「ノーレイティング」に注目が集まっています。ノーレイティングの意味や導入される背景、パフォーマンスマネジメントとの関連性を知ることで、理解を深めることができます。

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ノーレイティングの意味とは?

ノーレイティングとは、日本企業の多くが採用してきた、社員の業績を「S評価、A評価、B評価、C評価」などのランク付けを行なう年次評価制度の廃止、または新たな人材制度(人事制度)を導入する動きを意味する用語です。

近年、「ランク付けによる評価制度は従業員のパフォーマンス向上に結びついていない」と指摘する声が多く、欧米企業を中心にレイティング(ランク付けする評価制度)を廃止する動きが加速しています。日本企業の中にも経済のグローバル化や高度化・複雑化するビジネス課題へ対応するために、従来の人事評価システム、または評価プロセスを見直す動きがみられます。

ノーレイティングによる人材評価制度(人事評価制度)は今後、社員の意識改革や組織改革を行なう上でも必要な経営戦略として認識されています。

ノーレイティングが導入される背景とは?

新たな人材評価制度(人事評価制度)にノーレイティングが導入される背景には、「経営環境の変化」、「人材の確保・人材育成」、「マネジメント手法の変化」の3つが挙げられます。

バブル崩壊以降、技術革新や顧客ニーズ・価値観の多様化により、従来の経営手法や事業展開では限界を迎えつつあり、「成果主義を前提としたレイティング(ランク付け)が機能しなくなっている」と指摘されています。企業も部分最適から全体最適へと舵を切っていることからも、社内の中でも「競争」よりも「協働」を重視する傾向がみられます。

さらに少子高齢化による労働人口の減少の影響もあり、優秀な人材の確保が企業の急務となっています。そのため、優秀な人材の確保・人材育成の観点からも「社員の長期的な成長が企業の持続的成長に寄与する」と考える企業が増えており、綿密なコミュニケーションを重視したノーレイティング評価制度に移行する動きが加速していると考えられます。

また、管理職以上の人材は従業員のパフォーマンスを効果的に高め、生産性向上を図るためにも、目標管理をはじめとした自分自身のマネジメント能力を見直すタイミングにあると考えられます。ミスマッチによる新入社員の早期退職や、部下のモチベーションの向上・維持する上でも、ノーレイティングによる評価制度は双方の納得感を得やすいため、新たな人材評価制度(人材評価制度)に採用されていると考えられます。

パフォーマンスマネジメントとの関連性とは?

ノーレイティングを採用した人材評価は、企業と社員の長期的な成長を促す新たなマネジメント手法である「パフォーマンスマネジメント」と相性が良いとされています。

パフォーマンスマネジメントは企業の戦略実現を目指した全体最適を促す総合的人材マネジメント手法として活用されており、高度化・複雑化するビジネス課題に対応する上でも従来の評価制度との併用が難しいとされています。そのため、綿密なコミュニケーションと上司・部下との信頼関係の構築、納得感のある目標設定と評価の実現が見込めるノーレイティングと、パフォーマンスマネジメントは相性が良いと考えられます。

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従来のレイティングの問題点とは?

経済がグローバル化し、ビジネス課題が複雑化・高度化する市場環境の中で、「S評価、A評価、B評価、C評価」とランク付けするレイティングにはさまざまな問題が指摘されています。

ここでは、レイティングを採用した評価制度がもたらす、代表的な問題点をご紹介いたします。

外部環境への対応が難しい

技術革新や消費者ニーズの多様化に伴い、経営を取り巻く外部環境は急速に変化しています。そのため、年に数回しか実施されない年次評価や目標設定、フィードバックでは激変する経済・社会変化に対応しきれず、企業の競争力の低下や生産性の低下につながってしまう可能性があります。そのため、レイティング評価は時代の移り変わりとともに廃止されつつあります。

従業員のモチベーションの低下

レイティングによる評価は相対評価となり、S評価を最高評価とした時、A評価やB評価などの中間の評価を受ける社員が多くなりやすく、中間層の社員のモチベーション向上や維持が難しくなります。また、A評価やB評価の評価基準自体も曖昧にされやすく、不透明な評価となってしまいます。

そのため、自らが描くキャリアパスを実現しにくくなり、正当な評価を望む社員の不満が増えることから、優秀な人材の確保や人材育成が困難となります。

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評価システムのエラー

レイティングによる評価は、評価基準が曖昧になりやすく、評価する上司の感情に左右される不透明な評価につながりかねません。また、年次評価はフィードバックの時期が決まっており、上司の記憶に依存したフィードバックがされやすく、部下やチームメンバーの能力向上に寄与していないと指摘する声もあります。そのため、目標管理制度自体が形骸化し、上司や部下・チームメンバーの信頼関係に亀裂が入りやすくなってしまいます。

今後、グローバル人事の導入やダイバーシティへの尊重が広がる中で、企業が設定した画一的なレイティング評価では、激変する市場環境に対応できないと考えられています。

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心理的不安による生産性の低下

従来のレイティング(ランク付け)による評価は、「間違えることができない」、「失敗できない」という心理的不安を助長し、社員の前向きな姿勢や行動を著しく制限してしまっていると指摘されています。そのため、レイティングによる評価制度は、市場環境が激化する中において、「自ら考え、行動する」自律性の高い社員やチームを必要とする風潮に反すると認識され始めています。

また、レイティングによる評価は「上司のさじ加減次第」という認識が生まれやすく、目標自体が形式だけのものとなってしまい、評価される部下やチームメンバーに「やらされている」という感覚を植え付け、目標達成への意欲も削ぎ落としてしまう可能性があります。

ノーレイティングのメリット・デメリットとは?

対話を中心に社員の評価を決めるノーレイティングにはメリットとデメリットが存在します。ノーレイティングのメリットとデメリットを把握することで、人事評価への導入を迅速に進められます。

ノーレイティングのメリット

評価制度にノーレイティングを採用した場合、上司・部下の納得感を生み出し、人材の確保やマネジメントの改革につなげることが可能です。

納得感のある目標設定と評価の実施

ノーレイティングによる評価システムは、上司と部下が綿密な1on1ミーティングを行なうことを前提とします。そのため、年度末や期末といった決まったタイミングで面談を行なうのではなく、業務の延長線上で繰り返し、フィードバックが可能です。その結果、上司は部下ひとり一人の進捗や状況に応じた最適なアドバイスができ、部下やチームメンバーは直近のパフォーマンスに対する評価を受けることで、軌道修正も行ないやすくなります。

また、部下ひとり一人のリアルタイムのパフォーマンスが評価対象となるため、上司の記憶や感情に依存することなく、フィードバックを行なえます。このように綿密なコミュニケーションは上司と部下の間に信頼関係を構築し、双方が納得のいく目標設定や評価を行なえるメリットを生み出します。

優秀な人材の確保

人手不足が叫ばれる中、優秀な人材の確保は重要な経営戦略のひとつとして位置付けられています。ノーレイティングは社員一人ひとりの直近のパフォーマンスに注目し、リアルタイムで評価されます。その結果、部下は自らの成長を実感でき、モチベーションを高く維持したまま、業務に集中できます。社員が自らの成長を実感できる労働環境は社員の離職率を低下させ、外部から新たな人材を確保するための魅力にもつながります。

今後、専門性の高い職種の需要が高まり、多様性を尊重する評価姿勢が重視される中で、ノーレイティングは欠かせない評価基準になると考えられます。

パフォーマンスマネジメント改革が可能

高齢化や人口減少の影響を受ける日本において、社員の生産性向上は至上命題といえます。そこで、注目されているマネジメント手法がパフォーマンスマネジメントです。パフォーマンスマネジメントは明確な目標設定と評価制度とともに運用され、職場上での上司・部下双方のコミュニケーションを基に、組織・個人の能力を最大限に発揮できます。

また、グローバルトレンドとして、年次評価を廃止する動きが広がっており、 グローバル人事ダイバーシティの尊重への対応が求められています。グローバル規模でのパフォーマンスマネジメント改革を実施する上でも、ノーレイティングを採用した評価制度はどの企業にも求められている優れた評価制度と考えられます。

ノーレイティングのデメリット

ノーレイティングには、納得感のある目標設定や評価に加え、優秀な人材の確保やパフォーマンスマネジメントの向上が期待できます。

一方で、一部の社員には負担を増やし、現場に混乱をもたらす可能性が指摘されています。そのため、人事担当者はノーレイティングのデメリットを踏まえた上で、企業価値の向上につながるかを判断した上で導入を検討しなければいけません。

管理職の負担増

ノーレイティングによる評価は、定期的に開催される上司と部下の1on1ミーティングによって導き出されます。そのため、部署やチームを率いる管理職は部下やチームメンバーひとり一人に対して、定期的な面談やフィードバックを行なわなければならず、管理職の負担が増えてしてしまいます。

また、リアルタイムで部下のパフォーマンスを評価しなければいけないため、管理職には今まで以上のマネジメント能力が求められます。しかし、日本企業のマネージャーの多くはプレイングマネージャーであり、適切なマネジメントを実施させるためには、コーチング研修やセミナーを開催し、マネジメントに対する意識改革(管理ではなく、対話の重視)を行なわなければいけません。

過剰なコミュニケーションによる混乱

定期的に行なわれる1on1のミーティングでは、その都度、フィードバックが行なわれます。そのため、ノーレイティングの評価制度によるアドバイスは、「その都度、評価内容が変わる」と認識されてしまい、部下が目標や課題を見失い、かえって現場に混乱を招く可能性があります。

また、フィードバックは必ずしも良い効果を出すとは限らず、近年では「フィードバックによる評価は、従業員にマイナスの効果が生じる」という研究も報告されています。そのため、管理職は過剰なコミュニケーションやフィードバックを避け、達成率ギリギリのラインを定めた目標の設定を心がけ、適度な回数の面談やフィードバックを実施するべきといえます。

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ノーレイティングを評価制度に導入するためのポイントとは?

ノーレイティングを人事制度・評価制度に導入する場合、ノーレイティングに必要な環境の整備が欠かせません。今回は導入のプロセスにおいて、必要となる環境の整備や既存の評価制度の活用、重視すべきポイントについて、ご紹介いたします。

信頼関係と納得感の構築

ノーレイティングの評価制度は、従来の「結果に対する評価をなくす」ということではなく、綿密な対話を通して、成果・結果をフィードバックします。そのため、上司と部下が対話できる場を増やし、円滑なコミュニケーションを行うことで、信頼関係を構築しなければいけません。

社会・経済環境が常に変わっている中で、時には設定された目標を変更しなければいけない機会にも直面します。そのような状況下でも上司と部下の双方が納得できる目標の変更や、業務の軌道修正が行なえるかどうかが、ノーレイティングの評価制度を有効に機能させるための鍵といえます。

1on1ミーティングの導入

ノーレイティングを実施するためには、上司が1on1ミーティングで部下の情報を引き出し、適切にフィードバックしなければいけません。そのため、管理職は日々の業務進捗や目標達成度合い、部下が置かれている状況を把握しながら、評価する必要があります。

従来のレイティング(ランク付け)による評価体制とは、全く異なる運用体制となるため、管理職向けの意識改革を行ない、ノーレイティングの実施への理解を深めてもらわなければいけません。

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360度評価の活用

ノーレイティングを実施するためには、評価者である管理職の意識改革が必要です。しかし、従来のレイティング評価手法に慣れてしまった管理職の意識を変えることは容易ではありません。そのため、管理職に「あるべきノーレイティングによるマネジメント」と、「実際に職場で行なっているマネジメント」の差異を認識させ、理想のノーレイティングのマネジメント能力を身につけさせる必要があります。

管理職の意識改革を行ない、スムーズにノーレイティングの評価制度に移行させるためには、360度評価の活用が最適です。360度評価は立場の異なる複数の社員による評価のため、管理職の行動を多面的に評価することができ、管理職に自分の足りていないマネジメント能力を認識させることができます。

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新たな評価システムの導入

ノーレイティングはランク付けによる評価手法を廃止する動きのため、従来の報酬・給与決定の仕組みや表彰制度を必然的に見直さなければいけません。また、ノーレイティングで導き出された評価は社員の「納得性」を重視しているため、従来の表彰の形では社員を労うことが難しいと考えられています。

そのため、社員ひとり一人にスポットライトを当てることができる、業績以外の表彰やサンクスカードといった新たな評価システム(サブシステム)を導入しなければいけません。

人事部門による管理職へのサポート

既にご紹介している通り、綿密なコミュニケーションと対話の数が増えるノーレイティングの評価は、現場に近いマネージャーをはじめ、管理職の負担が大幅に増えます。また、長時間労働の問題が顕在化し、時短勤務や在宅勤務といった「働き方改革」が注目される中で、如何に管理職の負担を軽減できるかが注目されています。

そのため、人事部門が主導して管理職の負担を軽減させつつ、従業員同士の信頼関係を構築できる組織開発を行なわなければいけません。人事部門がサポートできることとして、マネジメントに対する意識改革を促すための管理職向けセミナーやコーチング研修の実施、メッセンジャーやテレビ電話などのコミュニケーションツールの提供などが挙げられます。

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昇進・昇級への決定権の委譲

ノーレイティングは、上司と部下・チームメンバー双方が納得できる評価を生み出すことができる優れた評価制度です。しかし、評価する側の上司に報酬(給与)や昇進・昇格を決定する権限がなければ、せっかく築いた信頼関係に亀裂を生んでしまいます。

そのため、企業側は評価者である上司に、部下やチームメンバーの報酬(給与)や昇進・昇格を決定する権限を委譲する必要があります。ノーレイティングによる評価手法を浸透させるためにも、経営陣には思い切った権限委譲を行なうことも求められます。

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ノーレイティングを導入している企業事例とは?

近年、注目を集めているノーレイティングは、今になって現れた評価手法ではありません。グローバル企業や外資系企業の多くが、ノーレイティングを採用しており、人材育成や組織の活性化に成功しています。

ここではノーレイティングを導入し、独自の人材評価制度を実施している企業事例をご紹介いたします。

P&G Japanによるコーチング・フィードバックとアサイメントの変更

世界最大の消費財メーカー、米国企業プロクター・アンド・ギャンブル社の日本支社であるP&G Japan(以下、P&G)では、「コーチング・フィードバック」という独自の評価を行なっています。

P&Gは「Feedback is a gift(自分が受けたフィードバックは大切な贈りものと考える)」という考え方を重視しており、立場の異なる社員から複数のフィードバックを受け、自分自身の考えや成果を向上させる取り組みを推奨しています。また、社員自身が描くキャリアパスを上司とともに定期的に話し合い、アサイメント(個人に与えられる課題)を変更し、自らの専門性を磨くキャリア開発も行なっています。

【参考】P&G Japan Career at P&G

日本マイクロソフトによる1on1面談

アメリカのコンピューター技術開発企業、マイクロソフト社の日本法人である日本マイクロソフト(以下、マイクロソフト)では、社員一人ひとりに働き甲斐を感じてもらえるように、2週間に一度、上司と部下が1on1の面談を実施しながら、業務を進めています。社員には評価の仕組みを公開し、顧客や会社への貢献度に応じて、評価と報酬(給与)が決まるシンプルな評価制度を取り入れており、ノーレイティングの評価手法を採用した代表的な企業といえます。

また、マイクロソフトは年に一度、社員意識調査を実施し、働きやすい労働環境を追及し続け、社員の育成に力を入れています。

【参考】日本マイクロソフト 社員制度と環境

アクセンチュア株式会社によるパフォーマンス・アチーブメント

総合コンサルティング会社大手のアクセンチュア株式会社(以下、アクセンチュア)では、8億4,000万ドルと社員一人当たり40時間という膨大な費用と時間をかけた人材育成トレーニングを実施しています。

また、アクセンチュアでは社員自らがキャリアを設定し、その取り組みに会社がサポートを行なうパフォーマンス・アチーブメントという独自の人事評価制度を採用しています。この制度では、チームメンバーをはじめ、社員同士の直接的な対話を通したアドバイスに重きを置き、日頃の成長や目標の達成度合いを確認することができます。フィードバックの結果によっては、年度末を待たずとも、社員の強みや希望に沿った業務に、適切なタイミングで取り掛かることを可能としています。

【参考】アクセンチュア株式会社 採用案内 パフォーマンス・アチーブメント

まとめ

  • 経済のグローバル化や少子高齢化・労働人口の減少、顧客ニーズの多様化などに伴い、経営を取りまく外部環境は厳しくなっています。そのため、企業にはグローバル基準での人材評価制度(人事評価制度)が求められるようになり、従来の評価方法を見直すタイミングに直面しているといえます。
  • 企業の持続的成長には、優秀な人材の確保や人材育成、生産性向上が不可欠なため、今後もノーレイティングによる評価手法が広がっていくと考えられます。

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