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ノーレイティング

2020年6月17日(水)更新

ノーレイティングとは、「ランク付け」を行わない人事評価制度です。多くの日本企業で採用されてきた、これまでの評価制度とは正反対であると言えます。近年、予測できない複雑な経済環境や、従来の画一的な人事評価制度への不満の噴出などから、この新たな評価制度に注目が集まっています。今回はこの「ノーレイティング」の意味や注目される背景、従来の評価制度の問題点、ノーレイティングのメリット・デメリット、導入のポイントから企業事例まで詳しくご紹介します。

ノーレイティングとは

ノーレイティングとは、 「ランク付け」を行わない人事評価制度 を言います。

これまで多くの日本企業で採用されてきた、「S・A・B・C」などの ランクで社員を評価する「年次評価制度」とは正反対の評価方法 です。

ノーレイティングによる評価システムは、上司と部下が綿密な1on1ミーティングを行うことを前提としています。半年や一年間の実績をまとめて定期面談で査定するのではなく、 目標に対してリアルタイムに対話し、その都度、上司からフィードバックと評価を行う というものです。

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ノーレイティングが注目される背景

近年、「 ランク付けによる評価制度は従業員のパフォーマンス向上に結びつかない 」と指摘する声が多く、欧米企業を中心にレイティング(ランク付けする評価制度)を廃止する動きが加速しています。

また、国内でも、経済のグローバル化や複雑化するビジネス課題へ対応するため、従来の人事評価システム、または評価プロセスを見直す動きがみられます。

既存の人事評価制度の限界

人材大手アデコの2017年の調査「働く人の人事評価制度に関する意識調査」(対象:20-60代の働く人1,356名)を見てみると、 現在の人事評価制度に不満を感じている人は62.3% であり、逆に「満足」だと感じている人はわずか4.4%となりました。

【出典】6割以上が勤務先の人事評価制度に不満、約8割が評価制度を見直す必要性を感じている/Adecco Group

その理由としては、

  • 評価基準が不明確…62.8%
  • 評価者の価値観や経験によってばらつきが出て、不公平だと感じる…45.2%
  • 評価結果のフィードバック、説明が不十分、または仕組みがない…28.1%

が挙げられています。これまでのような画一的なレイティングでは、社員の納得感が得られず、最終的に優秀な人材の流出に繋がる可能性も。

ノーレイティングによる人事評価制度は今後、社員の意識改革や組織改革を行う上でも必要な経営戦略として注目を集めているのです。

パフォーマンスマネジメントとの関連性とは

高齢化や人口減少の影響を受ける日本において、社員の生産性向上は至上命題といえます。そこで、注目されているマネジメント手法が パフォーマンスマネジメント です。

パフォーマンスマネジメントとは、 従業員の能力とモチベーションを引き出しながら、同時にビジネス上の目標達成を行うことを目的としたマネジメント手法 です。

ノーレイティングは、綿密なコミュニケーションによる上司・部下との信頼関係の構築、納得感のある目標設定と評価の実現が見込めるため、パフォーマンスマネジメントと相性がよいとされています。

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従来のレイティングの問題点

そもそも「レイティング」とは、社員を「S評価、A評価、B評価、C評価」とランク付けする評価手法です。

現在、レイティングにはさまざまな問題が指摘されています。

外部環境への対応が難しい

先の読めない不確実なVUCA時代と言われるほど、現代において経済状況は急速に変化しています。

そのため、年に数回しか実施されない年次評価や目標設定、フィードバックといったレイティングでは、 激変する経済・社会変化に対応しきれず、企業の競争力の低下や生産性の低下につながってしまう 可能性もあるのです。

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従業員のモチベーションの低下

レイティングの相対評価では、S評価を最高評価とした時、A評価やB評価などの中間の評価を受ける社員が多くなりやすく、中間層の社員のモチベーション向上や維持が難しくなります。また、A評価やB評価の評価基準自体も曖昧にされやすく、不透明な評価となりがちです。

そのため、自らが描くキャリアパスを実現しにくくなり、 正当な評価を望む社員の不満が増える ことから、優秀な人材の確保や人材育成にも影響が出る可能性があります。

評価システムのエラー

レイティングによる評価は、 評価基準が曖昧になりやすく、評価する上司の感情に左右される不透明な評価に つながりかねません。

さらに、年次評価はフィードバックの時期が決まっており、上司の記憶に依存した評価になりやすく、部下やチームメンバーの能力向上に寄与していないと指摘する声もあります。

そのため、目標管理制度自体が形骸化し、上司や部下・チームメンバーの信頼関係に亀裂が入りやすくなってしまいます。

今後、グローバル人事の導入やダイバーシティへの尊重が広がる中で、企業が設定した画一的なレイティング評価では、激変する市場環境に対応できないと考えられています。

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心理的不安による生産性の低下

従来のレイティング(ランク付け)による評価は、「間違えることができない」、「失敗できない」という心理的不安を助長し、社員の前向きな姿勢や行動を著しく制限していると指摘されています。

そのため、レイティングによる評価制度は、市場環境が激化する中において、 「自ら考え、行動する」自律性の高い社員やチームを必要とする風潮に反する と認識され始めています。

また、レイティングによる評価は「上司のさじ加減次第」という認識が生まれやすく、目標自体が形式だけのものとなってしまい、評価される部下やチームメンバーに「やらされている」という感覚を植え付け、目標達成への意欲も削ぎ落としてしまう可能性があります。

ノーレイティングのメリット・デメリット

対話を中心に社員の評価を決めるノーレイティングには、メリットとデメリットが存在します。

ノーレイティングのメリット

評価制度にノーレイティングを採用した場合、上司・部下の納得感を生み出し、人材の確保やマネジメントの改革につなげることが可能です。

納得感のある目標設定と評価の実施

ノーレイティングでは、年度末や期末といった決まったタイミングで面談を行うのではなく、部下ひとり一人のリアルタイムのパフォーマンスが評価対象となるため、上司の記憶や感情に依存することなく、フィードバックを行えます。

その結果、上司は部下ひとり一人の進捗や状況に応じた最適なアドバイスができ、部下やチームメンバーは直近のパフォーマンスに対する評価を受けることで、軌道修正も行ないやすくなります。

綿密なコミュニケーションは 上司と部下の間に信頼関係を構築し、双方が納得のいく目標設定や評価を行える メリットを生み出します。

優秀な人材の確保

人手不足が叫ばれる中、優秀な人材の確保は重要な経営戦略のひとつとして位置付けられています。

ノーレイティングの特徴であるリアルタイムでの評価によって、部下は自らの成長を実感でき、モチベーションを高く維持したまま業務に集中できます。

社員が自らの成長を実感できる労働環境は社員の離職率を低下させ、外部から新たな人材を確保するための魅力 にもつながります。

今後、専門性の高い職種の需要が高まり、多様性を尊重する評価姿勢が重視される中で、ノーレイティングは欠かせない評価基準になるでしょう。

ノーレイティングのデメリット

一方で、一部の社員には負担を増やし、現場に混乱をもたらす可能性が指摘されています。

そのため、人事担当者はノーレイティングのデメリットを踏まえた上で、企業価値の向上につながるかを判断した上で導入を検討しなければいけません。

管理職のマネジメント能力の影響度が高い

リアルタイムで部下のパフォーマンスを評価しなければいけないため、管理職には今まで以上のマネジメント能力が求められます

しかし、日本企業のマネージャーの多くはプレイングマネージャーであり、適切なマネジメントを実施させるためには、コーチング研修やセミナーを開催し、マネジメントに対する意識改革(管理ではなく、対話の重視)を行なわなければいけません。

また、ノーレイティングでは、部下やチームメンバーひとり一人に対して定期的な面談やフィードバックを行うため、 管理職の負担が増えてしまう ことも懸念されます。

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過剰なコミュニケーションによる混乱

定期的に行なわれる1on1のミーティングでは、その都度フィードバックが行なわれます。しかし、それが 「その都度、評価内容が変わる」 と認識されてしまい、部下が目標や課題を見失い、かえって現場に混乱を招く可能性も。

また、フィードバックは必ずしも良い効果を出すとは限らず、近年では「フィードバックによる評価は、従業員にマイナスの効果が生じる」という研究も報告されています。そのため、管理職は過剰なコミュニケーションやフィードバックを避け、 適度な回数の面談やフィードバックを実施するべき といえます。

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ノーレイティングを評価制度に導入するためのポイント

ノーレイティングを人事制度・評価制度に導入する場合、ノーレイティングに必要な環境の整備が欠かせません。

ここでは、必要となる環境の整備や既存の評価制度の活用、重視すべきポイントについてご紹介いたします。

信頼関係と納得感の構築

ノーレイティングの評価制度は、従来の「結果に対する評価をなくす」ということではなく、 綿密な対話を通して、成果・結果をフィードバックする というものです。

そのため、上司と部下が本音で対話ができる信頼関係が何よりも重要です。

社会・経済環境が常に変わっている中で、時には設定された目標を変更しなければいけない機会にも直面します。そのような状況下でも上司と部下の 双方が納得できる目標の変更や、業務の軌道修正が行なえるかどうかが、ノーレイティングの評価制度を有効に機能させる ための鍵といえます。

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360度評価の活用

ノーレイティングを実施するためには、評価者である管理職の意識改革が必要です。しかし、従来のレイティング評価手法に慣れてしまった管理職の意識を変えることは容易ではありません。

そのため、管理職に「あるべきノーレイティングによるマネジメント」と、「実際に職場で行なっているマネジメント」の差異を認識させ、理想のノーレイティングのマネジメント能力を身いつけてもらう必要があります。

管理職の意識改革を行ない、スムーズにノーレイティングの評価制度に移行させるためには、 360度評価の活用が最適 です。

360度評価は立場の異なる複数の社員による評価のため、管理職の行動を多面的に評価することができ、管理職自身に不足しているマネジメント能力を認識させることができます。

【関連】360度評価とは?メリット・デメリットから実施の流れまで!/BizHint

新たな制度の導入

ノーレイティングはランク付けによる評価手法を廃止する動きでもあるため、 従来の報酬や昇進などの仕組みや表彰制度を必然的に見直す 必要があります。また、ノーレイティングで導き出された評価は社員の「納得性」を重視しているため、従来のままでは社員を労うことが難しいと考えられています。

そのため、社員ひとり一人にスポットライトを当てることができる、業績以外の表彰やサンクスカードといった新たな制度導入の検討も必要でしょう。

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人事部門による管理職へのサポート

既にご紹介している通り、綿密なコミュニケーションと対話の数が増えるノーレイティングの評価は、 現場に近いマネージャーをはじめ、管理職の負担が大幅に増えます 。また、長時間労働の問題が顕在化し、時短勤務や在宅勤務といった「働き方改革」が注目される中で、如何に管理職の負担を軽減できるかが注目されています。

そのため、管理職の負担を軽減させつつ、従業員同士の信頼関係を構築できる組織開発を、人事部門が主導して行なわなければいけません。

人事部門がサポートできることとしては、マネジメントに対する意識改革を促すための管理職向けセミナーやコーチング研修の実施、メッセンジャーやテレビ電話などのコミュニケーションツールの整備などが挙げられます。

昇進・昇級への決定権の委譲

ノーレイティングは、上司と部下・チームメンバー双方が納得できる評価を生み出すことができる優れた評価制度です。しかし、評価する側の 上司に報酬(給与)や昇進・昇格を決定する権限がなければ、せっかく築いた信頼関係に亀裂を生んでしまいます

そのため、企業側は評価者である上司に、部下やチームメンバーの報酬(給与)や昇進・昇格を決定する権限を委譲する必要があります。ノーレイティングによる評価手法を浸透させるためにも、経営陣には思い切った権限委譲を行うことも求められます。

【関連】権限委譲の意味とは?責任や権限の委譲などの正しい方法/BizHint

ノーレイティングを導入している企業事例

近年、注目を集めているノーレイティングは、今になって現れた評価手法ではありません。グローバル企業や外資系企業の多くが、既にノーレイティングを採用しており、人材育成や組織の活性化に成功しています。

ここではノーレイティングを導入し、独自の人材評価制度を実施している企業事例をご紹介いたします。

P&G Japanによるコーチング・フィードバックとアサイメントの変更

世界最大の消費財メーカー、米国企業プロクター・アンド・ギャンブル社の日本支社であるP&G Japan(以下、P&G)では、「コーチング・フィードバック」という独自の評価を行なっています。

P&Gは「Feedback is a gift(自分が受けたフィードバックは大切な贈りものと考える)」という考え方を重視しており、立場の異なる社員から複数のフィードバックを受け、自分自身の考えや成果を向上させる取り組みを推奨しています。また、社員自身が描くキャリアパスを上司とともに定期的に話し合い、アサイメント(個人に与えられる課題)を変更し、自らの専門性を磨くキャリア開発も行なっています。

【参考】Career at P&G/P&G Japan

日本マイクロソフトによる1on1面談

アメリカのコンピューター技術開発企業、マイクロソフト社の日本法人である日本マイクロソフト(以下、マイクロソフト)では、社員一人ひとりに働き甲斐を感じてもらえるように、2週間に一度、上司と部下が1on1の面談を実施しながら、業務を進めています。

社員には評価の仕組みを公開し、顧客や会社への貢献度に応じて、評価と報酬(給与)が決まるシンプルな評価制度を取り入れており、ノーレイティングの評価手法を採用した代表的な企業といえます。

また、マイクロソフトは年に一度、社員意識調査を実施し、働きやすい労働環境を追及し続け、社員の育成に力を入れています。

【参考】賃金・人事処遇制度と運用実態をめぐる新たな潮流/独立行政法人 労働政策研究・研修機構

アクセンチュア株式会社によるパフォーマンス・アチーブメント

総合コンサルティング会社大手のアクセンチュア株式会社(以下、アクセンチュア)では、8億4,000万ドルと社員一人当たり40時間という膨大な費用と時間をかけた人材育成トレーニングを実施しています。

また、アクセンチュアでは社員自らがキャリアを設定し、その取り組みに会社がサポートを行うパフォーマンス・アチーブメントという独自の人事評価制度を採用しています。この制度では、チームメンバーをはじめ、社員同士の直接的な対話を通したアドバイスに重きを置き、日頃の成長や目標の達成度合いを確認することができます。フィードバックの結果によっては、年度末を待たずとも、社員の強みや希望に沿った業務に、適切なタイミングで取り掛かることを可能としています。

【参考】採用案内 パフォーマンス・アチーブメント/アクセンチュア株式会社

まとめ

  • 従来のランク付けを用いる「レイティング」は、外部環境への柔軟な対応が厳しい、画一的な評価基準で評価エラーが起きやすいなどの問題点があった
  • ノーレイティングを導入する事により、評価に対する社員の納得感が高まり、結果的に優秀な人材の確保や、パフォーマンスの最大化に繋がる
  • ノーレイティングの導入には「1on1ミーティング」の実施が必要不可欠であり、そのための管理職のフォローや新たな評価制度の導入など、事前に環境を整えておく必要がある

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