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デザイン思考

2020年2月18日(火)更新

デザイン思考とは、経営やマーケティングなど、いかなる種類のビジネスにおいても活用できる「デザイナー的」思考を指します。デザイナーがデザイン業務で使う思考のプロセスを活用し、課題に対して最も相応しい解決を図るためのものです。今回は、このデザイン思考について、その意味や注目される背景、活用することで得られる効果、思考の5つのプロセスから、成功事例、関連書籍まで幅広くご紹介します。

デザイン思考とは

デザイン思考とは、デザイナーがデザイン業務で使う思考のプロセスを活用して、ビジネスで前例のない問題や未知の課題に対し、最も相応しい解決を図るための思考法です。

デザインとの違い

そもそも「デザイン」とは、建築や服飾、美術、広告などの分野で、設計したり表現するなどのクリエイティブな行為の事を言います。

一方、「デザイン思考」はデザイナー的思考の事。デザイナーがデザインを行うプロセスや考え方を、ビジネスに転用したものです。

デザイン思考 3つの特徴

デザイン思考の特徴としては以下の3つが挙げられます。

  • 問題解決に最も重視する要素は、問題関係者全ての「満足度」の高さ
  • 問題定義と解決意図を明確にしたうえで、アイデア出しと組み合わせの試行錯誤を繰り返してブラッシュアップしていく
  • 前例や固定概念、バイアスといったものは一切排除して考える

デザイン思考はクリエイティブなセンスに関係なく、思考方法を学んで実践することによりスキルが身につきます。これを継続することで、妥当性と再現性のクオリティが高まり、ビジネスの問題解決に有効活用できるようになります。

ハーバート・サイモン『システムの科学』

そもそもデザインを思考法として捉えはじめたのは、ハーバート・サイモンの『システムの科学』がはじまりと言われています。その後、デザイン思考について様々な著書や研究論文が発表されていますが、「システムの科学」は今もデザイン思考に対する考え方に影響を与えています。

特に、ハーバート・サイモンがデザインとはどのような活動かを述べた言葉は、デザイン思考の本質的な目的についても語っています。

現在の状態をより好ましいものに変えるべく行為の道筋を考案するものは、誰でもデザイン活動をしている。
【引用】『システムの科学』/ハーバート・サイモン

現実を理想に向かってより良く変える事を目的とした活動は「デザインすること」と同じです。

そのため、明確に意図した目的を実現するために人が考えて作り出すことは、クリエイティブに限らず問題解決でも同じプロセスを踏みます。

デザイン思考が注目される背景

それでは、なぜデザイン思考が注目されているのでしょうか。

これまでの課題解決方法

これまで、新たな製品やサービスを生み出す現場では「マーケティングリサーチ」が重要視されていました。それは「仮説検証型」のアプローチであり、市場やニーズについて調査した結果を分析し、仮説を立て検証し、それを元に製品開発などを行ってきました。

このマーケティングリサーチを実施するためには、事前にある程度正確に問題を把握しておく必要があります。しかし、ニーズが多様化し変化の激しい現代では、この「仮説検証型」で問題の本質を捉える事が難しいケースも増えてきました。

VUCA時代の到来

「VUCA」とは、

  • Volatility(変動)…変化の質・大きさ・スピード等が予測不能であること
  • Uncertainty(不確実)…これから起こる問題や物事が予測できないこと
  • Complexity(複雑)…数多くの原因などが複雑に絡み合っていること
  • Ambiguity(曖昧)…物事の原因や関係性が不明瞭であること

の頭文字を取った言葉です。

これは、これら4つの要因によって、現代の世界経済環境が極めて予測困難となっている状況を表す言葉です。

このような時代の到来により、人々のニーズなど課題の本質をスピーディーに分析できる方法が求められるようになりました。そこで、ユーザー中心主義であるデザイン思考が注目されているのです。

【関連】VUCAの意味とは?VUCAな時代に求められるリーダーシップとは? / BizHint

第4次産業革命

欧米では、製造業をインターネットと人工知能を利用して自動化する動きが加速化しています。これは、工場の生産性や効率の飛躍的なアップを狙ったものです。この「第4次産業革命」により、社会構造そのものの変化が予測されます。

そのような変化の中で、これまでの価値観にとらわれない課題解決の方法が求められています。これからは、自ら課題を設定し市場を生み出せなければ、大きなビジネスチャンスは手に入れられません。

そこで、イノベーション創出に長けた「デザイン思考」が注目されているのです。

デザイン思考の効果

それでは、デザイン思考を行う事によって、どのような効果が期待できるのでしょうか。

新しい発想を生み出す

デザイン思考の最大の効果は、イノベーションの創出であると言えます。つまり、これまでの延長線上ではない、全く新しいアイデアが生まれやすいという事です。

デザイン思考は人間中心設計の考え方であるため、これまでの市場を中心としたアプローチではなく、人々のニーズからその課題の本質を見極める事ができます

強いチームを作る

デザイン思考は、チーム間のコミュニケーションを重視します。そして、その思考のプロセスにおいて全員が発言権を持ち、アイデアの重要度も平等に扱われます。

メンバーの役職や上下関係に左右されない意思決定のプロセスにより、積極的なアイデア創出のマインドが醸成されます。

デザイン思考 5つのプロセス

デザイン思考は、これからご紹介する5つのプロセスに沿って展開されます。このプロセスを繰り返し行う事で、製品やサービスを完成へ導く方法です。

STEP1:共感

まず、デザイン思考は「人間中心」を原則としています。そして、デザイン思考においての「共感」は、人々を理解する事を指します。

このプロセスでは気づき、所謂インサイトを得る事が目的です。人々がなぜ・どのように行動するのか、ニーズは何なのかを、インタビューや観察などを通して探ります。そして、人々が本当に求めている事を見つけ出します

STEP2:問題定義

「共感」のステップで得られたユーザーの意見や情報から、潜在的な課題やニーズを抽出します。

その際、その問題の発生している状況を整理し、問題の発生にはどのような要因があるのか、という事まで分析する事が必要です。そこから、目指すべき方向性・コンセプトを確立するのが「問題定義」のステップとなります。

︎STEP3:アイデア創造

「問題定義」で設定された方向性を実現するために、アイデアを出すのがこの「アイデア創造」のステップです。

ここでは、アイデアの「質」よりも「量」を意識してブレインストーミングを行い、チームのメンバーが思いついた事を制限することなくアウトプットする事が大切です。

STEP4:試作(プロトタイプ化)

「アイデア創造」で出たアイデアで、チームの支持を集めたものをいくつか試作段階へ進めます。ここでは、低価格で早く作ることができるプロトタイプを繰り返し作成していきます。そうする事で、様々な可能性を試す事ができ、経費や時間を節約する事も可能です。

︎STEP5:テスト

「試作」段階で作成したプロトタイプについて、ユーザーテストを行うのがこのプロセスです。実際のユーザーの意見を聞く事で、「問題定義」の段階で設定された課題を解決するものになっているのか、きちんと機能しているのか等を検証します。

テストを繰り返し、商品やサービスのブラッシュアップを行います。

日本や海外でのデザイン思考の活用事例

それでは、実際にデザイン思考を活用して製品化されたものを、デザイン思考の5つのステップに沿ってご紹介します。

海外での事例 アップル社「iPod」

米アップル社が開発した携帯型のデジタル音楽プレイヤーです。実はこの製品も、デザイン思考のプロセスを経て開発された商品です。

STEP1:共感

まず、競合製品の分析や、ユーザーが実際にどのように音楽を聴くのか等の調査を実施。そこで、ユーザーがCDからPC、そしてプレイヤーへ音楽データを移行する事を手間だと感じている事が分かりました。また、「その場で選んだ音楽を、どこに居ても聴きたい」というニーズも併せて発見しました。

STEP2:問題定義

「共感」のステップで発見されたニーズにより「全ての音楽を、ポケットに入れて持ち運ぶ」「音楽の聴き方に革命を起こす」というコンセプトが確立しました。

STEP3:アイデア創造

まず、円盤型のマウスによる画面操作、そしてiPodとPCのデータを自動で同期させるシステムなど、全く新しいアイデアが生み出されました。

STEP4-5:試作・テスト

こうしたアイデアを盛り込んだ試作品について、当時のスティーブ・ジョブズCEOは「音楽を聴くために3回以上ボタンを押したくない」「もう少し本体を小さく」「音量を大きく」「音質をシャープに」「メニュー表示を素早く」など度重なる要請を出し、試作・テストが繰り返されました。

こうして2001年に発売されたiPodは、5年半で累計販売台数1億台を超える世界的大ヒット商品となりました。

日本企業のイノベーション事例 任天堂「Wii」

任天堂の家庭用ゲーム機「Wii」も、デザイン思考のプロセスを経て開発された商品です。

STEP1:共感

まず自社の社員の家庭について調査し、「ゲーム機は親子関係を悪化させる原因となっている」「ゲーム機があると、子どものリビング滞在時間が短い」という状況に気づきました。

STEP2:問題定義

「共感」で得られた気づきから、「家族で楽しむ事ができ、かつ親子関係を良くするゲーム機の開発」という方向性を設定します。

STEP3:アイデア創造

開発チームにより様々なアイデアが創出され、例えば「家族みんなで使えるゲーム機」「リモコンのようなコントローラー」「リビングで場所をとらないコンパクト設計」などの案が出されました。

STEP4-5:試作・テスト

これらのアイデアを元に徐々に形になってゆき、重さ・形状・操作性などの様々な点を考慮し、1,000 回以上の試作が繰り返されました。

こうして2006年に発売されたWiiは、最終的に販売台数1億台を超える、国民的家庭用ゲーム機となりました。

デザイン思考に関するおすすめの本(書籍)

デザイン思考について学習できる書籍のご紹介です。

デザイン思考が世界を変える【アップデート版】

世界的デザインコンサルタント会社IDEOのCEOの著書。著者がデザインとイノベーションの必要性について語るとともに、経験談を元にした組織復活の方法論や、問題解決プロセスにおける秘訣を紹介。

発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法

多くの一流企業をクライアントとし、歯ブラシから鉄道車輛まで、世界から注目を集める商品を開発し続けているデザイン会社IDEO。IDEOは、どのようにしてアイデアを形にしているのか、そのイノベーションの技法について知る事ができる書籍。

21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由

世界のMBAトップスクールが、なぜ今「デザイン思考」に注目しているのか。21世紀のビジネスには、デザイナーの如く課題を創造性をもって解決する「デザイン思考」がなぜ必要なのか。これらを、ソニー株式会社のデザインセンターにて新規事業などに携わった著者が、デザイン思考実践のためのヒントと共に紹介。

クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法

「世界でもっともイノベーティブな企業」に選ばれたデザイン会社IDEOの創業者デイヴィッド・ケリーと、共同経営者のトム・ケリーが最新の「デザイン思考」のノウハウについて語った書籍。創造力に必要なのは「アイデア」「自信」の二つであり、自信については少しのトレーニングで簡単に身に付き、そこから創造力や好奇心が溢れ出す、という内容。

デザイン思考の教科書 欧州トップスクールが教えるイノベーションの技術

世界最高峰のイノベーター集団である「デルフト工科大学」初の、公式デザインガイドである本書。デルフト工科大学にて使用されている、プロダクトデザインのモデル・アプローチ方法・視点・デザインの手法までが紹介されている。また、目的に応じて使い分けられるデザイン手法など約70種類を収録しており、ビジュアルも併せて掲載されている。

  • 出版社:日経BP社
  • 発行年:2015年
  • 編者:アネミック・ファン・ブイエン、ヤープ・ダールハウゼン、イェル・ザイルストラ、ロース・ファンデル・スコール
  • URL:http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/P50640.html

デザイン思考の教材

それでは最後に、デザイン思考のワークショップやセミナーで使われる教材をご紹介します。

デザイン思考 5つのステップ

デザイン思考を実施する上で重要な5つのステップ「共感」「問題定義」「創造」「プロトタイプ」「テスト」について13ページにわたり詳しく紹介されている、デザイン思考の入門書とも言える資料です。著者は、スタンフォード大学のハッソ・プラットナー・デザイン研究所。

デザイン思考家が知っておくべき39のメソッド

スタンフォード大学内にあるデザインスクールがまとめた資料です。まず、デザイン思考における心構えである「言うのではなく見せる」「人々の価値観に焦点を当てる」「明快な仕事」「素早く形にする」「過程に注意」「行動第一」「徹底的な恊働」の7つの要素についての紹介から始まり、デザイン思考に必要な「39のメソッド」まで、55ページにわたり体系的に紹介されています。

デザイン思考ファシリテーションガイドブック

デザイン思考についての概要をはじめ、「理解」「共感」「問題定義」「創造」「プロトタイプ&テスト」という5ステップを詳しく紹介。最後には、「デモ作成」として実際にワークする事も可能な教材となっています。105ページに亘るテキストと、ワークシートがセットになっています。

まとめ

  • VUCA時代の到来など、様々な環境変化により、今「デザイン思考」における課題解決方法が注目を集めている
  • デザイン思考は、「共感」「問題定義」「アイデア創造」「試作」「テスト」の5つのステップを経ることによって展開される
  • ともに累計販売台数が億を超え、世界的大ヒットとなった「iPod」「任天堂Wii」も、デザイン思考のプロセスを活用して開発された商品

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