ローパフォーマー
会社にとってのお荷物ともいえるローパフォーマーという問題社員。それはどのような状況で生まれてしまうのでしょうか。ローパーフォーマーとはどのようなものなのかを考え、発生したときの対策と、生まれないようにする予防策を考えてみましょう。
ローパフォーマーの定義
会社組織において業務成績の悪い人や能力不足の労働者を、パフォーマンスの程度が低い人という意味でローパフォーマーと呼びます。能力を発揮して会社に大きく貢献するハイパフォーマーの対義語にあたる呼び方であり、業績の悪化や伸び悩み、他の社員への悪影響などを生む原因となります。もしローパフォーマーが発生していたら、重大な課題として認識しましょう。
ローパフォーマーの分類
ローパフォーマーはいくつかの種類に分類することが出来ます。発生している状況と発生する原因を分類の軸としてそれぞれで考えてみます。
状況による分類
状況による分類は以下のようになりますが、これは改善項目による分類でもあります。
■能力や成果が給料に見合っていない
その人に与えられた仕事の中で発揮している能力や、納めている成果が給料に見合っていないケースがあります。まったくの能力不足というわけでもなく、成果も挙げていないわけではない。けれども会社が期待するレベルがそれよりも高かったことなどから、給料の金額に比べると不十分ということです。会社にとってはそのギャップの分だけ無駄が発生していることになります。
■業務態度に問題がある
不真面目であったり怠惰であったり、業務態度に問題があるローパフォーマーも存在します。あからさまに問題のある行動をとっていることもあれば、上司に隠れてサボっているような場合もあり、「ただ乗り社員」や「ぶら下がり社員」などと呼ばれることもあります。もちろん能力の発揮や成果においても問題があることが多く、周囲のスタッフへの悪影響も懸念されます。
■能力特性と職種のミスマッチ
やる気があって一生懸命働いていても、本人が持っている能力特性と業務内容が合っていないために、結果としてローパフォーマーになってしまうというケースもあります。適材適所の原則から考えて人員配置に問題がある場合もありますが、会社の事業転換などによって、もともと成果を挙げていた能力を発揮する場がなくなってしまったという場合もあります。やむを得ないケースであったとしてもなんらかの対策が必要です。
■マネジメント能力の欠如
プレイヤーとして能力が高く評価されて管理職に就いたものの、管理能力が欠如していてマネージャーとしては能力不足であるというケースです。日本の企業では個人の業務成績への報奨のような形でポストを与えることがあり、管理職研修なども不十分であるとこの状況が生まれることがあります。部署全体のパフォーマンスにも影響するので避けなければいけません。
原因による分類
次に、ローパフォーマーが生まれてしまう原因による分類を考えます。
■人事部門や経営層の問題
人事部や経営層に原因がありローパフォーマーが生まれるケースとして、採用時の判断ミスが考えられます。一般的に正規社員を採用する際には人事担当者や役員が終盤の面接を行いますが、そのときの人物評価が間違っていることで起きるミスマッチです。
また、経営者による判断で事業を転換することがあります。この事業転換によって社内にこれまで存在した職種や部署が消滅することがあり、そこで仕事をしていた人が慣れない部署へ異動してローパフォーマー化してしまいます。まったく仕事が出来ないとまではいかないまでも、能力の相対的な陳腐化が起こります。
■上司の問題
部署の管理者である上司の態度や管理スキルは部下の成長に影響します。適切な指導を行わないことによって、部下が成長せずにローパフォーマーとなる場合があります。また、なんらかの理由で特定の部下との人間関係が悪くなると、それが原因で勤務態度が悪化するかもしれません。態度が悪ければ業績に悪影響を及ぼすこともあり、これもローパフォーマーを生む一因です。
■本人の問題
本人にローパフォーマー化の原因があるケースももちろん多く、業務に向かう態度が悪い、成長しようという意欲が欠如している、採用時にした自己申告が過大であった、などが根本的な原因として考えられます。また、プライベートな理由でモチベーションを落としてしまい、能力や業績に影響することもあります。
指導や研修による対策
ローパフォーマーが生まれてしまったときに、対象者に対して指導や研修を行うことで改善を図り、解決を目指すことが考えられます。どのような手段があるのかと、そのときの注意点を考えてみましょう。
目標設定を適切に行う
企業では個人の目標設定をすることがありますが、このときに適切な内容にしないと意欲の向上に役立ちません。目標値が低すぎると怠惰につながるし、逆に高すぎて達成の可能性が低いと早い段階での諦めにつながります。期待しているような成果を挙げていない社員に対しては課題を明示したうえで、目標設定が適切であるかどうかをいちどチェックしてみると良いでしょう。
能力の向上を図る
新卒採用した社員やこれからが期待される若手社員には、能力の伸びしろが多くあります。したがって能力向上を目的とした研修やOJT教育の実施が、ローパフォーマー対策として有効です。管理能力に課題のあるマネージャーに対しては、しっかりした管理職研修を行いましょう。現在の能力評価に対して少し上のレベルを目標とし、適宜その向上度合いをチェックしながら実施するのが良いでしょう。
態度を改めさせる
中堅以上の社員で過去にあるていどの実績がある人、あるいは高い評価を受けて中途採用で入社した人の中に、そのことにあぐらをかいて勤務態度が悪い人がいることがあります。普段の行動に問題があるので行動改善を促す必要があるため、部門管理者による面談や指導を行います。何がどのように問題なのかをはっきりと伝え、場合によってはあるていど厳しい態度で臨むことも必要です。
指導や研修を行うときの注意点
一度だけの指導やおざなりな研修ではローパフォーマーを戦力化するような教育効果を挙げることが難しいです。あるていどの期間や回数をあらかじめ想定し、適切な目標設定とともに指導・研修を実施しましょう。そして、改善項目を明確にして、どのような指導や研修を行い、その結果としてどうなったのかを記録しておきましょう。記録することで効果を確認でき、より良い改善につなげることが可能となります。
また、業務態度に問題があるときなどで、その理由がプライベートな問題である場合も考えられます。具体的な指導内容を検討する前に、丁寧なヒアリングを行い、より精密な原因特定をするようにもしなくてはいけません。
雇用契約の内容を変更する対策
雇用契約とは、勤務日数や勤務時間、働く場所や部署、職種、それにともなって支払われる賃金の額を定めた契約です。対象者との雇用契約内容を変更することで、ローパフォーマーの問題について解決を図ることも選択肢となり得ます。
配置転換や職種の変更
能力と職種にミスマッチがある場合は、持っているスキルを発揮しやすい部署への配置転換や業務異動が考えられます。同じ事業所や部署であっても、担当職務を変更することで得意分野の仕事ができないか検討してみるのも良いでしょう。あらゆる人には何らかの出来ることがあり、その出来ることを見つけて活躍の場を探ります。
減給
まったく能力が発揮されていないというわけではなく、賃金とのバランスが著しく悪いという場合であって、なおかつ指導や研修あるいは配置転換などによる改善が見込めない場合には、減給も選択肢として考えられます。能力や成果と給料とのギャップがローパフォーマーという評価を受けてしまう部分なので、これを無くすという考え方です。ただし、これはネガティブな対策ですから、他の対策についての検討と実施をした後に考えましょう。
ローパフォーマーを生まないための予防策
ここまででローパフォーマーが生まれたときの対策を見てきましたが、そもそも発生しない方が良いはずです。ローパフォーマーを生まないようにするための対策を考えてみましょう。
人材のマッチング
人事担当者や部署のマネージャーは、当然ながら適材適所を意識しています。しかし、実際にこれが不十分なためにミスマッチが起こり、ローパフォーマーを生む原因の1つにもなっています。部下に担当させている仕事について、部門ごとの人員配置について、社内全体の組織体制について、あらためて状況を確認して評価してみましょう。
自立的なキャリア形成の支援
企業におけるハイパフォーマーを分析してみると、自ら能力の可能性に挑戦する積極的な姿勢が多く見られます。また、自分がどのようにキャリアを積んでいくのかが見えないと社員が働く意欲を減らすことも考えられます。
したがってローパフォーマーの発生を防ぎ、社員がより高い能力を得て成果を生むために、自立的なキャリア形成を支援する人事制度が有効となります。自分で考えて課題を見つけ、自己啓発を行う社員の態度を、会社が評価してバックアップするのです。
評価と育成が連動した人事制度
人事評価制度が単に賃金決定の査定だけのために行われていると、従業員のモチベーションを下げてしまう可能性があります。評価は必ず、次の育成と連動したものとして行いましょう。
評価によって次の適切な目標も設定できます。適切な目標設定ができれば成長への意欲につながり、ローパフォーマーが生まれにくい社内環境が出来ていきます。評価と育成が連動した人事制度によって、良い環境や風土を作りましょう。
まとめ
- ローパフォーマーとは、会社で能力が発揮できていない人や賃金とのギャップが大きい人、あるいは業務態度が悪い人のことです。
- ローパーフォーマーが生まれてしまった場合には、それぞれの状況に応じた対策が実行しましょう。
- ローパーフォーマーが生まれないような施策もあらかじめ打っておかなくてはいけません。
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